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ネット時代の著作権保護期間延長問題〜公開シンポジウム開催


 11日、「著作権保護期間の延長を考える国民会議」第1回公開シンポジウムが都内で開催された。ここでは、第一部の講演の模様をレポートする。


「ネットの普及した日本でこそ議論を尽くして現状にあった選択を」

保護期間延長に関係するトピックに絞って著作権について概説した立教大学法学部助教授の上野達弘氏
 シンポジウム前半となる第一部では著作権のあらましを解説した後、延長賛成派・反対派がそれぞれの立場から講演を行なった。まず基調講演として、著作権の期間について、立教大学法学部助教授の上野達弘氏が駆け足で解説。日本での著作権保護期間が死後5年から30年に、30年から50年に延長されてきたこと、欧州では死後70年に延長するというEUの指令から多くの国が70年となっていること、また米国も70年に延長され、日本に対してとくに米国が70年に延ばすよう要請しているなどの現況を述べた。また、日本については戦時加算という特殊な事情があることも説明。世界で唯一日本のみが愚直にもこれに従い、著作権処理が非常に複雑になっているとの指摘もあると述べた。

 こうした状況を解説した上で、上野助教授は3つの論点を呈示。1つは、「正当化根拠についてどう考えるか」で、創作のインセンティブになるということが延長すべきとする論拠の1つとなっているが、死後50年が70年に延長されたからといって、創作意欲の増進にはつながらないという指摘もあると述べた。

 2つめは、「平均余命の伸長」で、これがEU指令などでははっきり謳われていると紹介。死後50年は、本人と子・孫までの3世代の保護を意図していたが、寿命が延びたことですでにこの期間では不十分となっていることを挙げているとした。しかし、著作権保護期間は「本人生存期間+50年」であり、本人の生存期間が延びることで著作権の期間も自動的に延長しており、すでに現行法でこの点は対応できているとする反論があることを紹介した。

 3つめに、著作権の制限規定との関係について挙げた。著作権はそもそも、著作権の保護と、著作物利用の調整を図るべきものであり、期間のほかにも、内容的な制約である制限規定があると指摘。これも保護と利用の調整を図るためにある制限であり、制限規定に関してもあわせて議論されるべきであるとした。

 上野助教授は最後に、インターネット環境が普及した現在に著作権について議論している日本でこそ、ネット社会を前提として考察を踏まえた指針を出す立場にあると述べ、講演を締めくくった。


延長賛成派の三田誠広氏「期間延長で、少なくとも妻子までは保護を」

寿命が伸びたことで、早世した作家の妻子が存命中に著作権が切れる例が少なくないことから、個人の権利保護として延長すべきと述べる三田誠広氏
 三田氏は冒頭で、今日述べることは「ひとりの著作家としての個人的な意見」であると断った上で、著作家の立場から権利保護期間の延長を訴えた。

 三田氏はまず、自分が生まれたのは昭和23年6月だが、自分が生まれる3日前に太宰治が亡くなっていることに触れた。三田氏が50歳になった頃に太宰治の著作権保護期間が切れたことになるが、太宰治の死後58年経過した現在も、次女で作家の津島祐子さん他、太宰の子女は健在で、また太宰の著作権が切れるとき、太宰夫人はまだ健在だったことを例に挙げた。

 その上で、「著作権は個人の権利。個人の権利ということは、つまりさまざまな個人がいるということだ。百歳まで生きる人もいれば、30歳で亡くなる人もいる。創作者が早世して、奥さんが長生きだった場合を考えると、50年では、奥さんが生きている間に切れてしまうおそれがある」と述べた。

 三田氏は、「著作権は、放っておけばどんどん長くなる傾向があると思うが、これは権利意識が高まっているということで、人間が長生きするからという話ではないと思う」と寿命が延びたからという根拠を否定。「70年に延長されたら、本人が長生きなら孫も死んでいる時代になる。見たこともないひ孫のために伸ばしてほしいといっているわけではない」として、これは個人の問題だと強調。50年あれば、平均的には十分な期間だとしても、「個人の問題を平均値で語ることはおかしい」として、若くして亡くなった創作者の子や配偶者の保護を訴えた。

 「死後50年で、まもなく著作権が切れる人で奥さんが存命というケースが現時点で少なくない。慎重な議論が必要だという人がいるが、慎重な議論をしている間に切れてしまうと、著作権は復活しない」と訴えた。「著作権の期限切れ問題は、1人の個人から権利を剥奪してしまうということであることを理解してほしい」。

 また三田氏は、アニメやコミックを除けば日本は文化の輸入大国であり、外国の作家の保護期間が切れると、無料で使えることになるため、文化輸入国としては保護期間の延長は国益に添うという論を紹介。しかし、「これは国全体の利益のために個人が犠牲になるという図式になる。国全体の利益を考えて個人の利益を犠牲にするというのは資本主義に反する」と述べた。

