安心ネットづくり促進協議会は3日、都内で開いた設立記念シンポジウムで「ケータイってホントに必要」と題したパネルディスカッションを開催。高校の教員や保護者、学生が参加し、携帯電話の安全な使い方などについてそれぞれ意見を語った。
● ネット教育の失敗体験から見えてくるもの
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インターネット先進ユーザーの会(MIAU)代表の小寺信良氏
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インターネット先進ユーザーの会(MIAU)代表の小寺信良氏は、高校生の娘を持つ保護者の立場から、子供のネット教育で失敗した体験談を紹介。小学3年生からPCを使わせてきたという小寺氏は、当時からフィルタリングを導入していたが、想定外の事態がいくつか起こったという。
「フィルタリングのせいで自分のPCではなにも見つからないので、調べ物は母親のPCを頻繁に使うようになった。結局は母親と一緒に使うことになり、ある種のペアレンタルコントロールになっていたので悪くはなかったが。また、iTunesのアップデートすらままならない状態になり、いちいち親が全部やる羽目になってしまった」。
メールでの争いごとが増えたり、サイトのコメント欄の悪口に憤慨するようになったことから、匿名性の影響を理解してもらうために「2ちゃんねる」のログを見せたという小寺氏。その結果、子供はネット上での他人とのコミュニケーションに興味を持たなくなり、「(相手がはっきりしている)メールでのコミュニケーションに深く没入した原因になったかもしれない」と振り返った。
携帯電話の利用方法については、「ケータイでの情報取得には、ガスや水道と同じく使っただけお金がかかる」と説明。すると、子供はすぐに接続を切断すれば料金が発生しないと勘違いし、パケット数に課金されることが理解できていなかったという。パケット定額制についても、コンテンツ代やサービス利用料金も定額に含まれると思い込んでしまったという。
コンテンツ代が膨らんだせいで携帯電話の月額料金が1万円に届く勢いだったことから、小寺氏はお小遣いに1万円という上限を設け、そこから携帯電話の利用料金を引いた額をお小遣いとして手渡すことに。この仕組みが、よくわかずに登録していた有料サイトの契約を見直すきっかけとなり、その後は利用料金が減っていったという。「無駄なサービスにお金を使っていたというのが、金銭感覚として理解してもらえたのがよかった」。
これまでのネット教育から得た感想として小寺氏は、「携帯教育で一番難しいのは、携帯電話を持ち始めと同時に反抗期を迎える中学1~2年生時代」と説明。その一方、反抗期が終わり、親と話し合いができるような年齢になると「携帯電話の使い方がこなれてきて、憑き物が落ちたように携帯電話に依存しなくなった」と振り返った。
● ケータイが「危ない」と言う前にすべきこと
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東京都立上野高等学校で情報教育を担当している能城茂雄氏
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東京大学大学院情報学環の西垣通氏
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東京都立上野高等学校で情報教育を担当している能城茂雄氏は、携帯電話は子供の「生活の一部」と指摘。学校への持ち込みを禁止すべきという意見もあるが、教員の立場としては「次の指導ができない」と感じているという。「情報社会にいる子供に『禁止』では教育にはならない。子供たちは悪いことをしようとしているわけでなく、活用しようとしている。一方的に駄目というのは良くない」。
「高校の学習指導要領が平成25年から変わるが、その大きなテーマは情報社会にどうやって子供が生きていくかをきちんと教えること。ケータイを持っていない子供はクラスに1人いるかいないかだが、学校や先生によって教わることにばらつきがある。携帯電話は危ないと言う前に、子供が向き合う問題や状況を理解して、携帯電話との正しい接し方を教えるべき。その中で教育を進めると、携帯電話が学力向上につながるなど、子供たちに有用な道具になるのではないか。」
「ケータイ依存症が増えている」と言われていることについて、中学2年の女子は「誰かとつながっていたい」という気持ちが原因と推測。「友だちや保護者が話しかけるなどコミュニケーションを大事にしてほしい」と呼びかけた。能城氏によれば、ケータイ依存症の子供は自覚がないことが特徴だという。依存症かどうかを確認する簡単な方法としては、子供に「5分でいいから電源を切って」と言うことで、これに答えられるかどうかでチェックができると話した。
これまで携帯電話に関する授業を受けた経験がないという大学4年の男子は、「大学生になってPCやケータイを使うようになり、架空請求や迷惑メールが突然増えて戸惑った」と当時を回顧。学校に対しては、「持ち込み禁止にしておしまいではなく、安心で安全な使い方を指導する時間が必要だと思う」と要望を出した。
パネルディスカッションの総括として東京大学大学院情報学環の西垣通氏は、「ケータイやPCといった新しい文化とどう真剣に向き合うかが問われている。ケータイ依存症の問題についても、一概に『やめろ』というのではなく、『つながっていたい』という思いも考えるべき。携帯電話をどのように使うかについて、保護者、サービス提供者、ケータイ会社、学校が一体になって考えることがまずは大事」と語った。
関連情報
■URL
安心ネットづくり促進協議会
http://www.fmmc.or.jp/anshin-net/index.html
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