清水理史の「イニシャルB」

Wave 2対応の4ストリームMIMOで実効900Mbpsを実現 セキュリティ機能も搭載した無線LANルーター ASUS「RT-AC87U」

 実効速度でもついに有線並に。ASUSから4本のアンテナを備え、最大1734Mbpsの通信に対応した無線LANルーター「RT-AC87U」が、9月27日に発売される予定だ。IEEE 802.11ac Wave 2に対応し、MU-MIMOへの対応も果たしたうえ、悪意のあるサイトへのアクセスを遮断するセキュリティ機能なども搭載している。評価機を事前に入手できたので、“最強”の称号を自ら塗り替える同製品の実力を実際に試してみた。

Wave 2の時代に

 これからの無線LAN機器に求められるのは、おそらく「キャパシティ」の高さになるだろう。

 「IoT」というキーワードを目にする機会が増えてきた昨今、実際に家庭内、オフィス内に無線LANに接続される機器の増加を身をもって体験している人も多いはずだ。今後、このような端末が増え続けることを考えると、端末をどれくらい収容でき、それぞれの端末にどれくらいの帯域を提供でき、そして適切に通信を制御するかは、今後、無線LAN機器に問われる重要なポイントと言える。

 これまでの無線LAN機器は、単純な最大速度や通信範囲の広さがセールスポイントとされてきたが、今後は、それに加えて、「xx台でもxxxMbpsを実現」といったような収容能力の高さがパッケージに踊る時代になるだろう。

 そういった意味では、今回、ASUSから登場した「RT-AC87U」は、まさに次世代のキャパシティを備えた無線LANルーターと言って良さそうだ。

ASUSのIEEE 802.11ac Wave 2対応無線LANルーター「RT-AC87U」

 昨年末に登場した3ストリームMIMO対応のIEEE 802.11ac準拠無線LANルーター「RT-AC68U」には、実効700Mbpsを超えるスピードに驚かされたが、今回のRT-AC87Uは、そのスピードを1734Mbps対応の4ストリームMIMOでさらに高めただけでなく、MU-MIMO(マルチユーザーMIMO)への対応によって、この豊富な帯域を複数端末で効率的に共有するしくみまで備えている。

 4ストリーム以上のMIMOやMU-MIMOといった規格は、以下の表のように、IEEE 802.11ac Wave 2として規定されているが、まさにIEEE 802.11ac対応新製品第2の波が、ここに訪れようとしているしているわけだ。

 残念ながら、IEEE 802.11ac Wave 2のキャパシティの高さを実際に体験できるようになるには、同じくWave 2に対応したクライアントの登場を待つ必要はあるが、近い将来に訪れるその波を先取りできるのが、今回のRT-AC87Uというわけだ。

【表1:IEEE 802.11ac wave1とwave2の違い】
Wave 1 Wave 2
最大速度 1.3Gpbs 3.5Gbps*1
MIMO 1〜3 4〜8
SU/MU SU-MIMO MU-MIMO
変調方式 256QAM 256QAM
帯域幅 20/40/80 20/40/80/80+80/160
  • *1 4ストリーム/160MHz/256QAM時

4本のアンテナを搭載

 それでは、実際に製品を見ていこう。デザインについては好みもあるが、ステルス戦闘機をほうふつとさせるような独特な色と造形は、なかなか迫力がある。

 目立つのは、やはり本体背面にそびえる4本のアンテナだろう。前述したように、本製品は、4ストリーム、つまり4本のアンテナを使って、同一空間中で4つの電波を使って同時に通信することができるようになっている。

正面
側面
背面

 これまで一般的だったIEEE 802.11ac Wave 1の製品が3ストリーム、最大1300Mbps対応だったのに対して、4ストリーム対応のRT-AC87Uは、1ストリームあたり433Mbps×4、つまり1734Mbpsの最大速度に対応している。

4本のアンテナを利用して同一空間中に4つの通信(4ストリーム)を同時に実行することで、最大1734Mbpsを実現する

 もちろん、IEEE 802.11acの5GHz帯に加えて、2.4GHz帯の同時通信にも対応している。こちらは、IEEE 802.11n対応だが、IEEE 802.11acの技術(256QAM変調)を採用することで、最大600Mbpsに対応している。パッケージに記載されている「2400」という数値は、1734+600=2334≒2400というが、その由来だ。

 また、前述したようにMU-MIMOにも対応しており、4ストリームの通信を複数ユーザーで同時に利用できるようになっている。例えば、以下のように433Mbps×2ストリーム=867Mbpsを2台の端末で同時に実行できることになる。

 MU-MIMOを利用するには、クライアント側の対応が必要となるため、現状では、その実力を100%発揮させることができないが、今後、PCやスマートフォンなどを中心に、MU-MIMO対応クライアントが増えてくれば、複数端末での同時通信の速度を向上させることが可能だ。

