趣味のインターネット地図ウォッチ

訪日外国人観光客の動態を地図上で可視化できる「インバウンド・レーダー」

 株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2)とアクセンチュア株式会社は、個人向けウェブサービス「インバウンド・サテライト(Inbound Satellite)」を発表し、その第1弾として、訪日外国人の動態を可視化する「インバウンド・レーダー(Inbound Radar)」を提供開始した。

「インバウンド・サテライト」トップページ

 インバウンド・サテライトは、Wi2が2014年12月に提供開始した訪日外国人向けWi-Fiサービス「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」アプリを国内で利用している訪日外国人の情報を活用したサービス。Wi2のWi-Fiアクセスポイントが捉えた、匿名化された訪日外国人の位置情報データと、アクセンチュアのデータ分析基盤を組み合わせることにより、訪日外国人の動態を把握するとともに、使用言語などの情報に基づく効果的なプロモーション施策を行える。

 TRAVEL JAPAN Wi-Fiは、Wi2のWi-Fiサービスへの無償接続を可能にするサービスで、配信開始から10カ月弱で累計100万超のダウンロード数を誇るという。すでに大手企業や自治体に向けて、このアプリによって取得された訪日外国人ユーザーの位置・属性情報などが可視化されたレポートや、アプリを経由したコンテンツ配信サービスが提供されている。今回提供開始したインバウンド・サテライトはその簡易版で、個人単位でID登録が可能なウェブサービスのため、外国人向け商機の拡大を目指す中小企業や個人事業主でも手軽に利用できる。

 同サービスの第1弾として提供開始したインバウンド・レーダーは、訪日している外国人観光客の動態をマップ上で可視化するサービスだ。地図上で指定したエリアの範囲内において、「どの言語を話す外国人」が「どのくらいの人数が滞在しているのか」を、日次で更新される位置情報に基づいてマップ上に可視化できる。

 料金は月額1980円(税抜)だが、現在はトライアル期間で、2015年12月末までに登録した人は2016年1月末まで無料で利用できる。

 登録の上、ログインするとインバウンド・レーダーの地図画面が表示される。背景地図はGoogle マップで、利用にあたっては、まず調べたいエリアを「マイプレイス」として登録する必要がある。マイプレイスを登録する場合は、左上の「マイプレイスを編集する」ボタンをクリックする。登録できるマイプレイスの数は最大3つまでで、「登録」ボタンをクリックすると編集画面となる。

マイプレイスの登録画面

 編集画面の検索窓に住所や駅名などを入力し、エリアを指定した上で、エリアの範囲を指定する。範囲は半径100m、250m、500m、1.0km、2.0km、3.0kmの6段階から選べる。あとは地点名称を入力して、右下の「登録」ボタンをクリックすれば完了する。

エリアの範囲を指定できる

 マイプレイスとして登録すると、そのエリアの「訪れた外国人の数」が棒グラフで、「使用言語の割合」および「国・地域の割合」が円グラフで、「時間帯・曜日ごとの外国人の数」が時間帯別に色で塗り分けたヒートマップで表示される。なお、訪れた外国人の数については、前日比や前期間比を調べることも可能だ。

 使用言語については、外国人がTRAVEL JAPAN Wi-Fi設定する英語、簡体字中国語、繁体字中国語、韓国語、タイ語の5言語について、それぞれの割合が分かる。また、国・地域については、中国、韓国、台湾、香港、米国、英国、オーストラリア、タイ、シンガポール、マレーシアの各割合が分かる。

登録したエリアにおける訪日外国人のデータが分かる

 このほか、マイプレイスの編集画面においてタブを切り替えて「関連地点」を登録することにより、関連地点からマイプレイスへ向けて、どれくらいの人数が流入しているかという相関関係が赤い矢印で表示される。関連地点はマイプレイス1カ所につき3カ所まで登録可能で、複数の関連地点を登録した場合は、複数地点からの流入状況を一覧できる。

関連地点の登録
登録地点のリスト

 この機能を利用することにより、例えばマイプレイスに「秋葉原」、関連地点に「新宿」を指定することで、新宿から秋葉原へどれくらいの外国人が移動したのかが分かる。過去のデータを1月ごとに遡って調べられるので、季節ごとの動き方の違いなども調べられる。

 逆に、秋葉原から新宿へどれくらいの人数が移動したのかを調べる場合は、マイプレイスに「新宿」、関連施設に「秋葉原」と、逆に登録すれば調べられる。例えば2015年11月21日から12月18日のデータの場合、新宿から秋葉原へ流入した人の数は1014人(29.9%)で、秋葉原から新宿へ流入した人の数は850人(14.6%)と、新宿→秋葉原方面に動く人のほうが人数としては多いことが分かる。このようなデータは外国人向けビジネスを展開する上で有意義な情報となる可能性がある。

 なお、アクセンチュアに確認したところ、この場合の流入数は、2つのエリア間を直接移動した人だけでなく、ほかの場所を経由した人の数もカウントしているという。例えば海外から日本に来て、まず秋葉原を観光し、その後に東京駅へ行って新幹線で京都に行った人が、今度は飛行機で羽田に戻り、新宿へ出たような場合でも、その移動が指定した期間内に行われているのであれば、秋葉原→新宿へ流入した1人として計上されることになる。

登録地点からマイプレイスへの流入人数が分かる
東京スカイツリーから浅草への流入データ

 インバウンド・サテライトでは、今回提供開始したインバウンド・レーダーとは別に、外国人のモバイル端末へダイレクトに情報送付を行えるサービスの開始も近日中に予定している。来るべきオリンピックに向けて訪日外国人向けビジネスの強化を考えている人は要注目だ。

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。