第6回:仮想化環境での利用~VMwareで使ってみる


iSCSI共有ストレージでvMotion

前回に続いて「TS-459 Pro+ Turbo NAS」を使用。iSCSI対応、仮想化環境配備用SPC-3採用で、仮想化およびクラスター環境用ストレージセンターとして利用できる。今回のレビューには間に合わなかったが、メモリが最大3GBまで増設可能な上位モデル「TS-459 Pro II Turbo NAS」がリリースされている

 今回は、サーバー仮想化環境として広く普及しているVMwareのvSphere4環境でQNAPを使い、vMotionのための共有ストレージとして活用してみよう。

 VMwareの仮想化環境は、さすがにIAサーバーの仮想化を牽引する存在だけあって高機能で使い勝手もよいのだが、注意点もないわけではない。それは、ハードウェアの選り好みが結構シビアな点だ。現在のVMwareの仮想化環境の中核はハイパーバイザー(ESX/ESXi)であり、ハードウェアを直接制御する都合上、対応できるハードウェア構成が限定される。要はデバイスドライバが揃っているかどうかだが、主要ベンダーのサーバーはともかく、コンシューマ向けのPCとなるとハイパーバイザのインストールに失敗することも珍しくないのである。

 このことは周辺機器にも当てはまるのだが、QNAPのNASの場合、HOME/SOHO向けモデルには存在しないのだが、逆にSMB/Corporate向けモデルでは大半が“VMware READY”認証取得済みとなっている。今回試用したモデルは、4ベイ搭載のQNAPのTS-459Pro+で、もちろんVMware READY認証取得モデルである。VMware環境で利用することが分かっている場合は、こうした認定を取得している製品の方が安心なのは間違いないので、モデル選択の際には意識しておくとよいだろう。

 今回は、QNAPをiSCSIストレージとして接続することにする。NASとしてNFSで接続した場合でもvMotionは実現可能なのだが、パフォーマンス等を考えた場合にはやはりiSCSI接続の方が有利だと思われる。VMware環境でiSCSIストレージを利用する際には、ネットワークのトポロジーについてもあらかじめ考えておいた方がよいだろう。

 VMware環境では、VMにアクセスするためのネットワーク(VM Network)と、内部的な運用管理に利用する管理用ネットワーク(Management Network)の最低2種類のネットワークを使い分けるのだが、iSCSI接続にはManagement Networkを使うことになっている。これらの仮想化されたネットワークを、さらに物理的なNICと対応付け、ケーブリングのトポロジーを考えていく必要がある。実運用環境であれば、最低でも各サーバーごとに2つ、できれば3つ以上のNICがあるとよいだろう。

 

ESXi環境の準備

 ではまず、物理サーバーにVMwareのハイパーバイザーをインストールし、環境を作っておこう。現在VMwareではESX 4.1およびESXi 4.1の2種類のハイパーバイザーが用意されている。ESXはもともとの「フル機能」のハイパーバイザーで、ESXiはサーバーなどへの組み込み用途を想定した「軽量化された」ハイパーバイザーとなる。今後はESXiの方が中心になっていくようなので、今回はESXiを使った。

前回に引き続き、サーバーにはデル PowerEdge R710を使用した
(機材協力:デル株式会社)

 VMwareのウェブサイトからブータブルCD/DVD用のISOイメージがダウンロードできるので、これを入手し、システムをブートするだけなので作業としては簡単だが、ハードウェアを選ぶ点は前述の通りで、ダメとなるとどうしてもインストールできないという状況になってしまう。VMwareがサポートするハードウェアは「ハードウェア互換性リスト」で公開されているので、あらかじめ調べておいた方がよい。ハードウェアの互換性さえクリアできればインストール作業自体はごく簡単で、確認のために数回キーを打つだけの数分の作業で完了する。

 ESXとESXiの違いは、大きくは設定管理用のコンソール環境を持っているかいないかの違いになる。インストール完了後のESXiは、IPアドレスの設定などの簡単な操作は単独でできるが、通常の運用管理作業は基本的にはリモートから実行するのが前提となっている。このために使うのがVMware vSphere Clientだ。このソフトウェアはVMwareのウェブサイトから入手できるのはもちろんだが、ESXiのインストールが完了したところでこのマシンにウェブブラウザーを使って接続すると、そこからダウンロードできるようになっている(ESXi画面1)。なお、vSphere Clientの動作にはMicrosoft .NET Framework 3.0 SP1が必須とされていることに注意しよう。

