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仮想世界の現状と可能性は? Second Lifeなどテーマにカンファレンス


 「Second Life」に代表されるインターネット上の仮想世界の現状や“Web 3.0”への可能性について話し合うセミナーイベント「Virtual World-Conference 2007」が26日、東京都内で開催された。


仮想空間にはWebに匹敵する可能性も

Virtual World-Conferenceの代表で神奈川工科大学客員教授の深野暁雄氏

デジタルハリウッド大学院教授・セカンドライフ研究室室長の三淵啓自氏(左)と、アスキー取締役で週刊アスキー総編集長の福岡俊弘氏(右)
 最初のセッションでは、「今、何が起きているのか?『仮想世界の現状』」と題し、Virtual World-Conferenceの代表で神奈川工科大学客員教授の深野暁雄氏が司会を努め、専門家らがコメントした。

 まず、デジタルハリウッド大学院教授・セカンドライフ研究室室長の三淵啓自氏は、Second Lifeについてコミュニケーションという切り口からコメント。Webなど従来のメディアが文字や記号、概念によってコミュニケーションがとられていたのに対して、「Second Lifeでは、『これがきれいだ』といったような感性を共有できる。Second Lifeというメディアを通して何が問われるかというと、直感的に見てどう思うか、どう感じるかという感性だ」と説明する。

 さらに、こういったコミュニケーションは、主に言葉によるコミュニケーションで占められている現代社会に足りないものだという。これに対して仮想空間では、そのユーザーがいる状況まで含めて共有することにより、コミュニケーションにおける理解度は上がると指摘。「Second Lifeや仮想空間は、人と人とがつきあっていく上で、もしくは今後コミュニケーションをとっていろいろな知識を積み重ねていく上で大事なインフラになるのではないか」とコメントした。

 日本におけるSecond Lifeの現況が「インターネットが初めて日本に“上陸”した時によく似ている」と述べるのは、アスキー取締役で週刊アスキー総編集長の福岡俊弘氏。同社の幹部が当時、インターネットの可能性を信じていなかったというエピソードを紹介しながら、「あの時、どうしてインターネットの可能性を信じられなかったのだろう?」と反省の意味を込めてコメント。インターネットがその後大きく発展したように、Second Lifeなどの仮想空間が今後、大きな可能性を秘めていることを示唆した。

 とはいえ福岡氏は、「ぶっちゃけた話、Second Lifeってそんなに面白いとか、すごい楽しいものではない」ともコメント。それでもやってしまう点について、「十数年前、Webの世界が始まった時、『新しいホームページ出来たよ』という牧歌的な話題で盛り上がった。Second Lifeは、入るたびに新しい世界が出来て、少しずつ世界が広がっている。そういう感覚が面白くて、みんなやっているのではないか」との考えを示した。また、無数の3Dオブジェクトが日々作られ続けていることに関して、「Webの世界やメタバース全般に言えることだが、蓄積されていく世界に久々に可能性を感じている」ともコメントした。


Second Lifeに至るコンテキスト、日米で違い

スプリューム代表取締役の梶塚千春氏(左)と、ゲームジャーナリストで立命館大学映像学部講師の新清士氏(右)
 スプリューム代表取締役の梶塚千春氏は、同社が開始した3Dバーチャルコミュニティ「splume」について、「大雑把な言い方をすると、ネットサーフィンをウォークスルーできるようにしようという考え方。ある種のコミュニケーション構造を作ろうという考えで始めた事業で、『オープンWeb』という考え方でやっている」と説明。ユーザーや企業が作った空間を公開することで、Webのハイパーリンクと同様に「空間リンク」でつながった仮想空間が広がるという特徴を紹介した。

 splumeでは実際、クリエイターがDVD用に作った3D空間をコンバートして自社サイトでアップしている事例や、主婦が自分で作成した空間を無料ホームページにアップしている事例もあるという。「今のWebと切り離されたものではなく、常につながって開かれている。たとえて言えば、自分の会社や個人の情報の世界が閉じて囲い込まれているのではなく、開かれることによってそれぞれが価値を増す。それが、空間リンクやオープンWebという考え方に表われている」とした。

 日本におけるSecond Lifeをめぐる報道が「過熱気味」だとするゲームジャーナリストで立命館大学映像学部講師の新清士氏は、そうなってしまった背景として、日米におけるSecond Lifeに至るコンテキストの違いを挙げた。

 新氏によると、米国ではSecond Lifeに至る大きな流れとして、1)テキストベースのオンラインゲーム「MUD」、2)ゲームソフトのエンジンを利用して、ユーザーらが別のシナリオなどを制作する「MOD」──という2つがあるという。日本ではオンラインゲーム上のテキストアドベンチャーが根付かなかったのに対して、韓国ではこれが移植された後、3D化されでMMORPG生み出したと説明する。

 「米国のオンラインゲームの歴史を紐解いていくと、コンテキストは1990年代からずっとあって、Second Lifeは突然発生したものではない」。これに対して、日本においては、ゲームではなくWebの流れからSecond Lifeが捉えられている点が興味深いとし、「日本には、そのコンテキストが抜け落ちているためにSecond Lifeがブレイクしているのではないか」とした。

 このほか、Virtual World-Conference 2007では、企業のマーケティング担当者によるバーチャルマーケティングの可能性についてのセッションゃ、仮想世界の今後とWeb 3.0への可能性を話し合うセッションが設けられた。


関連情報

URL
  Virtual World-Conference 2007
  http://www.virtualworld-conference.net/

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( 永沢 茂 )
2007/07/26 21:05

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