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Yahoo! BBがIPv6の標準提供を検討、普及のきっかけになるか?

IPv4アドレス在庫枯渇問題でエンジニアにも意識差

パネリストは、(左から)JPNICの前村昌紀氏、NTTデータの馬場達也氏、日本ケーブルテレビ連盟の山下良蔵氏、楽天の安武弘晃氏、ソフトバンクBBの牧園啓市氏
 ネットワークエンジニアはIPv4アドレスの枯渇問題を危機感として持っている。しかし、システムを構築するエンジニアとの意識の隔たりは大きい――。11月28日、「Internet Week 2008」の最後に行われたパネルディスカッション「IPv4アドレス在庫枯渇を乗り越えて」にて浮き彫りになった。

 このパネルディスカッションには、ISPとしてソフトバンクBBと日本ケーブルテレビ連盟、サービス事業者として楽天、システム開発事業者としてNTTデータの代表が参加し、幅広い業種を集めた賑やかなものになった。

 最初に、モデレータを務めた日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)理事長の後藤滋樹氏が「モデレータは最後に議論をまとめるのが自然だが、このパネルは簡単にまとまるものではないと思う。しかし、いろいろな見方があると思う。それぞれ課題や実績を挙げ、ほかの方にお願いをしたりアドバイスをしたりして、情報を共有し一緒に考える場にしてほしい」と述べ、パネルディスカッションが始まった。


Yahoo! BBは、来年にもIPv6の標準提供を検討

Yahoo! BBにおける、あるオプションサービスの契約率。新規でYahoo! BBに入ったユーザーは、80~90%がこのオプションサービスを契約する。一方で既存ユーザーは、月に0.1%程度だとする
 ISPの立場として現状を報告したのは、ソフトバンクBBの牧園啓市氏(執行役員技術統括ネットワーク本部本部長)だ。

 ソフトバンクグループとしては、「ULTINA Internet」にて2002年4月から商用のIPv6接続サービスを開始。2004年7月からはYahoo! BBにて試験サービスを提供している。「実際のユーザーは少ないが、ノウハウを蓄積している」という段階だ。

 ISPとして、IPv6接続はオプションサービスとして提供するべきなのか? Yahoo! BBの新規契約者と既存契約者における、オプションサービスの契約率を表したグラフがある。このオプションサービスは新規契約者のうち80~90%が契約をしている。しかし、既存ユーザーでは月0.1%程度の契約と非常に低い。「仮にIPv6接続をオプションにすると、メリットは打ち出しにくいこともあり、既存契約者は月に0.1%ずつしか契約しないだろう」との推測だ。これらの数字を挙げた上で、「来年には、デフォルトでIPv6を提供することを検討している」と明らかにした。


CATVは小規模事業者が多いのが悩み

 CATVインターネットの状況を報告したのは、日本ケーブルテレビ連盟の山下良蔵氏(日本ケーブルラボ部会担当部長)だ。

 CATVインターネットの契約数は現在、約400万で、これを385事業者が提供している。事業者が多いのは、市町村ごとに1つの会社が運営しているケースが多いためで、「小さいところがたくさんあるのが悩み」とする。

 現在のCATVのネットワークは、局舎から電柱の光ノードまでは光ケーブル、光ノードからユーザー宅までは同軸ケーブルを採用する「HFC(Hybrid Fiber Coax)」がほとんどだ。このHFCと「DOCSIS(Data Over Cable Service Inteface Spesification)」を用いてCATVインターネット接続サービスを提供している。DOCSISはバージョン「3.0」まで策定されており、ここでIPv6を初めてサポートした。

 技術的にCATVインターネットもIPv6に対応できるようになったということで、ケーブルラボでは、テストベッドの構築を進めている。テストベッドでは、局側装置「CMTS」を3つ並べる。ユーザー側には、STB、IP電話アダプタ、DOCSIS 3.0対応モデム、DHCPv6対応のルータなどを設置する予定だ。

