趣味のインターネット地図ウォッチ

第171回

「ケータイ国盗り合戦」川越ウォークラリーイベント参加レポート

 株式会社マピオンが提供している位置情報ゲーム「ケータイ国盗り合戦」。このゲームのリアルイベントとして9月29日、川越ウォークラリーイベント「小江戸・川越みすてりぃ 失われた大福の謎!」が開催された。「ケータイ国盗り合戦」はこれまでもさまざまなO2O(Online to Offline)イベントを開催してきたが、ウォークラリーという形で1日に多数の人を集めて行うリアルイベントは初となる。今回はこのイベントの参加レポートをお送りしたい。

イベントのスタート地点となった「小江戸蔵里」

人気の位置情報ゲームが初めて開催したリアルイベント

 「ケータイ国盗り合戦」は2008年にサービスを開始した位置情報ゲーム。スマートフォンや携帯電話の位置情報機能を使って全国600エリアを巡るスタンプラリーゲームで、マピオンの発表によれば、現在は100万人以上の会員を誇り、全エリアの制覇者数も400人を超えているという。最近はO2Oイベントへの取り組みも盛んに行っており、自治体や鉄道、商店街などと連携してスタンプラリーイベントなどを開催している。

 これまでのスタンプラリーイベントは、基本的には数カ月間の期間を設けてユーザーが自由に観光地などを巡るスタイルで、各地を訪れるタイミングはユーザーごとに異なる。これに対して今回開催した川越ウォークラリーイベントは、9月29日の1日だけ開催されたリアルイベントで、参加するには事前のエントリーが必要。これまでもスタンプラリーを制覇した人を集めて認定証を渡すファン感謝イベントは開催していたが、今回のようなウォークラリーを行うのは同社としては初めての試みだ。

 参加資格は「ケータイ国盗り合戦」の登録者およびその家族や友人であることで、参加料は無料。参加者数は1000名で、ゲーム内で告知したところ、受付開始から10時間で定員に達してしまったという。反響が高かったため、さらに追加で100名の追加募集を行ったところ、今度は3分で定員に達してまった。このイベントは「ケータイ国盗り合戦」が毎年恒例で開催しているスタンプラリーイベント「夏の陣」のサブイベントだが、同イベント単独で楽しむことも可能で、すでに「ケータイ国盗り合戦」に登録をしている人が未登録者を誘って参加することも可能だ。登録済みのユーザーが未登録者と一緒に参加するとゲーム内アイテムがもらえる特典も用意されている。

「ケータイ国盗り合戦」
「夏の陣」の画面
「小江戸・川越みすてりぃ 失われた大福の謎!」

 ちなみにイベントの舞台となった川越へのアクセスに便利な西武鉄道との特別企画により、往復切符と巡回バスの1日乗車券がセットとなった西武鉄道の「小江戸川越フリークーポン」を1枚購入するごとに、ゲーム特典付きカード「くにふだ」を本川越駅で配布する企画も行われた。

 マピオンの広報担当者である石川千鈴さん(O2O事業部 メディアG ケータイ国盗り合戦PRディレクター)は今回のイベントについて、「これまでのスタンプラリーでは、参加者の皆様が個別に全国を飛び回っていましたが、今度はその楽しさを皆様で共有できたら楽しいのではないかと思って、今回のリアルイベントを思い付きました」と語る。

 イベントの会場に川越を選んだ理由については、今年の「夏の陣」が全国の城を巡るスタンプラリーで川越城が攻略スポットの1つとなっていることや、西武鉄道で「くにふだ」を配布していることに加えて、「せっかく街を散策するのなら、見応えのある街がいいと思いました」(石川さん)と、川越という街自体の魅力によるところも大きい。今後は東京都内での開催や、もっと遠くへ旅行ツアーのような形で開催することも検討中だという。

西武鉄道でもらえる「くにふだ」

名所を巡りながら市内の5つのエリアで謎解き

 埼玉県川越市といえば江戸時代を思わせる蔵造りの町並みが有名だが、イベントのスタート地点となったのは、酒造の蔵を改修した川越市産業観光館「小江戸蔵里(こえどくらり)」。受付スタートは午前10時30分で、11時、11時30分、12時と4回に分けて受付が行われた。参加者が1000名以上もいるため、10時30分の時点ですでに長い行列ができている。受付で配布されるのは布の手提げ袋と、クイズ問題とヒントになる場所の位置が記載された紙のマップ。このマップにはQRコードが掲載されており、これを携帯電話またはiPhone/Androidアプリ「ケータイ国盗り合戦」で読み込むとウォークラリーがスタートとなる。

