PCもタブレットもまるごとおまかせ! QNAPではじめるデータ管理術

自分でできる電子看板ソリューション
QNAPデジタルサイネージプレーヤー「iS-1600」

 テックウィンドから新たに販売が開始されたQNAPのデジタルサイネージプレーヤー「iS-1600」は、市販のディスプレイを使って高度なデジタルサイネージを展開できるデバイスだ。店舗や店頭に設置したディスプレイで、自社商品の紹介や役立つコンテンツを手軽に発信することができる。その手軽さを実際に体験してみた。

最新デジタルサイネージを小さな店でも導入可能

 自分で運営している店舗があったとしたら、コレがあれば、相当に夢が広がりそうだ。

 外から見える窓際に設置して、街ゆく人に自社商品を紹介するのもよさそうだし、店舗のイメージに合ったビデオを流して雰囲気作りに役立てるのもいい。

 商品の活用方法をスライドやビデオで紹介すれば、売上げに貢献するかもしれないし、店からのメッセージや店員の紹介などで顧客との距離を縮めることもできそうだ。

 最近では、マーケティングと言うとインターネットを利用したものばかりが話題になりがちだが、目の前にいる顧客との接点を強めるという意味では、今回取り上げるQNAPの「iS-1600」は、非常に興味深いデバイスと言えるだろう。

市販のディスプレイを使って、自分でデザインしたコンテンツをスケジュール通りに表示できるデジタルサイネージプレーヤー

 iS-1600は、市販のテレビやディスプレイに接続するだけで、画面に思い通りのコンテンツを決まったスケジュールで表示することができるデジタルサイネージプレーヤーだ。

 駅のホームや百貨店などで、大型のスクリーンに次々に広告が表示される電子看板を見かけたことがある人も多いと思われるが、それと同じことを市販のディスプレイを使って手軽に実現できてしまう製品となっている。

 似たようなシステムは、これまでも小さな店舗でも導入されていたケースもあったが、テレビに小型のDVDプレーヤーなどを接続して、作成した映像を繰り返し再生するような簡易的なものが多かった。それらは低コストで導入できる魅力はあるものの、情報が古くなっても更新されなかったり、何度も何度も繰り返し同じ映像を見せられることが多く、かえって逆効果な印象を受ける例も少なくなかった。

 これに対して、以下のような特徴を持ったiS-1600では、ネットワークを利用した最新のデジタルサイネージソリューションを利用することが可能となっており、必要なときに必要なタイミングで最新のコンテンツを手軽に、そして自動的に表示することができるようになっている。

【iS-1600の特徴】

  • 市販のディスプレイにつなぐだけの簡単設置
  • PC上で最短数分でコンテンツを作成可能
  • ネットワーク経由で手軽にコンテンツを配信可能
  • スケジュール表を見ながら配信するコンテンツを設定可能
  • 複数のデバイスを一カ所から管理できる
  • コンテンツの作成や管理用ツールが無料

 前述した百貨店や駅のホームなどのケースで、より効率的な運用やコストの低減が見込めるのはもちろんのこと、これまでデジタルサイネージを手間やコストの面であきらめざるを得なかった小さな店舗でも、最新かつ本格的なデジタルサイネージ環境を導入できるというわけだ。

思い立ったらスグ作って、スグ配信

 それでは、実際の使用感をお伝えしていこう。本製品に関しては、あれこれと理屈を紹介するよりも、とにかく使ってみる方がわかりやすい。

正面
背面
側面
フロントにはSDカードスロットも用意。盗難防止用にネジで固定可能

 まずは、設置だが、PCと同じように市販のテレビやディスプレイに接続する。背面のDisplay Port、もしくはDVI端子(HDMI変換でも可能)を利用して、市販のケーブルで接続。続けて、LANポートにネットワークケーブルを装着し(オプションで無線LANにも対応可能)、付属のACアダプタで電源を接続する。

 後は本体前面の電源ボタンで電源を入れれば、ディスプレイ側の準備は完了だ。後は本体側を操作することは基本的にない。

 なお、今回使用したiS-1600はDisplary PortとDVIの2ポートに、それぞれ別々のディスプレイを接続して2画面表示が可能なモデルになっている。2枚のディスプレイをまたいで大きなコンテンツを表示することはもちろんのこと、それぞれのディスプレイに個別に情報を表示することもできる。

 QNAPのデジタルサイネージソリューションでは、接続可能なディスプレイの数によって、iS-1500(1台)、iS-1600(2台)、iS-1900(3台)、iS-2840(4台/4K対応)までラインナップしているので、表示環境を考慮してモデルを選ぶといいだろう。

 設定には、付属のソフトウェアを利用する。通常、デジタルサイネージソリューションでは、ハードウェアとソフトウェアが別売りになっているケースが多いが、本製品は本体に無償で添付されているのがありがたい。

 付属のDVDから「iSignager」をインストールして起動する。このソフトウェアは、デザイン用の「iArtist」、スケジュール設定用の「iScheduler」、デバイス管理用の「iCommand」の3つの機能で構成されているので、まずは「iCommand」で管理するデバイスを登録する。

 デバイスの追加でネットワークをスキャンすると、設置したiS-1600が自動的に検出されるので登録すれば、コンテンツを作成したり、配信する前の準備は完了となる。

 なお、店舗を全国に展開しているようなケースでは、本社側からWAN経由でiS-1600を制御することもできる。この場合、支店側に設置したiS-1600で、ブラウザを利用して設定画面を表示後、本社側のサーバー(iSignagerをインストールしたPC)のIPアドレスを指定しておく(必要に応じて通信に使うポート5080を通過させる)。

