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ネット配信で「広く薄くあまねく」徴収する“閲覧権”創設を

角川会長が国益から見た「制度イノベーション」の必要性を力説

 早稲田大学が6日に開催した「第3回知的財産セミナー」で、角川グループホールディングス会長の角川歴彦氏が「“著作権”実効性確立への熱い思い」と題する講演を行なった。角川氏は、デジタルコンテンツに対して著作権法の実効性が保たれなくなり、著作物をタダで利用するユーザーと料金を支払うユーザーの間に不公平感が出ていると指摘。著作者や著作権者、コンテンツ事業者に適切な対価を与えるためにも、デジタル著作権管理(DRM)技術を整備した上で、著作物を閲覧したユーザーから料金を徴収する“閲覧権”を新たに創設すべきと力説した。


著作権に縛られない著作権法、国益の視点から「制度イノベーション」が必要

角川グループホールディングス会長の角川歴彦氏
 角川氏は、著作者や著作権者、コンテンツ事業者だけでなく、著作物を享受する国民の間に大きな閉塞感があると語る。その原因は、2つのリスクと2つの誤認であると指摘。リスクとしてはまず、サーバーが米国に置かれている点を含め、世界を席巻するインターネット関連サービスが米国に集中していることを挙げる。さらに、日本では「革命」という言葉にふさわしい新鮮なIT企業が存在しないこともリスクであるとした。

 誤認の1点目については、GoogleやAmazonなどの企業が、「技術イノベーションの成果」と勘違いしていると指摘。角川氏によれば、これらの企業は、既存技術の組み合わせによる成果で、「技術が追いつけないから、日本にはGoogle的な企業が誕生しないというのは間違っている」。また、日本では新たな技術を生み出そうとする企業に対して、著作権法が二の足を踏ませているとして、国益の視点から見た「制度イノベーション」が必要であると強調した。

 「YouTubeでは、著作権をクリアしていない映画やアニメが公開されているが、米国ではデジタルミレニアム著作権法があるため、事業者は権利者に文句を言われてから該当動画を取り下げれば免責される。これでは事業者と権利者のいたちごっこだが、YouTubeが生まれたのはこの『制度イノベーション』の成果ともいえる。その一方、日本ではすぐに訴えられて裁判になるため、企業は“触らない方が良い”と判断する。日本には『著作権に縛られない著作権法』が求められている。」

 誤認の2点目としては、「インターネットのサイバー空間は海賊版が氾濫する不法コピーの巣窟」と誤解されていることを挙げる。角川氏は、近い将来に技術革新が著作権の完全管理を可能にするとして、例えばGoogleはWebサイト上の海賊版コンテンツを削除することに自信を持っていると述べた。


日本にある2つのリスク 日本にある2つの誤解

完全なDRMができるなら、ダウンロードやストリーミング配信時の“閲覧権”創設を

リスクと誤解を解消するために“閲覧権”の創出を力説

“閲覧権“創出で著作者、著作権者、事業者、ユーザーにWin-Winの関係をもたらせるという
 角川氏は、2つのリスクを解消し、2つの誤認を取り除くための方策として、国益の視点から著作権法を見直し、新たに“閲覧権”という権利を創設すべきと主張する。例えば、映画の収益では、劇場公開による「一次利用」、DVDパッケージの販売やレンタルによる「二次利用」といったモデルがある。角川氏は、インターネットによる配信を「三次利用」と位置づけ、映像を閲覧したユーザーから、視聴料金とは別に料金を徴収する権利として、“閲覧権”の必要性を訴えた。

 「インターネット上で完全な著作権管理が可能になれば、ダウンロードやストリーミング配信時に適用する“閲覧権”を作るべき。これによって、映画館に足を運んだり、DVDパッケージを購入するには至らないライトユーザーにも、コンテンツを利用してもらえる。その際には、国民の合意の上で、広く、薄く、あまねく、代価を徴収する。国民が料金を支払い、事業者は収益からクリエイターに還元する。そういったWin-Winの関係を実現するために微力を尽くしていきたい。」

 このアイディアについては、会場から「DRMで著作権を完全管理することで言論統制につながる危険性があるが、国民の思想や表現の自由にはどう配慮するのか」という声が挙がった。これに対して角川氏は、「例えば、JASRACが音楽著作権を管理しているが、それによって音楽の自由性が損なわれてはいない」と答えた。

 さらに角川氏は、現在の著作権法の問題点として、著作物の利用に対して一部のユーザーから代価を徴収する反面、払わずに利用するユーザーは見過ごしている事実があることを指摘。「最もいけないことは、著作者がコンテンツの創作意欲をなくすこと」として、国民の合意の上で料金を徴収し、クリエイターに次の作品を創作するためのインセンティブを与えるべきだとした。


関連情報

URL
  早大知的財産本部 2007年度 第3回知財セミナー開催案内
  http://www.waseda.jp/rps/oip/seminar2007_03announce.html

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( 増田 覚 )
2007/12/06 23:14

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