 このようなCATVインターネットだが、事業者のIPv6に対する認識や対応はどうだろうか? 日本ケーブルテレビ連盟が行った調査(正会員オペレータ363社のうち234社が回答)によると、「おおよそ2年半後に(IPv4アドレスの在庫が)枯渇するであろうということを知っていますか?」との問には、86%が「はい」と答えている。しかし、「枯渇に対応するためのアクションプランを策定していますか」との問には、「いいえ」が82%となっている。「ほとんどはまだこれから、という意識を表しているのではないか」としている。


日本ケーブルテレビ連盟が構築を予定しているIPv6のテストベッドの構成図 CATV事業者に対して行ったIPv6に対する意識調査の結果。IPv4アドレスの在庫枯渇問題は知っているものの、実際にアクションプランを策定している事業者は少ない

IPv6に対応しなくても誰も困らないから進まない

 Web上のサービスを提供する事業者の立場として話をしたのは、楽天の安武弘晃氏(取締役常務執行役員)だ。楽天には500~600人の技術者が在籍しており、サービスの設計や開発、運営、データセンターの管理など一貫して自社で手がけている。

 同社の技術者の意見としては、「IPv6に行きたいという気持ちはある」とする。しかし、「様子見が長く続いているのが現状。そろそろしっかりとやらないといけない気持ちになっている」という具合だ。様子見が長く続いているのには「IPv6でつないで買い物をしたいユーザーがいない」という理由がある。IPv6に対応しなくても、誰も困らないというわけだ。

 しかし、いずれはIPv6に対応していかなければならない。IPv6の対応には投資が必要だが、「利益が倍にならないと大規模な投資の意味がない」とする。「IPv4オンリーよりもデュアルスタックの機器が安いなら買う。安くなっていったら流れが変わるかもしれない」という考えもある。

 このように、なかなかIPv6への対応に踏み切れない状況だ。しかし、「IPv4アドレスの枯渇は確実に見えてきており、いつ来るかわからない」との危機感はある。その上で、「どんな状況であれ、お客さんにサービスを提供できなくなるのは問題。楽天のサービスを1秒でも止めてはならないというモチベーションはある」との姿勢を見せた。

 問題は予算だが、「財務状況は四半期ごとに開示し、株主に利益率を問われる。IPv6への投資は意味があると、株主などに説明が付くタイミングはどこなのか? 2009年度がそのタイミングではないのか」としている。


システムエンジニアは、IPv6に対する意識は薄い

 システムインテグレータとしては、NTTデータの馬場達也氏(ビジネスソリューション事業本部ネットワークソリューションビジネスユニット課長)が登壇した。「IPv6の対応はネットワークの話と思いがちだが、システム側の対応も重要だ」と訴えた。

 馬場氏は「論じられることは少ない」とした上で、ソフトウェアのIPv6対応における課題を挙げた。例えばIPアドレスの入力インターフェイス。最大3桁の数字が4つ並ぶというアドレスの入力欄は、IPv4に依存することになる。内部処理もIPv4に依存している部分が数多くある。「Javaはいいが、C言語はIPv4に依存した関数が多い。IPv6対応に書き換える必要がある」とする。さらに「プログラムの中にIPv4アドレスが埋め込まれていることもある」とした。馬場氏はこれらの注意点をまとめた「IPv6ソフトウェア開発ガイドライン」を作成し、NTTデータ社内にて公開しているという。

 NTTデータでは、IPv4とIPv6のデュアルスタックによる仮想的なネットワークを構築し検証を進めている。「デュアルスタックネットワークの構築は可能」としたものの、検証では多くの課題が見えてきた。「ミッションクリティカルなシステムには、IPv6はまだ導入できない。IPv6では、IPv4ほど冗長構成などの機能が実装されていない」というのだ。この検証結果をもとに馬場氏は、ソフトウェアと同様に「IPv6ネットワーク移行設計ガイドライン」を作成し全社に公開している。