【ESXi画面1】ESXiのインストール完了後、ウェブブラウザーからVMware vSphere Clientのダウンロードを行う

 vSphere Clientは、ハイパーバイザーや管理サーバーであるVMware vCenter Serverとの接続に利用できる共通クライアントで、一通りの作業をGUI上でビジュアルに行なえることに加え、リモートコンソールの機能も持つなど、多機能で使いやすいクライアントだ。ESXi側では、最低限IPアドレスの設定さえ完了させておけばあとはリモートからの操作で対応できるので、以後の設定作業は基本的にvSphere Clientを使って行なう。

 

QNAPの準備

 QNAP側の準備には特に目新しいところはない。内蔵したHDDを使ってボリュームを作成し、公開するのだが、今回はiSCSI接続を行なうため、iSCSIターゲットの作成作業も必要だ。今回はHDD×4台が利用できるモデルを使っているので、RAIDレベルは0~6の全てが利用可能となっている。

 iSCSIで利用するために特に推奨されたRAIDレベルというのはなく任意のRAIDレベルを選んで構わないのだが、やはりある程度の冗長性がないとデータ破壊のリスクが無視できないため、ここではHDD×3台を使ってRAID5を構成した。残る1台は予備という想定だ。容量効率的にはHDD×4台でRAID5を構成する方が有利になるのだが、今回はかなり保守的な構成を選んだ形になっている。

 ボリュームの作成方法を簡単に紹介しておくと、クライアントPC上でウェブブラウザーを使ってQNAPのアドレスにアクセスすることで管理インターフェイスが開く。メニューから「ディスク管理」→「ボリューム管理」を開くと、作りたいボリュームの種類ごとにリンクが並んでいるので、任意のボリューム種別を選べば、以後の作業はウィザード形式で進む。このウィザードの中でどの物理HDDを使うかなどの詳細も指定できる。

 今回はiSCSIストレージを構成するわけだが、ボリュームの作成の際にiSCSIのことを考慮する必要はない。逆に言えば、iSCSIのための専用の領域を確保するわけではなく、NASとして公開される領域の一部をiSCSI用として利用する形になる。ボリュームが作成できたら、この段階で既にWindowsマシン上からはネットワーク上のファイル共有としてQNAPの領域が見えており、利用可能になっているはずだ。NASとして利用するだけなら設定もごく簡単だ。

 iSCSIの設定は、「ディスク管理」→「iSCSI」メニューで行なう。まずはじめに開く「ポータル管理」タブで「iSCSIターゲットサービスを有効にする」にチェックを入れる(QNAP画面1)。ここで仮想環境で使用する際には「書き込みキャッシュオプション」をオフにすることが推奨されるので(QNAP画面2)、これも別途設定しておこう。

【QNAP画面1】「ポータル管理」タブで「iSCSIターゲットサービスを有効にする」にチェックを入れる【QNAP画面2】仮想環境で使用する際には「書き込みキャッシュオプション」をオフにすることが推奨される

 続いて「iSCSIターゲット管理」タブを開くと、ウィザードを起動するかどうかを訊ねられる(QNAP画面3)。以後の設定はウィザードに従って行なおう。

 最初の設定は、作成する対象の選択だ(QNAP画面4)。ここでは、「LUNがマッピングされているiSCSIターゲット」を選んでおく。ターゲットとLUNを個別に作成することもできるが、通常はまとめて作成するのが簡単でよいだろう。次の画面では、以後の作業手順が明示される(QNAP画面5)。まずiSCSIターゲットを作成し、次いでiSCSI LUNを作成した上でターゲットにマッピングする、という順序だ。

【QNAP画面3】「iSCSIターゲット管理」タブを開くと、ウィザードを起動するかどうか訊ねられる【QNAP画面4】作成する対象を選択【QNAP画面5】この後の作業手順が明示される

 「新規iSCSIターゲットの作成」では、ターゲットに名前を付けるのが主な作業だ(QNAP画面6)。ここでは、「ターゲット名」と「ターゲットエイリアス」を設定する。ターゲット名はかなり長大なドット区切りの文字列で、大半が事前に作成されている。

 ユーザーが「ターゲット名」として入力するのはその一部ということになり、事前に設定されたターゲット名にユーザー入力を組み合わせて完成させる形だ。一方、「ターゲットエイリアス」はユーザー入力がそのまま使われ、長大なターゲット名の代わりに分かりやすい別名として利用するものだ。いずれも、シンプルでわかりやすい名前を心がければよいだろう。もちろん、両方の欄に同じ文字列を入力しても構わない。

