デジタルガジェット好きのための「サイクルモード」見学レポート


サイクルモードとは?

 千葉・幕張メッセで11月4日から6日まで、日本最大のスポーツ自転車展示会「サイクルモード」が開催された。サイクルモードは2005年から毎年秋に開催されており、今年で7回目。11月12日、13日には大阪・インテックス大阪でも開催され、来場者数は6万人を超えることが予想されている。

 幕張メッセの場内は国内外メーカーや代理店の展示ブースが立ち並び、さまざまな機材やパーツ、ウェアなどの最新モデルを間近に見ることができる。出展ブランドは600以上。また、会場に設置されたコースでロードバイクをはじめとする各種自転車の試乗が可能だ。

会場の風景会場に設置されたコースではロードバイクをはじめとする各種自転車の試乗が可能だ

 メインステージではサイクルウェアのファッションショーやトークイベントが開かれ、ゲストには海外レース参戦中の別府史之、新城幸也の両選手のほか、自転車好きなタレントの玉ちゃん(浅草キッド)や吉澤ひとみ、団長安田(安田大サーカス)らが出演。そのほか、今年からトライアスロンエリア、国内のハンドメイドビルダーを集結させたゾーンも増幅され、自転車乗りにとって「至福の空間がココにあり!」といった雰囲気が充満していた。

 人気ブランドの試乗希望者は列をなし、ローラー台の試乗ブースでは熱気あふれる光景が見られる。また、KEIRINブースでは女性選手たちの姿も見られた。チームキープレフトのブースでは自転車界のご意見番・疋田智、最近結婚が報道されたサイクルナビゲーター・絹代のトークイベントが開かれ、ルール&マナーを守ってスポーツ自転車を愛する観客が集まっていた。

 自転車界の秋の風物詩――それがサイクルモード。今回はサイクルコンピューターをはじめとするデジタルガジェットをくまなくチェックしてみた。来年以降の「モード」となる機材を紹介していこう。

自転車事業参入のパイオニア、Android搭載のプロ仕様サイコンを参考出展

ポタナビ

 昨年のサイクルモードで発表され、一躍注目を浴びたパイオニアの自転車関連機器事業。今年もブース展開され、先ごろ2012年春の発売がアナウンスされた「PotterNavi(ポタナビ)」が展示されていた。

 名前からも伝わるが、この機種のターゲットは自転車で気軽に街の散策を楽しむ「ポタリング」層。カーナビのように「道案内をするためのナビゲーション」ではなく、ルートに束縛されず「自由にポタリングを楽しむため」に開発されたサイクルコンピューター(サイコン)である。

 まず、マップナビモードは出発地、目的地、現在地点をポイントラインで結んで表示。専用ウェブサイトでルート作成も可能だ。もうひとつはタイムサークル表示。あらかじめ設定した時間内に往復できるゾーンをサークルで表示する。時間が限られたサイクリングにでかけるときなど、距離の指標になるだろう。

 また、ポップアップナビモードでは、周辺情報や天気情報を表示。トイレや給水場所に加えて、話題のスポットやイベント情報などをNTTドコモの3G回線を使った通信により自動取得してリアルタイムに表示する。こうした機能はカーナビで培われたパイオニアの実力を感じることができよう。

 サイコン機能では、ダイエットモードが目で見て楽しい。クランクを回すケイデンス値に応じてキャラクターが変化し、楽しさや達成感を視覚的にあらわす。メーターモードは速度や心拍などの値を、走行目的に応じて自分好みの表示ができるようにカスタマイズ可能になっている。走行ログは通信機能により、自動的に専用ウェブサイトにアップされる。走行ルートの共有やおすすめルートの取り込みもできる。

 前述のようにデータ通信モジュールはNTTドコモの通信回線を利用し、2年間は無料で使用することができる。期間終了時に延長契約(有料/価格未定)すると、引き続き利用することができるということだが、実際の通信費用がどれくらいかかるかは現時点わかっていないのが不安。バッテリーは最大10時間持続、価格は4万円前後の予定だ。

