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「ネットの未来にとって大きな出発点」I-ROIがシンポジウム開催


シンポジウムの模様
 インターネットコンテンツ審査監視機構(Internet-Rating Observation Institute:I-ROI)は17日、「青少年保護に向けたインターネット有害情報への取り組み」と題したシンポジウムを開催した。

 I-ROIの襟川恵子代表理事代行(コーエー取締役名誉会長)は、開会挨拶にて、「ISPなどが蓄積したノウハウも吸収し、I-ROIをブラッシュアップしていきたい。また、ネット社会における国際情勢を踏まえた上で、いろいろな活動をしていきたい」と述べた。

 シンポジウムには関係各省の来賓挨拶も行われた。総務省総合通信基盤局の桜井俊局長は、「携帯電話の分野では、モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(EMA)ができているが、EMAとI-ROIが車の両輪となって違法・有害情報から青少年を守っていってほしい」とコメント。

 文部科学省の尾崎春樹大臣官房審議官は、「ネットの有害情報については、法律などで国がすべて仕切るわけにもいかない。個別かつ多様なケースに対応するのは行政では難しく、むしろ民間が得意とするところ。コンテンツの適切な発展のために活動を続けていってほしい」と述べた。

 経済産業省商務情報政策局の近藤賢二局長は、「最近は、各省の中間にあるような仕事が増えている。今回のネット有害情報についても、3省が関わってきていることを見てもわかるように、今までの仕組みでは不十分。そういった中で、I-ROIの取り組みは世界に先駆けたものであり、素晴らしいこと」とした。


ネットを使っている人が議論をすべき

慶應義塾大学の村井常任理事
 シンポジウムの記念講演では、ネットの有害情報について、世界と日本の状況、携帯電話の状況などについてI-ROIの理事らが説明した。

 慶應義塾大学の村井純常任理事は、ネットの最新動向を紹介した上で、「利用シーンを知るためにトラフィックを分析していくこと、新しい技術を冷静に分析していくこと、そして、ネット全体の変化を見ていくことが重要」とコメント。「ネットの問題を先回りして考え、実践できるのは日本だけ。日本が率先して、今回のような取り組みを行うべき」とした。

 慶應義塾大学大学院の中村伊知哉教授は、昨今の有害情報に対する政府や団体の取り組みを説明した。「有害情報に対するアプローチはさまざまだが、表現に介入して規制する法律は最後の手段だと思う。(青少年ネット規制法が)早い段階で成立した点は不安」とした。また、ITリテラシー教育の必要性を水泳に例えて、「泳がせないと泳ぎは覚えられない。泳ぎ方を大人が教えるのは必要だが、プール自体を奪うようなことはしてはいけない」と話した。

 慶應義塾大学の夏野剛特別招聘教授は、フィルタリングに関する直近1年の動きを説明し、「結論は混乱。ネットを使っている人が議論をすべき」と述べた。「犠牲になっているのは、使っている子供。ネットを悪用している大人への罰則など、大人側の規制も必要」としたほか、「直近1年の動きを見ると、やりやすいところから議論をしてきた経緯がある。特に携帯電話はキャリアが少ないので、政府が要請を出しやすい。ネット全体に対してはどうするのか」などと話した。今後については、「この1年の議論を踏まえて、より具体的に、あらゆるレベルで国民が議論する方向へ進むべきだろう」とした。


「本来、ネットは楽しくて、ためになるものだが・・・・・・」と話す中村教授 「携帯電話が当たり前の社会で育った世代は我々とは別の生き物」と話す夏野特別招聘教授

多様な価値観がある中で何を根拠に有害情報を判断するのか

パネルディスカッションの模様
 シンポジウムの最後は、I-ROIの理事らによるパネルディスカッションが行われた。司会の村本絵里子理事は、記念講演の内容を踏まえた上で、今後の課題についてパネリストへ質問が投げかけた。

 夏野氏は、「ブラックリストとホワイトリストの問題がある。どのようなサイトを見分けていくのかだが、まずはトラフィックが集中しているサイトから手を付けていくべき。最初から全部を網羅しようと思わないとこ」と話す。

 また、村井氏は、「“違法・有害情報”と書かれることが多いが、違法と有害は全く違う。違法情報はわかりやすいが、有害情報は相対的。例えば、子供には有害、特定の地域・宗教にとっては有害など……。多様な価値観の中で有害を判定する根拠はあるのか」と問題提起をした。

 これに対し夏野氏は、NTTドコモでの経験を話した。「ドコモでは有害判定をしていなかった。キャリアがそれを言い出すと、検閲に近くなるので、あえて第三者(専門企業)に任せていた。米国がやっている映画のレイティングは参考になるのではないか」。一方、中村氏は、「有害情報については、いろいろなところで議論になると混乱してくる。大事なのは多様性。ユーザーは、いろいろな第三者機関の意見を参考にして、自ら判断してほしい」と述べた。

 I-ROIの相磯秀夫代表理事は、「宗教や国民性など、グローバルな考えを保ちつつ、自分の国では基準を設けてローカライズしていくグループがあってもいいのではないか。国際的な立場で、各グループが連携して作業していってほしい」とコメント。グローバルという点について村井氏は、「それぞれの地域ですでにあるルールをリスペクトしていけば良い。グローバルだけでなく、国内においてもさまざまな価値観がある。価値基準の意見をオープンに言えて、集約できる場所があること自体、ネットの未来にとって大きな出発点になる」と述べた。

 また、夏野氏は、監視とは違った視点で、「すでにある自主規制のように、『これをやっておけば後々面倒なことにならない』といったメリットやルールにようなものもあれば良いと思う」とコメントした。このほか、CGMについて、「悪い大人が子供に接触する場として使われることもある。大人側に何か規制をしなくても良いのか」と問題提起。一方、村井氏は、「インタラクティブな機能を利用して悪いことをする大人もいるが、逆に有害情報を早く伝達しやすいものCGM。その部分を上手く使う体制も作るべき」とした。


関連情報

URL
  コンテンツアドバイスマーク(仮称)推進協議会
  http://www.amd.or.jp/activity/advice_mark.html

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I-ROIが健全サイトの評価項目を公開、9月運用開始予定(2008/07/17)


( 野津 誠 )
2008/07/18 15:01

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