清水理史の「イニシャルB」

+7GBのために回復領域を削除してもOKか?
「Lenovo Miix 2 8」で削除した回復領域を復元する

 64GBモデルならあまり気にしなくても済むが、32GBモデルではストレージの空き容量が心許ない「Lenovo Miix 2 8」。空き容量を確保するための特効薬は約7GBの回復パーティションの削除だが、一旦削除すると、回復パーティションそのものの復元が難しくなる。その対策を考えてみた。

初期状態で9GB、更新後は8GBほどの空き容量

 この年末に各社から注目モデルが発売になったWindows 8.1搭載の8インチタブレット。小型軽量でありながら、バッテリー駆動時間も長く、パワフルかつフルスペックのWindowsが動作することから高い人気を誇っている製品だ。

 筆者も12月の頭に発売されたLenvoのMiix 2 8を入手し、普段持ち歩く端末として活用しはじめたが、移動中のメールチェックや検索などが手軽にできるだけでなく、Bluetoothキーボードとマウスがあれば、使い慣れたエディタを使って原稿を書くことも苦にならないことから、かなり重宝している。

 理想としては、やはりLTEなりの通信手段を内蔵していて欲しいところだが、とりあえずフルスペックのWindowsをストレスなく持ち歩けるようになったのは、とてもありがたい印象だ。

Windows 8.1が動作する8インチタブレットのLenovo Miix 2 8
正面
側面
背面

 このように、全体的な満足度の高い「Miix 2 8」だが、1つ悩みがある。ストレージの空き容量が少ない点だ。今回、筆者が入手できたのは32GBモデルだったこともあり、ストレージの空き容量は最初の起動直後で約9.5GB。この状態から、Microsoftアカウントで各種設定やSkyDriveのキャッシュ同期、標準搭載のOfficeをセットアップし、Windowsやマカフィーの更新プログラムを適用していくと、最終的な空き容量は8GBほどとなった(各種インストール実行中は一時的に空き容量が6GB前後にもなる)。

 ATOKとPowerPointは入れておきたいなぁ……、と思っても、実用性を考えると、これ以上、空き容量を減らすのも得策ではない。64GBモデルであれば、後からデスクトップアプリケーションをいくつか追加しても余裕があるが、32GBモデルでは、このあたりの制限が厳しい印象だ。

 とは言え、実用的な環境は整えておきたいので、空き容量を増やすことを考え、まずはマカフィーリブセーフとオンラインマニュアルをアンインストールしてみた。アンインストールによって確保できるストレージの空き容量は数百MB前後なのだが、少しでも空き容量を増やすために、他で代替えできる機能やなくても困らないマニュアル類はあきらめざるを得ないだろう。

32GB版のMiix 2 8のストレージの構成。Cドライブには20.93GBほどの容量が確保されているが、OSやアプリケーションによって空き容量は9GB前後

回復パーティションを削除

 このように一部のアプリを削除することもできるが、もともとプリインストールアプリはさほど多くないため、この対策だけでは限界がある。というわけで、より根本的な対策をするために、思い切って回復パーティションを削除することにした。

 メーカー製のPCでは、システムを工場集荷状態に戻すためにストレージの一部にシステムイメージを保存した回復領域が確保されており、Miix 2 8でも、ディスクの管理で確認すると、ディスク0の最後に6.84GBの回復パーティションが確保されていた。

 この領域は、Windows 8.1の「PC設定」-「保守と管理」-「回復」から実行できるPCのリフレッシュとWindowsの再インストール(リセット)で利用するための領域だが、USBメモリなどの外部ストレージ(回復ドライブ)に必要なイメージをコピーすることができる。

 つまり、回復ドライブを作成してしまえば、この領域は不要になるというわけだ。

 Miix 2 8には、microUSBポートしか搭載されていないが、USB A-Micro B変換アダプタ(BuffaloのBSMPC11C01BKなど)を利用すれば、市販のUSBメモリを認識させることができる。早速、アダプタを入手し、コントロールパネルから「回復」で検索して、「回復ドライブの作成」を実行。「回復パーティションをPCから回復ドライブにコピーします」にチェックを付け、回復ドライブを作成した。

