清水理史の「イニシャルB」

OneDrive同期、クラウドノート、SSDキャッシュなどなど クアッドコアCPU+DSM5.1で他を圧倒するSynology「DS415+」

 Synologyから、4ベイNASの新製品「DiskStation DS415+」が新たに登場した。クアッドコアCPUの搭載で処理能力が向上しただけでなく、最新のファームウェアであるDSM5.1(執筆時Beta)の搭載で、数々の新機能を搭載した注目の製品だ。

かなり面白い

 複数アカウントのOneDriveを同期できたり、EvernoteやOneNoteのような機能をプライベートなNASで実現できたり、SSDをキャッシュとして利用してアクセス速度を向上できたり……。

 いや、リストアップすれば、まだまだ注目の機能はあるのだが、今回、新たにSynologyから発売された「DiskStation DS415+」は、かなり「いじり」甲斐があるNASとなっており、4ベイのNASとしては掛け値なしに頭一つ抜きんでた性能と機能を備えた製品と言っていい。

 実質的には、「DSM5.1(2014年10月15日時点ではBeta)」の新機能、および新たに提供が開始されたアプリによって実現される新機能も多いため、既存の製品でもいくつかの機能を実現可能だが、これらの機能を、4ベイの小型NASで、手軽に、しかもストレスなく使えるようになったのは、本製品ならではの特徴と言える。

クアッドコアCPUと最新のDSM5.1を搭載したSynology「DiskStation DS415+」
Note StationやCloud SyncのOneDrive同期など、数々の新機能を搭載したDSM5.1

 これまで、NASは、ファイルサーバーの置き換えという位置づけの製品であったが、今回のSynologyの製品を見る限り、クラウド寄りの機能にもかなり力が入れられており、既存のクラウドサービスとの連携や置き換えという用途での利用も、十分視野に入れることができる製品となっている。

 個人情報の漏えいや大規模な障害など、クラウドサービスの利用に不安を覚えるようになってきたユーザーも少なくないかと思われるが、その不安を埋めるような存在にもなり得るのが、このDS415+というわけだ。

 そういった見方をすると、このDS415+は、単なるNASではなく、ローカルとクラウドの間を埋める新しい存在として、かなり面白い存在と言えそうだ。

2.4GHzのクアッドコアAtomを搭載

 それでは、実際の製品について見ていこう。まずは、ハードウェアだ。外観は、これまでのDiskStationシリーズとほぼ共通だが、中身は大きく変えられており、特にCPUはクアッドコアのAtomに変更されている。

正面
側面
背面

 現状、NASはデュアルコアのCPUが主流となっているが、集中するアクセスを効率よく処理したり、前述した多数の付加機能をストレスなく実行するには、高いCPU性能が必要になる。メモリも2GB(DDR3)搭載されており、LANポートもリンクアグリゲーション対応の1000BASE-T×2ポートとなっているため、小規模〜中規模のオフィスでの利用に適した構成と言えそうだ。

 なお、CPUに関しては、同社のスペックシートでは、単にIntel Atom クアッドコア2.4GHzとしか記載されていないが、SSHでアクセス後「cat /proc/cpuinfo」を実行すると「Atom C2538」と表示された。いわゆる「Rangeley」と呼ばれるネットワーク機器向けのSoCだ。

2.4GHzのクアッドコアCPUを搭載

 実際、このCPUはパフォーマンス向上に大きく貢献しているようで、以下のようにCrystal Disk Mark 3.0.3で高い結果が得られた。シーケンシャルで有線のほぼ上限となる100MB/s前後の転送速度が得られることも大きな特徴だが、512Kのランダムアクセスまでもシーケンシャル並に高いのは、他のNASではあまり見られない状況で、かなり優秀な結果と言える。

 また、本製品は、SSDをキャッシュとして利用することが可能になっており、これを利用することで、さらにパフォーマンス(特にランダムアクセス)を向上させることができる。

 SSDキャッシュを利用する場合、4つあるベイのうちの1つ以上(読み書きは2台以上、読み込み専用は1台以上)をSSDに利用するため、トータルのストレージ容量が少なくなるうえ、RAIDのレベルもRAID6からRAID5に下げるなどの工夫が必要となるが、以下のようにSSDキャッシュにヒットした場合は、ランダムリードが大幅に向上する。

