清水理史の「イニシャルB」
これからTechnical Previewを試すあなたへ 画面で比べるWindows 7とWindows 10 TPの違い
(2015/2/18 06:00)
2015年1月末に公開され、日本語も使えるようになったWindows 10 Technical Preview(Build9926)。そろそろ試してみようかと考えている人も少なくないのではないだろうか。そこで、今回は、Windows 7との違いを中心にWindows 10 Technical Previewの特徴を紹介する。実際にTechnical Previewをインストールする前に、今使っているOSとの違いをあらかじめチェックしておくといいだろう。
違和感が少ないのはむしろWindows 7ユーザー?
Windows 7から、Windows 8、Windows 8.1へと、まじめにアップグレードしてきたユーザーよりも、もしかするとWindows 7を使い続けて来たユーザーの方が違和感は少ないかもしれない。
2015年1月末に公開されたBuild 9926のWindows 10 Technical Preview(以下、Windows 10 TP)を実際に試してみると、そんな印象を受ける。
もちろん、アカウントはMicrosoftアカウントになるうえ、スタート画面に見慣れないタイルも並ぶが、スタートメニューのオペレーションはそのままだし、Windowsストアアプリもウィンドウ表示可能になったおかげで、使っている感覚は今までのアプリケーションと大差ない。OneDriveも、同期のしくみが変更されたため、Windows 7ユーザーの使用感も損なわれない。
今後、新しいブラウザや音声エージェントのCortana(コルタナ)といった新しいテクノロジーが、どれくらい旧OS使用者の使用感に影響するかはわからないが、現在のTPの姿を見る限り、PCとして普段家やオフィスで使う上で、Windows 10はWindows 7の代替えとして十分な資質を備えているのではないかという印象だ。
とは言え、新しいOSを使うとなれば、やはり操作に戸惑う部分が少なからず存在する。デスクトップやスタートメニューなど、実際にWindows 10 TPを試すうえで、Windows 7ユーザーがつまずきそうなポイントをまとめてみた。
比較その1:アカウント
アカウントは、おそらくWindows 7とWindows 10 TPの違いの中ではもっとも重要なポイントだ。
企業の場合は別にして、通常、Windows 7にログオンする場合はローカルアカウントを使用する。自分の名前やニックネームになっているか、「User」や「Papa」などの汎用的なものになっているかは環境次第だが、どんな場合にせよ、PC上(ローカル)に保存されているアカウントを使ってログインする。
これに対して、Windows 10 TPでは、基本的にMicrosoftアカウントを使用する。HotmailやWindows Liveのサービスを利用した経験がある人は、すでに取得しているかもしれないが、「○△□@hotmail.com」や「○△□@live.jp」、「○△□@outlook.jp」などを利用してWindowsにサインインする。
もちろん、Windows 10 TPでもローカルアカウントを利用することは可能だ。実際、Windows 7からアップグレードした場合、標準では旧環境から引き継いだローカルアカウントで利用できる。
ただし、Windows 10 TPでは、OneDriveのデータやWindowsの設定を同期したり、ストアアプリを使ってオンラインからアプリをダウンロードしたりと、オンラインサービスとOSが密接に連携する。こういったサービスの恩恵を受けるためには、Microsoftアカウントが必要というわけだ(Windows 7でもオンラインアカウントを関連付けできたが、用途が限られる)。
ストアからアプリをダウンロードしようとした際、もしくは「設定(Settings)」の「アカウント」からアカウントの関連付けを実行すれば、ローカルアカウントからMicrosoftアカウントを設定できるので、切り替えておくことをおすすめする。
比較その2:ロック画面とサインイン
Windowsを起動した際に、最初に表示される画面は、Windows 7ではログオン画面(パスワードなしの場合はデスクトップ)だが、Windows 10 TPではロック画面になる。
サインインする前に、この画面をクリックまたはタッチで上にスライドする必要があるので、ひと手間増えただけのように思えるかもしれないが、この他面には日時や新着メールなどの各種情報が表示されるようになっている。スマートフォンのロック画面と同じような役割だと考えるといいだろう。
なお、サインイン画面は従来のログイン画面とほぼ同じだが、比較その1で説明したようにサンインする際のアカウントはMicrosoftアカウントとなる。
比較その3:デスクトップ
デスクトップは、Windows 8/8.1時代に比べると、扱いもデザインもオリジナル路線に戻った印象で、Windows 7もWindows 10も全体的にはよく似ている。
