清水理史の「イニシャルB」

Androidを搭載した小型プロジェクター「GEANEE MPJ-A500」

 サムライマーケティングから発売されている「GEANEE MPJ-A500」は、Androidを搭載した小型のプロジェクターだ。無線LANとタッチパッドを搭載し、外部機器からの入力だけでなく、本体からネットワーク経由でさまざまなコンテンツを投影可能だ。実際に製品を試してみた。

プロジェクター型Android端末

 OSにAndroidを採用したプロジェクターなのか、それとも画面出力にプロジェクターを採用したAndroid端末なのか?

 「GEANEE MPJ-A500(以下MPJ-A500)」は、これまでになかったなかなかユニークな製品だ。

 見た目は小型のプロジェクターそのもの。幅90.8×奥行き98.8×高さ31.2mmで重量230gと、手のひらサイズのコンパクトだが、本体前面のレンズや背面の入力ポート、廃熱のためのスリットなど、デザインは一般的なプロジェクターをギュッと小さくした印象の製品となっている。

Anroidを搭載したプロジェクター「MPJ-A500」
正面
側面
背面
付属品一式

 プロジェクター部分のスペックは、明るさ180ルーメン、最大投影サイズ81インチ(3m時)、解像度854×480、コントラスト比1000:1、投影方式DLP、光源LED、動作音60dB。明るい部屋での利用は少し厳しいが、持ち運び可能な手のひらサイズのプロジェクターとしては、実用的な明るさを備えた製品となっている。

 対応する入力は、ミニHDMI、VGA/AVの2種類。本体には、VGA/AVポートに接続するためのVGAケーブルとAVケーブルが同梱されるが、ミニHDMIのケーブルは付属しないので、この接続を利用する場合はケーブルの用意が必要となる。

 ユニークなのは、このほかに本体に搭載されたAndroidを利用して、ネットワークやメディア経由で映像を表示できることだ。

 MPJ-A500は、Telechip 8925、RAM1GB、内蔵メモリ8Gを搭載したAndroid 4.0端末として、単独で動作可能となっており、無線LAN(IEEE802.11b/g)や外部ストレージ(microSD/USBメモリ)経由でさまざなデータを表示させることが可能となっている。

 このため、会議室で社内のファイルサーバーのデータを開いてプレゼンしたり、外出先でクラウド上のデータを開いてプレゼンするなど、物理的な場所だけでなく、データの保存場所も気にすることなく、MPJ-A500単体でプレゼンなどができるというわけだ。

壁を見ながら本体のタッチパッドで操作

 実際に使ってみると、なかなか面白い。付属のフレキシブルな足の三脚を装着し(一般的なカメラ用の三脚も取り付け可能)、電源ケーブルを接続して、背面の電源ボタンを1秒ほど押すと、そこそこうるさいファンの回転と共に起動が開始され、しばらくするとAndroidがブートし、レンズの向かいにある壁にお馴染みのホーム画面が表示される。

 背面のUSBポートにキーボードやマウスを接続することも可能だが、本体上部がタッチパッドとなっており、ここに指で触れることで、画面上のマウスカーソルを移動させたり、タップ操作をすることができる。ダブルタップしてそのままドラッグする、というスクロール操作に気づくまでに四苦八苦したが、壁を見ながらタッチパッドでAndroidを操作するというのは、これまでにない体験で、なかなか新鮮だ。

表示された画面を見ながら、上部のタッチパッドで操作する
キーボードを接続して操作することも可能

 プロジェクターはうるさいもの、という認識があったとしても、小さなファン特有の高めの排気音が耳に付くが、操作そのものはなかなか快適だ。最新のスマートフォンやタブレットのような軽快さはさすがにないが、タッチパッドの操作が即座に反映されるうえ、アプリの起動や画面の切替処理などもスムーズな印象がある。

 個人的に、「組み込み機器はもっさり」という偏見があっただけに、実際に使ってみると思いのほか普通に操作できることに驚いた。

 なお、HDMIやVGAなどの外部機器の映像を表示する際は、専用のAndroidアプリ(Signal Input)を利用する。ケーブルでPCなどを接続後、アプリで入力を切り替えると、自動的にサーチが開始され、画面が切り替わる。再びAndoridに戻るための操作にも当初迷ったが、本体のタッチパッドをタップすることで、入力を戻すことが可能だ。