 次に、「CHAP認証設定」を行なう(QNAP画面7)。セキュリティを考えればここで適切なパスワードを設定しておくべきだろうが、今回はLAN内部に実験環境を構築しているため、CHAP認証自体を省略することにした。続いて、「iSCSI LUNの作成」だ。ここでは、「LUN配分」「LUN名」「LUNロケーション」「容量」を一気に設定する(QNAP画面8)。

【QNAP画面6】「新規iSCSIターゲットの作成」では、ターゲットに名前を付ける【QNAP画面7】「CHAP認証設定」画面【QNAP画面8】「LUN配分」「LUN名」「LUNロケーション」「容量」を設定する

 LUN配分はディスク領域を割り当てる方法の指定で、シンプロビジョニングか即時配分かを選択する。即時配分とは、指定された容量を最初に確保するやり方で、ごく普通の手法だ。一方、シンプロビジョニングは一種の仮想化であり、実際に消費される容量分しか確保しない。

 ストレージの設定では、将来データ量が増えた場合にも容量不足にならないように充分大きな容量を確保しておきたいが、最初の時点ではまださほどデータ量が多くない、といった状況はごく普通にある。即時配分だと、指定した容量を最初に確保してしまうので、未使用領域が大量に発生するのはもちろん、最初の時点で物理HDDの容量が揃っていなくてはいけないことにもなる。

 一方、シンプロビジョニングでは、容量指定はあくまでも額面上のもので、実際に割り当てられる容量は書き込まれたデータ容量に応じてその都度確保される。たとえば、LUNの容量として10TBを指定したとしても、実際にそのLUNに書き込まれたデータ量が1TBしかなかった場合、物理的な容量は1TB分しか割り当てられないし、HDDも1TB分が実装されていれば大丈夫ということになる。将来データ量が増えてきた段階で、HDDを追加すればよいわけだ。

 シンプロビジョニングは、ストレージの初期投資コストを抑制して投資効率を高めるために有効な手法としてエンタープライズ分野で普及しつつある技術だが、QNAPもいち早くこの技術に対応している。なお、シンプロビジョニングと即時配分の違いは、「容量」のスライドバーを動かしてみるとすぐにわかる。即時配分の場合、スライドバーを右に一杯に動かした時の容量は「LUNロケーション」のところに「空きサイズ」として表示されている物理的な容量に一致するが、シンプロビジョニングでは空きサイズに制約されず、最大で32,768GB(32TB)という容量になる。

 LUN名は、文字通りLUNに与える名前だ。前にiSCSIターゲット名を設定したが、あれはサーバー側から見えるインターフェイスの名前で、LUN名はQNAPの内部に作られたボリュームに対する名前だと理解すればよい。

 LUNは、いわゆるドライブ/パーティションのようなボリュームのことだと考えてよく、QNAPの内部に同時に複数作成することができる。そこで、複数のLUNを識別するためにLUN名を使うと考えればよい。ここでは、即時割り当てで1TBを確保することにした(QNAP画面9)。

 ここまでの設定が終わると、「設定の確認」画面が表示され、必要な設定が完了する。ウィザードによる作業が完了すると、「ターゲット管理」タブで詳細情報を確認できるようになる(QNAP画面10)。ここでは、設定したiSCSIターゲット名にLUNがマッピングされている状況が確認できる。これで、QNAP側での設定は完了したので、次はESXiでこのiSCSIターゲットに接続するための設定を行なっていく。

【QNAP画面9】ここでは、LUNに即時割り当てで1TBを確保する【QNAP画面10】ウィザードによる作業が完了すると、「ターゲット管理」タブで詳細情報を確認できる

 

ESXiの設定

 ハイパーバイザーとしてESXi 4.1をインストールした物理サーバーの管理を行なうには、別途用意したWindows PCにvSphere Clientをインストールしてリモートから実施することになる。

 vSphere Clientを起動すると、接続先とログイン情報を聞かれる(ESXi画面2)。接続先の指定にはIPアドレスを使うのが最も簡単だろう。そのため、サーバーのIPアドレス割り当てにはDHCPなどは使わず、手動で静的に割り当てるようにしておくべきだろう。

 また、ESXiのインストールではパスワードの設定は必須ではないので、明示的に指定しなければパスワードなしで管理者権限でのログインが可能になる。環境によってはセキュリティリスクがあることには注意しよう。なお、VMwareの管理サーバーであるvCenter Serverでは、イントール時にパスワードを設定することが必須となるので、パスワードなしでvCenter Serverにログインすることはできない。

 vSphere Clientを起動すると、作業ごとにタブに分割されたビジュアルな画面が表示される(ESXi画面3)。ここでは、QNAPとiSCSIで接続することが目的なので、「構成」タブを開いて左側の「ハードウェア」リストから「ストレージ アダプタ」を選択すると、「ストレージアダプタ」の欄に「iSCSIソフトウェア アダプタ」が表示される(ESXi画面4)。

