清水理史の「イニシャルB」

VLANやLAGも可能な管理機能付きスイッチが3000円以下で TP-Linkイージースマートスイッチ「TL-SG105E」

 TP-Linkから発売された「TL-SG105E」は、5ポートの小型のスイッチながら、VLANやリンクアグリゲーションなどの機能を備えたイージースマートスイッチだ。こんなスイッチが3000円しないで買えるようになったのだから、いい時代になったものだ。

いい時代になったものだ

 いやはや。スイッチの故障というのは、なかなか原因にたどり着きにくいものだ。

 ある日、ネットワークにつながらないと思って、PCを再起動したり、ルーターの設定を見直したり、いろいろやっていたのだが、最終的にたどり着いたのがスイッチだった。

 数年ほど使い続けてきたスイッチが、どうやら息も絶え絶えだったことが不調の原因だったようで、復旧させようと電源ケーブルを入れ直したら、もう二度と起動することがなかった。

 幸い、テスト環境用だったので、さほど急いで買い替える必要もなく、新しいスイッチをどれにしようかと物色していたのだが、そんなときに見つけたのが、今回取り上げるTP-LinkのTL-SG105Eだ。

TP-Linkのイージースマートスイッチ「TL-SG105E」

 以前、同社の無線LANルーターのレビューをしたときも、そのコストメリットの高さに驚かされたものだが、同社はスイッチの分野でもなかなかの価格破壊者で、このTL-SG105Eもメーカー公表の価格は6320円ながら、Amazon.co.jpでの実売価格は半額以下の2968円(2017年2月2日現在)となっている。

 5ポートならそんなものでは? と、思う人もいるかもしれないが、このスイッチは企業向けの管理機能を備えた製品で、QoSやVLAN、リンクアグリゲーション(LAG)などの機能を備えた「イージースマートスイッチ」である点がポイントだ。

 最近では、家庭向けのNASでも、2つのLANポートを束ねて利用するLAGに対応した機器が増えているが、その利用には、当然LAGに対応したスイッチが必要となる。このような環境を3000円以下の出費で構築できることになる。

 正直、5ポートだとLAGのNASをつなぐと残りが3ポートとなるため微妙なため、実質的には8ポートのTL-SG108Eをおすすめするが、こちらはAmazon.co.jpで実売3480円とさらに破壊的な価格設定がなされている。

 同様の管理機能を備えた低価格のスイッチは、国内ではNETGEARが取り扱っているが、機能的にはほぼ同等で、価格は5ポートのGS105Eでも、8ポートのGS108Eでも500~1000円ほどTP-Linkの方が安い。

表1:普及価格帯の管理機能付きスイッチの比較
TL-SG105EGS105E-200JPS
イージースマートアンマネージプラス
実売価格29683680
ポート数55
ポートベースVLAN
タグVLAN IEEE 802.1Q
IEEE 802.1p Class of Service(CoS)
ポートベースQoS
DSCP
IGMP スヌーピング
ウェブ管理
設定ユーティリティ
IEEE 802.3az Energy Efficient Ethernet(EEE)記載ないが同等機能搭載
ポートミラーリング
ブロードキャストストームプロテクション
ループ検知
DHCP クライアント

 買う側にしてみれば、実にいい時代になったものだが、競合は気が気ではないだろう。

 ちなみに、スイッチは搭載される機能の違いによって呼称が異なる(メーカーによっても異なる)が、今回のTL-SG105Eは「イージースマートスイッチ」と呼ばれる位置づけの製品となる。

 管理機能なしの「アンマネージ」、最低限の管理機能を搭載した「イージースマートスイッチ(アンマネージプラスと呼ぶ製品もある)」、より多くの管理機能を搭載した「スマートスイッチ」、さらに高機能な「マネージスイッチ」というクラス分けとなっており、今回のTL-SG105Eは下から2番目の位置づけ。アンマネのTL-SG105にプラス1000円で買える製品ながら、以下の表のように小規模なオフィスで使うには十分な機能を備えている。

表2:スイッチの機能と種類
スマートイージースマートアンマネージ
ウェブベースGUI及びCLI管理 
QoS
IGMPスヌーピング 
リンクアグリゲーション 
スパニングツリーSTP/RSTP/MSTP  
BPDU フィルタリング/ガード  
TC/ルート プロテクト  
ループバック検出 
802.3x フローコントロール
VLAN 
アクセスコントロール リスト  
セキュリティ  
SNMP  
RMON (1、2、3、9グループ)  
CPU モニタリング  
ポート ミラーリング 
時間設定: SNTP  
統合 NDP/NTDP  
システム診断: VCT 
システムログ & パブリック MIBS○  
  • ※△は(細かな仕様に違いあり)

