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「ニコニコ動画(夏)」公開、ユーザー2000人のイベント開催

iモードの夏野氏がニコ動へ、「黒字化させるために頑張る」

 ニワンゴは、動画上にコメントできるサービスの最新版「ニコニコ動画(夏)」(サマーと読む)を5日に公開した。4日には、「夏」の発表イベント「ニコニコ大会議2008 ~日本の夏、ニコニコの夏~」を開催。会場となった東京・文京区のJCB HALLには観覧の抽選に当たったユーザー2000人が集まったほか、ニコニコ動画のリアルタイムコンテンツ「ニコニコ生放送」で1万人に中継された。


MADは日本の文化、権利者はMADを認めてほしい

ドワンゴの小林社長
 「ニコニコ大会議2008」では、前半、ビジネスカンファレンスとして、ドワンゴの小林宏代表取締役社長やニワンゴの西村博之取締役、ドワンゴの顧問(常勤)に就任した夏野剛氏(元NTTドコモ執行役員)らが登壇し、ニコニコ動画に関するトピックおよび「ニコニコ動画(夏)」の説明を行った。

 7月1日現在のニコニコ動画登録者数は約790万人、携帯電話向けの「ニコニコモバイル」利用者は約191万人、有料の「ニコニコプレミア会員」は約20万4000人になった。広告売上は月間4000万円規模になるという。そのほかのトピックとして、「Yahoo! JAPAN」とのサービス連携を開始したことなどを紹介した。

 著作権侵害動画への対応としては、3月11日に在京テレビ局6社へ違法動画を削除していく方針を示したことや、4月1日に日本音楽著作権協会(JASRAC)と契約を締結し、JASRACの管理楽曲をユーザーが自ら演奏した動画をニコニコ動画で公開することが可能になったこと、また、7月2日には映像関連3団体と著作権侵害対策について同意を得たことを説明した。

 映像関連3団体(日本動画協会、日本映像ソフト協会、日本映画製作者連盟)との取り決めには、MAD動画についても権利者からの要請に基づいて削除することが含まれている。小林社長は、「これが現時点での妥協点」としたが、「MADはもはや日本の文化。権利者にとってプラスになる部分もあるので、権利者にMADを認めてもらい、公認で素材を提供してもらえるような仕組みを進めていく」と述べた。


コミュニティ機能で有料会員のメリット強化

ドワンゴの夏野顧問(中央)

ai sp@ce内の大型ビジョンでも生放送
 ビジネスカンファレンスの後半に、西村氏および夏野氏が登壇。夏野氏は、4日付けでドワンゴの顧問に就任している。冒頭、「とりあえずは(ニコニコ動画事業を)黒字化させるために頑張るぞー!」と拳を上げ、会場を沸かせた。

 まず初めに、ドワンゴが今夏開始する予定の3D仮想空間「ai sp@ce(アイスペース)」とニコニコ動画の連動機能を紹介した。「ai sp@ce」でもニコニコ動画を見ることが可能になる。デモ画面では、「ai sp@ce」内でJCB HALLを再現し、イベントの模様を「ニコニコ生放送」で配信していた。

 「ニコニコ動画(夏)」では、プレミアム会員のみ可能だった高画質動画(映像はH.264、音声はAAC)の投稿が一般会員にも開放された。また、コメントに特定の機能を付加できるニコスクリプトに新機能「@BGM」と「@ポーズ」を追加した。これらのニコスクリプトは動画投稿者が使える。

 「@BGM」は、「SMILEVIDEO」にある動画を、自分の動画に引用できる。これにより、簡単に音楽を付けることが可能だ。引用できる楽曲動画(500種類予定)も順次配信するという。「@ポーズ」は、指定した箇所で再生を一時停止できる。なお、「@BGM」中に「@ポーズ」をすると、引用動画だけ流れ続ける。

 さらに、コミュニティ機能「ニコニコミュニティ」を追加した。同機能は、コミュニティ内のユーザー間だけで動画投稿・再生・コメントが行える。コミュニティへの参加は、すでに参加しているユーザーから招待メールを受け取るか、コミュニティページから参加を申し込み、管理者に承認されることでメンバーになれる。

 コミュニティの作成(管理者)は、プレミアム会員のみ行える。管理者は、コミュニティ内のメンバーに対して、個別に動画の投稿・閲覧・コメントの権限を設定できる。また、コミュニティ内のプレミアム会員の数に応じて、コミュニティへの参加可能人数・投稿可能動画数の上限が増加する。「最近、プレミアム会員のメリットが薄れているので、ここでお金を払っている皆さんに恩返ししたい」(夏野氏)。

 7月18日からは、ニコニコ動画の海外版(台湾版)を強化する。海外版の共通デザイントップページを新設するほか、「SMILEVIDEO」の海外版対応、ダグやカテゴリなどの言語別表示を行う。さらに、25日からドイツ語とスペイン語にも対応する。


コミュニティのトップページ コメント欄に@BGMと引用したい動画のIDを入力 引用された動画は再生画面の隅にワイプで表示

ニコニ・コモンズは素材庫、素材の販売も可能

 動画視聴中の全ユーザーへ同時刻に情報を配信できる「ニコ割」を利用したアンケート「ニコ割アンケート」を7月下旬に開始する。「ニコ割アンケート」が始まると、動画の再生が一時停止し、再生画面に設問と回答を記したボタンなどを表示する。

