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趣味のインターネット地図ウォッチ

第95回:地理情報空間の関係者・企業が集結! 「G空間EXPO」を見てきました


メインステージで行われたテープカット

 地図や位置情報をテーマとしたイベント「G空間EXPO」が9月19日から21日までの3日間、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜にて開催された。“G空間”とは地理情報空間を意味する造語で、これを活用した新産業や新サービスの創出を目指して、産・官・学が共同で“G空間プロジェクト”を推進している。

 同イベントは地図や位置情報サービスをはじめ、衛星測位やGIS、ITS、測量、リモートセンシング、防災、建築など幅広い分野を対象としている。実行委員会にも各分野の協会や学会、研究所などが多数参加しており、国からも国土交通省や国土地理院のほか、内閣官房や経済産業省などさまざまな省庁が支援している。今回が初の開催となるが、イベント内のシンポジウムの中には以前から独立して開催されていたものもあり、まさに地理情報空間に関連する人々が集結したイベントとなった。


御影石の三角点杭を展示したカクマル さまざまな種類の地図を展示

会場内で屋内測位の公開実験を実施

 出展者層もさまざまで、地図会社や測量機器会社、ソフトハウス、総合電機メーカー、ITベンチャー、大学などバラエティ豊かな顔ぶれとなった。マピオンや昭文社などの地図サービス企業、そしてESRIジャパンやパスコなどのGISベンダーはもちろん、マイクロソフトやNEC、富士通、ホンダ、キヤノンなどの有名企業も出展した。特にマイクロソフトはベータ版をリリースしたばかりのInternet Explorer 9をアピールし、地図描画などのデモを行っていた。このほか、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げたばかりの準天頂衛星「みちびき」の模型なども展示されていた。


AR体験コーナーを設けたパスコのブース 衛星測位のコーナー

Internet Explorer 9をアピールするマイクロソフト 国土地理院のブース

準天頂衛星「みちびき」の模型を展示したJAXA 防災科学技術研究所のブース

 そんな中、特に盛り上がりを見せていたのは屋内測位だ。展示場には、GPSと互換性のある信号を使う屋内測位技術「IMES(Indoor Messaging System)」の送信機が10機、無線LANを使って屋内の位置を検出する「Place Engine」のアクセスポイント60機が設置され、これら2種類の屋内測位を利用した公開実験やデモが行われた。

 IMESを使った公開実験としては、会場内に配置された動物を探すという子供向けのイベント「どうぶつラリーゲーム」が開催された。また、会場内を巨大なスーパーに見立てて、ショッピングカートを押しながら巡り歩く「買い物支援アプリケーション」のデモも行われた。

 Place Engineについてはアクセスポイントがかなり多く配置されたこともあり、高精度な位置測位が可能となった。これを利用して、マピオンによる展示場内スタンプラリーや、クウジットによるモバイルARマーケティングツールのデモなどが行われた。


会場内に設置されたIMESの送信機 IMES送信機の位置を示すインディゴのMap MashUp Manager

展示場内をカートを押しながら巡る「買い物支援アプリケーション」 マピオンが実施した展示場内スタンプラリー

 クウジットのデモ「GnG(GET and GO)」は、無料貸出のスマートフォン「XPERIA」にアプリをインストールし、ARマーカーにかざすと、3DのARエフェクトの表示後に展示概要が表示される。そのまま「ブースへGO!」というボタンを押すと、該当するブースへの道順がマップ上に表示されて、屋内ナビゲーションが可能となる。ブースに到着したら受付のARマーカーに再び端末をかざすと、より詳細な展示情報が得られるという仕組みだ。

 このほか、Twitter上に投稿されたつぶやきをマップ上で可視化するというインディゴの「リアルタイム3次元地理空間情報DB」や、サービス工学研究センターによる「歩行者デッドレコニング(PDR)」のデモも行われた。デッドレコニングは加速度センサーやジャイロによって相対的に自己位置を推定する技術で、大型ディスプレイ上のマップに自己位置の軌跡を表示してナビゲーションが体験できるようになっていた。