 保護期間延長により著作物が利用しにくくなるという問題については、たとえば著作権情報センターのようなところで、著作者のデータベースを作り、現在の権利者をデータベース化するというような新しい登録制度やデータベースを作ることが必要だと述べた。


延長反対派の福井建策弁護士「文化の再利用は阻害すべきではない」

死後70年に延長されても創作意欲が高まるという創作者は一部、それに対して再利用は確実に難しくなり、文化を阻害するおそれがあると述べた福井弁護士
 第一部の最後は、国民会議の発起人であり、幹事も務める福井建策弁護士が反対派として登壇。ベルヌ条約加盟国では日本と同じ死後50年となっている国が3分の2を占め、多数派であること、一方、欧米のように70年に延長した国はベルヌ条約加盟国の中でも3分の1にも達しない、数の上では少数派であると述べた。

 米国が要請しているからではなく、自国の立場や現状に鑑みて、死後50年がいいのか70年に延長するのが良いのか。日本にとってどちらがいいのか、日本のモデルを考えることが必要で、死後50年がいいと思えば、はっきりそれを主張すべきだとした。

 「期間の調和を図らないとコンテンツの流通が害される」という論については、細部においてはEUと米国の間でもすでに不調和があると指摘。また、「日本は死後70年の欧米に比べて、50年しか守られないから不利」だとする論については、「米国は相互主義は取っていないから、これは議論自体が無意味だ」と述べた。

 日本はゲームやアニメについては輸出大国となるが、「ゲームやアニメなどの著作権が切れるのはまだ先。保護期間は既得権益の関係で、いったん延長したら、実際問題としてもう元には戻せない。拙速な対応は慎むべきで、ゲームやアニメの保護期間が切れたら問題が大きいとなったら、それはその時点で議論しても遅くはない。現時点の状況で判断すべき」だとした。

 また、「死後70年に延長したら戦時加算をなくせる」という説については、「戦時加算は条約であって、一方的に破棄や変更はできない。死後70年に延ばしてから、戦後加算10年分の放棄をお願いしようという案もあるが、交渉としては非常に下手なやり方だ」と延べ、「放っておけば、戦時加算の対象となるコンテンツの保護期間が切れ、自然に問題がなくなる。10年で済むものを20年延ばして解決しようというのは、むしろ問題を温存することになる」と反論した。

 福井弁護士は最後に、「本人が亡くなっている場合は、相続人の同意がなければコンテンツが利用できない。直系の孫だけとは限らない。権利者のうち1人でも反対したら、そのコンテンツの利用はできない。営利コンテンツ制作の現場ですら大きな問題だが、非営利の創作活動では十数人の相続人の了承をとるのは事実上不可能だ」として、死後70年に延びることは相続関係を複雑にし、コンテンツ再利用を阻むことになるとの見解を述べた。

 また、一括の利用許諾のシステムを作ればいいではないかという案については「賛成だ。官民を上げて協力すべきだ。ただし、海外のコンテンツも含めた許諾のシステムを構築するのは大変な作業で、いつか作るからいま保護期間を延長しようという話では賛同できない」として、構築できる保障もないシステムの案だけで、保護期間の延長をすべきでないという立場を明らかにした。


 「保護期間延長で創作者の意欲が高まるという意見がある。しかし、死後50年から70年に延びたからといって創作意欲が高まったという人は非常に少ないと思う。むしろ、創作を現在行なっているクリエイターの保護に力を注ぐべきだ。日本では、8兆5,000億円くらい道路行政に使っている。これを地域振興などに使えないかという議論がさかんになされているが、文化庁の文化振興に対する予算はこの0.5%以下だ」として、死後よりも創作者本人の活動を支援すべきだとした。

 福井弁護士は講演の最後で「死後70年に延長することで、コンテンツの流通が阻害される。そこにあるのに使えない作品を増やすということはぜがひでも避けなければいけない」と強調。「クリエイターが心血を注いでいるのは、すばらしい作品を作ること。そうした作品はまた、文化の新しい創造の種となる。古い作品は新しい作品の源泉となる。そうして文化は連綿と続いてきた。シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』や『リア王』には種本が存在したと言われている。その『ロミオとジュリエット』から映画『ウエストサイドストーリー』やバレエ作品や演劇が生まれた。保護期間が切れた傑作を下敷きにして優れた作品が生み出された例は数多い」と述べ、すぐれた作品が二次利用できない、あるいはしにくくなることの文化的弊害の大きさを強調して講演を終えた。


関連情報

URL
  著作権保護期間の延長を考える国民会議
  http://thinkcopyright.org/

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( 工藤ひろえ )
2006/12/11 21:06

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