清水理史の「イニシャルB」
カメラ監視+温度確認+家電の遠隔操作を1台で 接続も簡単な「AtermHC100RC Wi-Fiアクセスポイントセット」
(2015/3/2 06:00)
NECプラットフォームズから、家庭用のネットワークカメラ「AtermHC100RC Wi-Fiアクセスポイントセット」が登場した。アクセスポイント同梱で設定が簡単なだけでなく、温度確認や家電の遠隔操作までできるオールインワンの監視カメラソリューションだ。その実力を検証してみた。
見るだけでは意味がない
わが家にも、もう十年来のパートナーとなるトイプードルがいるが、家族全員が外出するときに留守番を頼んでも、その様子が気になるなんてことは、これまでほとんどなかった。
もちろん、留守中に何をしているのかが気にならないこともないが、長らく一緒に暮らしていると、だいたいの行動はわかるし(ほぼ寝ている)、いつまでも眺めていたいなんてほど子煩悩ならぬ犬煩悩でもない。
よって、防犯用に玄関先を常時録画する監視カメラはすでに導入しているものの、同じような方法でペットをカメラで監視しようとは、まったく考えなかった。
しかし、そんな筆者でも、これなら導入しても良いかなと思える製品が登場してきた。NECプラットフォームズの「AtermHC100RC Wi-Fiアクセスポイントセット」だ。
無線LANルーターとして知られる「Aterm」シリーズで販売される、初のネットワークカメラだが、ポイントとなるのは、温度センサーと赤外線リモコン機能を搭載していることだ。この2つの機能をネットワークカメラにプラスしたことで、単にペットの姿を「見る」だけでなく、温度をペットの体調管理の判断材料として活用したり、その結果から、何か具体的なアクションを起こしたりできるようになった。
時期的には少し外れるが、確かに、真夏に留守番を頼んだ場合、暑すぎたり、逆に涼しすぎたりしないか、外出中に気になることがある。
そんなときでも、AtermHC100RCがあれば、目で様子を確認するだけでなく、温度をチェックし、その結果、エアコンを操作することが可能になるというわけだ。
もちろん、ペットのためだけでなく、防犯目的で留守宅を確認したり、旅行中にテレビの電源を入れて留守であることを悟られないようにしたり、自身の快適さのために帰宅前に温度をチェックしてエアコンを入れておくなどという使い方もできる。
これまでのネットワークカメラは、基本的に「見る」だけで、できたとしても動体検知した情報を「知らせる」程度だったが、本製品は、そこからもう一歩進んだ具体的なアクションができる製品というわけだ。
まさに「つなぐだけ」の手軽さ
それでは、実際の製品を見ていこう。今回、採り上げるのはネットワークカメラ本体である「AtermHC100RC」に、無線LAN接続用のアクセスポイント「AtermW300P(専用機)」が同梱された「AtermHC100RC Wi-Fiアクセスポイントセット」だ。
すでに無線LAN環境が宅内に存在するため、アクセスポイントは必要ないという人も少なくないかもしれないが、今回、同社から発売されるのは、このセットモデルのみとなる。
もちろん、購入後、AtermHC100RCの設定を変更すれば、同梱のAtermW300Pではなく、既存のアクセスポイントに接続することは可能だ。しかし、セットモデルとなっていることで、初めてネットワークカメラを利用する人でも設定に迷わなくて済むというメリットがある。
実際、製品をセットアップしてみるとわかるが、設置は非常に簡単だ。パッケージからAtermW300Pを取り出して、既存のルーターと有線LANで接続後、電源ケーブルを接続。その後、AtermHC100RCに電源ケーブルをつないで起動させれば設置は完了だ。
ワイヤレスタイプのネットワークカメラでありながら、WPSによるボタン設定や設定画面から無線LAN接続の設定をする必要がないため、ネットワークに関する知識がなくても簡単に設置できる。
カメラの映像を見るための設定も簡単だ。スマートフォンで専用アプリ「Atermホームコントローラー」をダウンロード後、底面に印刷されているQRコードを読み取るだけで、自動的に宅内ネットワークに設置されたAtermHC100RCが検出され、すぐに映像を確認できる。
初期設定時は、スマートフォンをAtermHC100RCと同じネットワーク(同じWi-Fi)に接続しておく必要があるものの、初期設定さえ済んでしまえばLTE経由で外出先からアクセスすることも特に問題なくできる。
ルーターの設定を変更したり、外部のサービスを使ったりと、面倒な設定や操作をしなくても、すぐに使える点は高く評価したいところだ。
リモコン設定はプリセットと学習が可能
本製品の特徴とも言える温度センサーと赤外線リモコン機能についてだが、前者は特に設定は必要ない。