入力の切替はアプリを利用する
PCなどの外部入力を表示することも可能

ファイルサーバーやDLNAサーバーに接続可能

 もちろん、インターネット接続も可能なうえ、ブラウザなどの一般的なアプリも利用可能となっている。

 通常のAndroid端末と同様に「設定」からWi-Fi(IEEE802.11b/g)をオンにし、SSIDを検索して接続すればインターネットに接続することができる。画面の解像度が854×480なのでWebページを見るのは一苦労だが、ネットワークを利用するさまざまなアプリを活用することができる。

 たとえば、標準でインストールされている「Telechips DLNA」を利用すると、ネットワーク上のDLNAサーバーの動画や写真、音楽などのメディアを再生することができる。再生可能なフォーマットは、動画がFLV/3GP/MP4/AVI/MOV/MPG、静止画がJPEG/BMP/PNG、音楽がMP3だ。

 また、Google Playも利用可能なため、ESファイルエクスプローラーなど、SMBに対応したファイル管理アプリを利用すれば、LAN上のNASやファイルサーバーなどにアクセスしてデータを表示することができる。会議室からNASやファイルサーバーのデータを開いて表示できるのは大きなメリットだ。

 このほか、SkyDriveアプリをインストールして、SkyDrive上のファイルをプロジェクターで映し出せるなど、ローカル、外部メモリ、LAN、クラウドと、どのデータも扱うことができる。さまざまなアプリを使って柔軟な使い方ができることこそ、本製品ならではの特徴と言えるだろう。

40インチ前後が実用的

 実際に投影された映像は、意外と言っては失礼だが、見やすく、実用的だ。以下の表は、スクリーンまでの距離と実際に映し出された画面のサイズを調べたものだ。スペック上の最大サイズは3m時で81インチだが、利用した部屋のサイズの関係で1.5mまで調査してある。

【距離と投影サイズの実測】
距離横サイズ縦サイズインチ換算
503218約14インチ
704223約18インチ
1006035約27インチ
1509653約43インチ

 約1.5mの距離が確保できれば、40インチ前後のサイズで投影可能で、複数人でプレゼンなどを見ながら会議をするのにちょうどいい。また、明るさ的にも、電灯下でも何とか画面を認識できるレベルで実用的だ。

 もちろん、部屋を暗くすれば、それだけ鮮明に画面を認識できるようになるので、これ以上、投影サイズを大きくしたいときは、部屋を暗くして利用するといいだろう。

 逆に明るい部屋で利用するのであれば、サイズは小さくなるものの近づけることで明るさを確保できる。実際に使ってみた印象では、20インチ前後(距離では70cm以下)であれば電灯下でも十分という印象だ。

 なお、フォーカスは本体側面のダイヤルで調整できるのだが、本体サイズに合わせてダイヤル自体も小さいため、なかなか微妙な調整が難しい。持ち運ぶことを考えると、設置場所に合わせて、頻繁に調整するので、もう少し、調整しやすくしてくれるとありがたい印象だ。

1.5m離れた場所からの表示。これで43インチ相当。明るい部屋だとギリギリ。暗くするとかなり鮮明に見える

会議室での利用にオススメ

 以上、GEANEE MPJ-A500を実際に使ってみたが、やはりネットワーク通信とAndroidアプリを使えるメリットは大きい。いろいろなソースのデータを場所を選ばずに表示することができるので、企業の会議室などでの利用におすすめしたい製品だ。

 もちろん、単に小さなプロジェクターとして使っても十分にメリットはあるし、場合によってはキーボードとマウスを接続し、プロジェクターで映し出した画面を見ながらメールなどを利用するAndroidデスクトップとして使うのも面白い。

 欠点と言えるのは、本文でも触れた動作音の大きさ、そして価格だ。同社の直販とAmazon.co.jpで購入できるが、実売で39800円の価格となっており、個人で購入して遊ぶというには、少々、高すぎる。プラス1~2万円で、ビジネス向けの低価格モデルも視野に入ってきてしまうだけに、購入の判断が難しい。

 持ち運べて、Androidによる柔軟な使い方ができる、というMPJ-A500ならではの特徴に、どこまで価値を見いだせるかが、購入の判断基準となりそうだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。