清水理史の「イニシャルB」

顔認識にするか? 指紋認証にするか? マウスコンピューター「CM01」と「FP01」

 マウスコンピューターからUSB顔認証カメラ「CM01」と指紋認証リーダー「FP01」が発売された。どちらもWindows 10の生体認証機能「Windows Hello」に対応した製品で、サインインやロック解除時の面倒なパスワード入力から解放される製品だ。実際の使い心地を試してみた。

どっちもいいけど指紋かなぁ

 顔認証は、確かにすばらしい。

 PCの前に座れば、さっとサインインが実行され、即座にデスクトップが表示されるのは、快適そのもの。大文字と記号を意識してパスワードを入力しなくても済むなんて、実にムダなことだったことを思い知らされる。

 しかしながら、サインイン時にカメラのLEDがビカビカと激しく点滅し、「ユーザーを探しています」なんて表示されると、なんだかせかされているようで、「すみません、今座ります」と恐縮してしまう。

 サインインとロック解除のとき以外、つまり普段の作業中もずっとレンズがこちらに向いているのもちょっとした恐怖で、「おい、ちゃんと仕事してるか?」とでも言われているようで、どうにも気分が落ち着かない。

 ディスプレイにさりげなくビルトインでもされていれば、ノートPCやタブレットのように気にならないのかもしれないが、このあたりは外付け、後付けの宿命だろう。

 というわけで、個人的には安いし、モバイル環境でも使えるので、指紋認証リーダーの「FP01」の方がお気に入り。

 詳細は後述するが、タッチ方式のメリットを実感できるし、サインインの主導権が人間側にあるのは、やっぱりしっくりくる。起動時だけでなく、決済時にも使うことがあるだけに、すべてオートマチックになるよりは、少しばかり意志が介在するくらいが、ちょうどいい。

 いずれにしても、Windows 10を使っているなら、Windows Helloを使わない手はないが、今回マウスコンピューターから発売された「CM01」、「FP01」はどちらも秀逸。買って損のない製品と言える。

マウスコンピューターから発売された顔認証デバイス「CM01」(左)と指紋認証リーダー「FP01」(右)

注目の顔認証に挑戦

 それでは、実際の使い心地をレポートしていこう。まずは、顔認証の「CM01」から。

 本体はディスプレイの上に固定できるだけあって、それなりにコンパクトで軽量サイズ(約奥行53×幅135×高さ22mm)。Xbox OneやPS4のモーションカメラを思い浮かべる人もいるかもしれないが、そのイメージよりもはるかに小さい。

正面
側面
背面

 デザインは光の加減によっては、「mouse」のロゴがきらりと光るが、全体にシンプルなデザインで、あまり主張するところがない。

 冒頭でも触れたが、ディスプレイの上に設置すると、どうしても普段の作業中に視界に入ってくることになるが、そうなってもあまり気にならないようにという配慮だろう。

 台座部分は、そのまま机に直置きするときにも使えるが、コの字型に展開して、ディスプレイ上部に固定するときのクリップのように利用できる。

 なお、ディスプレイへの固定後でも、カメラ部分は上下に若干の角度調整可能。角度によっては、前述した「mouse」のロゴが天井の蛍光灯を反射するので、我が家ではほんの少しだけ下方向に向けておいた。

台座部分を折り曲げるとディスプレイに固定可能
30型ディスプレイに設置した際のイメージ

 接続は簡単で、USBケーブルでPCに接続後、同社のWebページからダウンロードできるドライバーをインストールする。デバイス自体は、接続後に自動的に認識されるが、そのままでは「設定」からWindows Helloの顔認証の設定ができず、ドライバーをインストールし、再起動することではじめてセットアップが可能となる。

 顔認識の設定は、指紋認証の設定を大きな違いはない。設定にPINが必須となる点も同じで、あらかじめPINを設定しておくと、「設定」の「アカウント」にある「サインインオプション」から「顔認識」のセットアップ時にPINを設定しておけばいい。