受付会場
記念撮影コーナー
配布された地図

 今回のイベントでは川越市内を「川越城エリア」「小江戸エリア」「蔵里エリア」「川越歴史博物館エリア」「本川越駅・川越駅エリア」の5エリアに分けて、エリアごとに用意されたクイズに答えていく。エリアをどのような順序で回るかは参加者の自由だが、小江戸蔵里で最初に受付を済ませた直後だけは川越城へ向かうよう指定されている。なお、エリア間の移動は徒歩でなく市内巡回バスを使ってもOKだ。ちなみに今回の謎解きは、「ケータイ国盗り合戦」のオリジナルキャラクター「じぃ」の大福が無くなってしまったというストーリーで、各エリアのキャラが出題する“謎”に答えられれば大福のありかを教えてもらえるという話になっている。

 受付を終えて小江戸蔵里から川越城に向かうと、先ほど受付でもらった手提げ袋を持っている人が大勢歩いていた。団体で行動するイベントではないものの、参加者同士で不思議な一体感が感じられるひとときである。歩きながらマップの横に書かれたクイズの問題を読むと、「『初雁の像』にはどちらの手に雁が止まっている?」「洋館の蕎麦屋『百丈』は昔は何の店だった?」「『川越氷川神社』の大鳥居をくぐって左側にある岩は何の動物の形をしている?」など計5問が出題されていた。

 いずれも現地に行って名所を実際に見たり、看板の説明文を読んだりすれば分かる問題ばかりで、難易度はそれほど高くない。ただし出題スポットは同じエリアの中でもあちこちに分散しており、すべてのスポットに行こうと思うとけっこう歩く量が多くなってしまう。とはいえ、クイズに答える必要があるのは各エリアにつき1問だけというゆるいルールになっているので気は楽だ。クイズの解答はアプリ上から行うことが可能で、フォームに記入してボタンをタッチするだけですぐに正誤の結果が分かる。

 この入力フォームはエリア別に1つずつ用意されており、同じエリアの問題であれば、入力するにあたって解く問題を選ぶ必要はない。たとえ間違ったとしても正解するまで何度でもチャレンジすることが可能で、正解した時点で該当エリアはクリアとなり、以後は同エリアのほかの問題に回答することはできなくなる。操作ステップを減らしてシンプルにするためにこのような仕様にしたのかもしれないが、1つ正解するとほかの問題に回答する機会が失われるので、全スポット制覇などの“やり込み要素”は薄く、この点に物足りなさを感じる人もいるかもしれない。

QRコードを読み込むとウォークラリーがスタート
解答の入力フォーム
正解するとほかのエリアに行ける
川越城へと歩く参加者
川越城エリアの問題は5問
出題スポットの1つ「初雁の像」
川越城にもウォークラリー参加者が多数訪れた

スタッフを探し当てるイベントや“レア地”を当てる企画も開催

 さて、筆者は川越城エリアの問題をクリア後、西に移動して小江戸エリアへ向かった。途中、川越城エリアの残りのスポットに立ち寄りながら歩いて行くと、製菓店が並ぶ観光名所の「菓子屋横丁」に到着。横丁を歩きながら次の問題の解答を見つけた後、今度は南下してスタート地点の小江戸蔵里がある蔵里エリアに入った。この小江戸蔵里もクイズのスポットの1つではあるのだが、そこへ辿り着く前に別のスポット「川越熊野神社」を見つけたのでそちらの問題を解いた。ここは境内でユニークな遊び(輪投げ)によって運試しができる神社で、クイズの問題はこの遊びは何なのかを当てること。実際に現地を見ればすぐに分かるので、難なくクリアできた。

 さらにその次は東に向かって川越歴史博物館エリアへと向かう。このエリアの謎はすべて寺院に関係する問題で、筆者は「成田山川越別院」にて問題をクリア。その隣にある川越歴史博物館に入口の前にマピオンのスタッフが立っていたので寄ってみた。実はこの博物館ではゲーム特典付きカード「くにふだ」を来場者に配布している。入館料を払って「くにふだ」を入手し、川越の歴史に関するさまざまな展示物を見た。

