Internet Watch logo
記事検索
特別企画
【 2009/06/11 】
6月のマイクロソフトセキュリティ更新を確認する
[20:03]
【 2009/06/09 】
「Googleブック検索」和解案と電子書籍ビジネスの行方(後編)
[12:52]
【 2009/06/08 】
「Googleブック検索」和解案と電子書籍ビジネスの行方(前編)
[14:12]
【 2009/06/04 】
多彩なリフィルでタスクも予定も柔軟に管理できる「xfy Planner」
[10:54]
【 2009/06/02 】
DirectShowのゼロデイ脆弱性に対応する
[14:18]
【 2009/05/28 】
ソニー「nav-u」の小さいカーナビ使ってみました<徒歩・自転車編>
[10:56]
【 2009/05/26 】
SNSはメールの10倍危険? 「心がけ」が大事とカスペルスキー氏
[11:24]
【 2009/05/21 】
被害が多発する「Gumblarウイルス」への対策を実施しよう
[19:20]
ソニー「nav-u」の小さいカーナビ使ってみました<基本機能編>
[11:00]
【 2009/05/15 】
Adobe Reader/Acrobatの脆弱性対策を考える
[15:27]
【 2009/05/14 】
5月のマイクロソフトセキュリティ更新を確認する
[12:58]
【 2009/04/16 】
4月のマイクロソフトセキュリティ更新を確認する
[15:57]

2009年の中国インターネットを予測する


 中国のインターネット利用者は2008年6月末現在で2億5300万人に達し、連載「山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿」でもお伝えしてきたように、昨年はインターネットが社会に及ぼす影響力が確実に拡大していることを実感させる出来事が多数起こった。2009年、中国におけるインターネット事情はどう変化していくのか考察する。


インターネット利用者3億人時代に突入

 インターネット利用者が2億5300万人に達したとはいえ、13億の人口を抱える中国では人口比で言えばまだまだだ。2009年も若者を中心にインターネット利用者は増加し、年内にも3億人を超えるだろう。2008年前半から中国でバブル崩壊が、後半には世界的な金融危機が起こっており、沿岸部では日本同様、人々の懐がお寒くなっている。この影響がインターネット利用者の増加ペースにどの程度影響するのかは、中国ネットワークインフォメーションセンター(CNNIC)から今月発表される2008年下半期のインターネット利用状況統計報告で一部が明らかになる。

 高校生や大学生になるのをきっかけにPCを買い与える親は多いため、若年層では間違いなく一定の利用者増加が見られる。一方で気になる存在は、インターネットを利用しない中高年層だ。中国バブル崩壊前はオンライントレードを鍵に中高年のインターネット利用者を増やした。だからこそ既存の中高年利用者は、保持し続けてしまっている株の取り引きのために使い続けるだろうが、今年新規にオンライントレード目的で利用者が増えるとは考えづらい。キラーサービス不在の状況下で、それでも中高年の利用者が増加するのかは興味深い。


中国におけるインターネット利用者数の推移(単位:億人、CNNICの報告書より)

 一方で金融危機の結果、「よいモノをより安く」というニーズが主に沿岸部の都市部の消費者の中で高まっている。そのため、今年一気にオンラインショッピング利用者が急増するのではないかと筆者は予想している。中国ではAmazon中国などのB2Cよりは、「淘宝網(Taobao)」などのC2C(個人間取引)が人気である。今までは「淘宝網(Taobao)」の一人勝ちだったが、ここに「百度」が参入。サービスの競争が激化することでサービスの質が向上し、多くの利用者を呼び込むことだろう。C2Cの人気でB2Cの存在も認知され、「メインは淘宝網だが、一応Amazonもチェックする」という利用者も増えてきた。ここで今年参入が(主に日本で)注目されるのが、日本の商品を販売する日本発のオンラインショッピングサイトの登場である。中国の高所得者層は、いいモノを買おうと日本のモノを積極的にチェックしている。日本発のショッピングサイトがどれだけ高所得者層を取り込めるかに注目だ。

 日本関連でいえば、SNS(ソーシャルネットワーキングサイト)にも目を向けたい。SNSサービスが数多く登場して話題になっている中国で、mixi中国版「蜜秀(mixiu)」がどこまで食い込めるのか注目だ。すでに別サービスの日本語学習者コミュニティや日本好きコミュニティで、多くの人々を「蜜秀(mixiu)」に招待する動きが確認できている。mixi中国版がどこまで中国で普及するかは未知数だが、まずはこうした日本に興味を持つ中国人の間で「とりあえず使ってみる」という動きがしばらくは起きることだろう。また、2008年にはソフトバンクの孫正義氏が中国で開催された会議において「今後3G携帯電話が普及する前に、人気サービスとなるSNSを押さえておきたい」と語り、中国のSNSへの投資について関心を示してたことが報じられた。どこまでSNSが普及し、日系企業に絡んでいくのかにも注目だ。


淘宝網(taobao、http://www.taobao.com/ 蜜秀(mixiu、http://mixiu.cn/

ノートPCと3G携帯電話で、中国でもモバイル利用普及か

 インターネット利用者が増える一方で、ノートPCと3G携帯電話の普及によって利用シーンが変わる可能性があるのではないかとも考えられる。中国ではヘビーなPCユーザーを除けば、21世紀に初めてマイPCを所有した人がほとんど。大ざっぱに言えば、現在、都市部の平均月収は2万円程度だが、5年前にはその3分の2か半分が普通だったと記憶する。ノートPCは当時、今よりずっと高かったため、ほとんどがデスクトップPCを購入していた。近年の所得の上昇とノートPCの価格下落でノートPCが手に届くようになり、昨年あたりから2台目に購入するメインPC(サブPCという意味ではない)としてノートPCがよく売れるようになった。

