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第88回:気圧高度計などを備えた多機能ロガー「PocketGPS S1」レビュー


 最近はGPSロガーの種類も増えており、中には差別化を図るためにさまざまな機能を付加しているものもある。このたびハンファ・ジャパン株式会社が発売した「PocketGPS S1(PG-S1)」にも、ロガーとしての機能だけでなく、電子コンパスや気圧計による相対高度計測、MP3再生、ボイスレコーディングなど多彩な機能が搭載されている。今回はこのGPSロガーについて詳しくレビューしよう。


GPSロガー「PocketGPS S1」 サイズは45.0×67.2×16.4mm

高感度チップを採用したAGPS対応ロガー

 ハンファ・ジャパンというとPND(低価格カーナビ)でおなじみのメーカーであり、最近では同社の直販サイトで1万2000円を切るPNDを発売したばかりだ。今回紹介するPG-S1はPNDとは違って地図表示機能を持たないシンプルなGPSロガーだが、その価格は1万4900円(同社直販価格)とPNDより高い。この値付けを意外に思う人もいるかもしれないが、PG-S1の多機能ぶりを見ると納得がいくだろう。

 単に緯度・経度・高度を記録するだけでなく、方位を調べるための電子コンパスや、相対高度を測定するための気圧計も内蔵している。さらに音声の録音・再生機能も搭載しており、ボイスレコーダーやMP3プレーヤーとしても使える。ログを取りながら、音声メモを録音したり、音楽を聴いたりといったさまざまな使い方が可能なのだ。また、USBマスストレージクラスに対応しているので、ユーザー領域として用意されている約1600MBをUSBメモリーのようにストレージとして使うことも可能だ。

 GPSチップには-165dbmの高感度を実現した台湾MediaTek社のMT3329を使用し、AGPS(Assisted GPS)にも対応している。AGPSとは、衛星軌道データをあらかじめ取得しておくことで、電源を入れてから測位開始までにかかる時間を短縮できる機能のこと。USBでPCに接続したときにインターネット上から衛星軌道データをダウンロードして、PG-S1にデータを転送できる。

 電源はリチウムイオンバッテリー(1000mAh)で、駆動時間は最大約13時間。サイズは45.0×67.2×16.4mm(横×縦×厚さ)、重量は約56g。実物を見るとかなり軽量・コンパクトで、実際にポケットに入れてジョギングしてもそれほど気にならなかった。ただし専用電池なので、長期にわたる山行などには向かない。本体が防滴・防塵仕様ではないのも残念だ。気圧高度計を生かすためにも、できればアウトドアで使いやすい防滴仕様にしてほしかった。


基本モードの画面では、経過時間および相対高度、緯度・経度などが表示される 方位がわかるコンパスモード

総上昇距離および内蔵気圧計による相対高度がわかる高度モード USBケーブルを接続すると充電される

高解像度のディスプレイにさまざまな情報を表示

 操作ボタンはモードの切り替えを行う「MODE」ボタンと、電源ON/OFFやメニュー画面での選択の確定を行う「OK」ボタン、そして記録の合間に区切りを設けるための「LAP」ボタンの3つが前面に配置されている。

「REC」ボタンや音量調整ボタンは本体横に搭載

 このほか、音声関係の操作ボタンが右サイドに搭載されている。ボイスレコーディングを行うための「REC」ボタンと音量調整ボタンがあり、音量調整ボタンはメニュー選択も兼ねている。GPSロガーとしてはボタンの数が多いほうだが、操作方法を覚えるのはそれほど難しくない。

 液晶ディスプレイは1.5インチで、解像度は128×128ピクセル。「MODE」ボタンを押すと、経過時間や相対高度、緯度・経度を表示する「基本モード」、現在速度や区間LAPなどを表示する「運動モード」、相対高度の変化をグラフで表示する「高度モード」、「コンパスモード」、そしてメニュー画面と、5種類のモードに切り替えられる。

 このほか、メニュー画面で「Re Tracking GPS」を選択すると、記録した軌跡の全体図が表示される。地図と重ねて見られるわけではなく、軌跡の形が小さく表示されるだけだが、軌跡の全体像を見通すには便利だ。

 なお、すべてのモードでLAPボタンを押すと、その時点でLAP情報およびウェイポイント(点)として記録されて、新たなLAPの計測が始まる。この使い勝手はなかなかいい。


現在速度や区間LAPがわかる運動モード 記録したログの全体図がわかる

PCに接続して衛星軌道データを更新可能

 使用にあたっては、最初に「OK」ボタンを押すと電源がONになり、自動的にログの記録が開始される。ログの記録のON/OFFを切り替えるには詳細設定の画面を呼び出す必要があり、ワンタッチで切り替えられるわけではない。「ON」に設定したまま電源を入れている間は、メモリーに空きがある限り常にログを取得していることになる。


AGPSの更新ツール

 GPS衛星を3つ捕捉するとディスプレイ左上に「2D」、4つ以上捕捉すると「3D」のアイコンが表示される。「2D」でもログの記録は継続されるが、「3D」の方が精度は高い。衛星捕捉が始まるまでの時間は、AGPSを使うとコールドスタートに比べてかなり早くなる。AGPSに対応していないHOLUX社の「M-241」とウォームスタート時に比べてもPG-S1のほうが早く捕捉できるときが多かった。

 AGPSを使う場合は、PCに衛星軌道データの更新ソフトをインストールし、USBケーブルで接続してから「Scan COMPORT」をクリックする。PG-S1を認識したら「Update AGPS」をクリックすると、インターネット経由で衛星軌道データを取得してPG-S1のデータが更新される。使用する前にあらかじめ更新しておけば、かなり快適に使えるだろう。もちろんAGPSのデータ更新を行わなくても、捕捉に時間がかかるだけで普通に使用することは可能だ。