 DSM5.1による刷新されたUIにより、ヒットレート分析やSSDのサイズに応じた推奨設定の提示など、使いやすさも向上している。SSDキャッシュは、容量1GBあたりメモリを4MB利用するため、標準(メモリ2GB)ではメモリ512MB分となる128GBとなり、それ以上、キャッシュ容量を増やすにはメモリの増設も必要になるが、容量よりもパフォーマンスを優先したい場合は、ベイとメモリをSSD向けに提供するのも1つの選択だろう。

SSDをキャッシュとして利用できる。1ベイの場合は読み取り専用キャッシュとなる
SSDキャッシュを利用する場合、1GBあたり4MBのメモリが必要となる
SSDキャッシュを有効にするとランダムアクセスのリードの値が大きく向上する

注目のアプリをピックアップ

 続いて、機能面だが、特徴的な機能をいくつかピックアップして紹介していくことにしよう。

CloudSyncがOneDriveに対応

 個人的にうれしかったのは、OneDriveのサポートだ。SynologyのNASには、「CloudSync」と呼ばれるクラウドサービスとの同期機能が以前から提供されていたが、今回のバージョンアップで、Googleドライブ、Dropbox、Baidu Cloudに加え、新たにOneDrive、Box、hubiCに対応した。

 OneDriveの場合、同期できるファイルは1ファイル100MBまでに限られるが、これによりOneDrive上のデータをNASの特定のフォルダと同期させることが可能となった。

Cloud SyncでOneDriveの同期が可能となった

 これにより、ネットワークの切断やサービスの停止などに備えて、バックアップとしてNAS上にデータを保管することができる。実際に試してみると、なかなか興味深い。

 例えば、本コラムのテキストデータはWindows上にあるOneDriveの同期対象のフォルダに存在するが、エディタで文書を入力してファイルを保存すると、Windowsによって自動的にこのファイルがクラウド上のOneDriveに同期される。その後、しばらくするとCloudSyncの同期要求によって、LAN上に設置してあるDS415+の共有フォルダに、同じテキストファイルが同期されることになる。

 つまり、NASへのバックアップをクラウド経由で実行しているわけだ。

 もちろん、SynologyのNASには、PC-NAS間でデータを同期するためのCloudStationという機能も搭載されているので、今回のケースは「結果的に」クラウド経由で同期しているだけにすぎないが、すぐ近くにあるNASに対してわざわざWAN経由でデータが書き込まれるというのはなかなか新鮮だ。

 なお、この方法でOneDriveのデータをDS415+に同期するメリットとしては、NAS上でファイルの履歴を扱える点がある。OneDriveでは、更新したファイルの履歴が保存されるのはオフィス文書に限られているが、NAS上のファイルはファイルの種類を問わず、一定期間おきに履歴が取得されるため、結果的にOneDrive上のすべてのファイルの履歴を取得することになる。

 また、複数のアカウントを設定できるため、社員それぞれのデータを同期したり、個人で複数のMicrosoftアカウントを所有している場合でも、NAS上から各アカウントのデータに一括でアクセスできるのもメリットだ(アカウントごとに同期フォルダが必要。複数アカウントを同一フォルダと同期するのは不可)。

 複数のアカウント、複数のサービスを併用していると、必要なデータがどのアカウントのOneDriveに保存されているかがわからなくなってしまうことがあるが、すべて同期させておけば、NAS上を探すだけで済むことになる。

「Note Station」でテキストや写真を手軽にNAS上にメモ

 今回、新たなアプリとして登場した「Note Station」もなかなか面白い機能だ。

 イメージとしては、EvernoteやOneNoteのNAS版と考えればわかりやすい。ブラウザのUI、もしくはスマートフォン向けの「DS Note」アプリを利用することで、テキストのメモ、写真、音声、動画などを手軽にNAS上に保存することができる。

 例えば、スマートフォン版のDS Noteを起動後、音声メモの作成を開始すると、スマートフォンのマイクを使って音声を記録しながら、テキストでメモを入力できる。メモが完了したら、アプリの画面上にあるチェックマークのアイコンをタップすると、それがNAS上に保存され、ブラウザでアクセスした場合でも同じメモを利用できるというわけだ。

