清水理史の「イニシャルB」
USB接続の1300Mbps対応無線LAN子機 ASUS「USB-AC68」
2016年10月24日 06:00
ASUSからUSB接続の無線LAN子機「USB-AC68」が発売された。USB接続ながら3ストリームMIMOの1300Mbpsに対応した無線LAN子機だ。少しでも高速にクライアントを接続したいというニーズに応える同製品の実力を検証してみた。
特定のクライアントを高速につなぎたい人に
IEEE 802.11ac対応の無線LANルーターが登場してしばらく経つが、ここに来てようやく3ストリーム対応のUSB接続子機が登場した。
PCに内蔵される無線LAN機能は、Mac Book Proなどの一部製品を除き、2ストリーム対応の866Mbps対応止まり。外付けの無線LANアダプタの多くも、866Mbps対応がほとんどで、3ストリームの1300Mbpsに対応させるにはPCI Express対応の子機、4ストリームの1733Mbpsに対応させるにはEthernet接続の子機(有線は1Gbpsだが……)を利用するしかなかった。
現状、無線LANルーターは、特定の1台のクライアントと高速に通信するためというよりも、たくさんのクライアントの通信を捌くことができるキャパシティが重要視されているが、特定のPCで大容量のデータを扱う場合など、1対1の通信で高いパフォーマンスが要求されるケースもある。
これまでの無線LAN子機では、こういったニーズに応えるために特殊なインターフェイスが必要だったが、ASUSの「USB-AC68」が登場したことによって、ようやくUSBという汎用的なインターフェイスで、高速な無線LAN通信が可能になった。
USB-AC68 | PCE-AC68 | EA-AC87 | |
実売価格 | 9920円 | 1万330円 | 1万4930円 |
対応規格 | IEEE 802.11ac/n/a/g/b | ← | IEEE 802.11ac |
5GHz帯速度 | 1300Mbps | ← | 1734Mbps |
2.4GHz帯速度 | 600Mbps | ← | - |
インターフェイス | USB 3.0 | PCI Express | Ethernet |
昆虫の羽のようなアンテナを装備
USB-AC68のデザインは、なかなか個性的だ。
幅30.0×奥行115.0×高さ17.5と、従来の866Mbps対応無線LANアダプタと比べて、一回りほどサイズが大きいうえ、黒をベースに赤のアクセントを用いたカラーもスピード感をうまく演出している。
最大の特長は、アンテナ部分で、中央部分の境目から昆虫の羽のように斜め上方向にはね上げることが可能になっており、すべて展開すると2本のアンテナと本体で「Y」字型を形成するようになっている。
今回のUSB-AC68は、3ストリームMIMO対応となるため、3本のアンテナが必要になるが、そのうちの2本をこの羽が担当し、残りに内部アンテナを利用するという方式が採用されている。
ただし、スペックシート上では、外付け2本、内蔵2本としか記述がなく、送受信にどのような組み合わせで使っているのかまでは判断できない。
なお、アンテナは、閉じた状態、途中まで跳ね上げた状態、全開のY時状態のどれでも利用できるが、当然のことながらY字の状態にしたときがもっとも感度がいい。
もちろん、片方を半開、もう片方を全開で使うことも可能で、場所によってはこの組み合わせの方が高速な通信ができる場合もある。たとえば、木造三階建ての筆者宅の場合、1階にアクセスポイントを設置した状態で、2階や3階から通信する場合、片方を半開にした方が高速な結果が得られた。両方半開の場合よりもアンテナの距離が確保できるためMIMOの特性を生かせる可能性がある。
格納状態 | 半開状態 | 全開状態 | |
信号レベル | -42dBm | -36dBm | -35dBm |
送信レート | 1053Mbps | 1053Mbps | 1300Mbps |
受信レート | 585Mbps | 780Mbps | 866Mbps |
- ※同一フロアに設置したASUS RT-AC68Uのクライアント情報で確認
近距離はEthenet子機と同等の性能を実現
気になるパフォーマンスだが、以下の通りだ。
1F | 2F | 3F | |
USB-AC68(1300Mbps) | 772 | 215 | 126 |
MacBook Air2013(866Mbps) | 343 | 136 | 94.7 |
同一フロアで計測した場合は最大で700Mbps以上で通信できることが確認できた。今回のテストではMacBook Air 2013 11インチ(866Mbps)を利用したが、内蔵無線LANが343Mbpsだったので、ほぼ倍のスピードを実現できることになる。
もちろん同一フロアであっても離れた場所であれば、ここまでの速度は実現できないが、同じフロアの別の部屋や移動しながら使ってみた限りでは400Mbps前後で通信できたので、パフォーマンス的には優秀だ。
これくらいのスピードで常用できるのであれば、Ethernet接続の子機ではなく、こちらを選んでも損はないと言える。
ただ、やはりアンテナ形状の限界だろうか、2階や3階になると、思った以上に速度の落ち込みが大きく、内蔵の866Mbpsとの差も小さくなってしまう。長距離でのパフォーマンスを重視するなら、PCI Express接続やEthernet接続の子機を選んだ方が有利だと考えられる。
Windows 10なら自動検出
最後にセットアップについて触れておこう。Mac OS Xの場合は付属のCD、もしくはASUSのサポートサイトからダウンロードしたドライバー(ダウンロードの場合は2.1.2.8以前でないと圧縮ファイル内にドライバーが見当たらないので注意)をインストールし、追加されたアイコンから接続を実行する方式となる。
一方、Windowsの場合、筆者の環境(Windows 10 Insider Preview 14946)ではドライバーが自動的にインストールされた。おそらく他のビルドでも自動的にドライバーがインストールされるはずので、基本的にはつなぐだけですぐに利用できる。接続もWindows標準の機能を利用できるので簡単だ。
こういった手軽さは、USB接続ならではと言える。PCI Expressのようにケースを開ける必要もないし、Ethernet接続のように子機側のIPアドレスを探して設定画面から接続設定する必要もない。
若干、長距離でのパフォーマンスが物足りないが、それでも866Mbps対応のクライアントよりは高速なうえ、何より手軽に利用できるのは大きなメリットと言える。サイズ的にノートPCとの組み合わせは無理があるので、デスクトップPCを無線化したい場合は有力な選択肢と言えるだろう。