徹底解剖! ルートラボ使いこなし術
●「ルートラボ」とは?
「ルートラボ」とは、オンライン地図上でルートの作成・閲覧などが行えるウェブサービスである。誰でも無料で利用でき、作ったルートを公開・検索できるなど、さまざまな機能もあることから、自転車乗りの支持を集めている。
たとえば仲間とツーリングに出かけるとき、グループで事前にルートを共有できる。あるいはツーリング後、GPSロガーからデータを移植することで走行地図を残せるなど、いわばツーリングの予習と復習を可能としてくれる。そんなサイトを開くのが「日常」というサイクリストは多いのである。
ルートラボのトップページ |
前身はアルプス社が手がけていた「ALPSLAB route」。同社がヤフー傘下となった後、2010年3月にルートラボとしてリニューアル公開した。以来、ユーザーが無料で自由にルートを描けるという方針のもと、さまざまな機能拡張を行っている。
ルートラボでできることは「作る」と「見る」だけではない。スマートフォンなどガジェットへの対応、後ほど詳述するパワー表示や検索など、なにかと自転車乗りの頼りになる機能が満載で目が離せない。
今回はその使い方を初心者にもマスターできるように解説し、ルートラボの多彩な魅力に近づきたいと思う。サービスを利用するにあたっては、パソコンに「Silverlight」をインストールしておこう。それからYahoo! JAPAN IDを作っておき、ルート作成時はログインした上で作業したほうがルート保存時に便利だ。
●まず、ルートを描こう
ルートラボの魅力は、なんといっても自分で簡単にルートマップが描けるところだ。作業はまず、 ポータル画面の左上「ルートを描く」をクリック。難しいことはひとつもない。基本的に点と点を結んでいき、つながっている道ならば自動的にルートを紡いでいってくれる。ルートを描くために最適なインターフェイスが、あなたの画面上に広がるだろう。
ルートラボのトップページで解説されている基本動作。道が繋がっていれば、クリック間は自動的に結ばれることになる |
初期画面では、東京駅を中心にしたマップ画面が表れる。まずは、あなたの描きたいルートのスタート地点まで、検索かスクロールで移動しよう。最初に断っておくと、ルートラボは国内だけのサービスである。
スタート地点を表示させたら、最初のクリックで「START」マークが残される。次からは1クリックが地図上に反映されるから注意。まずは手始めに、距離50km程度のコースで試し書きしてみよう。走りたい道に沿って交差点をクリックしていくと、×印の「GOAL」マークが移動していく。クリック間をつなぐ道は、地図上、紫色の線で結ばれることになる。この作業がルートラボでルートを描く際の基礎になるので、早めに慣れよう。標高グラフで高低差や距離を確認しながらルートを作成できるのも魅力だ。
標高グラフで高低差や距離を確認しながらルートを作成できるのも魅力だ |
おおむね、ルートラボの作成ツールに不満はない。不満があるとすれば、使っているパソコンのスペックに関係してくる。メモリが足りないチョイ重なマシンを使っているときなど、スクロールがカクカクしてもたつくなどの症状は出る。しかし速いマシンを使っていれば、さほどストレスは感じられないはずだ。
ちょっとミスったときは、地図右上にある「1つ戻る」アイコンをクリックすれば、ひとつずつのクリックを遡ってくれる。ここに並んでいる5つのアイコンが、ルートラボのオペレーションを司る。道に沿ってルートを描く「道ピタモード」。道じゃないところに線を引きたければ、2点間を直線で結ぶ「直線モード」。作成を止めて破棄する「ルートをクリア」。そして「データをインポート」(後述)だ。
基本的なオペレーションとなる5つのアイコン |
細かく交差点ごとにポイントをクリックし続けなくとも、道で繋がっている地点と地点が自動にルートを紡いでいってくれる。湾曲するカーブなどへの対応もスムーズ。このように文字で説明するのがもどかしいほど、ユーザーフレンドリーな操作なのがルートラボの特徴だ。ぜひ一度トライしてみてもらいたい。
そのほか、自分で作ったルートの「編集」や「削除」を選べる。ちょっと直すぐらいなら、地図上の×マークをクリックすればメニューが表示され、経由点を削除するほうが早い(削除に対する取り消しはきかないから気を付けよう)。修正・追記作業に関しては、ルートのページ下にあるFAQに目を通しておきたい。
ルート作業が終わったらタイトル、投稿者名、コメント、タグを記入して、画面下の「ルートを保存」をクリック。今後それらは「マイページ」で管理し、いつでも編集することができる。その他、ルートラボの利用にあたっては、ガイドページ(http://latlonglab.yahoo.co.jp/guide/route.html)を読んでおこう。
●ルートを見てみよう
公開されているルートを閲覧するには、まず地名、道路名、タグ付けされたキーワードで検索できるサーチエンジンを使うのが便利だ。アップされているルートは70万超。1日1500件ほど増え続けているという膨大な数のルートの中から、自分の目的にかなった「これぞ!」といったルートが見つかるはずだ。ユーザー数は非公表ながら、多くの自転車乗りが草の根的に蓄積していったものである。
