趣味のインターネット地図ウォッチ

第202回

東京メトロのカラフル路線図に運行中の列車位置を表示するアプリ ほか

「DIY GPS」の作者が作ったキャッシュ型iOS地図アプリ「Geographica」

 登山などで使うことを想定したiOS向け地図アプリ「Geographica(ジオグラフィカ)」が10月にリリースされた。App Storeからダウンロード可能で、アプリ本体は無料。アプリ内課金(1000円)によって一部機能が制限解除される。

 同アプリは、ユーザーが自分で用意した地図データを取り込んで使うiOSアプリ「DIY GPS」の作者である松本圭司氏が新たに開発したアプリだ。松本氏によると、GeographicaはDIY GPSの後継アプリとして開発したもので、機能の多くはDIY GPSと共通するが、新規開発ということで仕様やUIは異なっている。DIY GPSについては提供および最低限のサポートは今後も続けるが、機能追加などは終了するとのこと。開発リソースをGeographicaに集中し、外国語対応も進めていくという。

Geographica
国土地理院の地形図

 Geographicaの特徴は、オフラインでの利用を前提にしている点だ。地図データとして用意されているのは国土地理院の地形図データと、オープンでフリーな地図データを作るプロジェクト「OpenStreetMap(OSM)」や「OpenCycleMap」「OpenTopoMap(ヨーロッパ地域に限る)」の地図データで、いずれもこのアプリで読み込むと自動的にキャッシュとして保存できる。これらの地図データには、地形の陰影や色別標高図、海上交通なども重ねられる。

 なお、地図画面の左下にGoogleのロゴが表示されているが、これは地図表示に「Google Maps SDK」を使用しているためで、Google Mapsの地図データそのものは表示できない。松本氏によると、Google Mapsを表示することは簡単にできるが、Google Mapsは規約でキャッシュ保存ができないため、「キャッシュできる地図とできない地図が混じっていると、ユーザーが混乱しそうだから」という理由でこのような措置にしているという。ちなみに国土地理院の地形図やOSMの地図を見ている時にこのGoogleのロゴをタップすると、Google Mapsのアプリが起動して同じ地点が表示される。

OSMの地図
地形の陰影
色別標高図
海上交通

 キャッシュ保存は、表示させた地図がそのまま自動的に保存される仕組みになっており、山行前にあらかじめ目的地の山域の地図を表示させて読み込んでおけば、現地に行って携帯の電波が通じないような場所に行ってもオフラインで地図を閲覧できる。また、範囲を指定して一括でキャッシュを保存することも可能だ。ちなみに開発段階でSIMなしでの運用もテスト済みとのことで、iPhoneを買い替えた時に、それまで使っていた古いiPhoneを登山専用機として使うことも可能だ。

範囲を指定して一括キャッシュが可能
一括キャッシュの確認画面

 このほか、DIY GPSと同様、自分で地図データをインポートして、カスタムマップとして表示することもできる。この場合は「カシミール3D」などを使って地図データを切り出し、KMZファイルとしてiPhoneに取り込んで使用する。

 地図中にマーカーを配置して、それをつなぎ合わせることでルートを作成し、そのルートに従って案内を行う機能も搭載されている。ルート案内中は地図上にマーカーをつないだ線が表示され、各マーカーを長押しすると、そのマーカーを目指すことができる。案内中はマーカーまでの距離やマーカー間の高度差、到着予想時刻が上部に表示されるほか、音声案内機能も搭載されており、現在時刻やマーカーまでの距離などの細かい情報を音声で案内してくれる。

 また、GPSロガー(トラック保存)機能も搭載しており、ルート案内に連動してトラックを保存することもできる。トラックの記録は「時間(一定時間ごと)」「距離(一定距離ごと)」「自動」から選択可能で、自動の場合は距離と時間の両方を考慮して記録タイミングが自動的に決められる。「時間」または「距離」にした場合は任意の間隔を設定することが可能で、「時間」では5秒~59分55秒、「距離」では5m~3000mの範囲で設定できる。

マーカーの追加
地図上に配置されたマーカー
作成したルート
ルート案内の画面

 なお、課金をしない場合、記録できるGPSの回数は5回までで、5回使うと以降はログを取れなくなる。また、課金をしない場合はキャッシュ容量が100MBで固定されるほか、一括キャッシュは5回までで、一度にダウンロードできるタイル数も300枚までとなっている。機能制限解除によってこれらの制限は解除され、一度にダウンロードできるタイル数は3000枚に拡張される。