 体験イベントとしては、PASMOやSuicaに記録された電車の乗り降り情報を路線図に表示する「ジャッポッポ」や、歩測することで測量の原点を知ることができる「距離を測る体験コーナー」、横浜市内を測量しながら歩く「G空間ウォーキング」などさまざまな催しが開かれた。


XPERIA上で屋内ナビを体験できるGnG マップ上につぶやきを表示する「リアルタイム3次元地理空間情報DB」

会場内での軌跡を表示する歩行者デッドレコニング 距離を測る体験コーナー

位置情報コンテンツをテーマとした「ジオメディアサミット」

 展示会と並んで、シンポジウムも数多く開催された。初日に開催されたのは、日本国際地図学会による「地理空間情報時代の『地図』」で、ここでは“絵地図師”として有名なグラフィックデザイナーの高橋美江氏による「絵地図進化論」や、横浜市都市経営局の入江佳久氏がGISへの取り組みを語る「横浜と地図」といった講演が行われた。高橋氏は絵地図を作成するプロセスを解説するとともに、絵地図上で自分の現在地を調べられるiPhoneアプリ「東京下町散歩」や、リリース予定のiPadアプリの紹介も行った。

 2日目には位置情報コンテンツをテーマとしたシンポジウム「ジオメディアサミット」が開催された。今回で6回目となるジオメディアサミットは、以前から位置情報サービスの関係者が集まるイベントとして人気を集めていたが、今回はG空間EXPOに合流する形で、丸1日かけての開催となった。

 午前中にはビジネスセッションとして、携帯電話向けCMSの「katy」を提供するマイネットジャパンや、“位置ゲー”の先駆者として知られるコロプラが講演を行った。まずコロプラの事業開発部マネージャーの山崎清昭氏が、全国で展開している「コロカ」というカードの仕組みについて解説し、後半には東京メトロ営業推進課の古川守氏も登場して、コロプラと提携して行ったキャンペーンについて語った。最後はライブドアの開発部の佐々木大輔氏がショートプレゼンとして、スタートしたばかりの位置情報サービス「ロケタッチ」を紹介した。「foursquare」と似ているという指摘もあるロケタッチについて、両サービスの考え方の違いと、これからの展開について語った。


iPadアプリを紹介する“絵地図師”の高橋美江氏 ジオメディアサミットの主催者・関治之氏

東京メトロの古川守氏 「foursquare」との違いをアピールする「ロケタッチ」

ヤフーがAR参入へ、「Yahoo!オーディエンス」ちら見せ

 「ジオメディアサミット」では、午後にテクニカルセッションが行われた。ここではデジタル地図を六角形のHexに区切って管理する「GeoHex」という技術や、Android地図ビューア「WMC」、オープンストリートマップ(OSM)などに関する講演が行われ、さらにパネルディスカッションも開催された。パネリストは、テクニカルセッションで講演した3名に加えて、ジオメディアサミットの主催者であるシリウステクノロジーズの関治之氏や、名古屋大学の河口信夫氏、iPad専用地図サイト「Yubichiz」を開発したYahoo! LatLongLabの河合太郎氏ら計6名。位置情報コンテンツのプラットフォーム選択や、これからの注目技術について議論が交わされた。

 なお、ディスカッションに先立ってYahoo! LatLongLabの河合太郎氏が、近日リリース予定の「Yahoo!オーディエンス」というARサービスを紹介した。これは実店舗でのショッピングにおいて、携帯端末のカメラを商品のバーコードにかざすと詳細情報や口コミをオーバーレイ表示するというもので、iPhone用アプリとしてリリースされる。イメージとしては漫画「ドラゴンボール」の中に登場する“スカウター”のようなもので、位置情報から店を特定して、その店の情報やサービスを表示する機能なども盛り込むという。Yahoo! JAPANが提供する初のARアプリということで注目される。