画面下部のタスクバーのデザインやスタートボタンが変わっているのと、いくつか見慣れないボタン(詳しくは後述)が追加されているものの、Windows 7ユーザーであれば違和感なく使えるデザインとなっている。
アクションセンター
スタートメニュー関連はひとまず置いておくとして、目に付く違いをピックアップしていくと、通知のしくみが大きく変わっている。
Windows 7では、例えばWindowsファイアウォールを停止したり、USBメモリを装着したりと、利用者に知らせるべき情報が発生すると、画面右下にバルーンで情報が表示された。
これに対して、Windows 10 TPでは、Windows 8/8.1と同じトーストと呼ばれる四角い通知が表示されるが、その位置は、画面右下(Windows 8/8/1は画面右上だった)とWindows 7の場合に近い位置に表示されるようになった。
この機能の最大のメリットは、急がなくていいことだ。通知がある場合、画面右下の通知領域のアイコンが白くなる。これをクリックすると、サッと表示され、よく確認しないうちに、サッと消えてしまった通知も、その履歴を確認できる。
この領域は、「アクションセンター」と呼ばれる機能で、よく見ると通知だけでなく、下にいくつかのボタンが並んでいる。「Expand」をクリックすると、「Tablet mode」、「Display」、「Connect」、「All settings」、「Location」、「VPN」、「Wifi」などのボタンが表示され、ここからPCの設定をいくつか変更できることがわかる。通知の表示にプラスして、よく使う機能の設定ができる機能というわけだ。
検索
タスクバー左側に表示される検索ボックスは、“今のところは”Windows 7のスタートメニューにあった検索ボックスが、タスクバー上に移動したものと考えて差し支えない。
「Windows」などのキーワードを入力すれば、該当するプログラム、機能、ファイルなどを検索できるが、Windows 10 TPではWebの検索も可能で、キーワードなしでクリックすると今日のBing画像が表示される。
「今のところ」と強調したのには訳がある。すでにいろいろな媒体で報道されているが、マイクロソフトは次期Windows 10にコルタナと呼ばれる音声エージェント機能を搭載する予定を明らかにしている。
現状のBuild 9926でも言語を英語、地域を米国に設定すれば、「Hey,Cortana!」などと英語で話しかけるだけで起動させたり、音声で天気を聞いたり、メールを送ることができる(結果は音声と検索画面に表示される)が、残念ながら日本語では利用できない。
タスクバー
タスクバーそのものに関しては、デザインの変更が主になり、使い方としてはさほど大きくは変わらない。起動したアプリのアイコンが表示されたり、よく使うアプリを固定(ピン留め)したりできるうえ、マウスオーバーでサムネイルを表示したり、右クリックでメニューから操作を選択できるのも同じだ。
ちなみに、Windows 8.1 Updateで起動中のストアアプリもタスクバーに表示されるようになったが、ストアアプリのウィンドウ表示が可能になったWindows 10 TPでも、当然、タスクバーに表示される。もっとも、デスクトップアプリとストアアプリの使い分けを意識してきたWindows 8/8.1ユーザーと異なり、もともとストアアプリを使ってこなかったWindows 7ユーザーにしてみれば、この点は、特に意識するような点でもないだろう。
さて、両者の違いをあえて挙げるとすれば、設定関連になりそうだ。Windows 10 TPでは、タスクバーのプロパティに「ナビゲーション」タブが新たに追加されており、画面隅をクリックした際の動作やスタート画面に関する設定が可能となっている。
Windows 8.1時代は、ここからスタート画面ではなく、起動時にデスクトップを直接表示することができたが、これらの項目は削除されているので、この設定の重要性も薄れてしまった印象もある。
タスクビューと仮想デスクトップ
今までのWindowsにはなかった新機能と言えるのが、タスクビューと仮想デスクトップだ。タスクバーの検索ボックスのすぐ右にある四角が重なったようなボタンをクリックすることで起動できる。
と言っても、基本的には従来のWindows+TAB、もしくはAlt+TABのような機能となる。クリックすると、現在、起動中のアプリのサムネイルが画面上に表示され、クリックすることで使うアプリを選択できる。
では、何が新機能なのかというと、画面下に並んだデスクトップだ。Windows 10 TPでは、いわゆる仮想デスクトップをサポートしており、画面下の「+」をクリックすることで、デスクトップを2つ、3つと次々に追加し、それぞれにアプリを配置することができる。
ノートPCなど限られた画面領域で複数のタスクを切り替えながら処理するといった使い方もできるし、プレゼン作成用や会計処理用などデスクトップ画面ごとに仕事を分けて切り替えながら作業するといった使い方が可能だ。
タブレットモード
マウス操作とタッチ操作の融合を狙ったWindows 8/8.1に対して、Windows 10 TPではマウス操作メインの通常操作モードに加えタッチ操作に最適化された「タブレットモード」が追加されている。