 夏野氏は、「インターネットをよく使っている人たちの意見として、世の中にアンケート結果を発信していきたい」と話す。また西村氏は、「簡単なネットアンケートは、それをやっていることを他の人に教えられるから、結局、組織票ができてしまう。ニコ割アンケートでは、その瞬間、ニコニコ動画にアクセスしている人だけが回答できるので、組織票がほとんどない結果を得られる」とした。

 8月中旬には、素材提供サイト「ニコニ・コモンズ」を開設する。「ニコニ・コモンズ」では、ユーザー(権利者)が素材を投稿・登録し、それを利用したいユーザーが素材を検索・ダウンロードできる。素材には個別のIDが割り振られており、利用者は2次創作物をアップロードする際に、素材使用を自己申告する。そうやって投稿された動画には、タイトル横に「コモンズ素材」のアイコンが付く。動画内で使われている素材を確認したければ、コモンズ素材のアイコンから、素材の閲覧ページに移動できる。

 素材は、音声・動画・画像に対応する。素材を登録する際は、ライセンス範囲として、「ニコニコ動画」か「全てのWebサイト」を指定できる。利用ルールは素材公開後に変更可能。権利者が素材のライセンス使用によりビジネスを行うこともできるため、素材の有料化が可能だ。素材はプロ・アマ問わず登録できる。夏野氏は「テレビ局や制作会社も登録してもらいたい」と話す。このほか、APIの提供により、ニコニコ動画以外でも「ニコニ・コモンズ」に対応できる。

 西村氏は、「ニコニコ動画にある作品を素材として使っていいのか、などのルールが明確じゃなかったので、ニコニ・コモンズにあるものなら自由に使っていいという素材庫を提供することがコンセプト」と説明する。「ニコニ・コモンズ経由であれば、権利者は自分の作品がどこで使われているのか一目瞭然でわかる。また、公開後に利用ルールを変更できるので、融通が利く。その点は、クリエイティブ・コモンズなどのルールと違うところ」だとアピールした。

 このほか、ニコニコ動画専用の無料ツール「ニコニコムービーメーカー」の機能追加を行う。まず「@BGM」対応の動画を作成できるようになった。今後は、ニコ割サイズの動画を作成できる機能やテキストの読み上げ機能」、SWF形式のファイル読み込み・投稿機能、ニコニコ動画のコンテスト「国際ニコニコ映画祭」への直接投稿(応募)機能を順次実装する。さらに、有償版を9月上旬に発売する予定だ。価格は未定。有償版では、従来の静止画編集だけでなく、映像の編集が可能になる。「H.264+AAC」の動画に対応し、エフェクトやアニメーション、トラック数も追加される。


ニコニ・コモンズのコンセプト 作品ダウンロードページ コモンズ素材を利用した場合

ニコ割アンケートのイメージ ネット最大の世論調査を目指す ニコニコ動画(夏)のスケジュール

世界に出られる日本のコンテンツはニコ動だけ

 「ニコニコ大会議2008」では、さまざまなゲストも登場した。ニコニコ動画で人気の楽曲「思い出はおっくせんまん!」を歌うゴムさんは、観覧客と一緒になって同曲の一部を歌い、CD「CDで聞いてみて。~ニコニコ動画せれくちょん~」をアピールした。


ゴムさん CDに自分の歌が入って感動したと話す ドワンゴの小林社長も「おっくせんまん!」合唱に参加

 「国際ニコニコ映画祭」で審査員を務めるタレントの松嶋初音さんは、「ニコニコ動画で最初に見たのは“全裸シリーズ”。最近は“ヤンデレ”が面白い」「ニコニコ動画は皆の素直なコメントが見られるから、それが誹謗・中傷だとしても、どんな風に思われているのかがわかって面白い」などと話した。




 ニコニコ動画を研究している濱野智史氏(日本技芸リサーチャー)は、「ニコニ・コモンズ」について「人同士ではなく、コンテンツ同士のSNSなのではないか」という持論を展開。「サイトではユーザーが作ったコンテンツ(パーツ)でつながるから、主役はコンテンツ。ユーザーは自分の作ったコンテンツがどこで人気なのか(使われているのか)を知って楽しめる」などと話した。




 最後に夏野氏は、「ニコニコ動画の弱いところは、大企業の役員やテレビ局と話をしていく部分。そういった相手を“ニコ厨”にしていくことが僕の使命だと思う」とコメント。ニコニコ動画については、「これ以外、世界に出られる日本のコンテンツはない。『iモード』も出ようと思ったが、メーカーじゃないし、NTTドコモは国内しか免許を持っていない。ネットは国境がないので、ドワンゴは世界どこへでも進出できる。他にこれだけ力のあるコンテンツを持つ日本のIT企業はない」と語った。

 イベントのメインプログラム終了後に、観覧客から西村氏への質疑応答時間も設けられた。MAD削除の件について質問されると西村氏は、「著作権法上、権利者から削除要請があれば消すことになる」と返答。「MADが削除されることは問題には思っていない。MADができないからといって、動画を作る人がいなくなるわけではないし、使っていい素材があれば、それで皆作ると思う。我々はニコニ・コモンズで使える素材を提供することで、権利的にもクリアなものにしていきたい」とコメントした。


観客との質疑応答 記者からの質問に答える役員一同 会場ロビーで売られていたニコニコ動画運営者らのグッズ。ほとんど完売

各界の著名人から贈られた多数の花 ニコニコ動画とコラボしたファッションブランド 最後に、ニコニコ動画の次期バージョンも発表

関連情報

URL
  ニコニコ動画(夏)
  http://www.nicovideo.jp/
  ニュースリリース(PDF)
  http://info.niwango.jp/pdf/press/2008/20080704.pdf

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( 野津 誠 )
2008/07/07 13:39

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