450Mbps対応のUSB無線LAN子機
NECアクセステクニカ「AtermWL450NU-AG」


 NECアクセステクニカから、IEEE802.11n/a/b/g(5GHz帯&2.4GHz帯)に準拠した450Mbps対応のUSB無線LAN子機「AtermWL450NU-AG」が発売された。450Mbps対応のアクセスポイントとの組み合わせた際の実力を検証してみた。

450Mbps環境を整える

 無線LAN機器ベンダー各社から450Mbps対応の無線LANルーター製品が出そろってきた。5GHz/2.4GHzの両方で450Mbpsを同時通信可能な製品はまだ一部に限られるが(NETGEAR WNDR4500)、今後はハイエンド製品で同時通信対応が進むとともに、価格面での競争も進み、450Mbps環境がより身近になってくることだろう。

 しかしながら、親機側の対応が進む中で、子機側の対応はなかなか対応が進まない状況だ。ノートPCに内蔵されている無線LANは、まだ300Mbps対応が一般的で、450Mbps対応の無線LANが搭載されるのは一部機種、もしくはBTOによるオプションで、しかもWiMAXと排他だったりと、なかなか身近な存在になりきれていない。

 この夏以降になれば、また状況は変わると考えられるが、内蔵無線LANでは親機との足並みがそろわない以上、子機側は別の方法で450Mbps環境を使うしかない状況だ。

 そんな中、登場したのが今回取り上げるNECアクセステクニカの「AtermWL450NU-AG」だ。USB接続の無線LANアダプタで、IEEE802.11n/a/b/g準拠の450Mbps対応製品となっている。

NECアクセステクニカの450Mbps対応USB無線LAN子機「AtermWL450NU-AG」

 これまで、同社製品のみで450Mbps環境を構築するには、AtermWR9500Nを2台利用して、1台を親機、もう1台を子機として利用するしかなかったが、今回のAtermWL450NU-AGの登場で、ようやく既存のPCなどを手軽に450Mbps環境に参加させることが可能になったことになる。

 無線LANの世界は次世代のIEEE802.11acの姿も見えつつあるが、これが製品として使えるようになるには認可が必要になるため、まだしばらく先になる。そう考えると、環境や用途によっては、このようなUSB子機を利用して、450Mbps環境を整えることも検討すべきだろう。


3ストリーム対応でも小型に

 では、製品を見ていこう。まずは外観だが、450Mbps対応のUSB子機としては、なかなかコンパクトに仕上がっている。

 300Mbps対応のAtermWL300NU-Gなどと比べると、確かに一回り大きなサイズとなるが、AremWL450NU-AGには450Mbpsの速度を実現するために、プラス1本、つまり3本のアンテナが内蔵されていることを考えると、サイズアップは最低限に抑えられており、十分にコンパクトと言って良いレベルだ。

アンテナ内蔵のスッキリとしたコンパクト設計同社製のAtermWL300NU-Gとの比較。若干大きい程度

 他社製の450Mbps対応USB子機などは、アンテナが折りたたみ式となっているものもあるが、本製品は可動式のアンテナは搭載されず、完全に内蔵されている。

 親機となる無線LANルーターもそうだが、NECアクセステクニカはアンテナ内蔵にこだわった製品作りを進めており、子機となる本製品もそれに準じたことになる。可動部分などがない分、デザインがすっきりとしているだけでなく、持ち運びや装着時も取り扱いやすいため、このコダワリはぜひ今後も続けてほしいところだ。

 なお、製品にはフレキシブルケーブルも同梱されており、電波を受信しやすいように縦方向に製品を装着したり、隣り合ったUSBポートと干渉しないように接続することも可能となっている。デスクトップPCの背面にあるUSBポートに接続する場合などにも役立つだろう。

フレキシブルケーブルが付属VAIO Zに装着した様子


サテライトマネージャは利用せず

 製品の使い方は簡単だが、1つ意外だったのは同社製のユーティリティのインストールが不要になった点だ。

 同社製子機を使った経験がある人はわかると思うが、これまでは付属のCDから、ドライバに加えて、「サテライトマネージャ」と呼ばれるユーティリティソフトをインストールして接続設定や管理が可能となっていた。

 しかし、今回のAtermWL450NU-AGでは、ドライバのインストールは必要なものの、ユーティリティのインストールは必要ない。

AtermWL450NU-AGはサテライトマネージャに非対応。ユーティリティのインストールは不要でドライバのみ手動で指定してインストールすればいい

 筆者は、取扱説明書を読まずに、ついついいつものクセで、サテライトマネージャをインストールして(付属CDには他の端末向けのサテライトマネージャが収録されている)、AtermWL450NU-AGをPCにつないだのだが、ドライバのインストールもされなければ、子機も認識されないので、戸惑ってしまった。

 AtermWL450NU-AGの場合、ドライバはWindowsのウィザード画面からCDを指定して手動でインストールし、ユーティリティは利用せずWindowsの無線LAN接続機能を利用することになる。

 もちろん、「らくらく無線スタートEX」(本来は内蔵無線LANなど同社製以外の子機でらくらく無線スタートを実行するためのユーティリティ)には対応しているが、WindowsからもWPSで設定できるので、わざわざこれをインストールしなくてもいいだろう。

 個人的にはPCにはあまりたくさんのアプリケーションやユーティリティをインストールしたくないので、シンプルになったことは評価したいが、親切な音声ガイドや手軽な近隣のチャネル使用状況確認機能など、NECアクセステクニカの製品らしい手厚さが特徴だったサテライトマネージャが使えなくなったのは、ちょっとさみしい印象だ。

接続にはWindowsの無線LAN機能を利用。画面は450Mbpsで接続されている様子


環境によっては差はわずか

 実際のパフォーマンスは、以下のような結果になった。木造3階建ての筆者宅の1階に無線LANルーターを設置し、各階からFTPによる速度を計測した。比較のために、親機としてAtermWR9500Nに加え、NETGEAR WNDR4500でも計測したうえ、クライアント側もVAIO Zに内蔵のIntel Advanced-N6250にて計測した結果も加えている。
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 結果は微妙なところだ。最大300MbpsのVAIO Z内蔵無線LANと比べると、確かに450MbpsのAtermWL450NU-AGの方が速いが、その差はわずかとなっている。

 無線LANの速度は周辺の電波状況や障害物などの有無によって左右され、測定中もリンク速度が頻繁に変化することが確認できるが、明確に450Mbpsの威力を感じられるのは、やはり近距離の5GHz帯利用時のみとなり、その他の環境ではノートPC内蔵のアンテナ配置の有利さなども影響し、その差はわずかとなった。

 もちろん、この結果は一例に過ぎないため、測定場所によっては3ストリームMIMOの450Mbpsの実力を十分に発揮できる可能性はある。個人的には、デスクトップPCで利用したり、ノートPC内蔵の無線LANが54Mbpsにしか対応していない場合などに、おすすめできる製品という印象だ。



関連情報

2012/5/1 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。