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山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿

内モンゴル自治区が厳戒態勢。同自治区内の人気SNSを封鎖 ほか〜2011年5月


  本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国を取材拠点とする筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。

内モンゴル自治区が厳戒態勢。同自治区内の人気SNSを封鎖

 中国北部の内モンゴル自治区で連日住民による抗議活動が続き、厳戒態勢が敷かれた。これに関連して、検索サイトでは内モンゴル(内蒙古)を検索ワードとした検索が「法律法規政策などにより(原文ママ)」できなくなったり、掲示板やSNSでの書き込みが消されるなど当局による検閲が強化された。

 とくに、5月4日にニューヨーク証券取引所に上場したばかりの中国最大手SNSサイト「人人網(RENREN)」が内モンゴル自治区内のみで封鎖されたことは、ネット利用者の一部にはショッキングな情報として伝わった。Twitterなど海外サイトへのアクセス制限は多々あるが、国内サイトにアクセスできなくなるということは非常に珍しいからだ。

 5月19日には、中国のネット検閲システム「サイバー万里の長城」の開発責任者である方濱興氏が湖北省の武漢大学で講演中、学生が壇上に向けて投げた靴が方濱興氏に当たるという事件があった。この件は、ネット検閲を嫌うユーザーを中心にSNSやミニブログ(中国語で微博)で瞬く間に広まった。

 この件についても、百度など中国企業が運営する検索サイトでは「方濱興」をキーワードに検索すると「法律法規政策などにより一部結果が表示されない」と表示されるなどの当局による情報規制がかけられた。

武漢大学事件ツイート 内蒙古で微博検索しても国情により出てこず

 

人人網などによりネット企業の上場機運が高まる

 前項で触れた通り、上場後に一部地域で政府の強権発動に巻き込まれたSNS最大手「人人網」。上場後初の動きは、米ゲームベンダー「PopCap Games」との提携だった。もともとSNSサイトは農場・牧場育成ソーシャルゲームで人気を得た。中国のインターネットユーザーでは、日常的に英語を使う人はさほど多くない。ゲームとはいえ、英語表示のままでは抵抗が大きい。中国語環境にローカライズされれば、農場ゲーム以来となるSNS人気の再燃が起きそうだ。

 「人人網」のほかにも、携帯電話向けセキュリティソフトなどをリリースする「網泰(NetQin)」がニューヨーク証券取引所に、中国大手婚活サイト「世紀佳縁(jiayuan)」がナスダックに上場した。

 続々と中国ネット企業が上場することから、今月はIT系メディアや金融系メディアでネット企業の上場を煽る記事が目立った。特にP2Pダウンロードソフト「迅雷(xunlei)」、アパレルメインの通販サイト「凡客誠品(VANCL)」、単独の中国語百科事典サイトとしては最大規模の「互動百科(Hudong)」の動向が注目された。「凡客誠品」は外国向け英語サイトを提供するという報道があり、また、「互動百科」はスマートフォン用アプリとも連携する生活情報を重視した新百科事典プラットフォーム「小百科」をリリース。「互動百科」のCEO、潘海東氏は「2年内に上場したい」とメディアにコメントしている。

単独の中国語百科事典サイトとしては最大規模の「互動百科」 生活情報を重視した新百科事典プラットフォーム「小百科」

 

イエローページ的サイト普及の兆し、中国市場で三つ巴の戦い

 中国全土の各都市に対応した三行広告サイトが人気急上昇中だ。

 中国の産業で最大の問題点は信頼不足だと中国自身も自認するところで、中古品の取引についても「故障品やニセモノをつかまされるかもしれない」ということから、オンラインショッピングで発展せず、リアルショップでも中古市場の人気は低い。

 こうした問題に対応すべく、「売ります・買います・雇います・仕事します」といった、同じ地域の人と人を直接繋ぐ三行広告掲載サービスが台頭している。最初に注目を浴びたのは中国全土でテレビCMや交通広告をうち出した「〓集網」だが、5月に同コンセプトの「百姓網」もテレビCMを打ち出したことで、いよいよこのジャンルが注目されるようになった。「集網」「百姓網」のほか「58同城」というサイトもあり、「58同城」は先に上場することを目指している。

「百姓網」サイト。この画面は上海だが、各都市版が用意されている

 