 博物館を出た後は、いよいよ最後のエリアとなる本川越駅・川越駅エリアへと向かった。こちらの謎も寺院に関係する問題で、かなりあちこちに分散している。筆者は本川越駅に近い「川越八幡宮」に立ち寄り、「触ると縁結びのご利益がある木は何の木?」という質問に答えた。結果は正解で、これでようやく全問クリア。最後に端末のGPSで位置情報を取得し、川越市内にいることを証明してから正式クリアとなった。画面に「じぃ」の大福の謎に対する答えが表示されたのを見て、しばし心地よい達成感に包まれる。全エリアをクリアした特典として、今回のストーリーにちなんだ大福のアバターも入手できた。

菓子屋横丁
川越熊野神社の「運試し輪投げ」
「くにふだ」がもらえる川越歴史博物館
最後のスポットとなった川越八幡宮
最後の解答に正解したら、位置情報を取得して送信する
全問クリアすると大福の行方が分かる

 この時点でウォークラリーは終了で、参加者はスタート地点に戻る必要は特になく、いつでも自由に帰れる。ただしイベントにはほかにも「さまようお宝の謎」という企画が用意されていた。これは黄色いユニフォームを着たマピオンのスタッフがウォークラリーの各所に出没し、スタッフが配布するQRコードを読み込むとゲームのアイテムを入手できるという企画だ。登場するエリアと時間帯は知らされているものの、詳細は分からないので現地で探す必要があるが、どこに出没するかはスタッフがTwitterでリアルタイムにヒントを公開するので、それを頼りに探せばすぐに見つかる。このほか、スタート地点となった小江戸蔵里では受付が終了した後に記念スタンプや顔出し記念写真ブースなどが設けられて、ウォークラリーを終えた参加者の人気を集めていた。

 なお、前述した通り今回のイベントでは1エリアにつき複数の中から1問だけ選んで解答するというスタイルのため、ウォークラリーを制覇するだけならば出題スポットすべてを巡る必要はないが、サブイベントとして「レア地の謎」という企画も用意されている。これは参加者の解答が一番少なかった場所(レア地)に挑戦した人の中から抽選で旅行券が当たるというもので、レア地はイベント終了後に発表となる。遠くのスポットでレア地になるだろうと予想しても、ほかの人もそう考えて解答する人が多くなるとレア地にはならないので、どこを選ぶのか慎重に戦略を練る必要がある。行きやすいスポットばかりを選んで簡単に攻略できる一方で、サブイベントによってレアなスポットを選ぶ人もフォローしている点は面白い。

「さまようお宝の謎」の案内画面
QRコードを配布するスタッフ
スタート地点に設けられた顔出し看板
記念スタンプの行列

幅広い年齢層の参加者が集まって街歩きを満喫

 筆者の場合は、比較的アクセスしやすいスポットを選び、スタートから最後のスポットで謎を解くまでおよそ2時間30分かかった。この手のイベントとしては長すぎず短すぎない適度な距離と時間だと思うし、体力のない人や子連れで歩くのが大変な場合は巡回バスを利用するという手もある。途中、休憩や食事を交えながらのんびりと歩けば、1日通して楽しめるイベントとなるだろう。クイズの問題はどれも川越の名所にちなんだ問題ばかりで、答えを考えることで名所に対する知識が深まる。出題されたすべてのスポットを巡って問題を解けば、川越という街にかなり詳しくなれると思う。

 マピオンによれば、ゲームを終えた後の参加者からは「街の見どころが多く、謎を解きながらの街歩きを楽しめた」「つい気になってすべての設問の答えを探して歩いてしまった」「国友さん(『ケータイ国盗り合戦』のゲーム上での友人)」と一緒に回って楽しんだ」などさまざまな声が寄せられたという。中にはイベント中に出会ったほかのユーザーと仲良くなって一緒に歩いたケースなどもあったとか。

 今回の参加者は「ケータイ国盗り合戦」の既存ユーザーが多いが、その年齢層は実にさまざまで、1人で参加している人もいれば子供連れのファミリーやカップル、女友達のグループなどユーザー層が実に幅広いのに驚かされた。このようなさまざまなユーザーが1つの街に集い、地図を見ながらウォークラリーを楽しむ姿は、直に交流する機会の少ない位置情報ゲームユーザー同士の“お祭り”のような感じで面白い。「ケータイ国盗り合戦」としては初のリアルイベントとなった今回の川越ウォークラリーだが、このようなリアルイベントが今後、位置情報ゲームの可能性をどのように広げていくか注目される。

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。