清水理史の「イニシャルB」

食べたらあなたも「Me too!」を Windows 10 Technical Preview

 正式リリースがまだ先であること、そして英語版であること。この2点を考えると、「物言うテスター」として、あなたが活躍できるチャンスは、まさに今だ。テクニカルプレビューとして公開された「Windows 10」を使って、自分の思いを積極的にフィードバックしよう。

このタイミングを大切に

 これは大きなチャンスだと思った方がいい。

 数年前、Windows Home ServerのMVPとして活動していた時、リリース前のベータ版をMVPのメンバーで先行してテストさせてもらえる機会があった。

 当時、リクエストの多かった機能が削られたりと、大きな仕様変更があったため、メンバーはバグ出しに協力するとともに、機能の復活を繰り返し訴えたが、結局、大きな方針変更が伴うことや開発期間の関係で、それが報われることはなかった。

 今、テクニカルプレビューとして登場した「Windows 10」を目の前にして、その当時に感じた無力さが、もしかすると「今回こそは報われるんじゃないか」という期待感に変わりつつある。

今回公開された、Windows 10 テクニカルプレビューをインストールしたSurface Pro 3

 その理由は、時期がまだ早いことと、ローカライズが未完成であることだ。

 マイクロソフトは、これまでのWindows 8でも正式リリース前にプレビュー版を公開してきた。2011年9月14日にDeveloper Preview、2012年3月1日にConsumer Preview、2012年6月にRelease Previewと3回のプレビュー版を経て、2012年10月26日に正式に発売した。

 Windows 10の正式リリースは、まだ未定だが、そのスケジュールを今まで通りだと仮定すると、今回のテクニカルプレビュー(Technical Preview)は、時期的にはWindows 8のDeveloper Previewに相当する。今回のテクニカルプレビューで、日本語版が提供されないのも、当時のDeveloper Previewと同じだ。

 しかし、今回のテクニカルプレビューが、前回のWindows 8のDeveloper Previewと異なるのは、その門戸が広いことだ。

 Windows 8のDeveloper Previewは、その名の通り、基本的には開発者向けであったが、今回のTechnical Previewは、「Windows Insider Program」のWebページによると、その対象が「PCに詳しいユーザーやITプロフェッショナルの方」と広げられている。

 これは、すでに開発がある程度まで進んでいるためとも考えられるが、前述の取り、ローカライズが未完成であることを考えると、まだ製品として改良が加えられる余地が残されているとも考えられる。

 そして何より、個人的にはWebページに掲載された、この文言に大いに期待している。

 「このプレビューに参加して、これまでで一番のWindowsを作り上げるためにご協力ください。」

 要するに、今なら、まだユーザーの意見が製品に反映される可能性があるわけだ。もちろん、大きな仕様は変わらないかもしれない。しかし、詳しくは後述するが、「他人に秘密にしたいフォルダーへのアクセス履歴がエクスプローラーに常に表示される」なんて機能は、最低でもユーザーの選択でオフにできるようにすべきだし、新機能の仮想デスクトップもショートカットキーでデスクトップを切り替えられなければ面倒でたまらない。

 こういった「声」が、今なら、まだ開発者に届く可能性があるわけだ。このタイミングを、ユーザーとして、ぜひ大切にしてほしいところだ。

初期のプレビュー版としては門戸が広く、開発への協力を明確に訴えている

Windows 10 プチSNSと化す「Windows Feedback」

 と言っても、プレビュー版のフィードバックなんてしたことないという人も少なくないことだろう。そこで、簡単なフィードバック方法を紹介する。

 フィードバックには、今のところ筆者が確認した限り3種類の方法がある。1つはパッシブなフィードバック方法で、インストールして使うだけでいい。Webサイトにも記述があるが、インストール状況や使用状況に関するデータが自動的に収集されてマイクロソフトに送信されるようになっている。

 また、筆者はMiracastのテストで体験したが、特定の機能を利用しようとして、エラーが発生すると、画面上にフィードバックを送信するかどうかというメッセージが表示され、同意すればフィードバックが自動的に送信される。

 つまり、普段通り使っていれば、それだけでいいわけだ。なるべく実機にインストールし、いろいろなデバイスやソフトウェアを使えば、それだけでも貢献できる。

 続いては、アクティブなフィードバックの送信方法だ。これには、さらに2つの方法がある。

 1つはWindows Insider ProgramのWebでも紹介されているフォーラム(http://answers.microsoft.com/en-us/windows/forum/windows_tp)の利用だ。

 英語の掲示板だが、ユーザー同士での質問やディスカッションがさかんに行われているので、インストール時のエラーや障害報告から、機能のリクエストなどなどを気軽に書き込むことができる。

 あくまでもユーザー同士のコミュニティのため、開発者に声が届くかどうかは保証できないが、特定の不具合や機能のリクエストに対する声を大きくするという意味では効果が大きい。

ユーザーフォーラムでの質問も結果的にフィードバックにつながる

 2つ目は、「Windows Feedback」を使う方法だ。フィードバックの方法としては、これがもっとも効果的だ。

 Windows 10 テクニカルプレビューをインストール後、スタートボタンをクリックすると、新機能のスタートメニューに「Windows Feedback」というアプリが表示されることが確認できる。

 これを起動すると、左側にカテゴリの一覧が表示されるので、報告したいカテゴリを選択後、さらにサブカテゴリを選択。その後、不具合などの状況を書き込めばいい。

 例えば、筆者はMiracastに関する不具合を1つ提出したが、この場合であれば、以下のように報告すればいい。

   1.「Hardware and Devices」を選択
   2.「Miracast」をサブカテゴリで選択
   3.「Can't connect with sony KDL-24W600A」など状況を書き込む