アダプタを利用すればUSBメモリを接続可能
回復パーティションの内容はUSBメモリ(回復ドライブ)へとコピーできる

 回復用のイメージをUSBメモリにコピーしたら、本体ストレージ上の領域を削除する。コマンドプロンプト(管理者)から、Diskpartを起動し、以下のようなコマンドを実行し、回復パーティションを削除した。
   1)コマンドプロンプト(管理者)を実行
   2)diskpart
   3)list disk(ディスク番号を確認)
   4)select disk 0(ディスク0を選択)
   5)list partition(パーティション一覧から回復パーティション番号を確認)
   6)select partition 5(回復パーティションを選択)
   7)delete partition override

コマンドプロンプト(管理者)からdiskpartを利用して回復パーティションを削除

 なお、回復パーティションは、標準でGPT属性の「0x800000000000001」が設定されており(Diskpartからgpt attributes=で設定)、パーティション属性が必須(削除不可)かつドライブ割り当て禁止となっている。

 このため、GUIのディスクの管理からはもちろんのこと、Diskpartでも単純にパーティションを選択して「Delete」コマンドを発行しても削除できない。そこで、「delete partition override」と「override」オプションを付けて、強制削除する必要がある点に注意が必要だ。

 削除が完了したら、ディスクの管理からシステム領域を選択して「ボリュームの拡張」を実行。回復パーティションで削除した容量が自動的に選択され、Cドライブの容量を拡張することができた。

 これにより標準で回復パーティションに確保されていた7GBがCドライブとして新たに追加され、合計約27GBのうち、空き容量として約16GBを確保することが可能となった。

 ここまで確保できれば、ローカルにデータを保存したり、アプリケーションを2~3本追加するのも現実的になるだろう。

回復パーティションを削除したら、ディスクの管理からシステムパーティションの容量を拡張
約7GBが解放され、トータル27.76GBに増加。秋用炉湯も16GBほど確保できる

回復ドライブからは回復パーティションが復元できない

 さて、これで空き容量が増えて「めでたし、めでたしと」と言いたいところだが、残念ながら、そうはいかなかった。

 念のため、作成した回復ドライブからシステムを工場出荷時に復元してみたのだが、ここで問題が発覚した。

 Miix 2 8は、電源オフの状態から、電源ボタンと音量ボタンの+側を押して起動することで、ブートメニューを表示可能で、ここからUSB接続した回復ドライブを指定して起動、メンテナンスメニューで「ドライブのパーティション分割をやり直します」を選択し、工場集荷状態に復元したのだが、Windows 8.1も問題なく起動したものの、回復パーティションの中身が空になっているのだ。

Miix 2 8では音量アップ+電源ボタンでブートメニューを表示できる
作成した回復ドライブを使って端末を初期化
システムは正常に初期化され、パーティション構成も出荷時状態に戻るが、肝心の回復パーティションの内容が空になるため、以後、回復ドライブを作成したり、回復ドライブなしでシステムのリフレッシュやリセットは実行できなくなる
念のため「reagentc /info」を実行。回復イメージの場所が登録されていないことも確認できた

 パーティション構成は工場出荷時と同じものに復元され、削除した回復パーティションも復活しているのだが、Diskpartから回復パーティションを選択して「assign」コマンドを実行し(select disk 0→select partition 5→assign)、エクスプローラーから中身を参照しても何もファイルが保存されていなかった。

 また、Windows 8.1ではシステムの復元関連の情報を「reagentc」コマンドから設定、確認できるが、「reagentc /info」を実行してみると、「回復イメージの場所」にパラメーターが設定されていないことも確認できた。このように回復イメージの場所が設定されていない状態では、たとえ回復パーティションが存在し、そこにイメージが保存されていたとしても、前述した回復ドライブの作成で回復パーティションのイメージをUSBメモリにコピーしたり、外部メディアなしでシステムのリセット(工場出荷状態への復元)も実行することができない。

 もちろん、すでに手元には作成済みのUSB回復ドライブがあるうえ、それを使えばシステムを復元することもできるので、自分で使う上では問題ない。そもそも、目的は回復パーティションそのものを削除して、容量を増やすことなのだから、そうなったとしてもまったく問題ないわけだ。

 しかし、仮に、このタブレットを使わなくなったときに、友人に譲ったり、中古として売ろうと考えた場合、完全にオリジナルの状態に戻らないのでは困ったことになる。いくらUSB回復ドライブを添付したとしても、本体ストレージに回復イメージが存在しないとなると使い勝手はよくないうえ、査定で減額の対象にもなるだろう。というか、完全にオリジナルに戻らない製品を次に手にする人が不幸だ。

