記事検索
バックナンバー

HDDベンダーから登場したSMB向け本格NAS Western Digital「WD Sentinel DX4000」


 Western Digitalから発売されている「WD Sentinel DX4000」は、Windows Storage Server 2008R2 Essentials(WSS2008R2)を搭載した4ベイのSMB向けNASだ。クライアントのバックアップやリモートアクセスなど、豊富な機能を備えた同製品を実際に使ってみた。

Western Digitalならではのコダワリ

 「ファイル共有だけでなく、バックアップやリモートアクセスを含めた環境を構築したい」、「古くなったWindows Serverベースのファイルサーバーを交換、もしくは増設したい」。25ユーザー以下の比較的小規模な環境で、このような検討をしている場合は、Western Digitalから発売されている「WD Sentinel DX4000」は導入を検討する価値がある製品だろう。

 古くからのPCユーザーには、どちらかというと内蔵用HDDベンダーとして知られるWestern Digitalだが、最近では外付けHDDやポータブルストレージ、NAS、メディアプレーヤーなどと、ストレージから派生したさまざまな製品を扱うようになっており、その事業領域を拡大しつつある。そんな中、今回、スモールオフィスをターゲットとして新たに登場したのが、このストレージサーバー「WD Sentinel DX4000」というわけだ。

Western Digitalの中小規模企業向けストレージサーバー「WD Sentinel DX4000」

 結論から先に言ってしまうと、本製品の完成度は確かに高いが、実際に導入する上ではいくつか考慮しなければならないポイントがある。

 信頼性や使いやすさを考慮して細部まで工夫がなされたハードウェアには感心させられるうえ、HDDの自動構成が可能なRAID機能がWindows Storage Server 2008R2 Essentialsの弱点をうまくカバーしている。オプションでクラウドバックアップが提供されるなどサービスとの融合もうまく図られている。

 とはいえ、2TB HDDを2台搭載した4TBモデルで実売14万円前後という価格はやはり敷居が高い。OSの制約から利用可能なクライアントの台数が25台に制限されているため導入環境の規模も限定される。

また、搭載可能なHDDがシステム側で同社製品のみしか認識しないように制限されているために緊急時に対応しにくい、Mac OS Xはファイル共有は可能だがTimeMachineバックアップには対応できない(サポートやライセンスを考慮しなければMac OS X 10.7.x Lion以外は手動構成で対応させることも不可能ではない)など、注意点がいくつかある。

 もちろん、すべてに万能な製品というのは存在しないため、これらの点をどう考えるかが重要だ。たとえば、WindowsクライアントのみならMac OS X対応はそもそも気にする必要はないうえ、後から導入する予定があっても問題はTimeMachine対応のみなので、情報共有に支障はない。どうしてもTimeMachineを使いたいなら、別のソリューションで対応するという手もある。Mac OS X対応よりも、むしろバックアップやリモートアクセスなどWindowsクライアントの利便性を優先したいという場合に適しているわけだ。

 価格やHDDの制約についても、ハードウェアの信頼性を考慮すれば納得できる。詳しくは後述するが、本製品に採用されているHDDは企業向けの耐久性の高い製品であり、信頼性の低い製品を装着してしまうことでデータの安全性が確保できなくなってしまうことを防止している。また、保証もHDDを含め3年間と手厚い。

 このように、価格や制約の理由を理解したり、サポートされない機能が本当に必要かどうかをきちんと考慮すれば、納得して購入できる製品ということになる。つまり、同社が製品に対して込めたコダワリに同意できるかどうかが購入の決め手になるというわけだ。


納得のハードウェア

 では、実際の製品について詳細をチェックしていこう。まずは、ハードウェアだが、この完成度はなかなか高い。

 心臓部分は、CPUがデュアルコア1.8GHz動作のIntel Atom D525、メモリは2GBと最近のミドルレンジNASとしては一般的なスペックとなっており、外観も幅160×奥行き223×高さ208mmと4ベイNASとしては標準的なサイズで、デザインもシンプルだ。

正面 側面 背面

 では、どの部分の完成度が高いのかというと、まずはHDDベイだ。フロントパネルを開けることで姿を現す4つのHDDベイは、縦方向にHDDを装着する仕様となっているが、ベイのラッチを外しても、カートリッジなどが姿を現すことがない。