【ESXi画面2】vSphere Clientを起動すると、接続先とログイン情報を聞かれる【ESXi画面3】vSphere Clientでは、作業ごとにタブに分割された画面が表示される【ESXi画面4】「構成」タブを開いて左側の「ハードウェア」リストから「ストレージ アダプタ」を選択。「iSCSIソフトウェア アダプタ」が表示される

 画面右下の「詳細」の欄を見ればわかるとおり、まだ「接続中のターゲット」はないので、まずはQNAPと接続を行なおう。それには、「詳細」欄右上の青字の「プロパティ...」リンクをクリックする。「iSCSI イニシエータ(iSCSIソフトウェア アダプタ)プロパティ」が別ウィンドウで開く(ESXi画面5)が、「ソフトウェア イニシエータのプロパティ」の欄を見ると「ステータス: 無効」となっているので、まずはこれを有効にするために「構成...」ボタンをクリックして「全般プロパティ」パネルを開く(ESXi画面6)。

【ESXi画面5】「iSCSI イニシエータ(iSCSIソフトウェア アダプタ)プロパティ」が別ウィンドウで開く【ESXi画面6】「構成...」ボタンをクリックして「全般プロパティ」パネルを開く

 ここで、「ステータス」欄の「有効」チェックボックスにチェックを入れ、「OK」ボタンをクリックすればよい。

 「iSCSIイニシエータ プロパティ」に戻ると、「iSCSIのプロパティ」欄に自分自身の名前が表示されているなどの変化が確認できるだろう(ESXi画面7)。ここで、QNAPと接続するために「動的検出」タブを開く(ESXi画面8)。「iSCSIサーバの場所」欄が空欄になっているので、まずは「追加...」ボタンをクリックして「ターゲット送信サーバの追加」パネルを開く(ESX18)。「iSCSIサーバ」の入力欄にQNAPのIPアドレスを入力して「OK」ボタンをクリックすればよい。

【ESXi画面7】「iSCSIイニシエータ プロパティ」の「iSCSIのプロパティ」欄を確認すると自分自身の名前が表示されている【ESXi画面8】QNAPと接続するために「動的検出」タブを開く【ESXi画面9】「追加...」ボタンをクリックして「ターゲット送信サーバの追加」パネルを開く

 なお、パネル上には「CHAP」ボタンも表示されているので、QNAP側でCHAP認証を有効にした場合には、ここで認証情報を正しく設定しておかないと接続できないことになるので注意しよう。この状態で「静的検出」タブに移動してみると、QNAP側で設定したiSCSIターゲット名(長大なフルネームの方)が表示されていることが確認できる(ESXi画面10)。「iSCSIイニシエータ プロパティ」パネルを閉じてvSphere Clientの画面に戻ると、「詳細」欄でQNAPのボリュームが接続されていることが確認できる(ESXi画面11)。

【ESXi画面10】QNAP側で設定したiSCSIターゲット名(長大なフルネームの方)が表示されている【ESXi画面11】vSphere Clientの画面に戻ると、「詳細」欄でQNAPのボリュームが接続されている

 続いて、左側の「ハードウェア」リストから「ストレージ」を選択する(ESXi画面12)。ここではまだ、インストール時に使用したサーバー内蔵ストレージ(実体はSSD×8によるRAID5ボリュームなのだが)しか見えてない状態なので、青字の「ストレージの追加...」リンクをクリックすると、「ストレージの追加」ウィザードが別パネルで開く(ESXi画面13)。

【ESXi画面12】左側の「ハードウェア」リストから「ストレージ」を選択【ESXi画面13】青字の「ストレージの追加...」リンクをクリックすると、「ストレージの追加」ウィザードが別パネルで開く

 まず最初の選択は「ストレージタイプ」で、「ディスク/LUN」か「ネットワークファイルシステム」かどちらかを選ぶ。説明文を読めば分かるが、iSCSIストレージは「ディスク/LUN」になるので、これを選んだ状態で「次へ」ボタンをクリックする。すると、「ディスクまたはLUNの選択」画面が開く(ESXi画面14)。