前述したアクションセンターのボタンをクリックして手動で切り替えることも可能だが、Surface Pro 3などのキーボードの脱着が可能な製品では、キーボードを切り離したことが自動的に検知され、タブレットモードに移行するかどうかを選択できる。
タブレットモードでは、スタートメニューが画面全体に表示され、Windows 8/8.1のスタート画面的に使えるようになるほか、起動するアプリが自動的に全画面表示されるようになり、タッチでの操作がしやすくなる。
マウス操作とタッチ操作を無理に融合させるのではなく、2つのモードを切り替えることで無理なく操作できるようになったわけだ。
比較その4:スタートメニュー
Windows 8/8.1ユーザー待望のスタートメニューも、Windows 7ユーザーにしてみれば、基本的な使い方は同じとなる従来の延長線上の進化となる。
タスクバー左端のボタンが丸から四角に変更され、メニュー右半分が見慣れないタイルになったものの、標準のよく使うアプリからすべてのアプリに左側の一覧を切り替え、すべてのアプリを表示したり、そこから実際に使うアプリを起動したり、という役割はそのままとなる。
Windows 8/8.1ユーザー待望のシャットダウンボタンも、位置が上に変わったものの無事にスタートメニュー内に配置され、ここからWindowsを終了させたり、再起動したりすることができるようになった。
スタートメニュー右上のボタンをクリックすれば、画面全体にメニューが拡張され、前述したタブレットモードと同様にスタート画面的に使えるようになる。Windows 8/8.1でスタート画面に表示されていたユーザーのアイコンも受け継がれ、ここからサインアウトしたり、ユーザーを切り替えることも可能だ。
右側の一覧は、Windows 8/8.1ではおなじみの「タイル」だ。アプリを起動するためのボタンとして使われるのと同時に、新着メールや最新ニュースなどアプリの最新情報を表示することができる。
タイルを移動したり、サイズを変えたりできるうえ、よく使うアプリをピン留めしておくこともできるので、自分の使いやすいようにカスタマイズすることが可能だ。
なお、Windows 7のようにスタートメニューから「ドキュメント」などのフォルダーにアクセスしたい場合は、Windows 10 TPのスタートメニュー左側に表示されている「場所」からアクセスできる。もちろん、タスクバーのエクスプローラーを起動してアクセスすることも可能だ。
比較その5:エクスプローラー
エクスプローラーは、基本的な使い方はそのままとなるものの、細かな部分の構成が変わった。
目に付くのは、画面上部、従来のツールバーに相当する部分のリボンだ。Office 2010以降でも採用されているので、違和感を感じない人もいるかもしれないが、ここからさまざまな操作を実行できる。また、ファイルやフォルダーなど選択した対象によって、表示が変わったり、選択できる操作が変わる場合もある。
なお、タスクバーなどからエクスプローラーを起動した場合、Windows 7はライブラリが表示されるが、Windows 10 TPでは「よく使用するフォルダー」と「最近使用したファイル」が表示される。前回の作業を再開するときなどに便利だが、家族の共有PCなどではアクセスしたフォルダーが表示されるので、プライバシーには注意が必要だ。
画面左側のナビゲーションウィンドウに表示される項目も、Windows 7からだいぶ変更された。
具体的には、「お気に入り」がなくなった代わりに、「クイックアクセス」が追加された。お気に入りと同様に、よくアクセスするフォルダーをピン留めしておくことができるが、実体は前述した「よく使用するフォルダー」で、過去にアクセスしたフォルダーが、その時々で表示される。
一方、ライブラリに関しては、廃止されたわけではなく、単に非表示になっているだけだ。「表示」タブの「ナビゲーションウィンドウ」から表示することができる。概念がわかりにくいため、ユーザーの使用頻度を下げたいという意図かもしれない。
最後に、新たに追加された項目として「OneDrive」を紹介する。Windows 8.1ユーザーにはおなじみのフォルダーだが、ユーザーアカウントにMicrosoftアカウントを利用し、同期するフォルダーを選択している場合は、ここから同期しているデータにアクセスできる。
同期の設定などについては後述するが、クラウド上のデータもローカルのデータと同様に扱えるようになっている。
比較その6:アプリ
アプリケーションに関しては、Windows 7はデスクトップアプリのみの使用が可能だったが、Windows 10 TPでは、デスクトップアプリに加えて、ストアアプリが利用可能になっている。
Windows 8/8.1では、ストアアプリはタッチ操作向けの全画面表示アプリという位置付けだったが、Windows 10 TPからはウィンドウ表示が可能になり、通常のアプリと同様に扱えるようになっている。
通常のデスクトップアプリは、自分でインストールする必要があったが、ストアアプリは文字通り「ストア」アプリからオンラインでインストール可能で、同じMicrosoftアカウントを利用している場合は、複数のPCで使用することも可能だ。
ウィンドウ表示で使う限りは、今までのアプリと変わらないと考えて差し支えないが、Windows 8/8.1時代から提供されてきたアプリに関しては、画面左上にメニューを表示するためのボタンが用意され、ここから設定などを変更する仕様となっている。