大手旅行予約サイトがクーポンサービスをスタート

 グルーポンを筆頭としたクーポンサイト(団購)は増加と淘汰を繰り返している。それでも市場規模は昨年比40%増の600億元(約7500億円)規模になると予想されている。生き残りが厳しい中、大手旅行予約サイトの「携程旅行網(ctrip)」はホテルに絞ったクーポンサービスを開始した。もともと中国のホテル予約は、国際的なイベント開催でもない限りは定価の半額以下になることがよくあるが、同サイトの特別クーポン価格は普段の値引き後の価格のさらに半額程度となっていて、そのお得さから早くも多くの利用者が確認できる。

携程旅行網の新クーポンサービス

 

ポータルサイトやチャットソフト「QQ」を運営する「騰訊(Tencent)」大手旅行予約サイトの大株主に

 中国のリサーチ会社「易観国際(Analysys International)」によれば、今年3月末の段階でチャットソフトのアクティブアカウントが9億3200万だという。そのほとんどのシェアを「騰訊(Tencent)」社の「QQ」が占める。また同社はチャットやポータルサイトだけでなくtwitter似のミニブログ(中国語で「微博」)でも有名になっており、同社のミニブログ「騰訊微博」のアクティブユーザーは5月の段階でポータルサイトの「新浪(Sina)」の微博「新浪微博(1億4000万人)」に続き9000万人を超える。

 そのほかオンラインゲームやオンラインショッピングや検索サービスなど様々なサービスを拡大している中、5月同社は新たに旅行予約サービスの展開をすべく、前述の「携程旅行網」のライバルの旅行予約サイト「藝龍(e龍、e-long)」の16%の株を8440万ドルで購入したことを発表した。同社はグルーポンと提携したばかり。既存のチャットアカウントで旅行予約サービスを利用できるようになるほか、携程旅行網に対抗して、ホテルのクーポンサービスを開始するかもしれない。

インスタントメッセンジャーアクティブユーザー数

 

CNNIC「オンラインショッピング市場を牽引するのは2割の利用者」

 CNNICは25日、電子雑誌「互聯網発展信息与動態(インターネット発展情報と動態)2011年4月 総第66期」を配布。4月末のインターネット利用者は4億8300万人だとした。

 また同資料でオンラインショッピングに関する調査結果を発表。2010年のオンラインショッピング市場規模は5131億元(約6兆4150億円)、オンラインショッピング利用者は1億6100万人だが、うち80.3%の利用者の年間オンラインショッピング支払額が4000元(約5万円)以下で、市場全体の26.1%しか占めていないことが判明した。逆に言えば中国のオンラインショッピング市場規模はオンラインショッピング利用者全体の19.7%にあたる3200万人弱で、市場全体5131億元の73.9%にあたる3800億元弱(約4兆7500万円)を動かしていることになる。

オンラインショッピング年間支払額 オンラインショッピング年消費額別消費額比率

 

第三の動画サイト「酷6網」、スタッフ削減・労働問題で注目を浴びる

 「優酷(YOUKU)」「土豆」に続く第3の動画共有サイト「酷6網」が二期連続の赤字で、全社員の2割にあたる営業担当者全てを解雇すると突然発表した。労働法に違反する突然の解雇通告に、営業担当者が反発。労働者が集まって記者会見を開催し正当性を主張し、職場への復帰と責任者の謝罪を求めた。この労働問題に各ポータルサイトは特集ページを組んで大きく紹介した。

 このニュースに対するネットユーザーの反応は、「労働法はザル法だ」「優酷と土豆の2大動画共有サイト時代の到来を予感する」「つまらないユーザー投稿のオリジナル動画を重視した結果、儲からなくなりつまらなくなった」などさまざまな意見が見られた。

酷6網のリストラを特集ページをくんで紹介する大手ポータルサイト

 

百度、新音楽配信サービス「ting」開始。従来のmp3検索も継続

 百度は正規版音楽配信を重視した音楽配信サービス「ting」を開始した。「ting」は、登録ユーザーのみが利用可能な音楽SNSといってよいサイトで、お気に入りのアーティストや曲に投票する機能などがある。百度の「mp3捜索」サービスは、コンテンツホルダーや政府組織などから何度も海賊版音楽の温床としてやり玉に挙げられており、そうした批判をかわすためか、百度は「5月に新音楽サービスを投入」を予告していた。今回、予告通りにtingがサービスインした形だ。しかし、問題の「百度mp3検索」は、現在もなお、百度サイトの目立つ場所に掲示され、サービスが提供され続けている。

百度ting

関連情報

2011/6/13 06:00


山谷 剛史
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。著書に「新しい中国人」。