清水理史の「イニシャルB」

今さらながら「Amazon Fire TV」を購入 プライム会員なら持っていてもいいかも

 最近、テレビでCMをよく見かけるようになったこともあり、「Amazon Fire TV」を購入した。まもなく国内でも登場するであろう新型Stickと悩んだが、今回購入したのは有線LANやUSBポート、microSDスロットも搭載した既存の上位モデル。その使い心地を試してみた。

新型Stickが……

 通信の安定性を考えると有線がいいし、外部ストレージも使えるため、仮に新型Stickが登場してたとしても、こちらを選んだと信じたい。

 9月末に米国で第3世代のFire TV Stickが発表されたが、時を同じくして1万2980円のボックスタイプの「Amazon Fire TV」を購入した。

 しかし実際に使ってみると、無線LANでも映画の再生は問題なさそうだし、USBも背面だと装着しにくく、アプリ側もあまり外部ストレージの利用が想定されているわけでもない。

 スティックタイプのデバイスは、初期のスティックPCで放熱性の悪さを体験したことがあるだけに、あまりいいイメージがないのだが、これなら、新型Fire TV Stickを待ってもよかったかもと、実は少し後悔している。

 クアッドコアのCPUと2GBのメモリは、このデバイスには過剰な気もするが、価格だけの価値はあると、今は自分を納得させているところだ。

Amazon Fire TV。ボックスタイプの上位モデルで有線LANと外部ストレージを利用可能

「まんま」と

 そもそも、Fire TVを今のタイミングで購入するというのも、ちょっと遅い気がするが、そこはAmazon.co.jpの戦術にうまくはまった格好。まとめると、こんな感じ。

・レビュー用の機材が即日必要な場合もあるため初期からプライム会員になる
   ↓
・いつのまにか動画が見放題になっている
   ↓
・家族が見たいと言った映画がプライムビデオにあったのでiPadで見せる
   ↓
・何度かそれを繰り返す
   ↓
・ついに大きな画面で見たいと言われる

 「まあ、そうなるわな」というのが正直なところ。

 なんだかどんどん居心地がよくなって、そこから動きたくなくなるどころか、次第にそこにとどまるためのコストさえ厭わなくなるのだから、この商売的な「おもてなし」のしくみは、実に巧みなエコシステムを形成している。

完成度の高いハードウェア

 愚痴を言っているのか、感嘆しているのか、よくわからなくなってきたので、本題に入ろう。

 Amazon Fire TVは、HDMI経由でテレビに接続するSTBだ。冒頭でも触れたようにStickタイプの製品があることから、Chromecastと比較されることもあるが、どちらかというとApple TVに近い製品。

正面
上面
背面

 Amazon.co.jpがプライム会員向けに提供する映像配信サービス(プライムビデオ)や音楽配信サービス(プライムミュージック)を楽しめるほか、ゲームやアプリをダウンロードして機能を追加したり、Amazon Cloud Driveに保存された写真や動画を再生したりすることができる。

 本体サイズは、115mm×115mm×17.8mmで、サイズはほどほどにコンパクト、厚さが17.8mmとスリムなうえ、デザインもシンプルで見た目の印象は良好で、質感も高い。付属のリモコンも、方向ボタンのデザインがApple TVのリモコンに似ているが、ボタンを押したときの感触もよく、適度なサイズ感がホールドしやすい。

付属のリモコン。音声認識も可能

 インターフェイスは背面に用意されており、HDMI端子、100BASE-TX対応のイーサネット端子、microSDカードスロット、USB 2.0対応のUSB端子が搭載されており、スリムな筐体にもかかわらず、うまく詰め込んだ印象だ。

 スペックは以下の通りで、冒頭で触れたStickと比べると、実はかなり高性能なことがわかる。ここまで構成が違えば、倍以上の価格差があっても当然だ。

Fire TVFire TV Stick
CPUMediaTek クアッドコア 2.0GHzBroadcom Capri 28155 デュアルコア 1GHz
GPUPower VR GX6250VideoCore4
RAM2GB1GB
ストレージ8GB8GB
Wi-Fi802.11a/b/g/n/ac802.11a/b/g/n
BluetoothBluetooth 4.1(HID/HFP/SPP)Bluetooth 3.0(HID/SPP)
LAN10/100Mbps-
microSDFAT32対応-
USBUSB 2.0×1-
対応ビデオ形式H.265、H.264H.264
対応オーディオ形式AC-LC、AC3、eAC3、FLAC、MP3、PCM/Wave、Vorbis、Dolby Atmos(EC3_JOC)AAC-LC、AC3、eAC3、FLAC、MP3、PCM/Wave、Vorbis
出力2160p(30fps)、720p、1080p(60fps)720p、1080p(60fps)

すぐに探せる、すぐに見られる

 セットアップは簡単で、HDMI端子でテレビにつなぎ、電源ケーブルをつなげば自動的に起動して、初期設定が実行される。

 筆者は有線LANで接続したため無線LANの設定はスキップされたが、言語を選択し、アップデートをチェックすると、アカウントの設定画面が表示される。

 端末とクラウド上のデータが結びついているからだろうか。アカウントの設定画面には標準で自分のAmazon.co.jpのアカウントが表示されるので、そのまま表示されたアカウントを使う設定で進めることができる。こういった工夫は実に見事だ。

 以上で初期設定は完了だ。今回は無線LANの設定を後から試したが、初期設定で設定したとしても、WPSによる自動設定、もしくはSSIDを検索しての接続が可能なため、特に難しい設定を強いられることはない。

アカウント情報がひもづけられているようで初期設定も簡単

 実際に使ってみて、まず感動したのは、音声認識リモコンの精度の高さだ。リモコン上部のマイクボタンを押したまま、たとえば「ジュラシックワールド」などと話すと、すぐに音声が認識され、該当するタイトルがリストアップされる。

