USB機器の共有にも対応した多機能NAS
アイ・オー・データ機器「HDL2-S2.0」


 アイ・オー・データ機器から発売された「HDL2-S」シリーズは、さまざまな機能を搭載した非常に多機能なNASだ。設定の手軽さ、ミラーリングによる安心感、net.USBによる利便性と、本製品ならでの特徴的な機能を紹介していこう。

いろいろな用途に使えるNAS

 アイ・オー・データ機器の「HDL2-S2.0」は、NASをさまざまな用途に使いたいという人におすすめの製品だ。

 同社のラインナップの中ではミドルレンジに位置する製品となっており、容量や性能、機能のバランスが取れた製品となっている。必要十分なハイパフォーマンスを実現しながら、HDDを2台搭載することで2TB、3TB、4TBの大容量を実現しているうえ、これまでに発売されていた同社のNAS製品の機能のほとんどを搭載している。

アイ・オー・データ機器の「HDL2-S2.0」。2台のHDDを搭載した多機能なNAS

 価格も2TBモデルで参考価格3万7000円となっており、容量や機能を考えると、なかなかコストパフォーマンスの高い製品と言えるだろう。

 本製品の特徴は大きく3点ある。1点目はUSB接続でも使える手軽さ、2点目はミラーリングにも対応する安心感、最後の3点目はUSB機器をネットワーク経由で利用できるnet.USBへの対応だ。

 このほか、多彩なリモートアクセス、レグザ対応、BitTorrent機能など、数え上げればきりがないほどの機能も搭載されている。単なるデータの保存場所としてだけでなく、さまざまな用途に活用するための機器としてNASを活用するのに適した製品と言えるだろう。

USB接続で設定も利用もできる手軽さ

 では、早速、製品を見ていこう。まずは、外観だが、本製品は、これまでに発売されていたHDL2-GやHDL4-Gシリーズのような縦型のデザインが採用されている。同社製のNASは、シングルドライブは横置き、マルチドライブは縦置きとなることが多いが、縦置きのおかげでHDDが2台搭載されていても比較的設置場所は選ばないコンパクトな設計となっている。

正面側面背面

 デザインは従来製品からかなり変更された。筐体の材質が金属から、プラスチックへと変更されており、余計な装飾のない、非常にシンプルですっきりしたデザインとなっている。

 当初は質感が心配だったが、実際に見てみると、無地のシンプルさが際立つデザインとなっており、材質も安っぽさは感じられず、むしろ清潔感が感じられて好印象だ。いわゆる「機械」っぽさがあまり感じられないので、生活空間に設置しても違和感のない製品だ。

 動作音もかなり静かで、背面のファンの動作音もほとんど聞こえてこない。アクセスした際にHDD独特のカリカリという音は聞こえてくるが、これもごくわずか。静音性に関してはほぼ気にしなくて良いだろう。

 機能面でまず注目したいのは、その手軽さだ。最近では、だいぶ認知度が上がってきたNASだが、それでもUSB HDDとの違いがよくわからなかったり、設定が難しそうだからと敬遠する人も少なくない。

 そこで、本製品ではLANでも、USBでも使えるハイブリッド仕様となっている。本体背面には、電源、LAN(10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-T)、USB(機器接続用)、miniUSBの各ポートが搭載されており、このうちのminiUSBを利用してPCに接続して電源をオンにするとUSB HDDとして動作させることができる。

 もちろん、そのままUSB HDDとして本製品を利用することもできるうえ、HDDに格納されているユーティリティを利用して本体をLAN接続で利用するための設定を行うこともできる。

USBで接続後、電源をオンにするとUSB HDDとして起動するUSB接続後、設定ユーティリティを利用してLANの設定やクライアントへのショートカットの作成などが手軽にできる

 つまり、誰もが使い慣れたUSB HDDの手軽さをNASに取り込んでいるわけだ。これなら、はじめてNASを使うという人でも使い方に迷うことがないだろう。場合によっては取扱説明書を見ずに、いきなりUSBで本体をPCに接続しても、何も困ることなく利用することができてしまう。

 同様の機能は、2.5インチHDDを採用したモデルからすでに搭載されている機能だが、すっかりアイ・オー・データ機器製NASの特徴として定着した印象だ。USBとLANどちらで使って良いのかがよくわからないという場合はもちろんのこと、今はPCが1台のみなのでUSBで十分だが将来的にPCが増えたらNASとして使いたいという場合などでも、安心して利用できるだろう。

 また、意外に便利なのが既存環境からのファイルのコピーだ。たとえば、本製品の導入後に、PCのローカルに保存されている大量のファイルを移動したり、古いファイルサーバーなどからファイルを移行したいといった場合でも、USB接続によってローカルでファイルをコピーすることができる。

 速度的には、ネットワーク経由でコピーする場合と比べてさほど違いはないのだが、ローカルでのコピーならネットワークに負荷をかけずに済む。既存のサーバーやNASをリプレースしたい場合にも地味に便利だ。

ミラーリングでデータを保護

 HDL2-Sの2番目の特徴と言えるのが、ミラーリングによって大切なデータを保護できる点だ。標準ではスパンニングモードに設定されているためHDD再構成が必要だが、ミラーリングモードに変更することで、それぞれのHDDに同じデータが保存されるようになり、万が一の故障の際でもデータを保護することができる。

 もちろん、ミラーリングなので容量は半分になってしまううえ、1台の故障にしか対応できないが、それでもPCローカルやシングルドライブのNASにデータを保存しておくよりも安心感は格段に高い。