マップモードスピードメーター
話題のスポットを表示してくれるダイエットモード
アスリートをターゲットにしたサイコンの概要

 もうひとつ、パイオニアには大事な出展品がある。プロ選手や実業団選手、アスリートをターゲットにしたサイコンだ。名称や発売時期に関してはまったくの未定であるが、昨年の試作品公開から待ち望む声が多い。

 その機能の一番の目玉は「ペダリングモニタセンサー」と呼ばれるもの。ペダルにかかる「力の大きさ」「方向」「ペダリング効率」の計測・表示を行い、ペダリング時の回転ベクトルをグラフィカルに表示するところが、従来のパワーメーターとの違いを生み出している。

 試乗車で体験させてもらったが、これが結構難しい。ペダリングのロスや無駄な力がひと目でわかる。クリート付きのサイクルシューズを履いていなかったから、引き足が特に弱くなる。しかし、こうしたことを意識することで、より効率のいいペダリングを身に付けていけるのが「ペダリングモニタセンサー」に期待が集まる理由だろう。

 AndroidをベースにしたOSを採用し、専用アプリケーションの追加や開発を容易にしているのも特徴的だ。昨年の試作品から今年はタッチパネルに仕様変更し、製品化がじわじわ近づいているのを実感できた。

ペダルにかかる力の大きさ、方向、ペダリング効率を計測できる。赤は回転に寄与する力、青は逆回転する無駄な力を示している
スピード、ケイデンス、パワーの数値も表示するパワーの推移
サイコンの走行データをアップロードできる解析サービスも参考出展していた走行データをアップロードすればペダリング効率に基づいたランキングがわかる

ガーミンのパワーメーター戦略

左からEdge 800J、Edge 705、Edge 500

 GPS内蔵サイクルコンピューター「Edge(エッジ)」シリーズで人気のガーミンは、来春発売予定(海外)の新製品を参考出展。ペダル内蔵型パワーメーター「VECTOR」だ。

 前述したパイオニアのサイコンもそうだが、風などの外的要因に左右される速度やケイデンスではなく、相対的なパワー(踏力)を測るトレーニング方法がロード競技者にとって必須となってきている。この「VECTOR」はガーミンが満を持して投入するパワー計で、Edge 800と連動してペダルにかかるトータルパワー、左右バランス、ケイデンスが包括的に計測可能となっている。

 実際に試乗車でローラーを回してみた。Edge 800Jによる日本語表示は見やすく、レスポンスも上々。 Edgeユーザーならばわかると思うが、キビキビとした挙動と視認性がここでも展開されている。これは買うしかない!

 しかし、国内代理店である「いいよねっと」からの発売はまったく未定。ペダルはLOOKの専用品となるので、値段はちょっと高い。海外販売で1600ドル。国内販売では十数万円といったところか。重量はペダルとペダルポッド含め、ペアで356g。ユーザーが交換可能な電池(CR2032)を使用して、200時間稼働するとアナウンスしている。

ペダル内蔵型パワーメーター「VECTOR」

日本製GPSマシンの雄、ユピテル新製品

アトラスのブース

 国内メーカーとしては他社より先んじてGPSサイコンに取り組んできたユピテル。サイクルモードに時期を合わせて、ATLASシリーズの新ラインナップを投入してきた。

 まずはハンディGPSマップの「ASG-CM13」。フルカラーのタッチパネル画面は従来機種でも取り入れられてきたが、箇体の大きいのが難点だった。今回の新製品ではサイズをシェイプアップし、スマートなボディが特徴となっている。

 昭文社「MAPPLEデジタルデータ」をバンドルしているから、改めて地図ソフトを買う必要がないのも利点だ。目的地の方向を示すナビゲーションシステムは経路ガイドしないが、そのかわり検索機能に長け、50音、業種別、電話番号、住所などから目的地を設定することができる。

ハンディGPSマップ「ASG-CM13」マップ画面設定
スピードメーターや消費カロリーなども表示する過去に記録した自分の走行データと競争できる「セルフトレーナー機能」