 リモコンを口に近づけて話すことができるため、音声認識を意識した声を張った話し方も必要もなく、ボソボソとあいまいに話したり、早口に話したとしても、結構な確率で認識してくれる。

 かつての動画配信サービスで提供されてきた初期のSTBの操作性を体験している身としては、あんなにストレスだったリモコンによる文字入力から解放されたことに、素直に感動した。

 昨今の音声認識技術の高さは、CortanaやSiriでわかっているつもりだったが、こうしてSTBの一機能として普通に組み込まれ、何も意識せずに使えるようになっていることは、あらためて考えるとスゴイことだ。

ホーム画面。タイトルが大きく表示されるのでコンテンツを選びやすい
リモコンというUIに縛られたSTBでは、音声検索のありがたみが身に染みる

 また、動画再生の素早さにも感動した。

 リモコンで見たいタイトルを選び、再生を開始すると、映像が即座に表示される。イメージとしては、まるでローカルにダウンロードされたタイトルを再生するときのようで、「おぉ? 1秒もバッファしなくて大丈夫?」と、こっちが心配になるほど。

 有線LANで接続している恩恵が大きいからかと思って無線LAN接続に切り替えてみたが、それでも再生はやはり早い。

 ユーザーの見る動画を予測してあらかじめバッファしておくというASAP(Advanced Streaming and Prediction)という機能について聞いてはいたものの、本当に即座に再生されるを目の当たりにすると、だいぶ驚く。

 細かな点だが、リモコンもBluetoothで接続されていることから、赤外線リモコンのように方向を気にする必要がない。

 文字入力、バッファ、リモコンの方向と、ひんぱんに使う部分でユーザーに不便を感じさせないように工夫しているあたりは、まさにプライムによる当日配送や「1クリックで買う」といったAmazonならではの思想に通じるものと言えそうだ。

ゲームやアプリも豊富

 このほかFire TVでは、ゲームやアプリをインストールして機能を追加できる点も魅力となっている。AndroidベースのOSを採用していることもあり、アプリは豊富に用意されており、Androidスマートフォンなどでもよく見かけるアプリをFire TVでも使えるようになっている。

 今やコンソールゲーム機の存在感も薄くなりつつある中、STBでゲームを楽しむか? と言われると、筆者も肯定的ではないが、少なくともパワフルなFire TVでは、予想以上にゲームがスムーズに動作することはお伝えしておく。

アプリもいろいろ用意されており、ゲームを楽しんだり、機能を拡張することが可能
クアッドコアの恩恵か、ゲームの動作も非常にスムーズ

 アプリに関しては、Androidベースらしく、正直、当たりはずれが大きいのが難点で、自分の使い方に合うものに出会うまで、ダウンロードとアンインストールを繰り返すことになるが、前述したようなスマートフォンである程度定番になっているアプリ(ES File Explorerなど)を目安にすれば、その頻度も減らせる。

 個人的には、DLNAプレーヤーとして使えれば完璧だと感じたが、アプリはいくつかあるものの、筆者宅の動画では再生はできても、早送り、巻き戻しなどができない場合があり、結果的に実用には遠い状況だった。

 またスクリーンミラーリングも可能となっており、ホームボタンを長押しして「ミラーリング」を選択することで、Miracast対応デバイスから画面を表示することが可能になっている。

 実際に試してみたところ、Android端末(Galaxy S5/S4)では接続先として認識することができなかったが、NuANS NEO(Windows 10 Mobile)のContinuumでは利用することができた。若干、相性の問題がありそうだ。なお、AirPlayは別途アプリをインストールすれば可能となっている。

Continuumの接続先としても利用可能

USB経由でのメディア再生も可能

 背面のUSBポートやmicroSDスロットに関しては、ビデオカメラやスマートフォンの動画を再生するのに活用できる。

 と言っても、標準の機能ではストレージのデータを参照することはできないため、アプリを追加する必要がある。実際に試してみたところ、先に触れたES File ExplorerやVLCを利用することで、USBポートに接続したビデオカメラの動画を再生することができた。

 欲を言えば、USBポートに接続したカメラから、動画や写真をAmazon Cloud Driveにアップロードしてくれれば助かるのだが、そういった機能は今のことろなさそうだ。出力先としてだけでなく、データの入力元としても使えるようになるとありがたい。

背面のポートにUSBメモリやビデオカメラなどを接続可能
VLCなどのアプリを利用すれば外部ストレージの動画なども再生できる
Amazon Cloud Driveに保存された写真や動画は標準機能で再生可能

やはりプライム会員向け

 以上、Amazon Fire TVを実際に試してみたが、筆者のように、プライム会員がプライム会員向けのサービスを利用するためのSTBとして使うには、検索性の良さや操作性の良さなど、かなり良くできた製品と言える。プライムビデオはもちろんだが、プライムミュージックも楽しめるので、音楽プレーヤーとしても活用できる。

 ただ、汎用性という点では、まだ熟成の余地はありそうで、アプリも豊富ではあるものの自分の用途に合ったものに出会うまでが大変だし、ゲームもスムーズに動くがビデオなどに比べると使用頻度が高いとは言えない。スクリーンミラーリングも相手を選ぶ。

 そう考えると、リッチなスペックはさほど必要なく、冒頭で触れたようにStickでもいいかと思えるが、個人的に動画のストリーミングは有線LANを使うことを推奨したいので、本製品をおすすめする。まだコンテンツは限られるが、4K対応のテレビに接続すれば4Kコンテンツも楽しめる。

 このデバイスをきっかけにプライム会員になる人がいるとは思えないが、すでにプライム会員になっている人がこのデバイスを手にすることは、わりとアリなのではないかという印象だ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。