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イベントレポート
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【 2009/06/11 】
アナログ停波後の周波数帯域を利用したマルチメディアサービス
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国内初のデジタルサイネージ展示会、裸眼で見られる3D映像など
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「Interop Tokyo 2009」展示会が開幕、今年はひろゆき氏の講演も
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NHKの技研公開2006、サーバー型放送やIPによる再送信技術などを展示


 東京都世田谷区のNHK放送技術研究所(NHK技研)で、放送技術に関する研究成果などを一般に公開する「技研公開2006」を5月25日から28日まで開催している。入場は無料。会場では、2007年度にサービス開始を計画しているサーバー型放送サービスや、ハイビジョンの4倍の解像度を持つスーパーハイビジョンシステムなどの展示が行なわれている。


見逃した番組もオンデマンド視聴できる「サーバー型放送」

NHK放送技術研究所
 今年の技研公開では、会場に入ってすぐの場所でサーバー型放送サービスの展示が行なわれており、サービス開始に向けて大きくアピールしようという姿勢が伺える。サーバー型放送サービスとは、コンテンツの蓄積・再生を行なう家庭向けホームサーバー製品を軸として、インターネット経由でのコンテンツ配信や、録画した放送番組とメタデータを組み合わせたサービスなどを提供しようというもの。

 会場では、アナログ放送が終了する2011年頃の放送サービスのイメージとして、過去1週間に放送された番組をダウンロードして視聴できる「見逃し番組リクエスト」や、NHKの過去の番組のライブラリーを自宅から検索して視聴できる「NHKアーカイブスオンデマンド」などを展示している。

 現時点では、こうした過去の放送を提供するサービスをNHKが行なうことや、インターネット経由での公開に対しての著作権処理、サービスの提供は有料か無料かといった点など未確定の要素が多く、あくまでも提供可能なサービスのイメージとしての展示となっている。インターネット経由でのコンテンツ配信については、フォーマットにH.264を採用し、1~8Mbps程度の映像配信をイメージしているという。

 また、サーバー型放送サービスで取得したコンテンツについては、LAN経由で家庭内の別の場所にあるテレビでの視聴や、メモリーカードに記録して携帯端末に持ち出すといった視聴の方法も検討されている。一方、デジタル放送にはコンテンツ保護の仕組みが取り入れられており、利便性と権利保護をどのように両立させるかが問題となる。

 会場では、個人認証による「シングルサインオン」方式で、1度認証したコンテンツを複数の端末で視聴できるようにする技術やサービスなどについて展示している。デジタル放送の著作権保護に用いられているCASカードを、携帯電話にもSIMカードのような形で搭載する形式や、NTTやKDDIと共同で研究している携帯電話によるコンテンツ認証を紹介。視聴者の利便性と権利保護を両立させた、実際の運用にも適したセキュリティ技術の開発を進めるとしている。


サーバー型放送のサービスイメージ 過去1週間の番組をオンデマンド視聴できる「見逃し番組リクエスト」

携帯端末に搭載する小型ICカードのイメージ 携帯端末からもコンテンツ視聴のライセンスを取得できるようにする

光ファイバによるデジタル放送の中継・再送信技術

 地上デジタル放送の電波が直接届かない地域では、放送網を補完する手段として同軸ケーブルや光ファイバなど有線による伝送の活用が検討されている。特に、光ファイバはFTTHサービスの普及もあって、光ファイバを用いたデジタル放送の再送信が有力視されている。

 会場では、IPマルチキャストにより放送データをIP化して伝送する方法と、データ通信とは別の周波数帯域を使用する光波長多重方式による伝送方式を紹介している。地上デジタル放送をそのままIP化して伝送すると、誤り訂正符号の付加などにより約20Mbpsの帯域が必要となるため、家庭で同時に複数のチャンネルを見るといった状況を想定すると、現状の最大100MbpsのFTTHサービスでは帯域が不足することも考えられる。ただし、現状のFTTHサービスにSTBを追加するだけでよいため、コスト面では有利だとしている。

 一方の光波長多重方式による伝送では、複数チャンネルの送信も可能で、データ通信に影響されない安定な伝送が可能となる。課題は光波長多重装置のコストダウンだが、既にオプティキャストがスカパー!の光ファイバによる配信サービスをこの方式で提供している。難視聴地域の解消という観点からは、地域によって利用できるインフラやコストなどさまざまな状況があり、NHK技研ではこうした状況に合わせた再送信システムの開発を進めるとしている。

 また、2025年頃の実用化を目指した従来のハイビジョンの4倍の解像度を持つ「スーパーハイビジョン」についての展示も多く行なわれており、会場では450インチのスクリーンでスーパーハイビジョンの実際の映像を見ることもできる。

 スーパーハイビジョンは7,680×4,320画素の解像度を持ち、映像をそのまま伝送するには24Gbpsという広帯域が必要となる。NHK技研では、このスーパーハイビジョン信号を1本の光ファイバで伝送する装置を開発。2005年11月に行なった、千葉県鴨川市から東京都世田谷区のNHK技研まで200km以上の生中継実験の内容を紹介している。

 実験では、スーパーハイビジョン信号を16分割し、それぞれを1.485Gbpsの伝送速度を持つ光信号に変換。これを16波の光波長多重方式で送信することで、1本の光ファイバによる伝送を可能にした。非圧縮での伝送は遅延が少ないため、実際の生中継などでの利用を考えた場合にはメリットが大きいという。

 一方、スーパーハイビジョンを実際に家庭に向けて放送するためには帯域の圧縮が不可欠としており、会場では24Gbpsのスーパーハイビジョン信号をMPEG-2をベースにした符号化技術により180~600Mbpsに圧縮する方式を展示している。また、音声についても、22.2マルチチャンネル音響の28Mbpsを約7Mbpsに圧縮している。

 放送システムとしては、衛星による21GHz帯の利用を想定しており、今後はH.264などを用いたさらなる高圧縮化や、21GHz帯では降雨減衰の影響が大きいためにこれを克服するための技術開発などを進めるとしている。


デジタル放送の再送信にはIPマルチキャスト方式も検討されている IPマルチキャスト方式は通常の機器(ルーターなど)を利用できる点がメリット

24Gbpsのスーパーハイビジョン信号を非圧縮で伝送した実験 光波長多重装置により、1本の光ファイバで16波を送信

関連情報

URL
  技研公開2006
  http://www.nhk.or.jp/strl/open2006/
  関連記事:KDDIとNHK、放送に適した携帯向けコンテンツ保護技術[ケータイ Watch]
  http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/29174.html

関連記事
蓄積された番組をデータベースのように視聴できる「サーバー型放送」(2005/05/26)


( 三柳英樹 )
2006/05/25 19:54

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