 英語以外でも書き込めるが、英語以外のメッセージをフィードバックとしてマイクロソフトが受け取ってくれるかどうかは不明となる。現状は、英語で書き込んでおくのが無難だろう。

カテゴリを選択
フィードバックを書き込む

 また、Surface Pro 3で、ペンのボタンを押してもOneNoteの起動や画面キャプチャの機能が無効になってしまう不具合も報告した。こちらは、すでに海外のユーザーが同じ不具合を報告していたので、それに賛同する形で報告する。

   1.「Hardware and Devices」を選択
   2.「Touch and Pen input」を選択
   3.「Surface Pro 3」と入力
   4.すでに投稿済みの報告が一覧表示される
   5.「Surface Pro 3 pen does not launch...」をクリック
   6.「Me too!」をクリック

 これで、投票した投稿の先頭の数が1つ多くなる。当然、同じ不具合を報告するユーザーが多ければ、問題として認知してもらえる可能性が高くなるし、改善される可能性が高くなるわけだ。

Surface Pro 3では、ペンのトップボタンが機能しなくなってしまう。「純正品くらいはしっかり対応を!」と思う方は、ぜひ「Me too!」を
同じ報告は「Me too!」で投稿しておけばOK

 面白いのは、このWindows Feedbackが、ユーザーの思いを開発者に伝えるためのプチSNSのように使われ始めている点だ。

 例えば、カテゴリを適当に選んで、テキストボックスに「Feedback」と入力すると、Windows Feedbackツール自体の改善要求が、ズラリとリストアップされる。「検索できるようにしてほしい」、「スクリーンショットの削除や追加をしたい」などのリクエストが多くの同意を得ている。

Windows Feedbackそのものに関するリクエストもある

 待望の新機能「Start menu」はどうだろうか?

 検索してみると、やはりリクエストが多くの「Me too!」を集めているのがわかる。「スタートメニューのタイル表示はいいね」と素直に褒めている投稿もあれば、「スタートメニューとスタート画面を同時に使えるようにしてほしい」、「スタートメニューを半透明にしてほしい」、「コントロールパネルを標準でスタートメニューに表示してほしい」といったリクエストが多くの支持を集めている。

Start menuに関するフィードバック。待望の機能だけあってフィードバックも目立つ

 まるで、多くの「いいね」を集めたFacebookの投稿を見ているかのようだ。

 もちろん、同じことをFacebookやTwitterに投稿するのも悪くない。しかし、「Windows Feedback」を使うメリットは、確実に、マイクロソフトに意見が届くことだ。

 Windows Feedbackに投稿された意見は、担当者が誰なのかは定かでないが、確実に、担当者の仕事として集約され、社内の資料に記載されたり、会議にかけられたりする。

 一般的なSNSでは、よほどネット上の声が大きくなければ、意見は届かないが、Windows Feedbackであれば、投稿が確実にマイクロソフトに届くし、「Me too!」を押すだけで特定のリクエストをみんなの総意として押し上げることができるわけだ。

 日本人はマジメなので、きちんとした不具合を見つけないと報告しようとしないことが多いが、このツールに関しては、もっと気軽に考えていい。見ているだけでも面白いので、新機能について他の人がどう考えているのかをチェックして、自分もそう思ったら「Me too!」を押せばいいのだ。その「+1」が確実にWindows 10を良い製品にしていくはずだ。

 個人的には、ぜひ次の2つの機能は「Me too!」してほしい。

Frequent Folders/Filesの非表示

 エクスプローラーを開くと、最近アクセスしたフォルダーが「Frequent Folders」や「Frequent Files」に表示される。せっかく深い階層に隠した秘密のフォルダーやファイルが、常にトップに表示されるなんてゾッとする。しかも、これらのうち、フォルダーに関しては、表示されたフォルダーを選んで削除すると、フォルダーの実体は「ごみ箱」行きになるのに、Frequent Foldersからは消えないという恐ろしい状況になる。便利な機能なのは確かだが、せめてユーザーの選択で非表示にできるようにしてほしい。

Task View(Virtual Desktop)の改善

「Windows+TAB」で、いわゆる仮想デスクトップを作成できるのだが、この移動がマウス操作かタッチ操作というのは面倒でたまらない。Linuxなどのようにショートカットキーでパッと切り替えられるようにしてほしい。また、できれば各デスクトップでは、別のプロセスとしてアプリを起動できるようにしてほしい。複数のIEをデスクトップで使い分けるといったことができないのは残念。

 これらの投稿は、いろいろな表現でWindows Feedbackに投稿されているので、「Frequent folders」や「Task View(Virtual Desktopなども多い)」で検索し、内容が適切なものや多くの支持を集めているものを見つけて、よければ「Me too!」してほしい。

食べたらMe too!を

 マイクロソフトでは、リリース前のベータ版を社内で広くテストとして使うそうで、これを「ドッグフードを食べる」と表現することがある。

 その表現が適切かどうかは定かではないが、われわれのテーブルにも、この料理はすでに配膳(はいぜん)される準備が整っている。ぜひオーダーし、はしを付けて、その感想を挙げるべきだ。難しく考えることなどまったくない。ただ、「Me too!」を押すだけでもいいのだ。

 もちろん、これからもプレビューは続くだろう。しかし、大切なのは、意見が開発に取り入れられるタイミングを逃さないことだ。次のプレビューでは、おそらく間に合わない。今、このタイミングを逃さないことが大切だ。

 また、これはマイクロソフトにお願いだが、Windows Feedbackは、ベータ版だけでなく、正規版OSでもぜひ残してほしい機能と言える。ユーザー、マイクロソフト、そしてネタを集めたい筆者と、全員にメリットがありそうなので、ぜひお願いしたいところだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。