あるいは最近、追加されたばかりの新機能「地図から検索(β)」を試してみよう。地図上の任意のスポットをクリックして「この辺りのルート」を検索すると、地図上に検索結果のルートがパラパラと複数描画されるものだ。
これが地味に用途が多く、たとえば自分で引いたコース近辺で他ユーザーがどのようなコースを描いているのか確認したり、効率優先と思い込んでいた通勤コースに異なるルート発見! など、多方面ではかどるご近所検索である。複数の位置を指定できるので、「東京付近から箱根付近まで」といった“ざっくりとした”ルート検索も可能だ。
検索結果がずらりと表示される「地図から検索」 |
自分で作ったルート、公開されているすべてのルートは、プリントアウトできるほか、ブログなどに貼り付けるためのコードが公開されている。あるいは良いと思ったルートには「スター」を投稿することができる。
ルートの閲覧で優れている点は、スマートフォンへの積極的な対応が挙げられる。自分が作ったルートや公開されているルートをiPhone、Android(β版)のどちらでも活用することができる。GPSによる「現在地連動」に対応していて、端末上で開いた地図に自分の位置情報が反映される。外出先での利用をメインに考えて提供されたサービスである。
あらかじめ走るルートを用意しておけば、移動中の簡易ナビにもなる。これがなんとも痒いところに手が届く仕様。ルートを作っても、外出先で活用できなければ話にならない。スマートフォンをポータブルナビにしてくれる、画期的なウェブ機能である。
iPhoneでのテスト画面。現在地連動を起動させると◆マークが表示される。自分の移動にそって、現在地アイコンは常に画面中心になるように地図が動く |
また、標高グラフの活用度は高い。任意の地点を結んだ標高・斜度を表し、山岳地帯への峠攻めの際にはチェックが欠かせなくなったサイクリスト多し。その他、ポタリングからロングライドまで、ルートを記録する機能も欠かせない。その活用例をいくつか挙げておこう。
キサクナさんによる、ダイナミックな「日本横断そして青森まで」 | べけべけさんによる「通勤ルート」南浦和~千駄木 | 藤野助さんによる「トレイルポタ」町田市小野路 |
●データをインポート/エクスポートしてみよう
もし、あなたがガーミンの「Edge」シリーズなどのGPSサイコンやスマートフォンアプリを使い、ルートラボで描いたルートを活用したければ、GPX、KML、TCX形式でダウンロードすることができる。吐き出したファイルは、たとえばEdgeシリーズならデバイス内の「New Files」に放り込むだけの手軽さである。iPhoneアプリでも、データをGPXファイルで受け取ることでルートラボのルートをシェアできるものが多い。
ルートラボはまた、各種GPSデータ(KML、GPX、TRK、TCX、POIX、au あしあとデータ、NTT docomo 足あとデータ、Sony GPS-CS1Kログデータ)をインポートすることができる。ログを吸い上げたら、自動的にルートが地図上に描かれる仕様だ。
方法は簡単。画面右上の「データをインポート」アイコンを押し、ローカルのファイルをアップする手順に沿っていけばいい。ただし、ルートを構成するGPSポイント数には制限があり、8000点以上だと保存できない。300kmに近い長距離のログは、分割しないと残せない場合があるので注意が必要だ。なお、この機能は制限を解除できるようシステムの更新が取り組まれているところだそうである。
●その他の機能
2011年7月、自転車での地図サービス愛用者の耳目を集めたのが、平均出力に対応したログ表示の実装だ。これにより、ヒルクライム時の距離差、標高差、平均斜度、時間差、平均速度、平均ペースに加え、任意区間におけるパワー表示がされるようになった。
出力の計算式は、mgh/T(質量×重力加速度×標高差÷かかった時間)で算出している。この場合、重力加速度は9.8m/s2で固定。また質量も、本来はライダーごとの乗車重量を入力すべきだが、インターフェイスを簡便にするため現在は69.0kg固定となっている。
平均出力の表示例(LatLongLabブログの記事より転載) |
よって、実際の計算としては69.0×9.8×区間の標高差÷区間の経過時刻という内容になっている。「かかった時間」が必要なので、使えるのはGPSログをインポートする場合のみとなる。その他、企画担当者の熱き思いなどは以下のブログ記事も参考に。
◇LatLongLabブログの該当記事
http://latlonglab.yahoo.co.jp/2011/07/maychangetheworld.html
また、作成したルートには写真やコメントも紐付けすることができ、容易にアルバムマップを作れる。その楽しさはサイクリング以外にもランニングやトレイルランなどでも幅が広がるはずだ。ちなみに写真はFlickr、Twitpic、はてなフォトライフに対応している。ルートラボの機能では難しい部類のテクになるが、以下、基本テクニックだ。