 ここで、先ほど設定したQNAPのiSCSIストレージが表示されていることを確認したら、そのエントリをクリックして選択した上で「次へ」で先に進む。次の「現在のディスクレイアウト」画面は、事実上単なる確認のみだ(ESXi画面15)。

 QNAP側では特に何の操作もしていないため、ボリュームは未使用状態で空の状態であることがわかる。ここでは特に設定すべきことはなく、単に「次へ」をクリックするだけでよい。

 次の「プロパティ」画面では、データストア名を入力する(ESXi画面16)。これはESXiやvSphere Clientから識別するための名前だ。わかりやすい名前を付けておけばよい。次の「ディスク/LUN - フォーマット化」では、VMwareで使用するクラスタファイルシステム“VMFS”のためのパラメータを設定する。VMFSでは、ブロックサイズが1MB、2MB、4MB、8MBの4種類から選択できる。

【ESXi画面14】左側の「ハードウェア」リストから「ストレージ」を選択【ESXi画面15】青字の「ストレージの追加...」リンクをクリックすると、「ストレージの追加」ウィザードが別パネルで開く【ESXi画面16】青字の「ストレージの追加...」リンクをクリックすると、「ストレージの追加」ウィザードが別パネルで開く

 この設定は、ボリュームサイズの上限およびファイルサイズの上限に影響を与える。ブロックサイズが大きければ、ボリューム/ファイルの最大サイズも大きくなるが、ストレージ消費量の最小単位もブロックサイズになるので、ブロックサイズを8MBにすると、1バイトのデータを書き込んだ場合でもストレージ上では8MBのスペースを消費することになる。ブロックサイズは運用中の変更はできないため、決定は慎重にすべきだろう。

 ここでは、最大ファイルサイズの大きさに注目し、ボリュームサイズとして確保した1TBと一致するよう、ブロックサイズを4MBに設定してみた(ESXi画面17)。「次へ」をクリックすると「終了準備の完了」画面が表示される(ESXi画面18)。ここで設定内容を最終確認し、問題が無ければ「終了」ボタンをクリックすると、データストアが作成され、vSphere Clientの画面上に表示される(ESXi画面19)。

【ESXi画面17】今回はブロックサイズを4MBに設定【ESXi画面18】「終了準備の完了」画面【ESXi画面19】データストアが作成され、vSphere Clientの画面上に表示される

 ここまでの手順で、「QNAPをiSCSIストレージとしてVMware環境から利用可能にする」という目的は達成できたことになる。ただし、実際にはハイパーバイザーとiSCSIストレージの間の接続が確立されているだけで、実際のストレージとしては使われていない状態だ。実際にストレージとして利用するには、ESXiサーバー上に仮想マシンを作る必要がある。

 まずは、現在の状態をvSphere Clientの「サマリ」タブで確認しておこう。ハードウェアの状況や利用可能なデータストアのリストなどが確認できる(ESXi画面20)。では、新規の仮想マシンを作成しよう。上部のメニューバーの「インベントリ」を開き、「ホスト」→「新規仮想マシン」を選択する(ESXi画面21)と、「新規仮想マシンの作成」ウィザードが開始する(ESXi画面22)。ここでは、「標準」を選んで先に進めよう。

【ESXi画面20】vSphere Clientの「サマリ」タブで、ハードウェアの状況や利用可能なデータストアのリストなどが確認できる【ESXi画面21】メニューバーの「インベントリ」を開き、「ホスト」→「新規仮想マシン」を選択【ESXi画面22】「新規仮想マシンの作成」ウィザードが開始する

 名前は任意でよいのだが、デフォルトで表示されている「新規仮想マシン」という名前では不便なので、インストール予定のOS名を明示しておくなど、わかりやすさに配慮した名前を付けておくべきだろう(ESXi画面23)。

 重要なのは、次の「データストア」の設定だ(ESXi画面24)。ここで、仮想マシンの保存先としてQNAPのiSCSIストレージを選択しておかないと、vMotion等には対応できなくなる。次の「ゲストOS」の設定は、仮想マシンのパラメータ設定に関するものであり、ゲストOSを直接インストールしてくれるわけではない(ESX34)。とはいえ、インストール予定のOSを正しく設定しておけば最適化された環境が作成されると期待できる。

【ESXi画面23】インストール予定のOS名を明示するなど、わかりやすい名前を【ESXi画面24】「データストア」で、仮想マシンの保存先としてQNAPのiSCSIストレージを選択する【ESXi画面25】「ゲストOS」の設定は、仮想マシンのパラメータ設定に関するものであり、ゲストOSを直接インストールしてくれるわけではない

