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クリエイティブコモンズは“All or Nothing”の中間


クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(CCJP)事務局スタッフの松本昂氏
 「東京国際アニメフェア2008」で27日、クリエイティブ・コモンズ・ジャパン(CCJP)が「ネットワークにおける恊働的創造とアニメーションの関係」と題した講演を行なった。クリエイティブコモンズ(CC)のこれまでの取り組みを紹介したほか、音声合成ソフト「初音ミク」を販売するクリプトン・フューチャー・メディアの担当者をゲストに迎え、アニメーション分野で著作権を保持しながら作品を広める方法などを語った。

 CCJPは、コンテンツに対して著作権を保持しつつも一定の利用許諾を認めることで、コンテンツの流通や創造を図る「クリエイティブコモンズライセンス」を提唱する団体。CCJP事務局スタッフの松本昂氏によれば、創作したコンテンツの利用を制限する著作権と、コンテンツの権利を放棄するパブリックドメインの中間に位置するものがCCだという。

 「著作権システムでは、誰かが何かを作ると、“ALL Rights Reserved”としてその作品の利用が制限される。一方、クリエイターが権利を放棄するとパブリックドメインになり、作品のお金を回収できなくなる。つまり、現状は“All or Nothing”の『硬直的』な状況。これに対してCCは、『自分の創造物をもっと自由に使ってほしい』『でも、権利を放棄したくはない』が可能。“All or Nothing”の中間で、いわば“SOME Rights Reserved”というニーズへの提案である。」

 例えば、あるアーティストの楽曲サンプルで作ったミックステープを販売したいという場合、現状では作者と管理団体(JASRAC)への説明、交渉、契約準備、確認などさまざまなプロセスを経る必要がある。しかし、楽曲サンプルにCCライセンスが適用されている場合、ライセンスの条件を守れば、これらのプロセスを省略することが可能となるという。

 また、アーティストが自分の楽曲を多くの人に広めたいという場合にも、クリエイティブコモンズは有効だという。アーティストは、自分の楽曲にCCで一定の許諾を認めれば、利用者はアーティストが許諾した範囲内で楽曲を二次利用できるからだ。「CCライセンスは、作者と使い手が契約を結ばなくても、事前に『何をしていいか』について了解を作っておくシステム」。


クリエイティブコモンズの概要 CCは、完全な著作権保持と完全な著作権放棄の中間層を埋める役割を果たすという

海外ではクリエイティブコモンズ適用コンテンツで裁判も

 CCライセンスでは、「表示(作り手の名前を適切に表示すること)」「非営利(作り手の作品でお金もうけをしないこと)」「改変禁止(作り手の作品を改造しないこと)」「継承(作り手と同じライセンスで発表すること)」などのアイコンを組み合わせることで、作者が利用許諾範囲を決めた上でコンテンツをインターネット上に発信できる。

 ユーザーは、CCライセンスのアイコンをクリックすると「コモンズ証」が表示されるため、コンテンツの利用条件が一目でわかるとしている。とはいえ海外では、CCライセンスを適用したコンテンツの二次利用をめぐる裁判も起こっているという。

 例えばオランダでは、ある芸能人が写真共有サービス「Flickr」で公開した家族の写真を商業タブロイド誌に掲載されたことから裁判を起こした。これに対して裁判所は、CCライセンスの使用条件(この事例では「表示」「非営利」「継承」)の有効性があるとして芸能人の訴えを認めたが、損害賠償は発生しなかったという。

 これは、「写真が無料で公開されているため、商業的な価値はすでに失われている」と判断されたためだ。「権利執行における最大の問題点は訴訟費用」(松本氏)。

 なお、松本氏によれば、2006年6月時点で発行されたCCライセンスは「数千万程度」だという。日本では動画共有サイトでCCライセンスの導入が進み、NTTの「ClipLife」、ヤフーの「Yahoo!ビデオキャスト」、ニフティの「@niftyビデオ共有」、ソニーの「eyeVio」で採用された実績がある。また、ウノウが提供する写真共有サイト「フォト蔵」でも採用されている。