・まず基本的に、コメント・写真は×印で表示される「経由点」にしか付けることができない。
・経由点はどう生成されるかというと、自分でルートを引いた場合、クリックで指示した位置が経由点となる。
・経由点と経由点の間の任意の位置にコメント・写真を付けたい場合は、そこに経由点を追加する必要がある。
経由点を追加する方法は、次の通り。
1. Ctrlキー(Macの場合はAキー)を押したままルート上にマウスカーソルを動かすと、赤い×印が表示され、そこに経由点を置けることが示される。
2. Ctrlキー(Macの場合はAキー)を押したままルート上の置きたい位置でクリックすると、経由点が追加される。マウスカーソルを離すと黄色の×印が増えているのがわかる。
GPSログをインポートした場合、始点と終点にしか経由点は設定されない。GPSログにコメント・写真を付けたい場合は、必ず経由点を手動で追加する必要がある。
ただし、特にGPSログの場合、付与した経由点をドラッグで移動してしまうと、元々のGPSログのデータが失われてしまう。Ctrl+クリック(Macの場合はA+クリック)で追加した経由点は、決して移動しないように注意しよう。
上記理由により、GPSデータにコメント・写真を追加するのはややセンシティブな操作になっている。この点については現在改善に向けて開発が進められている。
なお、ルートラボガイドでの説明は以下にある。
◇経由点にコメントを追加する
http://latlonglab.yahoo.co.jp/guide/route.html#draw_7
◇経由点を編集する
http://latlonglab.yahoo.co.jp/guide/route.html#draw_2
●次世代ルートラボは?
開発チームのひとり、河合太郎氏(Twitterアカウント:@inuro)は以前、ルートラボの原点を「単純にルートを共有できる容易な手段が他になかったから」と語ってくれたことがあった。氏も自転車乗りの一人。ルートラボの魅力のひとつである「標高プロフィール図を容易に描く手段」など、自転車乗りの視点で作ったと明かす。そのときのインタビューは雑誌『自転車人』21号に掲載されているので、ご興味あればお読みいただきたいが、同時に「自分たちが使いたいものがないから作った」と、IT技術者らしいコメントも残しているのも印象的だった。
ルートラボのほか、バーチャルレースサービス「猛レース」、iOS向けウェブサービス「yubichiz」、iPad向けウェブサービス「offchiz」など、実験サイト「LatLongLab」では多彩な地図サービスを提供している。果たして、ルートラボにおける今後の未来図はどのようなものだろうか? 私のTwitterフォロワーに問いかけると、次のような声が挙がった。そのひとつひとつに、開発チームにコメントをもらった。
――「カシミール」(風景、山岳展望シミュレート、断面図を作成できるフリーソフト)が実装している3D機能は?
開発チーム:ルートラボ本体を多機能化するより、ルートを様々なビューで見られるように流動性を高める方向に持っていきたいと考えています。だから本体に3D機能を組み込む予定はありませんが、別の形でサービスが出ることはあるかもしれません(今現在計画はありませんが)。
――スマートフォンからのルート作成も可能に?
開発チーム:これは、現在のSilverlightを用いた作成画面をリニューアルする予定と合わせて検討中です。ただスマートフォンから作成する場合、どのような要件がメインなのか(地図をタップして一からルートを作っていくのか、それともGPSログをアップするのか)もう少し考えないといけないので、この点についてもユーザーさんのご意見をいただけるとありがたいです。
――写真の位置情報データと連動し、ルートを再生に併せてスライドショーをしてくれる機能が欲しい。
開発チーム:これも最初のご質問への回答に近いですが、ルートラボ本体を多機能化するより、ルート+写真のセット、といった具合にマッシュアップできる形が良いのではと考えてます。そもそも現在はルートラボ本体ではルート上に写真を結び付けることしかできないので、任意の位置にメモや写真を置けるようにできる方向で検討中です。
――複数ルートのレイヤー表示が欲しい。既存のルートを参照しながら別のルートを手描きできると便利。
開発チーム:これはなるほどと思いました。既存のルート以外にも、ランドマークを検索してそれを参照しながらルートを描く、といったものも考えられますね。検討します。
どうだろう、ルートラボの未来図。地図好きなら、わくわくする話に違いない。ユーザーからの声に耳を傾け、自身がユーザーとなって(多くは自転車乗り)地図を生み出す開発チームに敬意を表して。これからもいいサービスを続けていってください!
関連情報
2011/12/26 06:00
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