 セットアップを実行すると、カメラで認識された画像が画面上に表示されるので、普段、PCの前に座っている感じで、数秒間、じっとディスプレイを見ていればいい。これで、自分の顔が登録される。

ドライバーをインストール
再起動するとWindows Helloデバイスとして利用可能
画面をしばらく見続けると顔が登録される

 サインイン時は、もっと簡単で、単にPCの前に座るだけでいい。

 PCが起動すると、カメラのLEDがビカビカと光り(カメラでは撮影できなかった)、サインイン画面に「ユーザーを探しています」と表示される。

 座ってディスプレイに顔を向ければ、即座に認識され、自動的にデスクトップが表示される。

 同社のWebページでも紹介されているように、認識時間は1秒以内とほんの一瞬(PCが起動しきっていなければその時間はもちろんかかる)。映画などで、人物をカメラで認識するときのように、じっと対象を見つめるとか、しばらく動かずにじっとしている必要は一切なく、座って、顔を上げれば、さっと見つけてくれる印象だ。

顔認識の様子。ほぼ一瞬でサインイン可能

 もちろん、まったく間違いを起こさないというわけでもない。まず、カメラからの距離が1メートルほど離れると、遠すぎて認識できない。

 また、容姿に関しても、そこそこ誤認識される。試しに、3連休まったく剃らずに放置していたヒゲ面のまま登録し、その後、さっぱりヒゲを剃った状態で試してみたが、結果的にサインインできたものの、何度か認識に失敗するケースが見られた。

 眼鏡も同様で、老眼気味になった視力をカバーしようと、眼鏡をかけた状態でPCの前に腰掛けると、かなりの確率でユーザーを認識できなかった。どうやら、筆者宅の場合、蛍光灯の光が眼鏡のレンズに反射していたようで(認識精度を高めるタイミングで気づいた)、目の部分が白く抜けてしまっていたのが大きな原因のようだ。

眼鏡は注意。光が反射すると結構認識してもらえない

 とはいえ、このような場合でもWindows Helloの設定で「認識精度を高める」から、ヒゲのない状態、眼鏡をかけた状態、ヘッドセットをした状態など、異なるパターンを登録してやることで、どのような場合でも認識させることが可能となる。

 なお、認識時にたまたま顔に手を当てていたり、顔を掻いているくらいなら、問題なく認識が可能だ。悪意を持って、意図的に顔を隠すようなことをしなければ、結構な精度で認識してくれる。

「認識精度を高める」でヒゲバージョン、メガネバージョンなど撮影しておけばOK

 ちなみに、PC起動時は、顔を認識すると即座にデスクトップが表示されるが、起動後の動作は少し異なる。

 PCをロックしたり、スリープから復帰したタイミングなどでは、顔を認識してもデスクトップは自動的に表示されず、マウスをクリックしたり、キーボードをたたくという1ステップを経て、はじめてデスクトップが表示される。

 でないと、席を外すタイミングでPCをロックした瞬間にカメラの視界から外れるように身を隠さないと、PCをロックできなくなってしまうからだ。

 もちろん、クリックしてロックを解除する前に席を外して、カメラの視界から外れれば、再び画面は自動的にロック状態に戻る。よく考えられたしくみだが、今、PCの前に誰がいるのかがきちんと把握されているというのも、よくよく考えるとなかなか複雑な気持ちだ。

やっぱりタッチが便利

 一方、指紋認証リーダーの「FP01」の方は、かつてのBluetoothのレシーバーほどのサイズで非常にコンパクト。

 PC装着後、外部にはみ出すリーダー部分が5mmほどあるので、ノートPCやタブレットなどに装着すると、少し出っ張りが気になるところだが、Surfaceなどにも適した指紋認証リーダーとなっている。

指紋認証リーダー「FP01」
左からUSBメモリ、FP01、Bluetoothアダプタ
Surface 3に装着した際のイメージ。結構はみ出す

 こちらも利用方法は簡単で、基本的にはPCに装着するだけ。筆者の所有するSurface 3では、顔認証のCM01と同様に、同社のWebページからドライバーをダウンロードしてインストールしないとデバイスが認識されなかったが、取扱説明書によるとWindows Update経由でもドライバーがインストールされるようなので、装着後、しばらく待てば自動的に認識される可能性もある。

