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IIJ、Winnyを応用したP2P型コンテンツ配信「SkeedCast」を本格展開へ


IIJの木村和人氏
 インターネットイニシアティブ(IIJ)は29日、P2P技術に関する記者セミナーを開催した。セミナーでは、P2P技術の現状についての紹介や、Winnyを開発した金子勇氏が開発に参加するコンテンツ配信システム「SkeedCast」についての解説などが行なわれた。

 IIJネットワークサービス本部の木村和人氏は、サッカーのワールドカップなどの大きなイベントの際には、HTTPのトラフィックは試合中に減少することが確認できるが、トラフィック全体にはさほど影響がないというグラフを紹介。これは、P2Pファイル交換ソフトに代表される機械的なトラフィックが大半を占めているためであると考えられ、ウイルスによる情報漏洩などが話題になっていながらも、P2Pファイル交換ソフトの利用は減っていないという現状を紹介した。

 一方、P2Pは有望な技術であるとして、Winnyを例にとってファイル交換の仕組みを解説。Winnyのキーの拡散方式やプロキシーの仕組み、上流・下流の概念やクラスタリングによる仮想ネットワークの構築方法などにより、非常に効率の良いファイル配送を実現していると評価した。木村氏はP2Pネットワークの可能性について、将来的に莫大な数の端末がネットワークに接続され、あらゆる情報がネットワーク上にアップロードされるようになると、クライアント/サーバーモデルでは限界があり、個々の端末が直接通信するP2Pモデルが有効になるとした。


ドリームボートの坂田和敏氏
 ドリームボートの坂田和敏取締役は、コンテンツ配信システム「SkeedCast」を紹介した。ドリームボートでは、Winnyの作者である金子勇氏を顧問として招聘。Winnyの技術を応用したコンテンツ配信システムとして、SkeedCastの開発を行なっている。IIJでは2006年3月にドリームボートに出資し、SkeedCastにネットワークインフラを提供することなどで提携している。

 坂田氏はSkeedCastの特徴について、P2Pネットワークを「コンテンツ提供者」「配信ネットワーク」「視聴者」の3つの役割に分割した点にあると説明。配信ネットワークを構成する「SkeedCluster」は、Winnyと同様にP2P型のネットワークを自動的に構築する。ただし、このネットワークにファイルをアップロードできるのは「EntryNode」と呼ばれる専用のノードに限られ、視聴者側は「SkeedReceiver」と呼ばれるダウンロード専用のノードとなる。

 すべてのコンテンツには「SkeedID」と呼ばれる固有のIDが付与され、配信ネットワークの各ノードからは定期的にコントロールサーバーとの通信を行なう。これにより、期限の過ぎたコンテンツをネットワーク上から削除できるほか、ノードの稼動状況や負荷分散の把握が可能になるなど、P2Pネットワークでありながら管理も可能であるとしている。

 また、利用する側では、通常のWebページにJavaScriptを埋め込むだけで動画配信が可能となり、コンテンツとWebサイトの関連付けや、DRMによる課金への対応など、商用利用を前提とした仕組みとなっている。

 SkeedCastの今後については、上流ネットワークに合わせたクラスター化への対応や、マルチキャストによるトラフィックの分散などを検討していると説明。SkeedCastの利点については、従来のコンテンツ配信ネットワークの仕組みよりも安価に構築できることと、自律的にネットワークが構築されていくために運用面での負担が少ないことなどを挙げた。

 IIJの鈴木幸一代表取締役社長は、SkeedCastによる大規模なコンテンツ配信を10月頃に開始する予定を紹介。具体的なコンテンツの内容については触れなかったが、「極力、負荷の高いコンテンツで試していく」として、IIJでは配信ノードの効率的な設置方法などについて、さらに検討を進めていくとした。


SkeedCastではP2Pネットワークが役割に応じて3分割される 各ノードは定期的にコントロールサーバーと通信を行なう

関連情報

URL
  IIJ
  http://www.iij.ad.jp/
  ドリームボート
  http://www.dreamboat.co.jp/
  SkeedCast
  http://www.skeedtools.com/
  関連記事:米Network LIVEとドリームボート、B'zなど著名バンドのライブ映像を配信[Broadband Watch]
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/news/14034.html

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( 三柳英樹 )
2006/08/29 16:27

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