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第6回:ネット利用に関する親子の温度差、シマンテック調査から


「ノートン・オンライン生活レポート(Norton Online Living Report:NOLR)」の調査対象
 WWW編をやっている途中だが、今回は1回お休みして2月21日に発表された「ノートン・オンライン生活レポート(Norton Online Living Report:NOLR)」のデータのうち、子供に対する保護に焦点を当てた部分をすべて抜き出してみた。なお、今回紹介するデータの一部は、シマンテックのサイトで公開されている。

 このレポートは、調査会社のHarris Interactiveに委託して、米国、英国、オーストラリア、ドイツ、フランス、ブラジル、中国、日本の8カ国で実施したもの。1カ月に1時間以上、PCからインターネットを利用している18歳以上の成人4,687人と、8~17歳の子供2,717人を対象に、2007年11月12日から12月17日までインターネットによるアンケートをとった。

 ただし、国別の比較は調査対象の属性に違いがあると考えたので、純粋に日本のデータを分析するにとどめた。日本の調査対象は、成人601人(うち18歳以下の子供を持つのは163人、男性54%、女性46%)、子供306人(男性50%、女性50%)。設問で「親」は子供を持つ親に対しての質問で、「子」は子供に対しての質問事項となっている。

 なお、日本を対象とした今回の調査では母数が少ないため、標本選別によるブレが出ている可能性もあることに注意されたい。


「親が考える子供の行動」と「実際の子供の行動」に温度差

 今回、NOLRから抽出したのは、「PROTECT」という項目だ。主に、インターネット上の不適切なコンテンツから子供を守ることに主眼が置かれている。今回はデータ部分だけでもかなりの分量になるので、解説は要点のみにとどめたが、特に「親が考える子供の行動」と「実際の子供の行動」のギャップに注目して欲しい。

 調査結果を見る限り、少なくとも「日本の親」は対応が甘く、また子供が感じているよりも脅威を過小評価していることがわかるだろう。例えば、オンライン上で子供がネットイタズラに遭ったかどうかについては、親の2%が「遭ったと思っている」と答えたが、子供はその4倍にあたる9%が「遭った」と回答。こうした傾向がわかるデータは以下の通りだ。

 ただし、親が過小評価しているのは、今回の集計国全体で共通するものなので、日本の親だけが子供の実態にうといというわけではないことも意識にとどめてもらいたい。

親:子供がインスタントメッセンジャーかチャットルームを通じて不適当な会話をしたと思っている 2%(「はい」と答えた人の合計。以下同)
子:インスタントメッセンジャーかチャットルームを通じて不快に感じる不適当な会話をした 8%

親:子供がオンライン上で見知らぬ人に接近されたと思っている 5%
子:オンライン上で見知らぬ人に接近された 13%

親:子供がネットイタズラに遭ったと思っている 2%
子:ネットイタズラに遭った 9%


「親が考える子供の行動」と「実際の子供の行動」では大きなギャップがある

 これらの具体的な脅威に関しては、子供の実感と親の予想には倍以上の乖離があるケースが多く、「子供のオンライン行動がわかっていない」という傾向が伺える。こうしたことから、「子供は親の想像を超えたオンライン行動をしている」というのが筆者の実感だ。

 筆者は実際に子供とオンライン上で付き合った経験はないが、いわゆる「援交動画」や「自分撮りエロ動画・静止画」はP2P上でも「流出」している。援交は日本だけの現象かもしれないが、動画チャットルームでの不適切な画像ならば日本以外でも散見される。これは望ましい状況とはいえないだろう。

 また、「親は自分のオンライン上の行動について把握していないだろう」や「親が許さないであろう行動をオンライン上で行なったことがある」という子供の回答も2割前後見られた。

親:子供がオンラインで何をやっているか知っている
強く同意 26%、ある程度同意 31%、合計 57%
子:両親は私がオンライン上で何をやっているか知らない
強く同意 3%、ある程度同意 20%、合計 23%

子:親が許さないような事をオンライン上でやっている
強く同意 2%、ある程度同意 14%、合計 16%


子供のネット環境を心配するも具体的対策は手つかず

 これまで、子供が感じる脅威について親が過小評価しているというデータを紹介したが、親が「子供にとって不適切なコンテンツ」を心配しているという数字は、子供自身が心配している数字よりも大きいというデータも見られた。

 特に、オンライン上で子供が不適切なコンテンツや誘惑を受けることに心配しているかどうかについては、「心配している」という回答が8割以上と、子供の安全なインターネット環境に気を配っている様子がわかる。

親:子供へのオンライン上の不適切なコンテンツや誘惑を心配している
強く同意 49%、ある程度同意 33%、合計 82%
子:オンライン上の不適切なコンテンツや誘惑に心配している
強く同意 5%、ある程度同意 57%、合計 63%


 これに対して、子供のインターネット環境が、親の環境と同様に安全であるという回答も半数を超えた。これは、子供のネット環境を心配するのとは矛盾する内容で、少なくとも筆者の感覚では「安全にするための対策」が必要と考える。

親:子供にとってインターネットは親向けと同様に安全である
強く同意 26%、ある程度同意 30%、合計 56%
子:インターネットは親向けと同様に安全である
強く同意 12%、ある程度同意 40%、合計 52%


