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Web 2.0の本質は「失敗しても大丈夫」という気持ち?

Twitter創業者とO'Reilly氏が対談

 「Web 2.0 EXPO Tokyo 2007」で16日に行なわれた基調講演で、Twitter社の共同創業者であるEvan Williams氏がTim O'Reilly氏と対談した。O'Reilly Mediaの創業者兼CEOで「Web 2.0」の提唱者として知られるO'Reilly氏が、新興のコミュニケーションサービスである「Twitter」の魅力やWeb 2.0との関わりを聞いた。


Twitter創業までの大きな失敗、そして成功

Tim O'Reilly氏(左)と、Twitter共同創業者のEvan Williams氏
 Williams氏は、自身が開発に携わったブログサービス「Blogger」の運営会社であるPyra Labsを米Googleに売却したことで知られる。経済的な“成功者”としてのイメージが強いが、多くの失敗も経験しているという。

 1994年、21歳の時に故郷の米ネブラスカ州でインターネット企業を設立したものの、地方部である同州ではインターネットが普及しておらず挫折。その後、O'Reilly氏の下で9カ月働くなど複数の企業を渡り歩いた。起業精神が強く「他人のために働くのがイヤだった」とWilliams氏は当時を振り返る。

 紆余曲折を経てBlogger開発に着手。出資を取り付けPyra Labsを設立した。1999年の正式サービス発表後にユーザーからは好評を得たが、今度は資金が枯渇。Bloggerだけは残したものの、2001年末には7名いた従業員を全員解雇する苦難も味わったという。

 最終的にBloggerは発展し、2003年にはGoogleへ売却できるまでに至った。売却後はGoogleに移籍し、引き続き開発に従事した。当時のGoogleは従業員800名程度の規模だったというが、Williams氏にとっては大きすぎる会社だったようで「まるで湖の中の魚だった」とコメント。その息苦しさを伺わせた。

 Williams氏はGoogleに数年間勤務後、独立し、Podcasting関連の企業を設立した。Blogger創設期とは異なり、潤沢な資金を得てのスタート。しかしWilliams氏は「経営のことばかりを考え、肝心の製品のことを忘れてしまっていた」と反省する。Web 2.0を標榜する企業として、製品に注力できていなかったことは大きな間違いだったという。その後、ついにTwitterへとたどり着くことになる。


「日本からのユーザーが20%」~Twitterの魅力とは

リラックスした表情で対談するWilliams氏
 Twitterは、ユーザーの現在の状況を短い文章で時系列に書き連ね、Webサイト上で公開するサービスであると一般的には認識されている。開発者であるWilliams氏は、O'Reilly氏から「Twitterとはどんなサービスなのか」という質問に、「Micro brogging(マイクロブロギング)」と回答。なかでもリアルタイム性、「いま何が起きているか」を把握できることが重要と説明する。

 O'Reilly氏によると「Twitterは生活の流れを書き連ねることから、Life streamと呼ばれることもある」という。Williams氏も「確かにそう。“朝食にトーストを食べるようなもの”という人もいますね」と補足する。

 “当たり前すぎること”も、Twitterに表示されることで意味が出てくるという。O'Reilly氏は「昨晩、六本木のレストランで食事したことをTwitterに記した。多くの人にとって関係のないことだが、今度日本へ訪れる観光客にとっては、少なくともレストランの存在を知らせる意味あるものになっている」との視点を示す。

 一方、Williams氏は「他人に起こった小さなイベントを認知できることも魅力」と語る。友人や知人と直接語り合う際に、当人同士に起こった“大イベント”はおのずと話題になる。しかし話題にのぼらないレベルの小さなイベントも、Twitterは顕在化させてくれるという。

 ただ多数のユーザーがTwitterに集まったことで、開発者が想像していなかった用途も生まれている。他のユーザーのTwitterにコメントを付けられる機能はその1つで、ユーザーからの要望によって追加されたという。Williams氏は「開発者の考え以上に、(単なる独白を超え)ユーザー間で会話がされているようだ」と分析している。

 Twitterの主要機能を外部から利用できるように公開したAPIも、ユーザーから大きな支持を受けた。講演会場では世界地図上にTwitterのデータを重ねるサービスが映し出されたが、これもユーザーによって開発された。また、書き込みに応じて自身のスケジュールをリマインドさせたり、天気予報を伝えるボット的なサービスも登場しているという。

 O'Reilly氏は「開発者が機能的にシンプルなAPIを公開することは、Twitterにとってなんらダメージを負うことではない。それをユーザーが利用してくれることで、Twitter自体の魅力が高まる。これは理想的だ」と、APIの効果を認める。

 なお、Twitterは現在、日本語でのサービスが行なわれていない。にもかかわらずO'Reilly氏とWilliams氏の説明によると「日本からの利用者が全ユーザーの20%を占める」。より多数の利用者獲得のためにも、今後は日本向けの環境作りが大きな課題になるとしている。


Twitterの今後とWeb 2.0

一般聴講者は撮影禁止だったものの、O'Reilly氏が「Web 2.0的でない」と急遽撮影をOKする一幕も。会場からは拍手が起こった
 一定の成功を収めたように見えるTwitterだが、Williams氏は「明確なビジネスモデルは現在ない」とも語っている。一部の販売店がコマーシャル的にTwitterを利用しているケースはあるものの、まだ限定的という。O'Reilly氏も「それは贅沢な話だ。どこか買収しようという企業も現われるのでは」と語る。

 Williams氏は「多くの人が1日に何回もTwitterに集まってくれることは、それだけで大きな価値があるはず」と影響力を認めるも、「資本集めの話はともかく、今はTwitterの価値を高める時期だ」と続けている。

 基調講演終盤では、Twitterとして最初に公開されたバージョンの開発期間が2週間というエピソードも披露された。開発には比較的軽量な環境として知られるRuby on Railsを採用。以降も継続的にサービス強化を図っている。Williams氏は「1日で数度もリリースするといった、試行錯誤を繰り返す開発にはRuby on Railsのような軽量な環境が向いていると思う」との私見も示している。

 O'Reilly氏は2週間という短さに触れ、「大企業が旧来の考えで作ったら数年間かかるかもしれない」と冗談交じりにコメント。さらに「シンプルなサービスを公開し、ユーザーの反応を見ながら徐々に改良していくスタイルは、企業による開発が抜本的に変化していることの証」と、きわめてWeb 2.0的な事例だと評した。

 さらにO'Reilly氏は「Web 2.0は、『失敗しても大丈夫』という気持ちなのでは」と語る。「旧来型といえるWeb 1.0時代の開発は、アイディアを出し、資金を集めて、失敗したらすべてが終わり。Web 2.0は少なくともそうではない」(O'Reilly氏)。失敗したとしても成功に向かって挑戦を繰り返せる環境、試行錯誤そのものもまた、Web 2.0の一部だとまとめた。


関連情報

URL
  Web 2.0 EXPO Tokyo 2007
  http://www.cmptech.jp/web2expo/

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「日本はWeb 2.0を飛び越してモバイルに」、O'Reilly氏と伊藤穰一氏対談(2007/11/15)


( 森田秀一 )
2007/11/16 16:42

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