「Interop Tokyo 2007」で13日、基調講演「IP Network 新時代」が行なわれた。講演者は、慶應義塾大学デジタルメディアコンテンツ統合研究機構教授の古川享氏。最新のIPネットワーク事情とそれに接続されるデバイス、次世代のサービス事例などを紹介した。
● IPネットワーク家電の転機はフレッツ・ロボ
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慶應義塾大学古川享教授
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古川氏は冒頭、昨今のデジタル技術動向について触れた。音楽、映像、放送、携帯端末の最新機器を紹介し、「あらゆる機器にOSが搭載され、アプリケーションが動き、IPネットワークに接続されていく」と話した。
古川氏は、デジタル機器がIPに接続されるようになった転機として、NTT西日本が2001年にフレッツ・ADSLのキャンペーン賞品として提供した「フレッツ・ロボ」を挙げた。フレッツ・ロボは、本体に搭載したカメラの画像をインターネット経由でPCや携帯電話から閲覧したり、赤外線リモコンを操作する機能を持つ。
「フレッツ・ロボは、IPネットワークにつながるサーバー機能を持っている。32KBのOSや15KBのプロトコルスタックを搭載し、スループットの低い環境でも動作する。これが実現したことで、フレッツ・ロボの技術がライセンスされ、インターネットに繋がるテレビなどが爆発的に増えた。それまでのボトルネックを改善する新しいコンポーネントがフレッツ・ロボから生まれた」(古川氏)。
フレッツ・ロボから始まった技術の現在形として、古川氏は高速電力線通信(PLC)を紹介。「複雑な機能も一切入れずに、コンセントに差し込むだけで理論値100Mbpsでインターネットに接続できる。家庭に既に敷設されている電灯線を活用して高速ネットワークを構築して、例えば、壁掛けテレビを簡単にネットワークに接続できる」とした。PLCを利用したパイオニアのサウンドシステムも例に挙げた。
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フレッツ ロボ
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PLCの接続イメージ
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● 日本の課題はネットのコンテンツとビジネス
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会場の様子
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IP技術の最新動向としては、エリック・クラプトンやU2のコンサート会場で、ミキシングコンソールに接続されるメインアンプ群を統括IP制御した例や、YAMAHAのプロ用ネットワーク製品を紹介した。さらに、映画制作におけるネットワーク化の例や、放送現場におけるIP伝送の例を説明した。
「放送でIP伝送は昔だと有り得なかった。数コマ落ちれば放送事故になってしまうからだ。現在は、NHKの地方局へのテレビ回線は光ファイバの専用線を使っているが、バックアップはIPネットワークを利用している。新潟で地震が起きたときも、IPネットワークに切り替えたことで通常と同じように放送ができた」(古川氏)。
IPTVの最新動向としては、So-netとSentivisionが開発した「Edy」決済対応のVODシステムとSTBや、「ギャオプラス」「Apple TV」を紹介。さらに、六本木ヒルズのIPTVも触れた。六本木ヒルズ内には300台以上の映像機器が設置されているが、それらは100Mbpsの光LANを介してセンターで遠隔制御され、サーバーから配信した映像を蓄積・表示しているという。
このほか、PCやデジタル家電の相互接続規格「Digital Living Network Alliance(DLNA)」や、家庭内のIPネットワークでDRMコンテンツを伝送するための技術規格「DTCP/IP」を説明し、デモンストレーションも行なった。古川氏は、「これからのデジタルメディアを考えるときに、どのOSを使っているとか、どのネットワークに接続し、どんな機能が使えるのかというレベルではなく、どういったサービスやアプリケーションが実装できるのかといった、開かれた要素が重要」と話す。
最後に古川氏は、英BBCが、「自分たちのコンテンツを、あらゆるデバイス、あらゆるプラットフォームを通じて提供していく」と宣言していることに着目。「コンテンツが放送で届くのか、IPネットワークで届くのかといったことを気にする時代は終わった」とした。さらに、「日本の場合は、高速でコンテンツを伝送する技術は最先端だが、その上でどういったコンテンツを提供し、ビジネスにしていくのかという部分が弱い」と指摘した。
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デジタルメディア全体のイメージ
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インターネット時代の通信と放送
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関連情報
■URL
Interop Tokyo 2007
http://www.interop.jp/
関連記事:NTT西日本とタカラ、フレッツ回線を使った家電リモコンロボットを開発
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2001/0903/robo.htm
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・ 「Interop Tokyo 2007」展示会が開幕(2007/06/13)
( 野津 誠 )
2007/06/13 18:50
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