 最後に、仮想ディスクの容量とオプションを設定する(ESXi画面26)。実運用環境では慎重なサイジングが必要だが、ここではとりあえずデフォルトのまま作成しておく。ここでシンプロビジョニングを指定しておけば、仮想マシンのためのディスクスペースもシンプロビジョニングで動的に確保されることになるのだが、今回の場合は仮想マシンのディスクはiSCSIストレージ上で共有され、データの移動は必要ないため、パフォーマンス面で有利な固定的な割り当てを選んでおいた。

 次の「終了準備の完了」画面ではこれまでの設定内容が表示されるので(ESXi画面27)、問題が無ければ「終了」をクリックすると新規仮想マシンが作成される。

【ESXi画面26】仮想ディスクの容量とオプションを設定する【ESXi画面27】「終了準備の完了」画面ではこれまでの設定内容が表示される

 仮想マシンが作成できると、画面左端のリソースのリストに仮想マシンが追加される。ここで仮想マシン名をクリックして選択すると、右側のタブが仮想マシン操作用のセットに切り替わる。ここで「コンソール」タブを選ぶと、仮想マシンの画面が表示され、仮想マシンの操作が可能になる(ESXi画面28)。メニューバーから「パワーオン」をクリックして起動すればBIOSメッセージなども表示される(ESXi画面29)し、インストールメディアをセットすればOSのインストールもリモートから実行可能だ(ESXi画面30)。

【ESXi画面28】「コンソール」タブを選ぶと、仮想マシンの画面が表示され、仮想マシンの操作が可能になる【ESXi画面29】メニューバーから「パワーオン」をクリックして起動すればBIOSメッセージなども表示される【ESXi画面30】インストールメディアをセットすればOSのインストールもリモートから実行可能

 

データセンター環境への発展

 1台の物理サーバー(VMwareでは“ホスト”と呼ぶ)に仮想環境を構築し、QNAPをiSCSIストレージとして接続し、iSCSIデータストアに仮想マシンを格納したわけだが、vMotionはホスト間で仮想マシンを移動する技術なので、当然ながら最低でも2台のホストが必要となる上、管理サーバーとしてVMware vCeter Serverを用意することも必須になる。vCenter ServerはWindowsアプリケーションとして実装されているので、Windowsマシンを用意する必要がある。できれば独立した物理サーバー上で運用する方が好ましいだろうが、仮想サーバーで運用することもできないわけではない。

 vCenter Serverのインストールは、一般的なWindowsアプリケーションのインストールと特に違いはなく、スムーズに完了する(vCenter画面1)。vCenter Serverはデータベースを利用するので、別途データベースを用意する必要があるのだが、Microsoft SQL Server 2005 Expressが同梱されており、インストーラ内で指定することでこれを同時にインストールし、利用できる(vCenter画面2)。必要な設定等もインストーラが自動的にやってくれるので便利だ。

【vCenter画面1】vCenter Serverのインストール【vCenter画面2】Microsoft SQL Server 2005 Expressが同梱されており、指定すれば同時にインストールできる

 インストールが完了しても、Windowsのスタートメニュー等にvCenter Serverのショートカットが作られたりはせず、ちょっと戸惑うが、vCenter Serverは管理ツールではなく管理サーバーなのだと考えれば納得できるだろう。

 vCenter Serverを活用するには、vSphere Clientを使ってリモート接続することになる。では、vSphere Clientを、接続先としてvCenter ServerをインストールしたWindowsマシンを指定して起動してみよう(vCenter画面3)。左側のリストに表示されているのはvCenter Serverの名前だ。

 vCenter Serverでは、稼働中のESXホストを自動的に見つけ出すわけではないので、最初の作業はこのvCenter Serverが管理対象とするESXホストを登録して「データセンター」を作成することだ。そこで、初期画面に表示されている「データセンターの作成」をクリックして先に進むことにする。

 リンクをクリックすると即座に新規データセンターが作成されるので、まずは名前を変更しておく(vCenter画面4)。このデータセンターはまだ空っぽの状態なので、次に「ホストの追加」をクリックすると「ホストの追加ウィザード」が開く(vCenter画面5)。

【vCenter画面3】接続先としてvCenter ServerをインストールしたWindowsマシンを指定して、vSphere Clientを起動【vCenter画面4】リンクをクリックすると新規データセンターが作成されるので、名前を変更する【vCenter画面5】次に「ホストの追加」をクリックすると「ホストの追加ウィザード」が開く

