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オーマイニュース関係者が振り返る「編集部発・最後の炎上大会」


イベントの様子
 4月28日に閉鎖した市民参加型ニュースサイト「オーマイニュース」の関係者が、創刊から閉鎖までの3年弱を振り返るイベント「No more! OhmyNews ~オーマイニュース消滅記念!(元)編集部発・最後の炎上大会~」が、東京・阿佐ヶ谷の「Asagaya/Loft A」で5月25日に開かれた。

 元編集長の元木昌彦氏と平野日出木氏、元編集部員や元市民記者のほか、市民参加型メディア「PJニュース」編集長の小田光康氏らが登壇し、オーマイニュースが創刊から3年足らずで終了した背景について、アルコールを交えての暴露話で総括した。イベントには約50人が参加。元市民記者という参加者からはオーマイニュースに対する不満の声なども上がり、イベントは19時30分の開演から23時過ぎまで続いた。


最後まで描けなかったビジネスモデル

2代目編集長を務めた元木昌彦氏
 オーマイニュースは、“市民記者”が投稿したニュース記事を掲載する韓国の「OhmyNews」の日本版。「市民みんなが記者」をコンセプトに掲げ、従来のマスコミとは異なる“市民ジャーナリズム”を目指して2006年8月にスタートした。

 初代編集長にはジャーナリストの鳥越俊太郎氏が就任。しかし、鳥越氏が創刊前にニュースサイトで受けたインタビューで2ちゃんねるを「ゴミため」と表現したことにより、2006年5月に開設された「開店準備中Blog」に批判が殺到。創刊前から“炎上”状態となった。今回のイベントを企画した元編集部記者の藤倉善郎氏は、鳥越氏の「ゴミため」発言以降もさらに、「トンデモ」な記事が掲載されるたびに炎上を繰り返してきたと説明する。

 任期満了と体調不良を訴えた鳥越氏に代わって2代目編集長に就任した元木昌彦氏はオーマイニュースの“敗因”について、「最後までビジネスモデルを描けなかった」と振り返る。また、言論が規制されていた韓国とは異なり、日本には「言いっぱなしの言論の自由」はあると指摘。こうした状況では、市民ジャーナリズムを日本に定着させることも困難だったとして悔しさをにじませた。

 「市民参加型メディアを根付かせるには、少なくとも3年は必要だった。オーマイニュースに携わっていた人たちは、中途半端で終わってしまったという気持ちが強いのではないか。資金ショートの話が出た際には、(株主である韓国OhmyNewsのオ・ヨンホ代表に)早く手を打ってほしいと伝えたが、なかなか動いてくれなかった。」


もっとWebに詳しい人材を確保すべきだった

3代目編集長を務めた平野日出木氏
 3代目編集長を務めた平野日出木氏は、Webに精通した人材を獲得できなかったことを敗因として挙げた。「人材獲得は非常に短い時間しか与えらず、紙メディアやテレビ関係者を集めてやらざるをえなかった。もっとWebに詳しい人をリクルートすべきだったかもしれない」。また、市民記者については「どちらかというと反日的な人が集まってしまった。そのうちに反編集部的な言論につながり、大変ストレスフルな毎日だった」と振り返った。

 さらに平野氏は、日本市場に対するマーケティングを行わなかったことも敗因として挙げた。「『韓国のビジネスモデルは正しい』と訴えるオ・ヨンホ代表に対して、僕らも素人だから付いていってしまった。その後、オ代表は『日本では通用しない』と迷っている感もあったが、そうなった時には私も含めて試行錯誤するだけで、そうこうするうちにお金が尽きてしまった」。

 平野氏によれば、オーマイニュースの財務状況は、編集長を務めた元木氏や平野氏自身も把握できなかったという。「創刊当時からいる私でも、株主のソフトバンクがどのようなかたちでお金を出してくれているかがわからなかった。オ・ヨンホ代表は、ソフトバンクを『恒常的に資金調達してくれるスポンサー』としてとらえていたフシがあるが、あえなく沈没してしまった」。