地図を6角形のHexで区切る「GeoHex」の解説 Android用地図ビューア「WMC」

「Yahoo!オーディエンス」のサービスイメージ テクニカルセッションのパネルディスカッション

 続くエンターテインメントセッションでは、複数の位置情報コンテンツのIDを共用するためのプラットフォーム「LOGO」や、一目惚れを記録するiPhoneアプリ「ヒトメボ」、「gooラボ」が提供する位置情報をベースとしたQ&Aコンテンツ「PinQA」、鉄道の駅を集める位置情報ゲーム「駅コレ」などが紹介された。「ヒトメボ」については、ユーザーのファッション動向を収集してエリアごとの傾向を示す「ファッションMAP」や、ARアプリ「ヒトメボスコープ」など将来に向けての展開が発表された。

 また、最近話題の「ARG(代替現実ゲーム)」の紹介もLLP日本代替現実クラブの本木卓磨氏によって行われた。本木氏は、ARGとジオメディアが組み合わさることにより、教育や医療、社会問題を解決するシリアスゲームなどの実現も可能となると語り、“ARG的”な思考を持つことを呼びかけた。

 最後に、5分程度の短いプレゼンテーションが次々に行われる「ライトニングトーク」が行われた。ここではテキストを対象にした位置表現抽出・管理サービス「LocoSticker」や、可視光通信を使った屋内位置検出システム、新幹線の列車名判定API「新幹線なう」など計8本のサービスや技術が発表された。さらに夜には懇親会も開催されて、ジオメディアの最新情報について活発な情報交換が行われた。


一目惚れの状況を映像に重ねる「ヒトメボスコープ」 ARGとジオメディアを組み合わせた事例
「LocoSticker」の解説

多彩なジャンルのシンポジウムが開催

 最終日となる21日には、gコンテンツ流通推進協議会およびGIS総合研究所によるシンポジウムが開催された。午前にはKDDIの高木悟氏やマイクロソフトの五寶匡郎氏、国土地理院の鎌田高造氏、内閣府IT参事官の野口聡氏ら6名が参加して、それぞれの講演とともに「HTML5時代の地理空間情報」をテーマにパネルディスカッションが開かれた。

 さらに午後には「gコンテンツワールド」が開催されて、ヤフー地域サービス本部長の村田岳彦氏やクウジットの塩野崎敦氏らによる講演が行われた。ヤフーの村田氏は、地域・生活圏情報の流通を目的とした「Yahoo! Open Local Platform(YOLP)」を紹介し、位置情報を含めた地域情報をストレージに蓄積してAPIとして提供する仕組みを解説した。YOLPのAPIでは複数種類の地図画面や多彩な地図表現が用意される予定で、ジオコーディングやローカルサーチなどの機能も搭載される。村田氏は「ある地域の情報をまとめて発信するのが得意なプラットフォームなので、自治体が一からサイトを構築する時などに使っていただくと安く早く作れます」とアピールした。


GIS総研が開催したパネルディスカッション YOLPの利用イメージ

 ほかにも防災科学技術研究所や測位航法学会、国土地理院や経済産業省などによるシンポジウムが数多く開催された。政府や業界団体による堅めのシンポジウムから、ジオメディアサミットのような草の根のイベントまで、幅広いイベントが一堂に会したG空間EXPO。複数のシンポジウムが同じ時間帯に多数行われたことにより、どれに出席したらいいのか迷うほどの充実ぶりだった。

 このイベントには“G空間”というキーワードを軸に地理空間情報関連の企業や組織が参加したわけだが、一言で地理空間情報と言ってもジャンルは多岐にわたり、“G空間プロジェクト”に対する各業界の期待度や注力の度合いには温度差も感じられた。G空間EXPOはそのような異なる業界同士の連携を生み出す可能性を秘めており、来年以降もさらなる発展が期待される。


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2010/9/30 06:00


片岡 義明
 地図に関することならインターネットの地図サイトから紙メディア、カーナビ、ハンディGPS、地球儀まで、どんなジャンルにも首を突っ込む無類の地図好きライター。地図とコンパスとGPSを片手に街や山を徘徊する日々を送る一方で、地図関連の最新情報の収集にも余念がない。書籍「パソ鉄の旅−デジタル地図に残す自分だけの鉄道記−」がインプレスジャパンから発売中。