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第471回:Windows Home Server 2011搭載NAS アイ・オー・データ機器「HDL-Z2WH2T/1D」


 アイ・オー・データ機器からWindows Home Server 2011を搭載したNAS「HDL-Z2WH2T/1D」が発売された。法人向けの製品だが、国内メーカー製ならではの使いやすさや安心感を備えた製品だ。その実力を検証してみよう。

法人向けのWindows Home Server 2011搭載機

 Windows Home Server 2011の発売から約半年。ようやく国内大手周辺機器メーカーからWindows Home Server 2011搭載NASが発売された。

 Acer、HP、ASUS、ショップブランド製品など、これまでにもハードウェアとして発売されたWindows Home Server搭載機はいくつか存在したが、今や最新版のWindows Home Server 2011搭載機として国内で正式に入手可能なのは、Acer Revo Center RC111とショップブランドモデルなどと数が少ない。ここに新たに投入されたのが、今回の「HDL-Z2WH2T/1D」ということになる。

Windows Home Server 2011を搭載したアイ・オー・データ機器の「HDL-Z2WH2T/1D」

 現状、Windows Home Server 2011の価格はLANボードなどとセットのDSP版で8000円前後と、驚くべき価格となるため、自作した方が安いという意見ももっともなのだが、小規模な事業所などでの利用を考えると、手間がかからず、安心して使えるメーカー製の製品が登場したことの意義は非常に大きい。

 価格は若干割高で、2TBモデルで7万9800円と、同じくWindows Home Server 2011を搭載したAcer Revo Center RC111と比べるとプラス数万円の費用が必要だが、ストレージ仮想化ソフトの「VVAULT Basic」、ウイルス対策ソフトの「ESET NOD32アンチウイルス(90日体験版)」がインストール済みとなっているうえ、クライアント用のイメージバックアップソフト「ActiveImage Protector 3.0 Desktop Edition」が10ライセンス分付属し、さらに有償の保守サービスも用意されるなど、かなり内容の濃い製品となっている。

 中小の現場であれば、Windows Serverからのリプレイスによるコストダウンを図ったり、リモートアクセスなどの新たな環境を構築するために利用できるので、費用対効果は十分に期待できる製品と言えそうだ。


初期設定が簡単にできる「管理マニュアル」付き

 それでは、早速、製品を見ていこう。アイ・オー・データ機器の「HDL-Z2WH2T/1D」は、2ベイタイプの小型NASだ。青系のフロントパネルが印象的なコンパクトなデザインとなっており、フロントの片方のスロットに2TBのHDDが1台搭載されている(今回の製品ではWestern Digital製HDDを採用)。

 以前、本コラムでも紹介したが、同社製の法人向けNASには、Windows Storage Serverを搭載した製品が存在するが、筐体としてはこれとほぼ同じとなるものの、背面のインターフェイスの構成が若干異なる。

 Windows Storage Server 2008 R2搭載のHDL-Z2WSAでは、背面のLANポートが2つ存在したうえ、上部にビデオ出力端子も搭載されていたが、今回の「HDL-Z2WH2T/1D」では、下側のLANポートにシールが貼られ、上部のビデオ出力端子もカバーで覆われ、使用できない状態になっている。実際、接続しても使えないように制限されているので、これらのポートには期待しない方がいいだろう。

正面 側面 背面
カートリッジにHDDを装着することで1台増設可能

 初期設定は、Windows Home Server 2011ならではの設定が必要になるため、若干手間がかかるのだが、ここで感心したのが、付属の「管理マニュアル」だ。

 NASに限らず、最近のPC周辺機器は、マニュアルが簡素化される傾向があるが、本製品にはB5版、全75ページで構成される丁寧な管理マニュアルが付属しており、初期設定、ユーザーや共有フォルダーの作成、メディアサーバー、リモートアクセスの設定などのWindows Home Server 2011ならではの基本設定に加え、VVAULTやESET NOD32などの設定なども画面ごとのステップ形式で丁寧に解説されている。

 Windows Home Server 2011の場合、はじめにクライアントからサーバーのWebページにアクセスし、言語選択やアップデートなどの初期設定をしたり、サーバー上にユーザーアカウントを作成したり、クライアントに「スタートパッド」と呼ばれるクライアントモジュールをインストールするなどの「手順」が必要になるが、これらが丁寧に紹介されている。