上がりのない「人生ゲーム」が続く会議

「PJニュース」編集長の小田光康氏
 市民記者の研修制度を作るために3カ月ほどオーマイニュースとかかわり、現在は「PJニュース」編集長の小田光康氏は、社員に「メディアを継続する」という信念が感じられなかったと指摘した。「市民メディアとはいえ、ある種のベンチャー企業。どんなに叩かれてもがんばるという気概がなく、雇われてやっているという雰囲気が漂っていた」。

 オーマイニュース正社員の記者として編集部に在籍していた吉川忠行氏は、社内のコミュニケーション不足を指摘した。「会議で話がまとまっても、オ代表が来日した際に納得しなければ決定しない。しかも、オ代表は一度承諾した事柄でも、次に来日するときには話が元にもどっていたりする。上がりのない『人生ゲーム』がずっと続いていく印象だった」。

 また、2007年秋から外部委託で編集部デスクを務めていた村上和巳氏は、当時は専任の広告営業社員がいなかったことを告白。この点については、元木氏が2007年2月に入社して以降、営業担当社員を任命するように働きかけていたとしているが、新たな社員が任命されるまでに1年の月日を要したという。「その時はすでに手遅れだった」(元木氏)。


数々の“炎上”について編集部が感じていたこと

 創刊から閉鎖までに数多くの“炎上”を起こしたことについて、編集部デスクを務めていた担当者はどのように感じていたのか。「マクドナルドで注文をせずに、Yahoo! BBの無線LANサービスを利用していたら退出させられた」という内容の記事が掲載され、オーマイニュースのコメント欄が炎上した件について、当時日替わりで編集部デスクを務めていた渋井哲也氏はこう振り返る。

 「最初に記事が投稿されてからしばらく編集部内では手つかずの状態だった。私がとりあえず見てみたら、『体験モノ』であることがわかった。私は、オーマイニュースは道徳的なメディアではなく、プラットフォームになるべきで、炎上した場合はそれを書いた側の問題だと思っていた。記事の内容には同意できなかったが、記者が体験して取材もしているので、結論は読者に任せれば良いと判断して掲載した。」

 同じく、日替わりで編集部デスクを務めていた村上和巳氏は、当時の編集部の体質を次のように説明する。「デスクの業務は、編集部員が候補に挙げた記事をチェックすることだが、(炎上につながるような)面倒くさい記事はいつまでも放置されていた」。また、編集部の思想が左寄りなのではないかという意見については、「編集部員は反リベラルの方が多かった。左派リベラルの記事が多かったのは、そのような記事を投稿する人が多かったため」と反論した。


功績は「市民メディアとは何か」を話し合うきっかけを与えたこと

 オーマイニュースは創刊から3年足らずで閉鎖したが、日本には「JANJAN」や「PJニュース」などの市民参加型メディアがある。これらのメディアが今後日本に定着する可能性について元木氏は「十分にある」と語るが、「市民メディアとは何かと聞かれると口ごもってしまう」という。「手垢の付いた『市民』を別の言葉にした方が良いかもしれない。オーマイニュースは、市民メディアとは何かということを話し合うきっかけだけは作れたと思っている」。

 「PJニュース」編集長の小田氏は、「世論を形成する過程で人々のオピニオンを吸い上げるメディアは日本には少ない。例えば、日本の新聞は客観的に事実だけを伝えるものが多い。新聞の読者投稿欄については新聞社の意向が反映されているなど、本当の意味での世論とは言えない」として、市民参加型メディアではニュースを報じるだけでなく、ニュースに対する市民記者の意見を掲載していくことが不可欠だと語った。


関連情報

URL
  Asagaya/Loft A
  http://www.loft-prj.co.jp/lofta/

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オーマイニュースが幕、市民ジャーナリズム目指すも3年足らずで(2009/04/24)


( 増田 覚 )
2009/05/26 17:25

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