 松本氏によると、「登山における道迷い遭難を減らしたい」という思いで開発しているため、オフライン環境での地図表示と現在地表示は無課金状態でも使える仕様にしているという。

 DIY GPSの時はユーザー自身が目的に応じて必要なエリアの地図データを切り出す手間がかかったが、Geographicaでは誰もが手間なく簡単に使えるアプリへと進化している。登山用の地図アプリを探している人は、一度試してみてはいかがだろうか。

東京メトロのカラフル路線図に運行中の列車位置を表示するアプリ

 ウェーブオン株式会社は、東京メトロの地下鉄の運行状況をリアルタイムに把握できるAndroidアプリ「運行メトロインフォ」を提供開始した。Google Playから無料でダウンロードできる。

「運行メトロインフォ」

 同アプリは、東京メトロが提供するデータをもとにしたアプリコンテストの応募作品。東京メトロの地下鉄のリアルタイム運行状況のほか、周辺駅検索や乗り継ぎ検索を行える。アプリが起動すると路線図が表示され、現在運行中の列車に位置が分かる。駅の上や駅間に表示された列車をタップすると、平常運転かどうかを確認できる。

 路線ごとの運行情報も一覧できるようになっており、「一部列車遅延」「ダイヤ乱れ」など、平常とは違う状態の場合はすぐに確認可能となっている。リアルタイム運行状況の更新は数分おきに行われる。実際に乗りながらアプリを見ていると、微妙にタイムラグを感じることもあった。

ピンチ操作で拡大表示できる
電車をタップすると平常運転かどうかを確認できる
運行情報の一覧表
ダイヤに乱れがある場合は詳細を調べられる

 東京メトロだけではあるが、出発駅と到着駅を指定して乗り継ぎ検索も行える。このほか、現在地から周辺駅を検索することも可能で、GPS機能によって現在位置から2km圏内の東京メトロの駅を検索できる。各駅までの距離も示されるので、複数の候補の中から最も近い駅を探すことも可能だ。

乗り継ぎ検索
乗り継ぎ案内の検索結果
到着予想時刻も分かる
周辺駅検索

 乗り継ぎ検索や周辺駅検索の対象となるのが東京メトロだけというのは少し残念だが、列車の位置がリアルタイムに分かるのはとても便利だ。このようなアプリがきっかけとなり、多くの鉄道会社の運行情報がオープン化されることを期待したい。

感染症の流行状況を地図で表示する「感染症・予防接種ナビ」

 広島テレビ放送株式会社は、感染症・予防接種の専門サイト「感染症・予防接種ナビ」を公開した。このサイトでは、流行中の感染症のニュースや、注意してほしい感染症をピックアップして、流行状況を地図で分かりやすく表示する。また、新型インフルエンザなどのパンデミックが発生した場合は、内閣官房新型インフルエンザ等対策室から発信される情報を提出できるよう対応する。同サイトから、NTTドコモの「dmenuニュース」や、NTTレゾナントが運営する「gooニュース」などにも配信する予定だ。

「感染症・予防接種ナビ」

 感染症・予防接種ナビにアクセスすると、感染症に関連したトピックスやニュースに加えて、その月に注意してほしい感染症の一覧が表示される。2014年12月期では、ノロウイルス、インフルエンザ、RSウイルス感染症、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の4つが挙げられており、それぞれ症状や治療法、感染経路、予防方法、家庭における注意点などの詳細情報を見られる。

感染症に関連したニュースを紹介
過去5年間の同時期と比較した今年の状況

 これらの情報に加えて、サイト視聴者からの経験談も投稿可能で、各地から寄せられたさまざまな経験談を読める。さらに、過去5年間の同時期と比較した場合の今年の流行状況についても一覧表が設けられており、矢印の傾きを見ることでひと目で分かるようになっている。

今年の流行状況

 感染症の流行状況を表した地図はページ下部に掲載されている。ノロウイルスやA群溶血性レンザ球菌咽頭炎、水痘(ぼうそう)などについて、都道府県ごとの報告数で色分けされており、本格的に流行している都道府県は赤い色で示されるので分かりやすい。ノロウイルスについては都道府県ごとの詳細地図も見られるようになっているので、どの地域で流行しているのかをピンポイントに把握できる。また、溶血性レンザ球菌咽頭炎と水痘については、前週の地図と比較できるので、流行の状況がよく分かる。

都道府県を選択
各地の状況を色分けして表示

 感染症の情報に加えて、予防接種に関連した情報も豊富なので、このサイトをこまめにチェックしておけば、自分の居住地域で気をつけなければならない感染症や、予防接種の情報をひと通り抑えられるだろう。

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。