 馬場氏はこのような取り組みを進めているが、「NTTデータは、ネットワークエンジニアよりもシステムエンジニアが圧倒的に多い。システムエンジニアも含めて、営業など多くの社員はIPv4の枯渇問題やIPv6を認識していない」というのが現状だ。さらに、システム開発における行程も問題を複雑にしている。「プログラムの開発は、多段の下請け構造になっている。末端までIPv6対応ができるのか確認するのが難しい」とする。

 馬場氏は「まだまだ、社内の意識改革を進めて行かなくてはならない」とした。


NTTデータの馬場達也氏が示した、ソフトウェアをIPv6化するときの注意点。ユーザーインターフェイスではIPアドレスの入力欄、内部的な処理ではIPアドレスのテキスト処理方法やIPv4アドレスが埋め込まれていないか注意する NTTデータが構築したIPv4とIPv6の擬似的なデュアルスタックネットワークの概要

IPv6でも、ネットを成長させてきた“情報の共有”を

モデレータを務めたJPNIC理事長の後藤滋樹氏(右)、Internet Week 2008プログラム委員長でもある東京大学教授の江崎浩氏はパネリストとして参加(左)
 パネリストとして参加したJPNICの前村昌紀氏(IP事業部部長)は、「象徴的だったのは、NTTデータの馬場さんのガイドライン。どれくらいまじめに取り合っているのか」と質問した。しかし、ガイドラインはあまり参照されていないようだ。馬場氏は「ガイドラインは社内のWebで公開しているが、2年間で1000回も参照されていないようだ」とする。会場からは「そのガイドラインを出してほしい」との要望があったが、馬場氏は「今のところ社外秘。がんばって公開できるようにしたい」と答えた。

 Internet Week 2008プログラム委員長でもある江崎浩氏(IPv4アドレス枯渇対応タスクフォース、東京大学大学院情報理工学系研究科教授)もパネリストとして参加。「ぜひとも、社外秘を表に出してほしい。馬場さんは自分でテクノロジーを囲い込みたくないと思っているかもしれないが、経営者が思っているようならお願いしに行くのが僕の仕事」と後押しした。

 このようなノウハウや情報の共有は可能なのだろうか? 客席からパネルディスカッションに参加したAPNICのチーフサイエンティストであるGeoff Huston氏は、「一番悪いことは、自分が持っている情報を隠すこと」とする。これに対して後藤氏は、「自分の情報を表に出すことは損ではない。ノウハウなどの情報をオープンにすると、トランプのゲームのように出した札の上にみんながいい札を出して、みんなが共有していく。インターネットで長らくやってきた教訓」と賛成した。

 会場の参加者からも、NTTデータと同じように「自分の会社でも、IPv6に関してはシステムエンジニアの部門はそっぽを向いてしまい、ネットワーク部門だけが取り組んでいる状態だ」との実情が報告された。

 これに対して馬場氏は、「システムエンジニアはほとんど気にしていない状態。ネットワークは多少気にしている。しかし、『IPv6への対応を考えないといけないですね』とコンサルティングをしたところ、意識が高くなってシステムは外部からIPv6でWebに接続できるか調べたことがある。きっかけがあれば、意識が高くなる。しかし、今はきっかけがないのかなと思う」とした。

 IPv6に対する意識はあるものの、どのタイミングで踏み出せばいいのか分からないというケースもあるようだ。CATV業界も同様で、山下氏は「テストベッドを作ったのは前向きだが、IPv6はCATV業界には周知していない。IPv4アドレスが枯渇したらお客さんが獲得できなくなるということがわかれば進むだろう」としている。

 後藤氏は最後に「インターネットは、これまで直線的に穏やかに発展してきたわけではない。大きな問題があっても、情報を共有して乗り越えてきた。IPv4アドレスの枯渇も同じようなことだ」と述べ、パネルディスカッションは終了した。


関連情報

URL
  Internet Week 2008
  http://internetweek.jp/

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( 安達崇徳 )
2008/12/01 14:47

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