 逆に言えば、Windows 8.1搭載タブレットを中古で買うときは、最低でも「reagentc /info」くらいは実行すべきだし、回復イメージの場所が空欄だったら、回復ドライブが同梱されているかをチェックしてから、購入を判断すべきでもあるが、これはとにかく困った状況になってしまった。

回復パーティション手動で復元する

 というわけで、完全にオリジナルに戻らないのは困るので、手動で回復パーティションを復元することにした。

 と言っても、作業は簡単で、作成したUSB回復ドライブの「sources」フォルダを回復パーティションにコピーし、「reagentc」コマンドでイメージファイルの場所を指定しておけばいい。

   1)回復ドライブを使って工場出荷時に復元(パーティション再構成)
   2)コマンドプロンプト(管理者)を起動
   3)diskpart
   4)list disk(ディスク番号を確認)
   5)select disk 0(ディスク0を選択)
   6)list partition(パーティション一覧から回復パーティション番号を確認)
   7)select partition 5(回復パーティションを選択)
   8)assign letter=q(Qドライブに割り当て)
   9)exit

diskpartからassignコマンドを使って空の回復パーティションをマウント
認識されたドライブに、作成済みの回復ドライブから「sources」フォルダをまるごとコピー

 これで、エクスプローラーからQドライブに割り当てられた回復パーティションにアクセスできるので、USB接続した回復ドライブから「sources」フォルダをまるごとコピーしておく。

 なお、Miix 2 8では、工場出荷時に復元する際に、「PBR_DRV」というボリュームの「RecoveryImage」もしくは「sources」フォルダをチェックし、そこに「install.wim」または「install.swm」というイメージファイルが存在するかをチェックし、存在する場合に「reagentc」コマンドを使って回復用の情報をシステムに登録する。

 このため、回復パーティションにコピーした「souces」フォルダを「RecoveryImage」にリネームしてもいいが、テストしてみた限りでは、sourcesのままでも問題なかった。

 回復用のイメージをコピーできたら、reagentcコマンドを使って、このイメージをシステムに登録する。

   1)コマンドプロンプト(管理者)を起動
   2)reagentc /info(現在の設定を確認)
   3)reagentc /setosimage /path q:\sources /index 1(イメージを指定)
   4)reagentc /info(設定を確認)

reagentcコマンドを利用して回復パーティションのinstall.swmを回復イメージとして指定する

 ここではあらかじめ回復パーティションをQドライブに割り当てたので、そのパスを使ってOSイメージを登録しているが、登録された情報は「\\?\GLOBALROOT\device\harddisk0\partition5\sources」となっており、ドライブレターに左右されない設定に自動的に変更される。

 この状態で、コントロールパネルから回復ドライブの作成(イメージコピー有効)、およびPC設定の回復から回復ドライブなしで工場出荷状態への復元を実行してみたところ、問題なく回復ドライブを作成できたうえ、システムを復元することができた。

 なお、この操作は、回復ドライブからパーティションの再構成を実行してリセットした場合に必要となる。回復ドライブからリセットした場合でも、パーティション構成を維持した場合(もちろん回復用イメージが存在する場合)は、回復ドライブのバッチファイルによって自動的にreagentcが実行されるため再構成は不要だ。

処分する場合は事前に一手間かけてほしい

 以上、今回は、Miix 2 8の空き容量を確保するために回復パーティションを削除する方法、そして削除した回復パーティションを元に戻す方法を紹介した。

 個人的に評価用の機材は基本的に自腹で購入し、しばらく使ったら売ることが多いため、今回のようにパーティションを削除するなど、比較的影響の大きなテストをするときは、オリジナルに戻せるかどうかを必ず確認するのだが、今回は、思いのほか苦戦してしまった。

 ちなみに、削除した回復パーティションをdiskpartでイチから作り直すこともできるが(パーティション作成後、「set id=de94bba4-06d1-4d40-a16a-bfd50179d6ac」で回復パーティションに指定し、「gpt attributes=0x8000000000000001」でパーティションを保護)、この方法は1度しか復元を実行できなかったり、復元後に回復パーティションが暗号化されてアクセスできなくなることがあるなど、うまく行かないケースも見られたので、パーティションの再構成には回復ドライブを使った方が確実だ。

 まあ、基本的に発売されたばかりの製品なので、長く使うことが前提になると思われるが、もしも回復パーティションを削除した場合は、端末を手放す前に、必ずこの一手間をかけてから他の人に受け渡すようにしてほしいところだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。