 「ホスト」欄にESXホストのIPアドレスを入力し、「ユーザー名」「パスワード」には各ESXハイパーバイザーのアカウント情報を設定すればよい。確認画面が表示されるので(vCenter画面6)、問題が無ければ「次へ」をクリックして先に進む。本来であれば次の手順でこのESXホストにライセンスの割り当てを行なうのだが、今回はライセンスなしの評価モードで実行しているため、この辺りの詳細は省略する。

 作業が完了すると、左側のツリー表示にESXホストが追加される(vCenter画面7)。あとは、ホストの数だけ同じ作業を繰り返せばよい。

【vCenter画面6】「ホスト」欄にESXホストのIPアドレス、「ユーザー名」「パスワード」には各ESXハイパーバイザーのアカウント情報を設定する【vCenter画面7】作業が完了すると、左側のツリー表示にESXホストが追加される

 画面表示が変化してしまっているが、ホストの追加はウィンドウ上部のメニューバーの「インベントリ」から「データセンター」→「ホストの追加」を選択すればよい(vCenter画面8)。詳細は省略するが、別途ESXホストを用意してデータセンターに追加し、「マップ」タブを開いてみた画面(vCenter画面9)を示しておく。

【vCenter画面8】ホストの追加は「インベントリ」から「データセンター」→「ホストの追加」を選択する【vCenter画面9】別途ESXホストを用意してデータセンターに追加し、「マップ」タブを開いてみた様子

 このマップ表示はデータセンター内のリソース配置を視覚的に確認できるユニークな機能だ。IPアドレスで表示されているのがESXホストで、上に表示されているホスト上には2つの仮想マシンが作られており、うち1台の仮想マシンはQNAPのiSCSIストレージと接続されている、という状況がわかる。

 また、下に表示されているホストはまだ作成直後の状態で、iSCSIストレージとも接続されておらず孤立した状態にあることもわかるだろう。vMotionを可能にするには、新しく追加したホストをQNAPに接続する作業が必要だが、その作業もvCenter Serverに接続した状態から実行できる。

 左のツリー表示でホストを選択し、右のタブで「構成」を選ぶと、見覚えのある画面が表示される(vCenter画面10)。最初のホストに設定したのと同様の設定を繰り返すことで、このホストでもQNAPのiSCSIストレージを利用可能にしておけばよい。作業内容は同一なので、詳細な手順は省略する。新しいホスト上でも新規仮想マシンを作成し、その際に仮想マシンの保存先としてQNAPを指定した後のマップが(vCenter画面11)だ。少々煩雑になっているが、QNAPのiSCSI領域が2つのホスト上の2つの仮想マシンと接続されている様子がビジュアルに表示されている。

 2台のホストでQNAPのiSCSIストレージを共有して仮想マシンの保存場所として利用しているため、これで最低限の環境構築はできたことになるが、vMotionによる仮想マシンのライブマイグレーションを行なうには、さらに追加の設定が必要だった。それは、ネットワークインターフェイスの追加だ。

 ESX環境のネットワークインターフェイスは、VM NetworkとManagement Networkの2種類が最初から設定され、Management NetworkはvMotionやiSCSI接続にも利用される、というのは前述の通りだが、実はこの状態ではvMotionは実行できない。

 vMotionを実行可能にするためには、vMotion専用のネットワークとしてManagement Networkと同様のVKkernelポートを追加で用意する必要がある。この設定を2台のESXホストそれぞれで行なえば、vMotionの実行環境が整う。

 vSphere Clinetでホストを選択し、「サマリ」タブを開くと、「全般」欄の下の方に「有効なvMotion:」という項目がある。ここに「はい」と表示されていればvMotionが実行可能になっているという意味になる(vCenter画面12)。

【vCenter画面10】ツリー表示でホスト、右のタブで「構成」を選択。QNAPのiSCSIストレージを利用可能にする【vCenter画面11】新しいホスト上でも新規仮想マシンを作成し、その際に仮想マシンの保存先としてQNAPを指定した後のマップ【vCenter画面12】「サマリ」タブをの「有効なvMotion:」で「はい」と表示されていればvMotionが実行可能

 vMotionの有効/無効を直接切り替えるオプション設定などがあるわけではなく、vMotionが利用可能な環境が整えば自動的に表示が切り替わるというものなので、ここの表示が「いいえ」となっていた場合にはどうすれば「はい」に切り替えられるのかが即座にわかるわけではない点が問題だが、ヘルプでは「vMotionの要件」といったドキュメントが参照できるので、それらを手がかりに環境を整備する必要がある。