 WD Sentinelでは、HDDの装着に余計なカートリッジは必要なく、ベイに裸のHDDをそのまま装着可能な仕様になっている。このため、HDDをカートリッジにネジ止めするなどといった手間がなく、非常に手軽にHDDの交換、増設が可能となっている。

 HDDを装着するときに、どこかに引っかからないか若干気になるが、とにかく手間がかからないは大きなメリットだ。交換用に予備のカートリッジを用意しておくなどといった余計な配慮も必要ない。

カートリッジ不要でHDDを直接装着できる

 一方、背面のインターフェイスも障害の発生を考慮して可能な限りの二重化が施されている。1000BASE-Tに対応したLANポートが2系統搭載されているうえ、背面左上に並ぶように2系統用意されている電源ポートには、オプションで提供されるACアダプタを追加で接続できるようになっており、万が一の電源トラブルでも稼働可能なように工夫されている。

 ACアダプタとは言え、4ベイサイズのNASで電源まで二重化されている製品は非常に珍しい。このあたりは、まさにWestern Digitalならではのコダワリが見えるポイントだ。

LANだけでなく電源も二重化可能。標準のACアダプタは1つなので、二重化する場合はオプション品の購入が必要

 なお、同じく背面には排気用に9cmのファンが1機搭載されているが、動作音は非常に静かだ。電源投入時や高負荷時は回転が速くなり、低く風を切る音が聞こえてくるが、OS起動後に安定すると、かすかに回転する音が聞こえる程度で、ほとんど音は気にならない。さまざまな音が混じり合うオフィスで使うのであれば、まったく気にならないと言って良いだろう。

 ちなみに、このファンは常時回転する方式となっており、ACアダプタの接続直後から回転を開始し、OSをシャットダウンして電源をオフにしても回転を続けている。内部の熱を完全に排出するように工夫されているのだろう。このあたりも、細かなコダワリと言えそうだ。


4TBモデルはRAID1で構成

 HDDに関しては、今回利用した4TBモデルでは、同社製のWD2002FYPS(2TB/64MBキャッシュ)が2台搭載されており、RAID1で構成されていた。

 WSS2008R2のダッシュボードには、同社オリジナルの管理ツールとして「モニタリング」という機能が追加されているのだが、このツールで確認する限り、RAIDのタイプの説明がIntel Rapid Storage Technologyとなっているので、BIOSのRAIDを利用してると考えられる。

OSからは1ボリュームとして認識されるのでBIOSのRAIDを利用していると考えられる。管理ツールから見るとRAIDはIntel Rapid Storage Technologyと表示される

 興味深いのは、RAIDマイグレーションでの拡張に対応している点だ。取扱説明書を見ると、HDDの増設に関して、新しいHDDを装着するだけで特別な設定をすることなく、自動的に構成されると記載されている。これにより、標準のHDD×2/RAID1の構成に対して、さらにHDDを1台、もしくは2台追加することでRAID5構成に自動的に移行することが可能となっている。

 もちろん、ホットスワップに対応しており、OSの再起動なども必要ない。このようなRAIDの自動拡張は他社製のNASでは一般的に搭載されていたが、WSS2008R2などのWindowsベースのNASで搭載されている製品は珍しい。かつて、初代のWindows Home ServerではDrive Extenderと呼ばれる手軽に容量を拡張できる機能が搭載されていたが、それ以降、HDDの拡張はWindows系製品ではウイークポイントになっていただけに、この部分を工夫した点はWestern Digitalならではの特長と言えそうだ。

 ただし、残念ながら、実際にどのように容量が拡張されるのか、どれくらい時間がかかるのかは試すことができなかった。前述したように、本製品では信頼性を確保するために、対応HDD以外は装着できないしくみになっている。

 試しに、手元にあったSamsung製の2TBのHDDを装着してみたが、全面のランプが赤く点灯し、ディスプレイに未対応のHDDであるとのメッセージが表示され、まったく利用することができなかった(OS上も認識されない)。

 対応HDDは、こちらのリストに掲載されているモデルのみと数が少ないうえ、企業向けとなるため手軽に購入できるようなものではない点には注意が必要だろう。

非対応のHDDを装着してもOSからは一切認識されない 同じく非対応のHDDを装着した場合、全面のパネルにINVALID DRIVEと表示される


標準で搭載されているHDDはWestern Digital製のWD2002FYPS。企業向けの高耐久性の製品となっている

 ただし、実際の運用で、この点がネックになることはない。というのも、本製品の標準保証範囲には、購入時に同梱されていたHDD(電源アダプタも)が保証対象として含まれているからだ。しかも、3年という長期にわたって保証されるのだから、心配する必要はないだろう。

