趣味のインターネット地図ウォッチ
地震や水害などの災害情報をウェブ地図上に集約する「DiMAPS」、国交省が運用開始
(2015/9/3 06:00)
国土交通省および国土地理院は、災害情報を集約する「統合災害情報システム(DiMAPS)」の運用を開始した。同システムは、地震や風水害などの自然災害発生時に、現場からすばやく災害情報を集約して地図上に表示できる新システム。災害ごとに震源・震度や出水状況、避難勧告・避難指示状況、道路などの被害状況などさまざまな情報を重ね合わせて閲覧できる。
DiMAPSのトップページにアクセスすると、右下に「被害情報を見る」というリンクがあるので、ここから直近の災害へのリンクをクリックすると、その被害情報を集めたDiMAPSの地図のページが表示される。上部メニューの「被害情報」をクリックすると右上にウィンドウが表示されるので、中のメニューで表示させたい情報にチェックを入れると、地図上にアイコンや線などが表示される。これらの情報は透過率を変更することもできる。
例えば[道路]>[一般国道/地方道]を選ぶと、道路の被害状況が赤丸や青丸などのマークで地図上に表示される。各マークをクリックすると、被災状況がポップアップ表示される仕組みになっている。左下には凡例も表示されるので分かりやすい。
また、背景地図を標準地図のほかに淡色地図や白地図、写真などに切り替えたり、経緯度のグリッドを入れたりすることもできる。地図上の距離や面積を測定することも可能で、上部メニューの「計測」をクリックしてから、測定したいポイントをクリックして選ぶと測定値が表示される。
DiMAPSの被害情報は、大規模災害の発生時に、「◯◯災害に関する◯月◯日◯時時点の被害情報」として時点ごとに更新して表示する。これまでも国交省および国土地理院は、さまざまな災害関連情報を地図上で提供してきたが、DiMAPSのように現地から収集した災害情報をいち早く地図上に集約するというサービスは今までになく、実に画期的なサービスと言えるだろう。
一方、同じく国交省と国土地理院が運営する「ハザードマップポータルサイト」でも、全国の地方公共団体が公開している「大規模盛土造成地マップ」の掲載を開始した。
大規模盛土造成地マップとは、谷や沢を埋めた造成宅地や、傾斜地盤上に腹付けした大規模な造成宅地の位置を地図上に示したもの。阪神・淡路大震災や東日本大震災などで、盛土と地山との境界面や盛土内部を滑り面とする盛土の地滑り的変動(滑動崩落)が発生し、造成宅地で崖崩れや土砂の流出による被害が発生したことから、全国の都道府県や市町村において、地震が発生した時などに滑動崩落の可能性がある大規模盛土造成地について調査するとともに、その成果を地図にまとめる活動を進めている。
今回、ハザードマップポータルサイトでは、“防災に役立つ地理情報”として、このような地方公共団体が公開している大規模盛土造成地マップの掲載を開始した。現在公開しているのは東京都、埼玉県さいたま市、愛知県岡崎市の3団体と限られてはいるが、今後は他の地方公共団体についても、データの準備が済み次第、順次掲載していく予定だ。
ハザードマップポータルサイトは、防災に関するさまざまな地理空間情報を地図上で重ね合わせて、その場所の災害リスクを知ることができるサイト。大規模盛土造成地マップについても、左メニューの「防災に関する情報」の中から「大規模盛土造成地」にチェックを入れることで閲覧可能となる。重ね合わせたマップは、スライダーで透過率を調節することもできる。同マップには昔の空中写真(航空写真)も掲載されているため、例えば造成前の空中写真と重ね合わせることで大規模盛土造成地の過去の状況を調べたり、「浸水ハザードマップ」と重ね合わせることで浸水危険性を調べたりすることもできる。作図機能を使って自宅や会社の位置を表示させることも可能で、作図データを保存したり、読み込んだりすることも可能だ。
なお、国土地理院は、2015年3月に仙台で開催された「第3回国連防災世界会議」において、地球全体をカバーするデジタル地図「地球地図」の国際運営委員会(ISCGM:International Steering Committee for Global Mapping)とともに、世界各国のハザードマップの整備状況を把握するためのポータルサイトをISCGMが構築することを提案している。
この世界版のハザードマップポータルサイト「Urban Hazard Maps Web Portal」は、すでに試作サイトが運用開始されている。同サイトでは、世界地図の上で各都市をクリックすることで、サイクロン(熱帯性低気圧)や地震、地滑り、干ばつ、火山、洪水などへのリンクが表示されるが、各国いずれもまだ情報はほとんど収録されていない。今後は各国の関係機関と連携しながらこれを拡充していく方針だ。ISCGMは設立から現在まで国土地理院が事務局を担っており、今後も防災分野における同院の活動に注目される。