趣味のインターネット地図ウォッチ

第73回 飲み会から始まった、位置情報好きのサミット


パネルディスカッションの様子

 「第4回ジオメディアサミット」が23日、立教大学・池袋キャンパス8号館にて開催された。このイベントは、地図コンテンツの制作に関わる人が参加する勉強会および交流会だ。もともとは2008年の1月に、位置情報を利用したコンテンツが好きな人たちが集まって開いた「ジオメディア新年会」という飲み会からスタートした。第1回は60名、第2回は120名、第3回は180名と回を重ねるごとに参加者数が増え、今回の参加者は登録者ベースで210名となった。

 これまでのテーマは、第1回が「ポータルサイトのジオメディアへの取り組み」、第2回が「ジオメディアの未来について考える」、第3回が「盛り上がるジオメディアとは?」で、PCや携帯電話で利用できる地図コンテンツの開発者や運営担当者などが幅広く参加した。

 講演者の中にはヤフーやグーグル、マピオン、マイクロソフトなどのスタッフも名を連ねており、参加者同士でパネルディスカッションなども行われる。また、このイベントならではの催しとして、位置情報に関する活動を行っている企業や個人が、自分たちの活動をアピールする「ライトニングトーク」というコーナーもあり、さまざまなプレゼンテーションを見られる。講演中はライブ中継なども行われ、誰もがその内容を見ることが可能だ。まさにオープンな会合といえる。

 イベントの参加費は無料。イベント終了後には懇親会も行われて、これには実費を支払うことで参加できる。ちなみにここでもライトニングトークのコーナーが設けられており、リラックスした雰囲気の中で参加者同士の交流を楽しみながら情報収集も図れる。

若者に旅行の楽しさを気付かせるジオメディア

 4回目となる今回のテーマは「ジオメディアとマネタイズ」。ジオメディアのマネタイズについて先行して取り組んでいる事例が取り上げられた。

凸版印刷の山岸祥晃氏
じゃらんリサーチセンターの加藤史子氏

 講演で最初に登場したのは、凸版印刷の情報コミュニケーション事業本部・メディア事業開発部の本部長、山岸祥晃氏。山岸氏は電子ちらし情報サービスの「Shufoo!くらしとちらし」の運営担当者で、この日は「Shufoo!を活用したエリアマーケティングからの広告アプローチ」と題して講演を行った。山岸氏は、これからの広告を考える上で重要な役割を果たす要素として、携帯電話の位置情報を挙げた。さらに、ユーザーの来店履歴やエリア行動履歴を取得することで、ユーザーのエリア行動予測を立てて広告を展開する時代がすぐそこまで来ていると語った。

 次に登場したのは、リクルートのじゃらんリサーチセンター(JRC)の研究員・加藤史子氏で、「変化する旅行・レジャー動向とジオメディアの可能性~コロプラバスツアーで見えた新たな展開~」と題して講演を行った。加藤氏は、携帯電話の位置情報ゲーム「コロニーな生活☆PLUS(コロプラ)」と連動したバスツアー企画について解説。ジオメディアは20代や30代の若い世代に旅行の楽しさを気付かせるきっかけとなると語った。

 講演の後に行われたパネルディスカッションでは、時事通信社の湯川鶴章氏がモデレータを務め、パネリストとしてはフェリカネットワークス・サービス開発室の山下慎介氏、博報堂DYメディアパートナーズの上路健介氏、シリウステクノロジーズの宮澤弦氏らが参加した。

 山下氏は、「おサイフケータイ」によるローカル広告の配信について、イベントに訪れた客に周辺の店の広告を配信するといった事例などを交えて紹介した。上路氏は、位置情報を付加する動画変換デスクトップアプリケーション「ROCKET Box」を紹介した上で、これからはGPSも含めた“センサー”全般の進化によって、人の行動を数値化できる時代になると指摘した。

 宮澤氏は、GPS情報や基地局情報、地図情報を利用した位置情報連動広告配信サービス「AdLocal」について紹介。ユーザーの現在地を取得することで、ユーザーが興味のある場所や、過去の行動から予測される場所を狙った広告を配信できるメリットを解説した。

海外との中継映像も流れたライトニングトーク

 パネルディスカッションの後は、ライトニングトークが行われ、位置情報や地図関連のさまざまなコンテンツや取り組みが紹介された。

「FOSS4G」会場からの中継映像

 今回プレゼンテーションが行われたのは、ゴーガが運営する「高速.jp」や「調達.org」、モバイルサービス「Scoopy」、リクルートの「ドコイク?アドネットワーク」、位置情報を活用したイベント「ジオジオスタンプラリー」、雑誌や書籍のグルメ特集をiPhoneで購入したり、店舗探索を行ったりできるサービス「食べレコ」、位置情報サービス「STAMP」を利用した観光事業向けサービス「じあつめ」、京都通り名ジオコーダーAPI「ジオどす」など。

 また、このライトニングトークの中で、オーストラリアのシドニーで開催されている「FOSS4G(Free and Open Source Software for Geospatial:国際地理空間オープンソース会議)」の会場とインターネットで中継をつないで、現地とのやりとりをスクリーン上で映し出した。

 会場は終始なごやかなムードで、講演の合間に名刺交換なども行われ、活発な交流が行われた。また、イベント後には恒例となっている懇親会も開催された。

 なお、このイベントの姉妹イベントとして、「ジオメディアサミット関西」も2008年に開催。同イベントを改題した「ジオメディアサミット西日本」が11月7日に開催予定だ。

 ジオメディアサミットについての情報交換は、Google グループ内で行われているので、興味のある人はぜひ参加してみていただきたい。


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2009/10/29 06:00


碓氷 貫
フリーライター/編集者。Eコマースや地図サービス、データベース、コンテンツなど、Webサイトの価値を高めるさまざまなサービスをテーマに活動している。地図やハンディGPSを片手に街や山を徘徊する一方で、通販サイトでお買い得品をチェックすることにも余念がない。