 設定は同様で、「サインインオプション」でWindows Helloの設定を開始し、デバイスの頭部に何度か指を当てたり、離したりを繰り返すことで指紋を登録。登録が完了したら、サインイン画面で指を当てれば、サインインが実行され、自動的にデスクトップが表示されるようになる。

指紋認証の設定。何度かタッチして指紋を認識させる

 使ってみて感動したのは、タッチ方式の手軽さだ。スマートフォンなどではすでにお馴染みの方式だが、指を軽く当てるだけでサッと認識されるので、認証時に余計な労力がかからない。

 個人的に、ずっとサンワサプライのスライド式指紋認証リーダーを使っていたのだが、スライド式の場合、指をスライドしたときに本体が一緒に机の上を滑ってしまったり、スライドさせるスピードや角度によっては読み取りに失敗するケースがあり、ちょっとしたコツが要求されることがあった。

 タッチ式の場合も、当てる指の場所、角度などによって、読み取りミスが発生することがあるが(複数登録で回避可能)、少なくともスライド時に本体が一緒に動くようなイライラからは解放されることになる。

軽くタッチするだけで認識してくれるので、こちらも楽
スライド式を使っていたが、スライド時に本体が滑るのが難点だった
角度が違うとサインインできない場合もある

 FP01の最大の課題は設置場所だろう。ノートPCやタブレットでも利き手側にUSBポートがないと不便だが、デスクトップPCなどでは本体に装着するのは明らかに不便だし、USBハブに装着するにしてもポートを選ばないと指を当てにくい。

 理想を言えば、FP01を上向きに装着できる台座タイプのUSB延長ケーブル(かつてUSB無線LANアダプタを立てて設定する台座があったがあれと同じようなもの)が付属していてほしかったことろだが、無いので仕方ない。

 筆者の環境では、愛用している富士通のLibertouchに、まさに指紋認証リーダーを付けてくださいという位置にUSBポートが用意されていたため、ここに装着した。普段、まったく目立たないうえ、キーボードのに手をかぶせるようにして指を当てられるので、指をあてる位置を決めやすい(ズレにくく認識させやすい)。

 接続後、「mouse」のロゴの下あたりが青く光るのだが、USBポートの方向がちょうどLEDが下向きに光る向きになっているため、余計な光も目に入らずに済むのもありがたい。

 それにしても、なんでもかんでも光らせるのは、そろそろどうにかして欲しい。個人的には価格が少し高くてもいいから、光らないバージョンのデバイスを選べるようにしてほしいところだ。

愛用キーボードの「Libertouch」。この部分にUSBポートがあり、FP01を装着しておくと認証も楽だし、目立たない
指紋認証の様子

決済もあるし指紋で運用

 というわけで、筆者のPCは、今、顔認証のCM01と指紋認証のFP01の両方が装着されているが、個人的にはFP01で十分、と言うより、CM01の顔認証は過剰だと感じられるので、FP01の指紋認証で使い続けようかと思っている。

 その理由は、カメラが常にこちらを向いているのがイヤなのと、少々過剰な印象があるからだ。

 サインイン、ロック解除ならいいが、Windows Helloによる認証は、Windowsストアなどで有料アプリや映画などを購入するときにも利用される。指紋の場合、買う意思を持って指紋認証を実行するので自分の意志と操作があっているが、顔認証の場合、PCの前に座っている限り、買う意識があるかどうかに関係なく認証は実行される。

 もちろん、認証だけでは購入に至らず、その後、「OK」をクリックして、さらに数ステップの操作が必要だが、こういったユーザーの意志決定が必要な部分の操作まで自動化されたり、敷居が下がりすぎてしまうのは、個人的にはあまり好ましくないと考える。

 このあたりは好みの問題なので、実際にどちらを使うかはユーザー次第だが、個人的には指紋認証で「ちょうどいい」と感じたところだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。