 ところが、子供のネット閲覧を制限する保護者管理機能(いわゆるペアレンタルロック)を導入しているという親の割合は5%、子供のインターネット利用を監視したことがあるという割合も7%と非常に少ない。

親:家庭のコンピューターには保護者管理機能(ペアレンタルロック)を入れている 5%
親:子供のオンライン利用を監視したことがある 7%


親が「子供にとって不適切なコンテンツ」を心配しているという数字は、子供自身が心配している数字よりも大きいというデータも見られた

「子供に1つだけ覚えて欲しい心構えは『オンライン上で必要以上に自分をアピールしないこと』」と語るインターネット協会主任研究員の大久保貴世氏
 それでは、子供に安全なインターネット生活を送らせるためにはどのようにすればよいだろうか? 会話による教育が一番だろうが、安全なオンライン行動について子供と話したことがあるという親は2割程度にとどまる。これは、親自身が「オンライン上で安全な行動」をわかっていないとも考えられる。このような場合は、ペアレンタルロックなどの強制的な手段をとるしかないだろう。

親:子供に安全なオンライン行動について話したことがある 22%
親:子供がオンライン上で行なった悪いことを叱ったことがある 9%


 日本でのNOLR記者セミナーでは、ゲストとしてインターネット協会の主任研究員である大久保貴世氏が登場し、「子供に1つだけ覚えて欲しい心構えは『オンライン上で必要以上に自分をアピールしないこと』」と発言した。現実世界でも「出る杭は打たれる」ということは往々にしてあることだ。どのような反撃があるかわからないオンライン上で「必要以上に目立たない」というのは、確かに現実的でわかりやすい目安といえるだろう。

 なお、日本の学生のネット社会が携帯中心であるため「ともかく『無料』だし、携帯のコンテンツフィルタを一度入れて欲しい」とも発言していた。携帯ネットは純然たるインターネット社会とは異なる部分もあるが、保護者管理機能という点では同じだ。

 次回はまたWWW編に戻り、アンチフィッシングについて解説する予定だ。


先週の気になったニュース(2/25~3/2)

変形文字の入力をプログラムで通過。新たな技術開発が必要か?
http://blogs.iss.net/archive/CAPTCHA.html
 Windows Live MailやGmailのアカウント作成時に変形文字の入力を促されるが、これは本来プログラムによる自動アカウント作成を防止するためだ。これが破られつつあるというニュース。

セキュリティカンファレンスで携帯電話の盗聴デモ?
http://www.avertlabs.com/research/blog/index.php/2008/02/27/beware-your-neighbor-might-be-listening/
 日本では使われていないデジタル携帯電話システムGSMの暗号化が破られたという内容だ。

ウイルスキラー2008年版は1パッケージで3台まで対応
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/02/26/18581.html
 2006年にトレンドマイクロが仕掛けた施策はほとんどの会社が後追い対応となった。「次の一手」が気になるところだ。

セキュリティ問題を修正した「Thunderbird 2.0.0.12」がリリース
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/02/27/18595.html
 5件の脆弱性が修正された。Thunderbird 2.0.0.12は、サイトからWindows版、Mac OS X版、Linux版がそれぞれダウンロードできるほか、Thunderbird 2以降の利用者であればソフトウェア更新機能からアップデートできる。

インターネットがらみの少年犯罪は減少、警察庁が報告
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/02/27/18593.html
 今回の記事でインターネット協会の大久保貴世氏は「子供にインターネットで知ってほしいのは『インターネットは匿名ではなくIPアドレスが記録されているよ』」と語っていたが、それが周知されているということだろうか?


国内で「OpenID」普及団体設立へ
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/02/28/18613.html
 便利な反面、OpenIDで使うIDのセキュリティ管理はより厳格にしなければならないというアナウンスも忘れて欲しくないというのが率直な感想。認証サイトが「面倒くさい」のはイヤという人もいるし、その辺のさじ加減をどうするのか今後を見守りたい。

警察庁、プロキシを悪用したメールの不正中継に関する調査結果を公表
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/02/29/18628.html
 第三者転送可能なメールーサーバーはいまどきありえないと思っていたが、探す人はまだいるということだろう。やじうまWatchでも串の話題が出ていたが、「串で匿名性確保」ではなく「串で抜かれる」というのが興味深い。

フィッシングによる不正アクセスが急増、総務省などが2007年の状況を公表
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/02/29/18633.html
 ちょうど次回がフィッシングの話題を取り上げることもあり、気になるところだが、海外のフィッシングメールの数からすれば微々たるものというのが日本のフィッシング事情だ。本格的な「釣りシーズン」が始まる前に知識と対策を!

特商法改正? 骨抜きの「未承諾広告※」全廃へ
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/contents1.html
 言うまでもなく広告の責任は広告主にある。しかし、騙りで広告を出されていた場合は? 行政の対応は後手に回る方向にあり、迷惑メールはおそらくまだなくならないだろう。



2008/03/05 12:15
小林哲雄
中学合格で気を許して「マイコン」にのめりこんだのが人生の転機となり早ン十年のパソコン専業ライター。主にハードウェア全般が守備範囲だが、インターネットもWindows 3.1と黎明期から使っており、最近は「身近なセキュリティ」をテーマのひとつとしている。

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