 DS415+を外部からアクセスできるように構成しておけば、自分用のメモとしてだけでなく、外部のユーザーとメモを共有することも可能で、アクセス用のURLを送信してブラウザから同じメモを参照してもらうことができる。

 クラウド上で、保管、共有することが難しい企業データなどでも、Note Stationであれば自社の管理下で手軽に保管、共有することができる。使い勝手も悪くないので、なかなか実用的な機能と言えそうだ。

DS415+上にデータを保存するブラウザベースのメモアプリ
スマートフォン用アプリも無償提供。音声や映像などもメモできるうえ、暗号化して保存することもできる

メールやFTPにも対応した「FileStation」

 NASのファイルをブラウザ上のGUIで操作できる「FileStation」では、新たにメールクライアントを搭載した。事前にメールの設定が必要になるが、FileStationでファイルを右クリックして「添付ファイルとして送信」をクリックすると、その場で独自のメールクライアントが起動し、すぐにメールで送信できるようになった。

 このほか、FileStationでは、FTPおよびWebDavに対応し、これらを利用したサーバー上のフォルダをFileStation上にマウントして、ファイル操作することが可能になった。

 ウェブサーバーのテスト環境などをDS415+上に構築し、本番環境との間のファイルのやり取りをFileStationから直接実行するといった使い方ができるだろう。

メールクライアントを内蔵。Gmailなどを簡単に設定して送信に利用できる
FTPやWebDAVなども新たにサポート。リモートフォルダも参照できる

重複ファイルのチェックも可能

 DSM5.1の新機能として搭載された「ストレージアナライザー」も、NASの運用に重宝する機能の1つだ。

 フォルダやユーザー、ファイルの種類ごとの使用量をグラフ化したり、各共有フォルダに散在する重複ファイルを検出したり、サイズの大きなファイルや最近変更されたファイルなどを簡単にリストアップすることができる。

 特に、重複ファイルなどは、NASの容量を無駄に消費する原因となるだけに、これを検出し、ワンクリックで簡単に排除できるのは大きなメリットと言える。調査をスケジュール設定しておけば、時間の経過を追いながら、使用量がどのように変化するのかを確認することもできるので、ユーザーの異常な使い方をトレースするといった使い方もできる。地味だが、非常に有用な機能と言えるだろう。

ストレージの利用状況を定期的にチェックしてグラフ表示
重複ファイルもチェックして手軽に削除できる

セキュリティ設定をチェック

 同様に、一見地味だが、実は有効な機能としては、「セキュリティアドバイサー」も注目だ。

 実行すると、マルウェア、アカウント、ネットワーク、設定、更新の5つの項目で、自分自身の設定状況を自動的にチェックし、もしも脆弱性が存在する場合は、その状況と推奨する操作を表示することができる。

 多機能なNASの場合、セキュリティを意識することなく、いろいろな機能を有効にしたり、不用意に外部からのアクセスを許可してしまうケースがあるが、この機能を利用すれば、初めてNASを使うような初心者でも、そういった弱点を発見し、簡単に対処できることになる。

 このほか、NFS VAAIのサポートにより、ファイルクローンや予約スペースなどの新しい仮想化オプションを利用することが可能になっていたり、Proxy Serverを実現するアプリが新たに提供され、ウェブアクセスの効率化や社内ルールによるアクセス制限が可能になったりと、企業で利用するための機能も強化されている。前バージョンのDSM5.0から、わずか「0.1」しかバージョンは上がっていないが、内容は数値以上に豊富と言えそうだ。

セキュリティ状況をチェックして不備があれば推奨する設定が表示される

使える、遊べるNASの代表格

 以上、Synologyから新たに登場した4ベイNAS「DiskStation DS415+」、および最新のDSM5.1(Beta)の機能を紹介したが、これまでのNASにはなかった数々の機能が提供されたことで、NASとしての使い道がかなり広がった印象だ。

 もともとSynologyは、ファームウェアやアプリの開発に熱心なNASベンダーで、他社にはない機能を積極的に採用してきたが、今回の製品も、その期待を裏切らないユニークな存在と言えそうだ。

 実際に企業の現場などで利用することで、生産性を向上させることも期待できるが、サーバーやNASに興味があるユーザーにも、ぜひ一度、試してほしい製品と言える。一通り機能を試すだけでも、かなり遊べる存在と言える。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。