前述した方法でカメラをセットアップ後、スマートフォンのアプリから映像を確認すると、左上の日時に続いて「22℃」のように設置部屋の室温が表示される。AtermHC100RCの背面には、無線LAN用のアンテナに並んで温度センサーが取り付けられており、ここで計測された温度が自動的に表示されるようになっている。
老眼鏡のお世話になるようになった身としては、もう少し大きく表示してほしいところではあるが、カメラでの監視と同時に温度がわかるので、留守中にエアコンをオン・オフするかどうかの判断が的確にできる。
一方、赤外線リモコン機能は、スマートフォン用のアプリ(またはAtermHC100RCの設定画面)からの初期設定が必要だ。
設定方法は、プリセットと学習の2種類が用意されており、一般的な製品であればプリセットからメーカーとリモコンのタイプを選択することで設定可能だ。
筆者宅で試したところでは、ソニー製のテレビはプリセットから選択するだけで設定が完了し、無事にアプリ上から電源のオン・オフができるようになった。
プリセットで設定できない機器は、既存のリモコンの信号をAtemHC100RCに学習させることで設定する。アプリ上で、割り当てたい操作(例えば電源オン)を選択後、AtermHC100RCの前面に向けて、リモコンでその操作のボタンを押せばいい。これで信号が登録され、AtermHC100RCから制御できるようになる。
筆者宅では、日立製のLED照明、コロナ製のエアコンがプリセットでは動作しなかったため、学習によって登録する必要があった。
なお、アプリ上に用意される操作ボタンは限られており、照明はオン・オフのみ、テレビはオン・オフとチャネル、音量の変更、エアコンは「STOP」に加え、「20℃」、「22℃」、「24℃」の暖房、「25℃」、「27℃」、「29℃」の冷房となっている。
これらのボタン通りに機能を割り当ててもかまわないが、学習を利用すれば、エアコンの温度設定ボタンをタイマーに割り当てるといったことも可能だ。
また、そのほかの機器用に「(1)」と「(2)」という2つのボタンも用意されており、オーディオや加湿器など、赤外線リモコンで操作できる機器を学習によって登録することが可能だ。
パトロールや夜間撮影も可能
カメラ機能については、見るだけでなく、さまざまな操作が可能となっている。
まずは、パン・チルトだが、アプリのボタンを使って操作する。中心にあるホームポジション(正面)から、右側のボタンを押せば右に30度パン、左側のボタンを押せば同じく左に30度パン。上のボタンを押せば上に20度チルト、下のボタンを押せば下に20度チルトする。
設定画面にアクセスすることで、パンは10~50度の5段階、チルトは10~30度の3段階に変更できるが、最大はパンが330度、チルトが120度となっており、ずっと右ボタンを押し続けても一回転するわけではない。
その代わりというわけではないが、パトロール機能が搭載されており、プリセットされたポジション(標準では1→2→3→4→5→10→9→8→7→6の順)で自動的に巡回して表示する機能が搭載されている。
プリセットの位置をカスタマイズすることで、スマートフォン上のボタンから狙った場所に一発でカメラの方向を合わせることもできるが、その場合はパトロールの際の順番も考慮して設定した方がいいだろう。
カメラの品質は100万画素で1280×720ドットの解像度となっており、スマートフォンの画面で確認する分には何の支障もない、鮮明な画質が得られる。なお、画質は標準では「バランス設定(画質優先)」となっているが、「自宅で見る設定(パソコン用)」、「自宅で見る設定(スマートフォン用)」と「外から見る設定(スマートフォン用)」でそれぞれ選択可能となっている。
各モードの詳細は以下の通りだ。同じ名称の設定でも、場所とデバイスによって微妙に設定が変更されている。なお、設定できる値はプリセットのみで、フレームレートなどを自分で設定することはできない。
エンコードタイプ | 画面サイズ | FPS | エンコード方法 | ビットレート | ||
自宅で見る設定(パソコン用) | 高画質設定(大画面) | H.264 | 1280×720 | 30fps | 固定 | 4Mbps |
バランス設定(画質優先) | MPEG4 | 640×352 | 10fps | 固定 | 2Mbps | |
バランス設定(滑らかさ優先) | MPEG4 | 640×352 | 30fps | 固定 | 768kbps | |
低画質設定(繋がり易さ優先) | MPEG4 | 640×352 | 10fps | 固定 | 512kbps | |
自宅で見る設定(スマートフォン用) | 高画質設定 | H.264 | 640×352 | 30fps | 固定 | 4Mbps |
バランス設定(画質優先) | MPEG4 | 640×352 | 10fps | 固定 | 2Mbps | |
