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Winny開発者の金子勇氏「開発続けていれば流出ファイルは止められた」


 日本弁護士連合会コンピュータ委員会は22日、「P2Pネットワークと法的問題〜Winnyをめぐって〜」と題したシンポジウムを開催した。シンポジウムには、Winnyを開発した金子勇氏や、産業技術総合研究所の高木浩光氏などが登壇し、P2Pネットワークの現状や将来性、法的問題などについての報告が行なわれた。


「Winny2のアイディアはSkeedcastなどに応用していきたい」金子勇氏

金子勇氏
 基調報告では、北海道大学の町村泰貴教授が、2007年のネット関連の判例を紹介。刑事事件では、インターネットの掲示板などを通じて仲間を募った犯罪や、出会い系サイトに絡む犯罪などが注目を集めたと指摘。また、民事事件では知的財産侵害関連において、携帯電話向けの音楽データストレージサービス「MYUTA」が送信可能化権の侵害にあたると判断された事例や、マンション向けの録画サーバー「選録見録」の販売差し止めを認めた控訴審判決など、いわゆる間接侵害についての注目すべき判断が出たと振り返った。

 個別事案報告では、Winnyを開発した金子勇氏が、開発者の立場からWinnyの特徴などを説明。Winny1はファイル共有ソフトとして開発したが、Winny2は内容が変わる情報の共有を目指して開発を始めたと説明。Winny2は電子掲示板への応用を考えており、内容が随時書き換わっていくファイルをどのように共有するか、書き込みの削除など管理機構をどのように実現するかといったテーマに取り組もうとしていたが、事件によって開発途上の状態となっているとした。

 こうしたWinny2で取り組もうとした機能の一部は、金子氏も参加しているコンテンツ配信システム「SkeedCast」に取り込まれていると説明。SkeedCastは技術的にはWinny1の発展形で、コンテンツ配信ネットワークの各サーバー間でP2P方式によるデータのやりとりを行なうとともに、管理機構などWinny2の構想が一部盛り込まれた形となっている。

 金子氏は、「Winny2を作った時点でこのほかにも多くのアイディアがあったが、開発を止めることになってしまったことは残念に思っている」としたものの、技術面で応用できるものについてはSkeedCastに適用していくなど、可能であれば何らかの形で実現していきたいと語った。


Winnyの仕組み自体に情報漏洩を引き起こす要因〜高木浩光氏

産業技術総合研究所の高木浩光氏
 産業技術総合研究所の高木浩光氏は、まず「P2P」という用語の混乱を問題点として挙げた。高木氏は、P2Pという単語は主に、1)いわゆる「ファイル共有ソフト」を指す用語として使われる場合、2)自律分散型の接続方式を指す技術用語「peer-to-peer」の略語、3)peer-to-peer接続の中で、暗に端点の管理が個人に委ねられているもの――といった3種類の使われ方をされていると指摘。「P2Pは将来有望な技術なので、ファイル交換ソフトは悪くない」といった主張は、こうした用語の混乱(「P2P」と「ファイル共有ソフト」の同一視)による弊害の側面があり、P2Pを巡る議論においてはそれぞれを区別することが重要だとした。

 また、ファイル交換ソフトを通じた情報漏洩は、海外においてはあまり深刻な様子ではないとして、日本と海外ではなぜこうした違いが生じているのかという点についての考察を紹介。海外では、暴露ウイルスをばらまいて楽しむ者が日本のように多くないという可能性もあるが、ソフトウェア自体の問題もあるのではないかとして、英語圏で代表的なファイル共有ソフト「LimeWire」とWinnyの構造上の違いを挙げた。

 特に、Winnyではファイルの流通に暗号化された“キャッシュ”を用いているため、「自分が流通させているファイルをユーザーが認識しない」「暗号化されているキャッシュにはウイルス対策ソフトが有効に働かない」といった問題があり、これが流出ファイルやウイルスの流通が止まらない要因となっているのではないかと指摘。また、「自動ダウンロード」機能により、流出ファイルを専門に収集している者が多数存在しているといったような状況もあり、こうした仕組みを持つWinnyやShareなどのソフトが広く使われていることも、日本で情報漏洩が深刻化している一因なのではないかとした。


ファイル共有ソフトのユーザーは減少傾向、規制強化は必ずしも得策ではない

 シンポジウムの最後に行なわれたパネルディスカッションでは、ファイル共有ソフトの現状認識やP2Pの今後の方向性などについて議論が行なわれた。

 ファイル共有ソフトの現状については、日本レコード協会などが2007年末に発表したアンケート調査では、ファイル共有ソフトのユーザーは増加しているという分析がされていたのに対して、弁護士の壇俊光氏は「その調査は実態を反映しているとは思えない。ユーザーはYouTubeやニコニコ動画などに移っており、ファイル共有ソフトの利用者はむしろ減っているという認識」とコメントした。

 高木氏もこの意見に同意し、高木氏が個人的に行なっているWinnyのノード数を調べたグラフを紹介。観測しているWinnyのノード数は徐々に減っており、特にニコニコ動画がサービスを開始した頃からはノード数の減少幅も大きくなっているとして、動画共有サイトへのユーザーの移行が進んでいる可能性が高いとした。

 ファイル共有ソフトを通じた情報漏洩について、金子氏は「漏洩問題は自分が開発を止めた後に起こっており、残念で仕方ない」とコメント。流出したファイルの流通を止める方法などについてもアイディアはあるとして、「開発を続けていればこんな状況にはなっていないと考えている」と述べた。

 北陸先端科学技術大学院大学の篠田陽一教授は、ファイル共有ソフトの使用に対して規制を強めるという方向性については、「それでも使う人は使うだろうし、むしろ規制を強めることによって、さらにステルス性の高いソフトが登場する可能性がある」と指摘。規制を強めれば強めるほど、それをかいくぐるような巧妙なものが出てくるだろうとして、規制強化が良い結果をもたらすとは限らないと語った。


金子氏(左)と高木氏 北陸先端科学技術大学院大学教授の篠田陽一氏(左)と弁護士の壇俊光氏

関連情報

URL
  日弁連コンピュータ委員会シンポジウム2008 開催概要
  http://www.nichibenren.or.jp/ja/event/080122.html

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「Winnyは既に必要な技術ではなく、危険性を認識すべき」高木氏講演(2007/02/19)
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( 三柳英樹 )
2008/01/24 11:36

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