 これならNASやサーバーを使ったことがない人でも、安心して使えるはずだ。こういった工夫は非常に高く評価したいポイントだ。

付属の「管理マニュアル」。スクリーンショット付きの解説書となっており、非常にわかりやすい
初期設定はクライアントからネットワーク経由で実行する。初回はアップデートなどの処理も必要になるため、30分前後と結構長い時間がかかる Windows Home Server 2011の各種設定を行なうためのダッシュボード。ユーザーやバックアップなどの管理が簡単にできる


VVAULTを標準搭載

 このように、使いやすさが重視された「HDL-Z2WH2T/1D」だが、機能面でもなかなか興味深い特長を備えている。

 何と言っても注目なのが、オレガが開発した「VVAULT Basic」を標準搭載している点だろう。VVAULTは、ストレージの仮想化を実現するソフトウェアで、従来のWindows Home Serverで好評だったものの2011で削除されてしまった「DE(Drive Extender)」の代替え的な機能を備えた製品だ。

オレガのストレージ仮想化ソフト「VVAULT Basic」を標準搭載。追加で接続したHDDや他のNASのストレージをWindows Home Server 2011のボリュームとして利用できる

 具体的にどのようなことができるのかというと、複数のストレージをまとめて1つのボリュームとして扱うことができる。たとえば、2TBのHDDと1.5TBのHDDを装着後、VVAULTで仮想ドライブとして設定すると、合計3.5TBの領域として利用可能となる。

 ユニークなのは、扱えるドライブの種類を問わないことだ。SATAの内蔵HDDはもちろんのこと、USBの外付けHDD、USBメモリ、他のNAS上のボリュームなど、さまざまな領域を仮想ドライブとしてまとめ上げることができる。

 これにより、異なる容量、異なるインターフェイスのストレージを無駄なく使えるだけでなく、既存の環境からの移行や共存が非常に楽になる。たとえば、これまでLinuxベースのNASにデータを保存しており、この環境から「HDL-Z2WH2T/1D」に移行したいとする。

 これまではデータをコピーするなどして移行する必要があったが、VVAULTを使えば、とりあえず仮想ドライブとして従来のNASのストレージをマウントしておけばいい。これで「HDL-Z2WH2T/1D」上から、従来のNASのデータをシームレスに扱うことができるようになる。

 内蔵のSATA HDDを仮想ドライブの一員として構成して、ティアリングと呼ばれる優先順位でNASより上位に設定しておけば、バックグラウンドでNASから内蔵SATAにデータを自動的に移行することなども可能だ。

内蔵SATAやUSB接続のHDDを仮想ドライブに追加していくことができる 内蔵2TB、USB1.5TBのHDDを仮想ドライブとして追加した時の画面。合計容量が3.18TBとなっていることがわかる

 このほか、ライブバックアップと呼ばれる機能によって、USB HDDなど指定したドライブ上に仮想ドライブのデータをほぼリアルタイムにコピーすることもできる。万が一、元のドライブが故障したとしても、バックアップから自動的にデータを復元(ライブリカバリ)することも可能で、データの冗長性もしっかりと確保できるようになっている。

 標準で搭載される「VVALUT Basic」は仮想用HDDが2台まで、バックアップ用が2台までに制限されているバージョンとなっているが、ライセンス(サーバー向けのProfessionalは月額10,500円)を購入することで台数制限をなくすことも可能だ。本格的に利用する場合は、上位ライセンスの購入を検討するといいだろう。

バックアップ用のディスクを追加することで、仮想ドライブのデータを自動的にバックアップドライブに複製可能。万が一のトラブル時でも自動的に回復できる

 ただし、VVAULTはWindows Home Server 2011と完全に機能が統合されるわけではないので、いくつかの制限がある点に注意したい。

 1点目は、VVAULTで作成した仮想ドライブにWindows Home Server 2011の標準の共有フォルダーを移動できない。フォルダーを移動させようとしてもエラーが発生するため、基本的に新規共有フォルダーの配置先として仮想ドライブを利用することになる。

 2点目は、シャドウコピーの機能が使えない点だ。Windows Home Server 2011では共有フォルダー上のデータを以前のバージョンから復元することができるが、VVAULTの仮想ドライブ上の共有フォルダーでは、この機能が使えない。

 3点目は、サーバーのバックアップ対象として設定できない点だ。Windows Home Server 2011ではサーバー上の共有フォルダーのデータをバックアップする機能が搭載されているが、この対象として仮想ドライブは選択できない。