バランス設定(滑らかさ優先) | MPEG4 | 640×352 | 30fps | 固定 | 768kbps | |
低画質設定(繋がり易さ優先) | MPEG4 | 640×352 | 10fps | 固定 | 512kbps | |
外から見る設定(スマートフォン用) | 高画質設定 | MPEG4 | 640×352 | 10fps | 固定 | 1Mbps |
バランス設定(画質優先) | MPEG4 | 640×352 | 3fps | 固定 | 512kbps | |
バランス設定(滑らかさ優先) | MPEG4 | 640×352 | 10fps | 固定 | 128kbps | |
低画質設定(繋がり易さ優先) | MPEG4 | 640×352 | 3fps | 固定 | 128kbps |
もちろん、夜間の撮影も可能となっており、標準では本体に搭載されている照度センサーを利用し、暗くなった場合は自動的にモノクロの「暗視スコープ」モードに切り替える設定になっている。
昼間で照明が点灯した室内でも、壁側にカメラを向けた場合などに、自動的に暗視スコープモードに切り替わるので、必要に応じて設定画面で感度も調整しておくといいだろう。
このほか、サウンド機能も搭載しており、内蔵のマイクを利用して、音声を検知した場合に動画や静止画を自動的に取得したり、通知したり、マイクで集めた部屋の音をスマートフォン上で再生する機能も搭載されている。外付けのスピーカーを接続すれば、こちらの音声を、スピーカーを使ってカメラ側で再生することもできるので、ペットとのコミュニケーション、侵入者への警告などの用途にも活用できるだろう。
防犯目的に便利な保存や通知機能
どちらかというと、ペット向けというより、防犯向きの機能と言えるが、動体検知や音声検知によって、映像や写真を自動保存したり、スマートフォン向けのアプリで通知を受け取ることも可能だ。
単純に通知を受け取るだけであれば、「Atermホームコントローラー」の「お知らせ機能設定」をオンにするだけで、カメラの撮影範囲に動くものが映り込んだり、マイクが何か音を検知すると、スマートフォンのステータスバーに通知が表示されるようになる。
ただし、通知が表示されてからすぐに映像を確認しても、すぐにその対象をカメラでとらえられるとは限らない。
このため、防犯目的で利用する場合は、動画や静止画をメールで送信したり、本体背面のスロットに装着したmicroSDカードに自動保存する設定を有効にしておくといいだろう。動画の場合は10秒、静止画の場合は2秒おき計6枚の写真を自動的に取得することができる。
個人的な話で恐縮だが、昨年、筆者宅では宅配弁当を盗られる事件があった。玄関先に発泡スチロールのケースに入れて毎日納品してもらっていたのだが、ある日だけ配達がなく、不思議に思っていたところ、翌朝、空になった容器だけが家の隅に返されていた。
それ以来、玄関先に監視カメラを設置し、同様に動体検知した場合の映像をNASに保存するようにしている。
本製品のようにメールで送信したり、microSDに保存する製品であれば、導入も手軽なので、防犯目的での導入も強くおすすめしたいところだ。
マクロ機能が搭載されれば完璧
以上、NECプラットフォームズから登場したネットワークカメラとアクセスポイントのセット「AtermHC100RC Wi-Fiアクセスポイントセット」を実際に使ってみた。設置や設定が簡単にできるだけでなく、赤外線による家電の操作ができるうえ、録画や通知などの機能も充実したいい製品だ。留守中のペット用、防犯用として、ぜひ導入を検討してみたい製品と言えそうだ。
とは言え、不満もなくはない。個人的には、もう少し、ユーザーがカスタマイズできる余地があるとうれしいところだ。
具体的には、カメラを移動させてリモコンを操作とか、複数の動作を組み合わせた自動操作ができるとうれしい。
例えば、カメラを設置する場合に、ペットを監視するためのベストポジションがエアコンの真下などというケースがあったとする。この場合、温度やペットの様子を見ながら、エアコンの電源を入れようと思っても、エアコンの赤外線受光範囲からカメラが外れ、うまく操作できない場合がある。
もちろん、AtermHC100RCの赤外線ポートはカメラの上に搭載されているため、カメラの方向をエアコン側に向ければ電源をオンにできるが、プリセットを使ったとしても、毎回毎回、スマートフォン上で位置を変えるのは面倒だ。
このため、「カメラを1番の位置にしてエアコンの電源をオンにして、直前のカメラ位置に戻る」とか、マクロ的な機能をボタンに登録できるようにしてほしい。
「温度が何度を上回ったら……」など、うまく動作しなかった場合のリスクを考えると、どこまで自動化させるのかというさじ加減は難しいが、このような複合的な動作ができるようになると、より利便性が高まるのは確実だ。個人的には、そこまでできるようになってくれれば完璧だ。