この仕様は、Windows 10 TP向けのアプリで修正されつつあるが、当面、残っていく可能性が高いため、どうやってメニューを呼び出すのかを確認しておくといいだろう。
比較その7:設定
Windows 7ではPCの設定をコントロールパネルから一括管理できたが、Windows 10 TPでは、設定まわりが従来のコントロールパネルと「設定」アプリに分割されている。
Windows 8/8.1でも、この2系統の管理体制だったが、コントロールパネルが主、設定(PC設定)アプリが従の関係で、PC設定では利用できない項目もいくつかあった。
これに対して、Windows 10 TPでは、どちらかと言えば「設定」アプリが主の存在に引き上げられている。コントロールパネルを開くと、「PC設定でアカウントを変更(※Build9926ではPC設定という古い用語が残っている)」というリンクがあるうえ、Windows Updateもコントロールパネルからは姿を消し、設定アプリのみで実行可能となった。
初めてWindows 10 TPを使用する場合、Windows Updateを探して、コントロールパネル上で迷子になることがあるので、せめてシステムなどのリンクは残しておいてほしかったところだ。
現状は、まだコントロールパネルにしかない機能もあり、その使い分けが明確ではない部分もあるが、基本的には「設定」アプリに集約されていくと考えていいだろう。
比較その8:OneDrive
Windows 7/8ユーザーの場合、初めて使うユーザーは、OSに統合されたOneDriveに、戸惑いを覚えるかもしれないが、すでにOneDriveを使用中のユーザーは同期のしくみなども含め、使い慣れた環境と同じなのですぐに慣れることだろう。
セットアップの直後、もしくはデスクトップの通知領域からOneDriveを起動すると、初期設定が開始され、オンラインのOneDriveのデータがローカルのフォルダーと自動的に同期される。
エクスプローラーからアクセスする際に、Windows 7ではナビゲーションウィンドウの「お気に入り」の項目からアクセスしていたが、これが単独のOneDriveの項目からアクセスするようになるくらいで、ブラウザからのアクセスなど、使い方はほぼ共通だ。
ただし、Windows 8.1ユーザーにとっては、このOneDriveの変更は影響が小さくない。OSに統合されていることは同じだが、同期のしくみが大きく変わってしまったために戸惑いを覚えるかもしれない。
今回はWindows 7ユーザーのための違いを解説するのが目的なので簡単に解説するが、従来のWindows 8.1ではOneDrive上に存在し、ローカルに存在しないデータを同期する際に、プレースホルダーというしくみを利用していた。これは、データをすべて同期するのではなく、サムネイルや検索に必要な最低限のデータのみをローカルに保持し、実際にデータにアクセスが発生した際にネットワーク経由でデータ本体を取得するというしくみだった。
8インチサイズのタブレットなど、ストレージ容量が小さいデバイスでは、このしくみが便利で、ローカルからファイルを検索したり、サムネイルを表示できるようにしつつ、あまり使わないデータをOneDrive上に追いやることで、ローカルのストレージ消費量を節約することができた。
しかし、Windows 10 TPでは、この同期方法ではなく、Windows 7/8向けのアプリと同様に、完全に同期する方法となった。シンプルでわかりやすい方法になったが、技術的には元に戻ってしまったため、新しさが失われてしまった印象だ。
いざとなれば元に戻せるので試してみよう
以上、2015年2月12日時点で最新となるBuild9926をベースに、Windows 7とWindows 10 TPの主な違いを紹介した。
もちろん、OSとしての違いを挙げれば、さらに項目は増えると思われるが、実際にWindows 7ユーザーがWindows 10 TPを試すにあたっては、以上の違いを事前に確認しておけば、さほど違和感なくWindows 10 TPを使えるはずだ。
もちろん、開発中のOSとなるため、試す際はデータが消えたり、OSが起動しなくなっても困らない環境で試すべきだが、Windows 7からのアップグレードインストールは予想以上にスムーズに実行できる。
また、インストール後に気に入らなければ「設定」の「保守と管理」にある「回復」で「前のバージョンのWindowsに戻す」を実行することで、こちらも予想以上にスムーズにWindows 7に戻すことができる。完全に戻せると断言はできないが、筆者の環境では数台のPCで問題なく戻すことができた。
ベータ版OSを試せるほどPCの所有台数に余裕がある人は、さほど多くないことを考えると、より多くの人に試してもらうためには、きちんと戻せることをもっと訴求すべきだが、いかんせん完全にと言い切れないのがマイクロソフトとしてもツライところだろう。
新ブラウザのSpartanや日本語のコルタナは、まだ使えないが、これらも定期的に更新されるBuildで順次試せるようになるはずだ。この機会にWindows 10 TPの世界を体験してみるといいだろう。