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「ニコニ・コモンズ」は日本人の美徳に目を向けた平和的解決策


 札幌で開催中の「iCommons Summit 2008」で30日、ニワンゴ取締役の木野瀬友人氏が講演し、8月中旬に開始するという「ニコニ・コモンズ」の概要を説明。法的手段で二次創作を制限するのではなく、ユーザーの美徳に目を向けて利用許諾を示す仕組みであるとアピールした。

 去る7月4日に開かれた「ニコニコ大会議2008」でドワンゴ代表取締役社長の小林宏氏が、テレビ番組やアニメなどの映像をユーザーが編集・合成したMAD動画について「もはや日本の文化」と発言。肯定的な姿勢を示したが、「ニコニコ動画」を運営するニワンゴにはその後も、「他人の作品を勝手に使っても違法ではないのか」というユーザーの声も寄せられているという。

 ニコニ・コモンズは、こうしたユーザーの不安を解消するものだという。


“公認”のMADを作成できる「ニコニ・コモンズ」

ニワンゴ取締役の木野瀬友人氏

ニコニ・コモンズの概要
 ニコニ・コモンズは、クリエイターが作品の権利の一部を開放する意思を明示することで、自己の作品を広めたり、他のクリエイターとのコラボレーションを促すもの。クリエイターは、自らの作品を非営利あるいは営利目的の利用に限定するなど、許諾条件を設定できる。一方ユーザーは、登録作品を検索してダウンロードし、これをもとに作成した派生作品をニコニコ動画で公開することも可能となっている。

 これまでもニコニコ動画では、ユーザーによる二次創作を権利者が黙認するケースも少なくなかったという。その反面、ユーザー側には「違法ではないか」という不安も残る。ニコニ・コモンズでは、クリエイターが利用許諾の意思表明を行うことで、ユーザーが“公認”のMADを作成できるのが特徴だ。その一方、クリエイターは「やっぱやめた」と許諾を取り下げることも可能。ただし、許諾の変更履歴はネット上に公開されるため、「どん欲な変更は炎上の元になるだろう」(木野瀬氏)。

 ニコニ・コモンズの方針について木野瀬氏は、「法的手段で縛るというよりも、国民の良識や美徳に目を向けて、ユーザーが作りたいものにライセンスを付与する」と説明。クリエイターの意思表示で著作物の一定の利用を認めるという観点では、クリエイティブ・コモンズ(CC)とも共通点があるが、「CCは法的規約という比較的厳しいルール。ニコニ・コモンズは素材を集めて自由に使ってもらえる柔軟なルールとなっていて、創作のための素材庫というイメージだ」。

 「CCは、制限の厳しい『All Rights Reserved』から制限の緩いパブリックドメインまで6段階に分けて定義し、それを拡張させる形でライセンスを提供している。一方、ニコニ・コモンズはライセンスというよりも、どちらかというとガイドラインに近い。さらに言えば、パブリックドメインに近いところで、ケースバイケースで対処してもらうことを目指している。」


ニコニ・コモンズとクリエイティブ・コモンズの比較 ニコニ・コモンズはパブリックドメインに近いところで利用を促すという

派生作品の著作権はあいまいだが、「仲良くできると期待」

 「ケースバイケースで対処する」というニコニ・コモンズだが、派生作品の著作権については、不明瞭な部分も少なくない。派生作品として使われた人が、何らかの権利を主張するケースも考えられるためだ。しかし木野瀬氏は、この点について悲観的ではない。「いきなり殴り合うというようなことはないだろう。最終的には司法の場に委ねられることもあるかもしれないが、ニコニ・コモンズでは掲示板などでコミュニケーションの場も用意する。我々は日本人だし、そこは仲良くできると期待している。」

 現在のアーティストの広報活動は、レコード会社が多額の資金を投入して行うケースが大半だ。そのため、ヒットが出てもアーティスト本人には報酬があまり落ちてこないと木野瀬氏は語る。こうした状況にあってニコニ・コモンズでは、派生作品を通じて宣伝につながることを期待しているという。

 「レコード会社ではなくユーザーが宣伝してくれれば、宣伝費用は数千分の一に抑えられる。インディーズのアーティストは、それで人気が出れば利益が直接本人に届く。こうしたネットの宣伝活動は、ゆくゆくは国益となりうるのではないか。ニコニ・コモンズは、その手助けをするのがミッションだと思っている。」


関連情報

URL
  iCommons Summit 2008
  http://www.creativecommons.jp/isummit08/
  ニコニ・コモンズについて
  http://www.nicovideo.jp/static/niconicommons/rule.html

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( 増田 覚 )
2008/07/31 20:44

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