第448回:HDD搭載でNASとしても使えるメディアプレーヤー プラネックス「MZK-MP01HD」


 プラネックスの「MZK-MP01HD」は、HDMI接続でも、ネットワーク接続でも利用できるメディアプレーヤーだ。デジタルビデオやデジタルカメラの映像再生のほか、NASとして利用したり、ネットワーク上のメディアも再生できる。その実力を検証してみた。

HDMI付きのNAS

 プラネックスから発売された「MZK-MP01HD」は、テレビ用のメディアプレーヤー、USB HDD、NASとして使えるユニークな製品だ。

 本体は、小型のメディアプレーヤーといった印象。背面にHDMIとコンポジット、オーディオ出力(S/PDIF、TOSLINK&Coaxial)を装備し、リモコンが付属していることからもわかる通り、基本的には家庭用のテレビに接続して利用するメディアプレーヤーだ。

プラネックスのメディアプレーヤー「MZK-MP01HD」

 家庭用のテレビに接続後、前面、もしくは背面のUSBポートにデジタルビデオやデジタルカメラ、USBメモリなどを接続することで、そこに保存されている写真や映像、音楽などをテレビで再生することができる。

 最近では、同様の機能がテレビ側に搭載されることも多くなってきたので、環境によってはあまり必要ではないかもしれないが、本製品で特徴的なのはHDDを搭載可能で、ネットワークにも対応している点だ。

 本体内部に3.5インチHDDを搭載可能となっており、フロントのUSB(タイプB)コネクタを利用してPCと接続することで外付けHDDとして動作させたり、背面のLANポートを利用してホームネットワークに接続することでNASとして利用することが可能となっている。

 これにより、USBやネットワーク経由でMZK-MP01HDに手軽にメディアを保存し、それをHDMI接続した家庭用のテレビで見ることができるというわけだ。HDMI付きのNASと考えると、これまでのNASとはひと味違う、面白い存在と言えるだろう。

正面側面背面

 

3.5インチHDDを搭載してみる

 本製品は、前述したようにHDDレスの状態でも問題なく利用可能だが、やはり機能をフルに活用するにはHDDが不可欠だ。

 そこで、手元にあったSAMSUNG製の2TB HDDを搭載してみることにした。装着は、ネジ止めが若干手間だが、作業そのものは簡単だ。背面の3本のネジを取り外し、上部のカバーを取り外す。すると、内部にHDD固定用の金具があるので、再び2本のネジを取り外して、金具を取り外す。

 後は金具にHDDを固定し(ネジ4本)、元通りに組み立てる。最後に、同梱されているSATAケーブルと電源ケーブルを使って、基板とHDDを接続すれば完了だ。この状態でMZK-MP01HDを起動後、テレビ画面からリモコンを使ってHDDをフォーマットすればHDDが利用可能になる。

内部に3.5インチHDDを搭載することで、USB HDDやNASとして利用できる利用する際はHDDをフォーマットする必要がある

 HDDをフォーマットすると、テレビの画面からHDDのメディアを参照できるようになるが、当然、フォーマット直後はコンテンツが何もないので、PCから転送することになる。

 転送方法は2通りある。1つはUSBで接続する方法、もう1つはNASとして利用する方法だ。まずは、USBで接続する方法だが、これは単純だ。フロントのUSBポート(Bタイプ)とPCをケーブルで接続すると、MZK-MP01HDがUSB HDDモードで再起動され、PCからHDDを参照可能になる。

 一方、NASとして利用する場合は、NAS機能を有効にする必要がある。MZK-MP01HDにLANケーブルを接続後、リモコンを使って設定画面からNAS機能を有効にする。その後、再起動すると、NAS機能が有効になり、「HDD」という共有名でHDD全体が共有される。ネットワーク上のPCから「\\IPアドレス」もしくは「\\MPxxxxxxx」という名前でアクセスすればファイルの参照やコピーが可能だ。

USBで接続すると外付けHDDとして利用可能NAS機能をオンにすればネットワーク経由でもアクセス可能

 NAS機能と言っても、非常に簡易的なもので、ユーザー管理やアクセス制御はできない。転送速度も低めで、CrystalDiskMark3.0.1を利用した計測結果はUSB接続時がシーケンシャルリードライトで30MB/sをマークしたのに対して、NASとしての利用時は6~7MB/sとかなり低い。

 本製品のLANポートは10BASE-T/100BASE-TX対応となっており、上限が100Mbpsになっている。内部の処理性能もさほど高いものではなさそうだが、ネットワークの性能がボトルネックになっていると言える。