 AGPSの更新ツールとは別に、ログをPCに転送するためのツール「Storysh」が本体のメモリー内に格納されており、ここからPCにインストールできる。「Storysh」を使うとログの転送だけでなく、デジタルカメラで撮影した写真と時刻で同期させて、ジオタグを付加することも可能だ。


「Storysh」のメイン画面

 ログの表示にはGoogle Maps APIが使われており、Google Mapsの地図上でログを確認できる。ただし、ログの分割・結合やポイントの削除・間引きといった編集機能は搭載されていない。なお、PG-S1のメモリーには、ログは拡張子「log」が付いたテキストファイルとして保存されるが、「Storysh」に転送して出力する場合のファイル形式は、KML、GPS、CSV形式の3種類となる。


Google Maps上にログを表示できる

設定画面

山岳地で安定した軌跡を記録

 それでは実際にログを記録して比較してみよう。まずは都市部で自転車に乗って取得したログだ。比較として使ったのは、HOLUX社の「M-241」とGARMIN社のハンディGPS「GPSMAP60CSx」。いずれもログの精度には定評がある機種であり、結果が気になるところだ。なお、地図中の赤線がPG-S1、水色がM-241、青線がGPSMAP60CSxである。ログ掲載にあたっては、1秒ごとの取得にセットして、ポイントを間引いたKMLファイルをGoogle Mapsのマイマップで読み込んだ。


上野駅周辺

上野駅周辺(拡大図)

 開けた大通りはほぼ3機種とも同じような軌跡を示したが、首都高の高架やビルが多い上野駅周辺では軌跡が散らばった。電波が入りにくいエリアに入った直後はM-241が最も粘り強く、PG-S1は実際に通ったコースよりも少しカーブ外側に膨らんだ。ただ全体的には大きく外れているわけではなく、個人的には許容範囲だ。

 次に山岳地でのログを比べてみた。画像は筑波山の御幸ヶ原コースで取得したログである。広々と開けた場所ではあまり違いが出ないので、今回はあえて条件の悪い樹林帯の急登コースを選んだ。


筑波山登山道

筑波山登山道(拡大図)

 ログの外れ方が最も大きかったのはGPSMAP60CSxで、ケーブルカーの路線に少し被ってしまったときもあった。PG-S1とM-241はだいたい同じような場所を通過しており、安定したログを取れる印象だ。

 最後は鉄道に乗って取ったログを比較してみた。乗車区間は東武鉄道の北千住駅から浅草駅までで、GPSロガーは窓際に置いて取得した。


東武鉄道(北千住駅−浅草駅間)

業平橋駅付近

牛田駅付近

 全体的に大きく外れることはなかったが、業平橋駅および牛田駅付近で、PG-S1だけ線路を外れてしまった部分があった。総合的に見ると、GPSMAP60CSxやM-241に比べて格段に精度がよいというわけではないが、この2機種に近い性能は十分持っていると感じた。

内蔵気圧計による相対高度計を搭載

 最後に、この機種の特徴のひとつでもある高度計測機能をチェックしてみよう。

 PG-S1には、内蔵気圧計による相対高度と、GPSの測位によって得られる絶対高度と、2つの高度計測機能が搭載されている。

 相対高度の値は、ログを取り始めた地点からどれくらい高度が上昇したのかを示す。一方、絶対高度は衛星測位で算出した値だ。筑波山・男体山頂における絶対高度の計測値は876mだったため、地図に記載された男体山頂の標高は871mよりも5m高い値となった。

 このようにGPS計測では高度の誤差が出るので、気圧計測による相対高度計も併用できるのはありがたいのだが、実はこちらのほうもそれほど精度が高いわけではない。スタート地点の標高はGPS計測で189mで、二万五千分の一地形図で確認してもやはり180m台。これに相対高度の計測値である666mを足しても855mにしかならず、GPS高度よりもさらに誤差が大きくなってしまった。


筑波山・男体山頂での計測値(絶対高度) 筑波山・男体山頂での計測値(相対高度)

 ちなみにこの相対高度はログにも記録されず、記録されるのはGPS高度のみとなる。出発地点の高度をチェックした上で、さらに計算しないと高度の絶対値がわからないのも少し面倒だ。GARMINのGPSMAP60CSxなどにはGPS計測の高度を使って相対高度を校正する機能が付いているが、できればPG-S1にも絶対高度と相対高度をリンクさせる機能や、基準となる標高を入力して手動で校正できる機能を搭載してほしかった。

 このような高度計測機能の不満はあるものの、GPSロガーとしての基本機能の高さや、MP3の再生や録音機能、GPSロガーとしては情報量の多いディスプレイ、AGPS対応、電子コンパス、軽量・コンパクトな点などを考えると、PG-S1はなかなか魅力的な1台であると思う。価格が少し高めなのが気になるが、これらの付加価値に魅力を感じる人は要注目だ。


山行中の基本モードの画面 衛星捕捉状況もディスプレイでチェック可能




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2010/6/17 06:00


片岡 義明
地図に関することならインターネットの地図サイトから紙メディア、カーナビ、ハンディGPS、地球儀まで、どんなジャンルにも首を突っ込む無類の地図好きライター。地図とコンパスとGPSを片手に街や山を徘徊する日々を送る一方で、地図関連の最新情報の収集にも余念がない。書籍「パソ鉄の旅−デジタル地図に残す自分だけの鉄道記−」がインプレスジャパンから発売中。