 もうひとつ最新作は、ハイエンドサイクルコンピューター「AS-CC2700」。サイコンに求められる必要最低限の機能を装備し、2.7インチ液晶の大画面が見やすい。表示も好みによってカスタマイズでき、縦8画面のメーター、グラフ、ヒストグラムに加え、セルフトレーナーで目標値を設定したトレーニングが可能。

 また、前部のLEDによる点滅フラッシュ機能、ベルとなるリン機能を備えている。これらの機能や画面切り替えは、本体を傾けるツイストアクションにより容易に行うことができる。

ハイエンドサイクルコンピューター「AS-CC2700」縦横を切り替えて取り付けることも可能

 ……と、サイコンについてひと通りレクチャーを受けていると、気になるものが片隅に展示されているのを発見。ライトである。GPS機器のメーカーがなぜ? と訊ねると、いわく「自転車好きが開発チームに多く、ライトも作ってしまいました」。最大照射5000カンデラ相当(220ルーメン)はスペック的に魅力十分。ヘッド部分を回転させると照射範囲の無段階調整が可能で、光量は3段階に切り替えられる。加えてフラッシュパターンとSOSモールス信号点滅も選べる。この「AS-CL5000」の後継機種も準備されているというが、そちらは出展せず。残念。

激坂を予告してくれる「自転車NAVITIME」の新機能

 iPhoneに続き、Androidでも利用が可能になったナビアプリ「自転車NAVITIME」。12月中旬から追加される新機能を携えて、ナビタイムジャパンもブース展開していた。アプリがサイクルモードに出展するのは初めてのことだと思うが、それもスマートフォン時代を象徴する出来事かもしれない。

 新機能のひとつは「走行ログ機能」。走行したルートや距離、消費カロリーなどを記録・閲覧できるというものだ。月ごとのリスト、日ごとのリストで見ることができ、走行ルートが地図上に線で表示される(本機能は月額170円で利用可)。

 もうひとつは「地点やルートのシェア機能」。地点やルートをメールやTwitterなどで送ることができる。おすすめのスポット、お気に入りのサイクリングルートを友人や仲間と共有する楽しみが生まれる(本機能は無料で利用可)。

 このほか、参考出展段階の機能として「坂道音声案内」がある。坂の多い/少ないルート検索は「自転車NAVITIME」の特徴的な機能だが、それに加え坂道の手前で「ゆるやか」「急」「激しい」など、坂道の斜度の程度と上り・下りを音声ガイドしてくれるというもの。画面上では、坂道が続く距離も表示される。

走行ログ機能の画面地点やルートのシェア機能
坂道の手前で坂道の程度を教えてくれる機能坂道音声案内機能の概要

番外編 エリートが一番熱かった!

 ローラー台のメーカー「エリート」のブースが熱かった! 同社のハイエンドマシン「リアルパワーCTワイヤレス」を使った、試乗コンテストを行っていたのだ。このマシンはローラー台に映像が融合されたヴァーチャルトレーナー。最大20%の勾配をビジュアルと連動した負荷で回すという“変態”ローラーだ。

 会期中に開催された「リアルアクション・ヒルクライムアタック!」は、その内蔵コースのミラノ~サンレモの登坂区間を所定時間にクリアできるかどうかというチャレンジ系。ここに列をなす挑戦者と見物人が多かった。タイムをクリアするとボトルをもらえるから、チャレンジャーはみな必死である。クリアすると拍手。クリアできないと「あ~あ」という残念なため息……ある意味ガジェットを使った、よくできたアトラクションだった。

ローラー台のメーカー「エリート」のブースミラノ~サンレモのバーチャルコース

関連情報

2011/11/10 12:07


増渕 俊之
 愛車スペシャライズド・アレーに乗り、多摩サイや尾根幹に出没するフリーランスの編集&ライター。定期媒体は『MdN Design Interactive』『宝島』『自転車人』など。編著に『これがデザイナーへの道』『自転車ファンのためのiPhoneアプリガイド』がある。