 実際に、使って見ると、普段はあまり遅さを感じないが、やはり数百MB、数GBクラスのファイルを読み書きしようとすると、かなり待たされる印象がある。大きなファイルの転送にはUSB接続を使うのも手だが、用途を考えると1000BASE-Tに対応してほしかったところだ。

USB接続時(左)とNAS時(右)のベンチ結果。NAS時は100BASE-TXがボトルネックになり、かなり遅い

 

Youtubeも視聴可能だが、検索は英語と中国語のみ

 このようにUSBやネットワーク経由でMZK-MP01HDにメディアを転送すれば、自動的にフォルダ内のメディアが検索され、メニュー画面の「Movie」、「Photo」、「Music」から再生することができる。

 再生可能な映像フォーマットも、MPEG-1、MPEG-2(TS含む)、MPEG-4、Real Video、H.264/MPEG-4 AVC、WMV、Quick Time、Flash VIdeo、Xvid、MotionJPEG、VC-1と多彩なので、デジタルビデオなどで撮影した映像なども、フォーマットを気にせず再生可能だ。

HDDにコピーした写真などをテレビで見られる

 また、本製品ではインターネットメディアの再生にも対応しており、Youtube、Picasa、Flickrなどのコンテンツを再生することも可能となっている。これらの機能も、最近は家庭用テレビに搭載されることが多くなってきたが、本製品を使えば、未対応のテレビでも気軽にYoutubeの映像などを楽しめるわけだ。

 コンテンツに関しては、地域を日本語に変更することで、日本で再生数の多い動画などを表示できるようになるが、残念ながら検索は英語、そして中国語のみの対応だ。このため、見たい動画があっても、検索することは至難の業だ。

Youtubeの映像も視聴可能。地域を日本にすれば日本のランキングなども表示される検索では英語か中国語のみ。事実上使えない

 また、ネットワーク機能としては、ファイル共有プロトコルを利用し、ネットワーク上のPCやサーバーのコンテンツを参照して再生することもできる。ユーザー名とパスワードを記憶させることも可能となっており、Windows Home Server 2011上の動画なども再生することができた。ホームサーバーやNASにすでに大量のメディアが存在する場合に便利だろう。

 なお、設定画面でDMRを有効にするとUPnPのメディアクライアントとして動作させることもできるようだが、この機能はうまく動作しなかった。機能を有効にしたあと、メインメニューからUPnPを指定してネットワーク上のメディアサーバーに接続しようとすると、本体が強制再起動してしまう。

USBメモリーや内蔵HDD、ネットワーク共有(SMB)のメディアを再生可能。UPnPも利用可能だが、アクセスすると強制再起動がかかる

 確かに取扱説明書やWebサイトのどこにも、この機能が使えるという記載はないのだが、再起動してしまうほど不安定なら、むしろ現状は使えないなどの注があってもよさそうなものだ。

 このほか、BitTorrentに対応していたり、ブラウザでMZK-MP01HDのIPアドレスにアクセスすると、Webベースのリモコンが利用でき、スマートフォンから画面操作をすることも可能だが、こちらもページの読み込みに時間がかかってうまく操作できないなど、実用性はあまり高くなかった。

 また、そもそも付属のリモコンも質感があまり高くないうえ、戻るボタンが方向ボタンの真上にあるなど、自然な操作がしにくかった。

MXK-MP01HDのIPアドレスにアクセスするとウェブ版のリモコンも利用可能。ただし反応がにぶい付属のリモコンは、せめて「Return」ボタンを方向ボタンの下側に配置してほしかった

 

もう一歩と感じる部分が多い

 以上、プラネックスの「MZK-MP01HD」を実際に使って見たが、コンセプトは非常に面白いのだが、完成度があまり高いと言えない。個人的には、HDMI付きのNASという発想は、今後、NASのようなネットワーク機器が家庭に浸透させていくための良いアイデアだと思うので、もう少し、完成度を高めて欲しかったところだ。

 せっかくHDDも搭載しているのだから、USBでビデオカメラやデジタルカメラを接続した際も、映像を再生できるだけでなく、コピーできるようにしてくれば、家庭内のメディアの保存先としての存在感も出てくるはずだが、残念ながらできない。

 実売1万5000円前途と安いので、割り切って使うのも悪くはないが、もう少し、熟成したバージョンで再出発して欲しい印象だ。


関連情報

2011/7/12 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。