 本体に戻って、インターフェイス類をチェックしていこう。フロント左側にはWi-Fi、およびLEDのオン/オフが可能なボタンが、右側にはゴム製のカバーの内側にUSB 3.0ポートが搭載されている。

 背面側は、USB 2.0×1、WANポート、4ポートのLAN、電源ポート、そしてWPS設定用ボタン、リセットボタン、パワーボタンが搭載されている。構成としては、過不足ない印象だ。

前面左側にはWi-Fi(電波)オン/オフ、LEDのオン/オフボタンを搭載。右側にUSB 3.0ポートを搭載している

 前面のLEDボタンは、夜間などに利用すると便利だ。もともとLEDは控えめで、あまり明るさが気にならない設計だが、ボタンを押して完全に消灯することで、夜間などでも目立たなくなる。パフォーマンスの高さだけでなく、こういった繊細さも兼ね備えている点は、本製品ならではの魅力と言えそうだ。

実効で900Mbpsを確認

 気になるパフォーマンスだが、既存の無線LANルーター製品の中では、その実力は相当に高い。

 以下は、木造3階建ての筆者宅の1階にRT-AC87Uを設置し、1階、2階、3階の各フロアでiPerfによる速度を測定した結果だ。

【表2:iPerfテスト】
1F 2F 3F
有線LAN 有線LAN 1000Mbps 949 - -
RT-AC87U RT-AC87U 1734Mbps 903 625 496
MacBookAir 11*1 867Mbps 605 405 435
Surface Pro 3*2 867Mbps 369 294 159
Galaxy S5*3 867Mbps 198 180 143
RT-AC68U RT-AC68U 1300Mbps 767 505 387
MacBookAir 11*1 867Mbps 622 427 268
RT-AC87Uを2台利用した際の1階の計測結果。900Mbps越えが実現できている

 グラフ中、下から2番目が、RT-AC87Uを2台利用した際の結果で、同一フロアで何と903Mbpsを記録することができた。有線LAN(1000BASE-T)での結果が949Mbpsなので、ほぼ同等と言って良い値だ。この組み合わせの場合、3階でも496Mbpsと500Mbps近い値が出ており、驚異的な結果と言える。

 参考として、以前に本コラムで計測したRT-AC68Uの値をグラフ上部に掲載しているが、各フロアともに1.2倍近い速度向上が見られる結果となった。これなら、さらに距離がある環境や遮へい物がある環境でも、比較的高い速度でつなげることができるだろう。

 興味深い結果となったのは、MacBook Air 11を利用した結果で、3階の値が435Mbpsと2階の405Mbpsよりも上回っている点だ。おそらくビームフォーミングの効果がうまく現れているのではないかと推測される。

 なお、RT-AC87Uには、同社が「AiRadar」と呼ぶビームフォーミングの機能が搭載されており、ビームフォーミング非対応の端末に対しても電波を集中させて通信品質を高めることが可能となっている。

 以下の表のように、今回、テストに使用した機器はすべてビームフォーミングに対応しており、Surface Pro 3やGalaxy S5で、もう少し効果が出ることも期待していたが、測定環境や相性の問題があるのかもしれない。

【表3:テスト機器スペック】
RT-AC87U RT-AC68U MacBook Air 11 2013 Surface Pro 3 Galaxy S5
メーカー Quantenna Broadcom Broadcom Marvel Broadcom
チップ QSR1000 BCM4360 BCM4360 AVASTAR 88W8897 BCM4354
スピード 1734Mbps 1300Mbps 867Mbps 867Mbps 867Mbps
MIMO 4x4 3x3 2x2 2x2 2x2
帯域幅 80MHz 80MHz 80MHz 80MHz 80MHz
256QAM
Beamforming
MU-MIMO × × × ×

 ちなみに、今回のRT-AC87Uは、従来のRT-AC68Uから無線LANのチップが変更されている。従来はBroadcom製のBCM4360だったが、今回はQuantennaのQSR1000となっている(CPUはBroadcom BCM4709 1GHz Dual-Core)。無線LANチップは、一時期、集約されつつあったものの、ここに来て多様化が目立つようになってきた。今後は、多少、相性によるパフォーマンスの差なども現れてくる可能性がありそうだ。

 なお、先に、将来的にMU-MIMO対応のクライアントが登場すれば、同時通信時のパフォーマンスが向上すると述べたが、現状、同時通信が発生した場合に、どのようにパフォーマンスが影響を受けるのかをテストしてみたのが以下のグラフだ。MacBook Air 11でIperfを開始した後、数秒おいてからSurface Pro 3にて、同一サーバー上の別のプロセスでIperfを実行した。

【表4:同時通信テスト】
MacBook Air Surface Pro 3
1 614 0
2 615 0
3 613 0
4 392 115
5 274 135
6 193 164
7 221 151
8 214 169
9 208 151
10 218 148
11 187 167
12 152 174
13 165 144
14 449 150
15 570 0
16 580 0
  • 端末Aでiperfを60秒間実行
  • 端末Aの計測開始後、約10秒経過後に端末Bのテストを10秒間実行
  • 端末A:Core i7-4770/RAM16GB/256GB SSD
  • 端末B:Apple MacBook Air 2013
  • サーバー:Core i5-3570K/8GB/80GB SSD

