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スタイリッシュなスマホ向け無線LANルーター au「HOME SPOT CUBE」


 「HOME SPOT CUBE」は、auが2月14日から開始した宅内無線LANサービス「Wi-Fi HOME SPOT」でレンタル提供される無線LANルーターだ。スタイリッシュなデザインと手軽な接続方法、そして条件を満たせば無料で使えるのが特長の製品となっている。その実力を検証してみた。

つなぎたくなる工夫

 今回、auが開始したWi-Fi HOME SPOTは、なかなか工夫されたサービスだ。

 実情はトラフィックを無線LANに逃がしたいというものであることは言うまでもないが、市場に出回っていないスタイリッシュなデザインのハードウェアの提供、独自のアプリとボタン設定による手軽な接続方法の用意、「ISフラット」もしくは「プランF(IS)シンプル」契約で一定期間内(2012年2月14日〜5月31日)に申し込めば永年無料となるレンタル料、そして無線LAN経由でキャンペーンに申し込むことで得られる商品や特典と、あの手この手で無線LANを使わせるための工夫をしている。

auが提供を開始した宅内無線LANサービス向けの無線LANルーター「HOME SPOT CUBE」

 単なる市販の無線LANルーターのレンタルサービスであれば、興味を持つユーザーは多くないかもしれないが、ここまでやられると「使ってみようか」という気にもなるところだ。

 とは言え、主なターゲットが無線LANを使ったことがないユーザー層であることを考えると、やはり気になるのが、ハードウェアや専用の接続アプリの使い勝手だ。どれくらい手軽に接続できるのかを実際に検証してみた。


手のひらサイズのコンパクト設計

 それでは、実際の製品を見ていこう。まずは、外観だが、これはなかなかスタイリッシュだ。

 厚みのあるクリアなカバーで囲われたほぼ直方体(幅約68×高さ72×奥行き68mm)の外観は、非常にシンプルで通信機器独特の無骨さをまったく感じさせない。余計なロゴなどが一切ない真っ白な前面や側面パネルなどを見ていると、その思い切りの良さに感心させられるところだ。

手のひらサイズのコンパクトなボディ 上部に設定用のボタンを配置。LEDがやわらかく光る
正面 側面
背面 底面

 もちろん、背面にはケーブル類を接続するためのインターフェイスと上部には設定用のボタンとLEDが配置されているが、この上部のデザインも凝っている。上部には一回り小さな正方形のボタンが配置されており、ここに内蔵されたLEDが、起動時はグリーン、クライアント接続時にはオレンジに点灯し、外側を覆うクリアなカバーを通じてやわらかく光る仕組みになっている。

 スチールケースで、深夜の部屋でLEDがチカチカするようなハブやルーターに惹かれる身としては、シンプルなデザインとひかえめな光にどことなく寂しさも感じるが、普通の人が、リビングなど人目に付くところに設置しても気にならないどころか、ちょっと目立つ位置に置いてもいいと思えるようなデザインの製品がようやく登場したといった印象だ。

 スペック的には、IEEE 802.11a/n/b/g対応の製品だが、IEEE 802.11nと言っても、正式な準拠ではなく、MIMOを省いたデュアルチャネル対応の最大150Mbps対応となっている。2.4GHz帯と5GHz帯を同時利用できる点は、PCやネットワーク対応家電などの接続に便利だが、最大速度はスマートフォン向けで、いまどきの無線LANルーターとしてはかなり控えめだ。

 同様に、有線もWAN×1、LAN×1とポート数が少ない上、対応規格も10BASE-T/100BASE-TXまでとなっており、最大100Mbpsでしか通信できない。あくまでも、手軽さを追求した製品と考えた方がいいだろう。


他社の固定回線でも利用可能

 実際の使い方も簡単だ。付属のLANケーブルで、背面のWANポートと固定回線のルーターを接続。電源ケーブルを接続すれば、自動的に電源がオンになる。

 本製品は、背面のスイッチでアクセスポイントモードとルーターモードを切り替えられるようになっているが、標準では「AUTO」になっており、WAN側に接続した回線に応じて動作モードを自動的に切り替えられるようになっている。

背面のスイッチでモードを切り替え可能。ルーターがすでに存在する場合はアクセスポイントモードで起動する

 今回は、auひかり(Aterm BL190HW)とNTT東日本のフレッツ光ネクストの環境(PR-S300SE)の両方の環境で利用してみたが、どちらの回線でも自動的にHOME SPOT CUBEの動作モードはアクセスポイントモードに切り替わり、既存のネットワークの構成を変更することなく機器を設置することができた。

 環境によっては、うまく動作モードが切り替わらない可能性もあるが、とりあえず接続に関しては、あまり気を遣う必要はなさそうだ。

 続いて、クライアントの接続だが、まずはPCの場合を先に紹介しておこう。PCの場合、WPSでの接続が可能になっているため(2.4GHz側)、Windows 7から「auhome_xxxxxx」というSSIDに接続し、HOME SPOT CUBEの上部のボタンをオレンジに点滅するまで長押しすればいい。これで、自動的に無線LANに接続できる。