 実際、ミラーリングモードを利用してみたが、設定自体はとても簡単だ。設定画面からディスクのフォーマット画面でミラーリングを選択すれば、数分でミラーリングの構成が完了し、バックグラウンドで再構築が開始される。

再構築が完全に終了するまでには、数時間かかるが、その間もファイルの読み書きはできるので設定後、放っておくだけでかまわない。

2台のHDDを使ってRAID1のミラーリングを構成可能。大切なデータも安心して保存できる

 万が一、HDDが故障した場合でも交換は簡単だ。本体上部のカバーを固定しているツメが背面にあるので、これを押してカバーを開けるとHDDを交換できる。専用のHDDも同社から販売されているが、市販のHDDを利用することもできるので、万が一の故障でも迅速な対応ができるだろう。

 試しに、トラブル時の動作も確認してみた。ミラーリングの構成後、意図的にHDDを取り外してみたところ、本体下部のランプが点灯してHDDの故障が通知された。この状態でも、当然、システムは起動し、もう1台のHDDに保存されているファイルに無事にアクセス可能だ。

 いったんシャットダウンし、今度は、取り外したHDDの代わりに、手元にあった市販のHDDを装着してみた。標準で搭載されていたHDDは、SUMSUNG HD103SIという1TBのモデルだが、あえて1.5TBの容量のWestern Digital WD15EADSに変更してみたわけだ。

HDDが故障すると前面下部のLEDが点灯する。左右にランプがあり、それぞれ内蔵HDDの位置に対応している。写真では左側に内蔵されているHDDの故障を示す背面のツメを外すと上部のカバーを開けることができる
内部には2台のHDDが縦に差し込まれている。標準ではSUMSUNG HD103SIが搭載されていたHDDは専用のステーで装着する。試しに1.5TBのWD15EADSを装着してみたが、問題なく利用できた

 すると、今度はエラーもなくシステムが起動し、何事もなかったかのようにRAID0の再構築が開始された。標準よりも大きな容量のHDDであれば、メーカーやモデルの違いを問わず利用できるようだ。

 NASによっては、標準で搭載されているHDDと異なるモデルを装着できない場合もあるが、本製品はこういった点は非常に柔軟な設計となっている。実際にトラブルが発生したときの対応の容易さを考えると、これは大きな魅力と言えるだろう。

USB機器をネットワーク経由で利用可能

 最後の特徴は、net.USB機能を搭載している点だ。本製品には、本体のUSBポートに接続した機器をネットワーク経由でクライアントから利用することができる「net.USB」機能が搭載されている。

 この機能は、本コラムでも以前に取り上げたデバイスサーバー「ETG-DS/US」などにも搭載されている機能だが、HDL2-Sに搭載されている機能は対応機器などに若干の違いがある。

 詳細はアイ・オー・データ機器サイトの対応ページを参照して欲しいが、さまざまな機器を装着できるETG-DS/USに対して、HDL2-Sシリーズではプリンター/スキャナー、DVDドライブ、TVキャプチャの接続のみがサポートされている。実際に試してみたところ、iPod TouchやiPadも残念ながら認識されなかった。

 ハードウェアやソフトウェアの違いが影響していると考えられるが、ETG-DS/USの代わりとして利用することはできない点は注意が必要だ。さまざまな機器を接続したいなら、ETG-DS/USを別途購入した方が良い。

 とは言え、TVキャプチャなどはサポートされているので、HDL2-SにTVキャプチャを装着し、ネットワーク経由でPCでテレビを見るといった使い方も可能だ。

 実際、同社製の「GV-MVP/HZ3」を利用してテストしてみたところ、GV-MVP/HZ3の最新版ドライバとソフトウェアを利用することで、問題なく、ネットワーク上のクライアントからテレビを再生することができた。

USB機器をネットワーク経由で利用できるデバイスサーバーとしても利用可能
【動画(Flash)】
ネットワーク経由でのTVチューナーの接続の様子(有線LANで接続)

 IEEE802.11n(300Mbps)の無線LANでもフルセグの地デジを再生できることを確認できたので、場合によってはノートPCからワイヤレスでテレビを楽しむことも可能だが、電波状態によっては映像が途切れる場合もあるので、基本的には有線LANでの利用をおすすめしたいところだ。

 なお、USB機器に同時に接続できるPCは1台のみとなっているので、共有できるわけではない。あくまでもUSBの配線をネットワークに変更するというイメージになる。

各モデルのイイトコ取りをした優良モデル

 以上、アイ・オー・データ機器の「HDL2-S」を取り上げたが、USB&LANハイブリッド、ミラーリング、net.USBと、従来モデルの機能の良いところを集めた感じで、非常に充実した機能の製品となっている。

 このほか、今回は詳しく紹介しなかったが、リモートアクセス系の機能も充実しており、外出先からHDL2-S上のファイルにアクセスしたり、DLNAの通信を中継するようなクライアントソフトをPCにインストールすることで、外出先のPCやDLNA対応テレビなどから自宅のHDL2-Sのメディアを再生することなどもできるようになっている。

 パフォーマンスはそこそこなのでパフォーマンスを求めるユーザー向けではないが、これからNASを使ってみたいと考えている人には適した製品と言えるだろう。機能が充実しているので、将来的にいろいろな使い方をしたいと思ったときでも対応できるうえ、データも安心して保管しておくことができる。

 個人的には、デバイスサーバーとして、もう少し多くの機器をサポートしてくれるとありがたいが、NASとしての利便性は高いので、どれを買うか迷ったときの選択肢としておすすめできる製品だ。


関連情報


2010/6/1 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。