フォルダーの移動機能を使って標準の共有フォルダーを移動しようとするとエラーが発生するなど、いくつかの機能的な制限がある点に注意

 Windows Home ServerのダッシュボードからVVAULTの設定ができるうえ、リモートアクセスでのフォルダ参照やメディアサーバーでのデータ参照に仮想ドライブを利用できるため、一見、シームレスな機能に見えるが、このような制限があることを考えて、しっかりと使い分けるようにしたいところだ。

 なお、前述したライブリカバリの機能を使うには、「HDL-Z2WH2T/1D」にリモートデスクトップで接続し、プログラムの削除と追加から、機能を追加する必要がある。同様に、標準搭載されるESET NOD32も、ウイルス定義ファイルをアップデートするためには、キヤノンシステムソリューションズのWebページから90日体験版用のライセンスを登録する必要がある。

 これらの方法も、前述した「管理マニュアル」で紹介されているので、忘れずに設定しておくといいだろう。


高性能だがVVAULT利用時は負荷に注意

 気になるパフォーマンスだが、ベンチマークの値は非常に優秀だ。以下は、テストマシン(Core i7 860 / RAM 8GB / HDD 1.5TB / Realtek8168 / Windows 7 Professional 64bit)から共有フォルダーをネットワークドライブに割りあてて、CrystalDiskMark3.0.1bを実行した値だ。

CrystalDiskMark 3.0.1bの結果。シーケンシャルの値はかなり優秀

 シーケンシャルリードで98MB/s、シーケンシャルライトで72MB/s、ランダムアクセスでリード34MB/s、ライト48MB/sなので、非常に高速だ。

 本製品には、デュアルコアのAtom D510が搭載され、メモリも2GB搭載されている。一般的なNASとして考えても十分に高性能なうえ、Windows Home Server 2011を動作させるにも十分なスペックを持っていると言って良いだろう。

 ただし、前述したVVAULTと組み合わせて利用する場合は、若干、注意が必要だ。以下は、同様のテストをVVAULTで作成した仮想ドライブに対して実行した値となる。ライトの値はさほど変わらないが、リードの値が大きく低下する。

VVAULTで作成した仮想ドライブのベンチ結果。若干、パフォーマンスが落ちてしまう

 ファイルの読み書き中に、タスクマネージャを確認すると、VVAULTの仮想ドライブにアクセスが発生すると、CPU使用率が60〜80%程度と高くなることが確認できた。通常の共有フォルダーの場合、40%前後なので、VVAULTの処理が響いていると推測される。

 Windows Home Server 2011の場合、リモートアクセス機能を利用し、Webページやスマートフォン(Windows Phone 7.5)経由でビデオを再生したときも、リアルタムに映像をトランスコードする関係上、90%近くまでCPU負荷が上昇する場合があるが、VVAULTを利用するときも若干負荷が高くなりがちな点に注意が必要だ。

 もちろん、通常の利用であれば、気にならない程度の負荷ではあるのだが、このあたりはパフォーマンスを重視するか、VVAULTの可用性を重視するかを慎重に検討したいところだ。

VVAULTの仮想ドライブに対してファイルをコピーしたときの状況。CPU負荷が80%前後まで上昇している。通常のドライブであれば40%前後なので、若干高い


法人で使うのにオススメ

 以上、アイ・オー・データ機器のWindows Home Server 2011搭載NAS「HDL-Z2WH2T/1D」を実際に使ってみたが、全体的な完成度は悪くない印象だ。いろいろな機能を使って、いじり倒すのには向いていないが、小規模なオフィスのファイル共有、バックアップ、クライアント監視、リモートアクセス環境を一手に担う存在として導入するには適した製品と言える。

Windows Phone 7.5向けのアプリを利用すれば、外出先から自宅のサーバーの状態を確認したり、音楽や画像、映像などのメディアをリモート再生することもできる

 特に、丁寧な「管理マニュアル」と有償で高度なサポートを受けられるのは大きな魅力だ。個人的には、Windows Server 2003以前の古いファイルサーバーなどは、さっさと、これに置き換えてしまった方が幸せではないかと思えるところだ。

 このほか、今回はあまり触れなかったが、ZWH Managerと呼ばれる独自の管理ツールで、メールでのアラートや本体前面の「Funcボタン」の動作を設定できる(バッチファイルなども実行可能)な点も、同社製のNASならではの特長と言える。

 価格が高いうえ、安定性を重視しているためか動作音も若干大きめであることから、個人ユーザーは手を出しにくいが、法人ユーザーであれば費用対効果が十分に期待できるうえ、動作音も問題にならないはずなので、導入を検討してみるといいだろう。



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2011/12/27 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