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金子勇氏
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情報通信政策フォーラム(ICPF)は9月28日、Winnyの開発者でドリームボート技術顧問の金子勇氏によるセミナーを開催した。セミナーは「進化を続けるP2P」をテーマに、P2Pファイル共有ソフトの現状や、金子氏が技術開発に参加しているコンテンツ配信サービス「Skeedcast」についての説明などが行なわれた。
金子氏は「自分はWinnyを作っただけで、別にP2Pの専門家というわけではないのですが」と前置きしながら、P2Pの概念やP2Pファイル共有ソフトの歴史について解説。P2Pファイル共有ソフトは、検索専用サーバーを利用する「第1世代型」から、検索もP2Pで行なう「第2世代型」を経て、キャッシュの仕組みを取り入れたWinnyやBitTorrentなどの「第3世代型」に発展してきたと説明。現在では、BitTorrentに代表されるようにコンテンツ配信への応用が進行中であるとした。
また、コンテンツ配信については、「クライアントサーバー方式」と「P2P方式」という配信方式の違いとは別に、YouTubeのようにコンテンツをユーザー自身が提供するサービスが注目を集めており、金子氏はこのコンテンツ提供者の違いを「事業者提供型」と「ユーザー参加型」と分類する。
この分類に従うと、従来のコンテンツ配信は「クライアントサーバー方式・事業者提供型」、Winnyは「P2P方式・ユーザー参加型」、YouTubeなどのサービスは「クライアントサーバー方式・ユーザー参加型」となる。そして、金子氏が開発を手掛けるSkeedcastは、P2P方式をコンテンツ配信に用いる「P2P方式・事業者提供型」であると位置付けた。
Skeedcastは、Winny1のファイル共有ネットワークの仕組みをコンテンツ配信に応用したサービスで、コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)をP2Pによって構築する。Winnyとは異なり、ISPなどに設置するノードのみがP2PによるCDN網を構成し、エンドユーザーはダウンロード専用のクライアントを利用する形となる。金子氏は、Skeedcastを従来のCDNと比較した場合の利点としては、安価に構築できることと、自律的にネットワークが構築されていくため、運用面での負担が少ないことなどを挙げた。
9月26日には、同様にP2P型の技術を用いた動画配信システム「BBブロードキャスト」を、ソフトバンクグループのTVバンクが発表している。金子氏はこのシステムについて「基本的にはよく似ているサービスだと感じた」という感想を述べ、Skeedcastとの違いについては「Skeedcastはコンテンツのダウンロード、BBブロードキャストはストリーミングに特化したシステムという違いがあるのではないか」とした。
また、「インフラただ乗り論」などに見られるような、ネットワークへの負荷に対する問題については、「P2Pはインターネットで利用されていない、余った帯域やリソースをかき集めることで成り立っている。おそらくP2Pを潰す一番簡単な方法は、料金を従量制にすることだ。従量制であれば、他人に勝手に帯域を使われては困るのでP2Pは誰も使わなくなるが、そうなるとユーザー側ではサーバー型のサービスも利用できなくなる」とコメントした。
関連情報
■URL
情報通信政策フォーラム(ICPF):第12回「進化を続けるP2P」
http://www.icpf.jp/archives/2006-09-05-2045.html
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( 三柳英樹 )
2006/10/02 11:56
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