 これで、本社側のiSignagerからWAN経由で遠隔地のiS-1600を認識し、コンテンツの登録やスケジュールの設定などがリモートで可能になる。

プレーヤーの管理やコンテンツ作成、スケジュール設定が可能な無料ソフト「iSignage」が付属
最初にネットワーク上のiS-1600を検索して登録する
WAN経由で利用する場合は、iS-1600の設定画面からサーバーのIPアドレスを手動で指定する

必要なパーツを貼り付けるだけの簡単デザイン

 続けて配信するコンテンツを作成してみよう。

 前述したようにiSignagerからiArtistを起動し、配信先のモデルや解像度を設定すると、作成画面が表示される。作成のイメージとしてはパワーポイントに近い。左側に文字や映像、画像、音楽などの各種パーツが用意されているので、これを画面上にドラッグして配置していく。

 たとえば、喫茶店なら、コーヒーのアイコンを配置し、「ほっと一息」のような表示したいメッセージを付け加える。文字を流れるように表示したり、画像を浮き上がるように表示するなど、アニメーション効果を加えることも可能だ。

画面上に画像や文字を配置し、再生時間や表示方法などを調整してコンテンツを作成

 すでに作成済みの動画がある場合などは、それをそのまま配置することもできるし、Flash形式の動画(SWF)を追加したり、パワーポイントのスライドを動画に変換して配置することも可能だ。また、WebページやRSSのURLを貼り付ければ、iS-1600からインターネットに接続して、最新情報を取得しながら画面上に表示することまでできる。

 凝ったコンテンツを作ろうと思えば、いろいろな工夫が可能で、ついつい時間を忘れてしまうほどだ。

 コンテンツが完成したら、次にスケジュールを設定する。iSchedulerを起動すると、カレンダーが表示されるので、表示したい日付の表示したい時間帯を右クリックして、スケジュールを設定する。

 たくさんのコンテンツを用意しておけば、曜日や時間によって表示するコンテンツを変更することができるので、時間帯によって客層が変化したり、訴求したい商品を変えたいといった場合でも柔軟に対応できる。

 スケジュールは手軽に変更することができるので、天気や気温などの予報を考慮して、その日、その日で、スケジュールを細かく調整すると効果的だ。

 こういった運用は、前述した小型のDVDプレーヤーなどのソリューションでは不可能だ。これだけでもiS-1600を導入する価値があると言えるだろう。

作成したコンテンツをいつ表示するかをスケジュールで設定。GUIで簡単に設定できる

iS-1600にネットワークで転送すれば再生開始

 スケジュールを設定したら、スケジュールの情報や作成したコンテンツをiS-1600に転送する。スケジュールを適用すると、ネットワーク上のデバイスが一覧表示されるので、適用先を指定しよう。

 これでスケジュールに従ってiS-1600がディスプレイにコンテンツを自動的に表示し始めるようになる。

 このようなネットワークでの配信が可能なのも、QNAPのデジタルサイネージソリューションのメリットの1つだ。

作成したコンテンツはネットワーク経由で手軽に配信可能

 表示するディスプレイの設置場所が少なく、近くにあれば、作成したコンテンツをUSBメモリなどで読み込むことも不可能ではないが、複数台の機器が分散して配置されていると大変な労力になる。実際に表示してみてから、誤字脱字に気づいて、修正を繰り返すなどということになれば、その苦労は相当なものにもなる。

 しかし、ネットワーク経由で配信ができれば、こういった苦労も一切ない。配信先が何台あろうと(iSignagerでは最大25台まで管理可能)、WAN経由の離れた場所にあろうと、手元から配信先を選ぶだけで、すぐにコンテンツを転送できる。実際の表示を見ながら細かい修正を繰り返しても、まったく苦にならない。

【編集注】

iSignagerで管理できる数は、v1.09までは最大25台でしたが、v1.2から現行のv1.4については、100台まで管理可能となっています。

 もちろん、端末自体の管理も可能で、iCommandからネットワーク経由で端末の情報を確認したり、ログを表示したりすることができる。また、配信のスケジュールとは別に、デバイス側の電源のオン/オフをスケジュールで設定することもできるうえ、緊急用のメッセージを各端末に配信することもできる。

 たとえば、天候の急激な変化や交通機関の運休などがあった場合に、緊急情報として通常のコンテンツの上に赤い文字でメッセージを表示することができる。防災などの観点でも、このソリューションは役に立ちそうだ。

緊急メッセージを表示することもできる

店舗の価値を上げるソリューション

 以上、「iS-1600」を例に、テックウィンドが取扱を開始したQNAPのデジタルサイネージソリューションを紹介したが、これまで敷居が高かった本格的なデジタルサイネージを非常に手軽に導入できるお得なソリューションと言える。

 はじめての場合、使い方に慣れるまで若干の戸惑いはあるかもしれないが、慣れてしまえば、非常に効率的にコンテンツの作成、スケジューリング、配信が可能となっている。コンテンツの作成は、ある程度のセンスが問われるため、外注も検討したいが、さまざな形式のファイルに対応できるので、無理なくコンテンツを集めることができるだろう。

 市場想定価格(いずれも税込)は、エントリーモデルの「iS-1500」が9万8000円、今回取り上げたデュアルディスプレイ対応の「iS-1600」が16万8000円、最上位のiS-2820が50万8000円となっている。本格的な機能を搭載し、しかもソフトウェアが無料で使えることを考えると、決して高くはないだろう。

 どのような情報を表示するかは店舗次第だが、顧客への情報発信スペースとしてうまく活用すれば、店舗の価値を上げ、経営にもプラスに働くことになる。今スグできる現場レベルでのマーケティング手段として、ぜひおすすめしたいソリューションと言えるだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。