英語UIだがweb管理にも対応

 それでは、実際の製品を見ていこう。本体は5つのポート+αの幅で構成された非常にコンパクトな設計で、ACアダプタもコンパクトで場所を取らない設計。本体は放熱性に優れたスチール筐体で、もちろんファンレスでの動作となっている。

正面
側面
背面

 設定は、同社のwebサイトの情報では「イージースマート設定ユーティリティ」での設定とされているが、実際の製品では内蔵のwebページからの設定も可能。低価格の製品では内蔵設定ページが省かれているケースもあるが、本製品はユーティリティなしでも設定も可能だ。

 とはいえ、初期設定ではIPアドレスを設定する必要があるため、同梱のCDもしくは同社のサポートページから設定ユーティリティをダウンロードして利用する必要がある。

 同一ネットワークに接続したPCでユーティリティを起動すると、自動的にTL-SG105Eが検出されるので、設定アイコンをクリックしてIPアドレスを設定(DHCPもしくは固定)。その後、各種設定を実行する(QoSやVLAN、LAGが不要なら設定も不要)。

設定ユーティリティを利用
ブラウザベースでの設定も可能

 設定ユーティリティは英語の表記のままだが、設定項目がさほど多くないイージースマートスイッチであるうえ、各設定項目も結局のところ機能名の表示とそのオン/オフくらいなので、英語だからといって設定が苦になることはない。

 たとえば、VLANならユーティリティ上部のタブで「VLAN」を選択し、左側のメニューでポートベースかタグかを選択。ユーティリティ画面に表示されたイラストをクリックしてポートを選択し、VLANのIDなどを設定するといった流れになる。

 本ユーティリティでは、複数台の機器を管理することができるため、いわゆる「島ハブ」のような末端に設置されるスイッチをアンマネから置き換えた場合などでも管理が苦にならないだろう。

ユーティリティは英語だが、設定はシンプルなので迷わず利用できる

機能はあくまでも簡易的

 筆者の場合、本製品の購入目的はNASのLAGのテストなので、さっそくLAGを設定してみた。

 「Switching」タブから「Port Trunk」を選択し、束ねるポートを画面上で選択し、「Apply」ボタンをクリックするだけと非常に簡単だ。

 この状態で、たとえばSynologyのNASなら、NAS側で「バランスXOR(スタティックLink Aggregation IEEE 802.3ad draft v1)」を選択すれば、2つのLANポートに同じIPアドレスが設定され、負荷分散と障害対応が可能になる。

LAGを設定。スタティックのみに対応

 注意点は、NASなどの接続機器側で「IEEE802.3adダイナミック Link Aggregation」を選択「しない」ことだ。

 より高機能なスマートスイッチを利用する場合は、LACPを使ったLAGが利用可能だが、今回のTL-SG105Eでは、この機能が省かれており、スタティックでしか利用できない。

 複数のスイッチを経由してLAGを構成する場合は、どこか1カ所で発生した障害に対応できるようにするために、ダイナミックな設定が必要になるが、小規模な環境ならこれでも十分だろう。

 このように、機能的には対応しているものの、細かな仕様を見ると省かれている機能はほかにもいくつかあり、たとえばポートベースVLANでマルチVLANが構成できないなどの違いがある(詳細は前掲の表やメーカーの仕様参照)。

 あくまでも簡易的な機能を搭載したモデルである点は留意すべきだろう。

 なお、念のためSynologyのDS716+をLAGで接続し、2台のPCから同時に4GBほどのファイルを同時に読み書きしてみたが、2台のPCのどちらでも問題なく100MB/s以上のスループットが実現できた。LAGで利用する場合でもパフォーマンスを気にする必要はないだろう。

2.5G/5G/10Gが待ち遠しい

 以上、今回はTP-Linkのイージースマートスイッチ「TL-SG105E」を使ってみたが、機能的に家庭での利用にちょうどいいうえ、価格が安いため、お買い得な製品と言ってよさそうだ。

 筆者はテスト環境用のためコンパクトな5ポートを選んだが、実質的には8ポートのTL-SG108Eが非常におすすめしたいところだ。

 ただ、マザーボードの対応状況を見ても、今後は10GやIEEE 802.3bzの2.5G/5Gが登場してくるのは時間の問題と言える。ぜひとも、同社には、この分野でも価格破壊者としての存在感を示してほしいところだ。個人的には大いに期待している。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。