 PCでインターネットに接続している最中に、別のPCやスマートフォンで通信を開始した場合を想定したテストと言える。

 手動で時間を計測したため、開始直後と終了直前のあたりは誤差が発生していると考えられるが、やはり、単独で600Mbpsで通信できていたMacBook Airが他の端末の影響で200Mbps前後へと落ち込み、Surface Pro 3も最大で160〜170Mbps前後でしか通信できなくなってしまっている。

 今回のテストでは、接続先のサーバーが1台であるため、このボトルネックも発生している可能性があるが、接続先がインターネットとなれば、ルーターがボトルネックとなるため、ほぼ同じ状況と考えていいだろう。

 単純に2台の端末であっても、ここまで速度に影響が出るので、冒頭でも触れたように、今後、無線LANを利用する端末の数が増えてくれば、その影響はさらに大きくなることは確実だ。

 もちろん、MU-MIMOがどこまで効果を発揮するかは、対応製品の登場後に、再度、試してみないと何とも言えないところではあるが、やはりRT-AC87UのようなMU-MIMO対応アクセスポイントへの期待は高まるところだ。

危険なサイトへの接続を拒否

 機能的には、従来のRT-AC68U同様に非常に豊富だ。概要については、RT-AC68Uのレビューも参考にしてほしいが、今回のRT-AC87UではAiCloudの機能がバージョンアップされ、スマートフォン用のアプリのUIが変更されていたり、「AiPtorection」と呼ばれる新機能が追加されている。

スマートフォン用アプリのUIが一新され使いやすくなった
USB 3.0接続のSSDでデータを手軽に共有可能。CrystalDiskMark 3.0.3の結果

 AiProtectionは、文字通り、ネットワークを外部の脅威から守る保護機能で、大きく以下の4つの機能で構成されている。これまでのルーターでは対策できなかった問題や端末側で個別の対策が必要だった問題への対策ができるようになっており、すべて無料で利用できるようになっている。

  1.Router Weakness Scan
    RT-AC87Uの設定に弱点がないかを調べる
  2.Malicious Site Blocking
    悪意のあるサイトへのアクセスをブロックする
  3.Vulnerability protection
    WAN側からのパケットを確認し、疑わしい通信や
    コマンドが含まれていた場合に通信を遮断する
  4.Infected Device Prevention and Blocking
    BOTに感染したデバイスが存在する場合に、既知の
    C&Cサーバー(指令サーバー)と通信しようとした
    際に、その通信を遮断する

AiProtectionの設定画面。セキュリティに関する設定をボタン1つで簡単に設定できる
Router Weakness Scanの機能。ルーターの設定内容をチェックし、不備がないかを確認できる

 実際に被害に遭わないと検証できない機能もあるため、3や4など、動作の詳細がわからない機能もあるが、ここで注目したいのは2の機能だ。この機能を有効にすると、RT-AC87U経由でインターネットに接続する端末のフィッシングサイトなどのアクセスを防ぐことができる。

 試しに、機能を有効にした後、フィッシングサイトとして報告されているサイトのURLにアクセスしようとしたところ、ルーター側でアクセスを禁止した旨のメッセージが表示された。

 トレンドマイクロが提供するデータベースを利用して判断しているため、最新の情報をベースにフィルタリングが行われるようになっており、安心して利用できる。ルーター側で判断するため、クライアントに専用のソフトウェアもいらず、PCだけでなく、スマートフォンなどでも利用できる。

 もちろん、ある程度の対策は端末側で実施することが基本だが、ルーター側でも機能を有効にしておくことで、多重の対策が可能になるのは大きなメリットと言えそうだ。

インターネット上で公開されているフィッシングと思われるサイトの一覧から、1つを選んでアクセス。ルーター側でアクセスが自動的に遮断される
スマートフォンでも無線LAN経由でアクセスしている場合はフィルタの対象となる

最先端の無線LANルーター

 それにしても、ASUSの通信機器には、いつも驚かされる。パフォーマンスもそうだが、今までのルーターにはない機能が次々に搭載され、導入する度に、その用途を広げることができる。

 RT-AC68Uユーザーの筆者としても、こんな短期間で、こんなに機能アップされてしまったことに、少々、悔しさを感じるほどだ。

 もちろん、費用は決して安くないうえ、サイズも大きいが、それだけの価値は常に提供している製品と言える。誰にでもお勧めできる製品ではないかもしれないが、価格に対する満足感は非常に高い製品と言っていいだろう。

 なお、今回の製品には、同社が提供しているクラウドストレージサービス「ASUS WebStorage」を100GB、1年間無料で使えるクーポンが付属している。RT-AC87UにUSB接続したストレージの内容を同期させることもできるので、パーソナルクラウドとして活用するのもお勧めだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