上部のボタンを長押しすると自動設定モードになる。WPSとau Wi-Fi接続ツールの両方に対応

 肝心のスマートフォンの接続だが、Android 3.x/4.xであれば、OSでWPSがサポートされているため、PCと同様の方法で接続できる。一方、Android 2.xでは、auが提供している「au Wi-Fi接続ツール」を利用する(要2.0.1以降)。

 アプリを起動後、「初期設定(かんたん接続)」(2回目以降は「追加設定(かんたん接続)」)をタップし、画面に表示された指示に従って、HOME SPOT CUBEのボタンを押せばいい。

Android 3.x/4.xの場合は標準のWPSで接続可能 au Wi-Fi接続ツールを使えば、画面の指示に従ってボタンを押すだけで接続可能

 方法としてはWPSとまったく同じだが、仕組みとしてはWPSとは異なるようで、KDDIsetupというSSIDに対して、あらかじめ登録済みの暗号キーで接続し、そのセッションを利用して、本接続で利用する暗号キーを交換しているようだ。従って、このau Wi-Fi接続ツールを利用して、市販のWPS対応無線LANルーターに接続することはできないようになっている。

 それにしても、KDDIが提供する固定回線だけでなく、あらゆる固定回線で使えるようにしたのは、通信事業者としては勇気のある判断と言えそうだ。ユーザーにしてみれば、回線を問わず使えるのはありがたいが、足回りとして使われる他社(回線事業者やISP)にしてみれば、「なにゆえauのオフロードに……」という思いもあるかもしれない。何よりトラブルが発生した際の切り分けが難しそうな点が少し心配ではある。

 もしもユーザーがうまくこの機器をセットアップできなかったら、もしくはセットアップ後に何らかのトラブルが発生した時、上流の機器や回線まで含めてauがどこまでサポートしてくれるのか、この点は若干気になるところだ。


本体設定はシンプル

 このように接続自体は非常に簡単だが、機器の機能面も同様にシンプルだ。ルーター、もしくはアクセスポイントとして必要最低限の機能のみとなっており、最近の無線LANルーターに多く見られるリモートアクセスやUSB機器共有などの付加機能は一切搭載されていない。

 無線LANの設定に関しては、チャネル幅の設定(標準40MHz)ができる点、SSIDが1〜3の設定が可能な点(標準ではSSID1が2.4GHzのWPA2、SSID2が2.4GHzのWEP、SSID3が5GHzのWPA2)、プライバシーセパレータ(SSID内の通信制限)、隔離設定(SSID間の通信制限)が可能な程度で、特別な機能は搭載されていない。

シンプルな設定画面。通常は標準設定のままでかまわない

 個人的には、2.4GHz帯は混雑していること、スマートフォンの場合は最大通信速度が72Mbpsになることを考えて、2.4GHzの方を20MHz幅に変更することを検討したいところだが、このほかは標準設定から変更する必要はなさそうだ。

 設定に迷わないというか、余計な設定をしなくていいのは、スマートフォンをメインに使うユーザーにとってはありがたいところだろう。


PC接続を考慮しなければ良い選択

 以上、auのWi-Fi HOME SPOTに対応したHOME SPOT CUBEを実際に使ってみたが、スマートフォンで使う限りはパフォーマンスも気にならないし、何より設置や設定が簡単なため、悪くない製品という印象だ。

ベンチマーク結果
  DOWN(kbps) UP(kbps) PING(ms)
1F Wi-Fi 23941 11054 27
WiMAX 15901 4576 95
3G 2885 1896 114
2F Wi-Fi 18013 7973 26
WiMAX 21972 4373 91
3G 4900 2189 111
3F Wi-Fi 13051 7741 27
WiMAX 21255 4707 102
3G 4922 784 108
※ISW11Fを利用しsppetest.netで速度を計測

 

ベンチマークのグラフ。さすがにアクセスポイントの近くだと無線LANは速い

 筆者宅の場合、1階に設置すると、3階でWi-FiよりもWiMAXの方が速くなってしまうという逆転現象も見られたが、やはり3Gに比べると、断然無線LANの方が高速で安定して使える。家庭でアプリなどをダウンロードする機会が多いなら、やはりあった方が快適だ。

 ただし、PCやネットワーク家電など、さまざまな機器を接続することを考えると、いまどき150Mbpsの無線LANというのは、若干、見劣りする印象だ。2.4GHzと5GHzのデュアルバンドである点は評価できるものの、家電の映像伝送などを考えるとMIMO対応の300Mbps対応機は欲しいところだ。

 よって、スマートフォン以外の機器をどこまでつなぐかが鍵になりそうだ。PCなどの利用頻度が高い場合は、個人的には1万円前後と安くなってきた300Mbps対応の2.4/5GHz同時通信機をおすすめしたいが、スマートフォンやタブレットメインなら本製品でも不足はない。

 安定性など長期的に使ってみないとわからない部分もまだあるのは確かだが、auのスマートフォン利用者で、あまりコストをかけずに無線LANを導入したいという場合は、良い選択肢と言えそうだ。


関連情報

2012/2/28 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