 海外製のNAS製品の場合、本体のみを購入し、HDDは自分で装着するというケースが多いため、装着できるHDDを選べないことに抵抗を感じてしまうが、この場合、HDDが対象外になるなど企業向けとしては保証がどこまで適用されるかが大きな問題となってしまう。これに対して、WD Sentinel DX4000では、HDDでは、そういった心配が必要ないというわけだ。


WSS2008R2らしい動作

 機能面では、良くも悪くもWSS2008R2らしいという印象だ。WSS2008R2は、ユーザー数が25に拡張され、Active Directoryドメインに参加可能という違いはあるものの、機能的にはWindows Home Server 2011に近い製品となっている。

 このため、Windows Home Server 2011で高い評価を得ていたクライアントバックアップ、リモートアクセス(Web/リモートデスクトップ)などの機能に加え、アドインによって機能拡張をできるなどの特長を備えている。本コラムでは、このあたりの機能について何度も紹介したことがあるので、詳しく紹介しないが、メディアストリーミングなども可能なので、企業向け製品としてはかなり多機能で、ユニークな製品と言っていいだろう。

セットアップはクライアントから実行。ウィザード形式で手軽に設定できるが、初期セットアップには若干時間がかかる Windows Home Server 2011を使ったことがあるユーザーにはおなじみのダッシュボード


リモートアクセスなどの機能も利用可能。外出先からの利用や在宅勤務環境の構築にも利用できる クライアントにはスタートパッドをインストールする。バックアップや共有フォルダへのアクセスが簡単に可能

 特に、リモートアクセスは、個人ユーザーの間でも評判がよかったが、事業継続性の観点や節電や経費削減などを目的とした在宅ワークなどの観点からも企業での注目が高まっており、あまり費用をかけることができない中小規模の環境向けのリモートアクセス環境として貴重だ。Windowsクライアントとの親和性も高く、パフォーマンスも以下のようになかなか優秀になっている。

CrystalDiskMark3.0.1cの結果。シーケンシャルのライトで90MB/sをマーク

 もちろん、前述したようにMacとの親和性があまり高くなかったり、クライアント用のソフトウェアのLaunch Padの独特の動作やリモート接続での管理に好みが分かれるといった側面もあるものの、Windows Serverなどの操作に慣れた人にとっては、この独特の操作感に安心感を覚えるうえ、サポートを一切考慮しなければ、その自由度の高さにも感心するだろう。

 企業向けのNASで、こういった言い方が適切ではないのは明らかだが、筆者も含めて、おそらく好きな人は好きな製品だ。もしも、価格がもっと安ければ、SOHOやハイエンドの個人ユーザーにも受けられていてもいい製品と言えるだろう。


オプションでより安心に

 以上、Western DigitalのWSS2008R2搭載NAS「WD Sentinel DX4000」を実際に試してみたが、Windows Home Server 2011の手軽さや楽しさ、便利さに、企業向けならではの信頼性と安心感を搭載したなかなか面白い存在の製品と言える。

 10ユーザー以上の環境で、ファイル共有、バックアップ、リモートアクセスを実現したいという場合におすすめできる製品で、特に既存のWindows Serverベースのファイルサーバーからのリプレイスに最適だ。現在、Windows Serverの維持コストがそれなりにかかっている場合は、低コストで済む、こちらに置き換えを検討してみると良いのではないだろうか。

 なお、本製品には有料のオプションでクラウドバックアップのサービスも提供されている。前述したように、RAID1で保護されており、動作中にHDDを取り外しても継続して利用できるうえ、HDDを再接続すれば自動的にリビルドも実行されるようになっているが、2台同時の故障やリビルド中のトラブルなどを考慮するとこういったサービスも併用しておくと安心だ。

 また、保守サービスについてもオプションが用意されており、標準の30日間の無償技術サポート、3年保証、製品交換保証サービスに加えて、期間の更新や専用の技術サポートや製品設置などのサービスも受けることができる。必要に応じて利用を検討するといいだろう。



関連情報

2012/6/19 06:00


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