 また、2009年は3G携帯電話の普及の芽が出るだろう。昨年は中国発の3G規格ことTD-SCDMAがデビューしたが、その結果は微妙なスタートであった。今年は中国人消費者に本命視されているW-CDMAのサービスが開始されるだろう。そうなると、携帯電話あるいはデータカードとノートPCを使って外出先でインターネットができるようになる。対象エリアの狭い今年いっぱいは都市部に限られるが、どこからでも利用可能になる。また、データ通信カードや携帯電話なしで、ノートPCだけでも友人宅や会社、学校などでマイPCでインターネットをするようになるため、ヘビーユーザーはさらにインターネット依存が強まっていくだろう。


団結するネット世論が継続、その矛先は汚職役人へ?

優酷網(Youku、http://www.youku.com/
 「四川大地震」「チベット争乱」「世界各地での聖火リレーの妨害行為」など、中国人にとっては唇を噛みしめそうな事件がこれでもかと続いた2008年。「優酷網(Youku)」をはじめとした中国の著名動画共有サイトが脱・海賊版コンテンツ配信を狙う中、留学生をはじめとした在外の華僑が「中国人が聖火リレーをサポートする」という中国人の視点での動画リポートを次々と投稿、世界中の中国人が手を繋ぎ一体感をつくった。毒ギョーザ事件が起きた日本だけでなく米国やドイツなどでも、現地メディアの中国に関する報道姿勢に現地中国人が疑問を呈し、「中国を誤解している!」と多くの中国人が立ち上がった(その方法の善し悪しはさておき)。北京オリンピック前は、少なくとも西側諸国の人々に対して、インターネットを通して中国の若者は団結しアピールした。

 また2008年は、絶滅したと思われた華南虎が生きていたという証明写真がニセモノだったとする「華南虎事件」や、食品大手の康師傅の水道水をミネラルウォーターとして販売する「水源門事件」をはじめとして、さまざまな事件を暴いたきっかけがインターネット利用者による情報提供だった。中国では「Yahoo!知恵袋」や「人力検索はてな」のようなナレッジコミュニティサービスを「人肉捜索」というが、「2ちゃんねらーによる祭り(の一種)」のように、インターネット利用者が悪い行為を行っていると認識した人に対し、徹底的に個人情報を暴き、その個人情報をインターネットで共有することも「人肉捜索」と呼ばれ話題となった。新しい意味の「人肉捜索」で、筆を誤ったブロガーらは多数のインターネット利用者により追い詰められた。

 2008年末よりニュースで、インターネット利用者が公務員の汚職を暴く行為が日本にも伝わり始めたが、2009年はその動きにさらに拍車がかかるかもしれない。中国バブル崩壊に加え金融危機が発生、広東省をはじめとした沿岸部で以前と比べ暗いムードとなっているため、今年は一層、汚職で贅沢する一部の公務員にインターネット利用者の「正義」の矛先が向かうだろう。前述の通り、今年はより一層、消費者が「インターネットを外に持ち歩く」ことになる。そうしたことから、インターネット利用者による「悪への掃討」は、「現場から」「リアルタイム」で行われるようになる。


「百度」の2008年検索ランキング(http://www.baidu.com/2008/#a02
 中国版YouTubeこと「優酷網(Youku)」をはじめとした動画共有サイトも、昨年あたりから権利侵害コンテンツを排除し、正規コンテンツで勝負しようとする動きが出ている。昨年から中国において、版権元の企業による海賊版コンテンツに対する訴訟が日常的となったためだ。日本のアニメをはじめとした中国国外のコンテンツでは海賊版コンテンツは流通するものの、個人が撮影した投稿が多くを占めるようになった。そうした流れが、見つけたネタを動画共有サイトで公開するという動きを加速していくことだろう。

 海賊版といえば、「百度」の2008年検索ランキングにおいて、毎年不動の1位だった「mp3」が初めて2位に後退したことも、海賊版の浸透状況が少し改善されたとも見えて興味深い。これをもって「中国のインターネットで海賊版コンテンツが徐々になくなっていく」と考えるのは早計だが、「海賊版コンテンツだけがインターネットのキラーコンテンツではなくなってくる」とは言えるだろう。

 2008年の中国の大きな事件やイベントは異常ともいえるほど多かった。さすがに2009年は昨年ほど中国人が追い詰められ、テンションが上がるようなことはないだろうから、「国を旗印に団結して行動する」行為は、継続的には起きるが、規模としては縮小するかもしれない。その一方で、日本人は集団行動が好きと言われるが、それとは別のニュアンスで中国人も団結して動くのが好きで、しかも中国人は「1人だと龍だが、集団だと蛇になる」という、集団になると途端に愚かになりやすいということが昔から言われている。中国のインターネット利用者の増大によって、「人肉捜索」という「祭り」がより巨大化していき、その波が理性をなくし、止められないほど大きな波になってしまうなどということが起きるかもしれない。


関連情報

URL
  連載 山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿
  年始特別編:2008年の中国インターネットを予測する
  http://internet.watch.impress.co.jp/static/column/m_china/2008/01/09/

関連記事
中国のネット人口が2億5300万人に、ブロードバンドは2億人突破(2008/07/25)
中国人とインターネットの関係<前編>(2008/10/03)
中国人とインターネットの関係<後編>(2008/10/10)


( 山谷剛史 )
2009/01/06 10:57

- ページの先頭へ-

INTERNET Watch ホームページ
Copyright (c) 2009 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.