 

vMotionの実行

 Windows Hyper-Vでは、ライブマイグレーションを実現するためにクラスタ環境を構築する必要があるなど、やや敷居が高い印象があったが、VMwareではvMotion自体は基本的な機能と位置づけられており、単に利用するだけならこれまでの作業で準備は完了していることになる。

 もちろん、高可用性クラスタの実現手段としてvMotionを利用したり、あるいはホストの負荷に応じて自動的に仮想マシンを再配置するといった機能を使うためには相応の環境整備やクラスタの構築が必要になるのだが、ここまでの設定だけで「ある仮想マシンを稼働させたまま別のホストに移動する」という動作は既に実行可能になっている。

 実際に仮想マシンをvMotionで別のESXホストに移動させる場合は、vSphere ClientでvCenter Serverに接続してデータセンターを表示しておき、左のツリー表示で移動したい仮想マシンを選択して右クリックメニューを開き、「移行」をクリックすればよい(vCenter画面13)。

 「仮想マシンの移行」ウィザードが開き、まず「移行タイプの選択」を行なう(vCenter画面14)。「ホストの変更」がvMotionで、「データストアの変更」はStorage vMotionということになる。ここでは「ホストの変更」を選択して「次へ」をクリックする。「ターゲットの選択」画面では、データセンター内のホストの一覧が表示されるので、仮想マシンの移行先となるホストを選択する(vCenter画面15)。

【vCenter画面13】移動したい仮想マシンを選択して右クリックメニューを開き、「移行」をクリック【vCenter画面14】「仮想マシンの移行」ウィザードで「移行タイプの選択」を行う【vCenter画面15】「ターゲットの選択」画面でホスト一覧が表示されるので、仮想マシンの移行先を選択

 動作中の仮想マシンの移行に支障を来たすようなハードウェアの互換性問題などが検出された場合には、下の「互換性」欄に警告が表示されるのだが、問題がない場合は「次へ」をクリックすればよい。次の「vMotionの優先順位」では、移行作業の優先度を「高優先順位」か「標準優先順位」かで指定できる(vCenter画面16)。通常は高優先順位にしておけばよいだろう。最後に確認画面が表示されるので(vCenter画面17)、問題がなければ「終了」をクリックすればvMotionによる仮想マシンの移行が開始される。

【vCenter画面16】「vMotionの優先順位」では、移行作業の優先度を指定可能【vCenter画面17】最後に表示される確認画面

 vSphere Clientのウィンドウ下部のタスク表示欄を見ていると、vMotionの進行状況がわかる(vCenter画面18)。ステータス表示が100%になれば移行完了というわけだが、当然ながら移行作業中もゲストOSの操作は可能だ。最終的に、まさに移動するタイミングで数秒操作不能のタイミングが生じたが、移動は無事完了した(vCenter画面19)。逆方向に戻すのも同様の操作で実行でき、この仮想マシンは稼働中に2台のホスト間を自在に移動できるようになったわけだ。

【vCenter画面18】vSphere Clientのウィンドウ下部のタスク表示欄で、vMotionの進行状況がわかる【vCenter画面19】移動は無事完了

 QNAPをVMwareの仮想化環境のためのストレージとして使う際の最大のメリットは、やはり“VMware READY”認証取得済みという点だろう。また、機能面でもシンプロビジョニングが可能な点や、NICのトランキングをサポートしているなどの点が有利なポイントとなる。また、iSCSIストレージとして使いつつ、同時に通常のNASとしても利用できる点も便利な点だ。

 NASとしての利用には特別な設定は必要なく、仮想マシン上のゲストOSから直接アクセスできる。従来は、vMotionを使うためにはFC-SANによる高価なストレージシステムが使われることが多かったのだが、QNAPによるiSCSIストレージでも十分実用的な環境が構築できることが確認できた。vMotionを利用するためには何らかの共有ストレージが必須であり、サーバーの内蔵HDDだけで何とかするというわけにはいかないのだが、QNAPであれば導入も容易で使いやすいので、仮想化環境を本格的に活用する際にはまず検討する価値のあるストレージだと言えるだろう。

 なお、今回「TS-459 Pro+ Turbo NAS」を前回に引き続き利用したが、現在は上位モデルにあたるTS-459 ProIIが販売開始されている。TS-459 ProIIで大きな違いとして挙げられるのが、メモリーが増設可能な点だ。最大3GBまでの拡張に対応する。多くのクライアントPCからNASへ同時アクセスが集中する環境などではメモリ拡張の効果が期待できるため、TS-459 ProIIを検討した方が良いかもしれない。


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(渡邉 利和)

2011/5/9 00:00