 会場からは、インディーズアニメーションのクリエイターを支援する非営利団体の運営者から「CCを選ぶインセンティブが見えてこない」という厳しい意見も寄せられた。これに対して松本氏は、現在実験的に取り組んでいるという、営利目的で利用する場合の連絡先をライセンスに組み込む「クリエイティブコモンズプラス」や、アジア地域に根付いたCCを検討する「アジア・コモンズ」といった事例を紹介。CCの選択肢を増やすことでアニメーション配信のビジネスにつなげていきたいと話した。

【お詫びと訂正 2008/03/31 18:24】
 記事初出時、クリエイティブコモンズライセンスのアイコンの意味について、「改変禁止(作り手と同じライセンスで発表すること)」「継承(作り手の作品を改造しないこと)」としていましたが、正しくは「改変禁止(作り手の作品を改造しないこと)」「継承(作り手と同じライセンスで発表すること)」です。お詫びして訂正いたします。


CCライセンスで使われるアイコンの概要 CCライセンスのアイコンをクリックすると表示される「コモンズ証」

「初音ミク」ムーブメントの出口はわからない、ビジネスモデルは試行錯誤

クリプトン・フューチャー・メディアの西尾公孝氏

「ピアプロ」の概要
 講演ではこのほか、音声合成ソフト「初音ミク」販売元であるクリプトン・フューチャー・メディアの西尾公孝氏がゲストとして参加。ユーザーの二次創作を支援するためのサイト「ピアプロ」の取り組みを紹介した。

 ピアプロは、「初音ミク」や「鏡音リン・レン」などの音声合成ソフトで作ったコンテンツを投稿できるサイト。オリジナル楽曲のほか、イラストや歌詞を投稿することが可能だ。例えば、「曲作りは得意だがイラストは苦手」という人は、自分が投稿した楽曲に「イラストレーター募集」というタグを貼り付けることで、イラストレーターとコラボレーションできる。

 なお、ユーザーがコンテンツをピアプロに投稿するにあたっては、CCに近いライセンス条件を設定できる。ただし、「営利目的で初音ミクのキャラクター利用を認めるとよからぬことが起こりうる」(西尾氏)ことから、二次利用はすべて「非営利」に限定している。そのほか、投稿者の氏名については非表示も選べる。また、コンテンツを使用した際には、「使わせてもらいました」と報告することをルール化しているという。

 ピアプロでは現在、イラストが25,000枚(1日平均200〜300枚)、楽曲が4,000曲(同30〜60曲)、歌詞が3,300作(同50〜80作)投稿されているという。「最近は、コラボレーション募集の内容を掲示板にまとめてくれる管理人まで登場した。こちらからは『こうしてください』と伝えていないが、ユーザーが自らサイトを構築してくれている」。

 このようなコラボレーションをできるだけ広めたいと語る西尾氏だが、「これだけのムーブメントの出口がどこかわからない状況」だという。「ピアプロで新たな作品が生まれた場合、その作品を公表する場合は権利処理をどうすればよいか。これをクリアしない限り、ピアプロのビジネスモデルを構築するのは難しい。日々試行錯誤だが、みなさんと一緒に考えていきたい」。


ピアプロへの投稿ルール ピアプロの現状

関連情報

URL
  東京国際アニメフェア2008
  http://www.tokyoanime.jp/
  クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
  http://www.creativecommons.jp/
  クリプトン・フューチャー・メディア
  http://www.crypton.co.jp/

関連記事
「クリエイティブ・コモンズは著作権帝国の中の自治都市」〜CCJPシンポジウム(2006/03/27)
「初音ミクの著作権ってどうなの?」販売元のクリプトン伊藤社長が講演(2008/03/18)


( 増田 覚 )
2008/03/28 11:57

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