清水理史の「イニシャルB」

買う前にチェックしておきたいNASのキホン 人気3メーカーの特性の違いをチェックしよう

 「そろそろNASが欲しいけど、どれを選んだらいいのかがわからない……」。そんな声に応えるべく、国内でも人気の高くなってきたQNAP、Synology、NETGEARの3メーカーのNASの機能を比べてみた。ベイの数やCPUの違いの前に、メーカーごとの特性の違いをチェックしておくと、製品選びでの失敗を避けられるはずだ。

メーカーが注力する差異化のポイントを探る

 ざっくり、結論を言ってしまえば、今までにない先進的な取り組みに積極的なQNAP、ユーザー視点の実用性を重視するSynology、NASとしての本質を追究するNETGEAR、とでもいったところだろうか。

 国内でも存在感が高まってきた海外主要3ベンダーのNASについて、特徴的な機能を一通りチェックしてみたところ、それぞれのメーカーが力を入れているポイントが、それぞれ異なることが見えてきた。

 もちろん、NASはデータを保管するためのストレージとしての役割がメインだが、クラウドサービスの普及、PC以外のスマートフォンなどからの利用といった現在の状況を考えると、今やその役割や求められるニーズは多岐にわたる。

 競合するNASメーカー同士で戦うだけでなく、異なる土俵のサービスとも競合するとなれば、ほかのメーカーやサービスにはない独自性が必要になるが、その決め手となるポイントが、各メーカーによって異なるわけだ。

 このような状況は、製品をレビューする機会が多い筆者のような立場からすると、とても興味深く、歓迎したいところではあるのだが、実際に製品を選ぶ消費者としては、どの製品を選べば良いのかが難しく、悩みのタネにもなりかねない。

 具体的にどのような点でメーカーごとの違いがあるのか、カテゴリごとに詳しく説明していくので、実際に製品を選ぶ際の参考にしてほしい。

 なお、表には一部カッコ書きなどで注を入れてあるが、機能によっては一部のモデルにのみ搭載されているものもあるため、実際に製品を選ぶ場合は、対応する機能をよく確認してほしい。今回は、あくまでもメーカーの全体的な特徴をとらえるための表だと考えてほしい。

QNAP、Synology、NETGEARの各NAS

基本機能を重視するNETGEAR

 まずは、基本的な機能から見ていこう。以下の表は、システムやディスク管理、ファイル共有、バックアップといったNASとしての基本的な機能のうち、各メーカーで特徴的な部分をピックアップしたものだ。

表1:基本機能比較
  QNAP Synology NETGEAR
システム OS QTS4.1 DSM5.2 ReadyNAS OS 6.2.4
UI デスクトップ型 デスクトップ型 Webページ型
ディスク 冗長性 RAID Syology Hybrid RAID X-RAID2
ホットスワップ
容量拡張
S.M.A.R.Tテスト ○(スケジュール可)
スクラブ ○(コマンド) ○(手動) ○(スケジュール可)
SSDキャッシュ ○(一部機種) ○(一部機種) ○(一部機種)
Bit Rot保護 × ×
ファイル共有 SMB
NFS
AFP
FTP FTP、FTPS、SFTP FTP、FTPS、SFTP FTP
使用状況分析
バックアップ クライアント Windows QNAP NetBak Replicator CloudStation ReadyCLOUD
MacOS Time Machine Time Machine TimeMachine
Linux - CloudStation -
サーバー ネットワークバックアップ QNAP NAS同士/rsync/RTRR SynologyNAS同士/rsync NAS/FTP/NFS/rsync
ローカルバックアップ USB/eSATA USB/eSATA USB/eSATA
スナップショット 対応予定 ○(Time Backup) ○(フォルダ単位)

【お詫びと訂正】
初出時、AFP(Apple Filling Protocol)をAFSと誤って記載しておりました。お詫びして訂正いたします。

 まず注目したいのは、ユーザーインターフェイス(以下UI)だ。一昔前までは、ルーターと同様にWebページ型のUIを採用する製品が多かったが、今回採り上げたメーカーではQNAPとSynologyがデスクトップ型のUIを採用している。

 筆者の記憶によれば、このタイプのUIをいち早く採用したのはSynologyだが、デスクトップ型のUIは、設定作業やアプリの利用時に複数ウィンドウを平行して画面上に展開することが可能なうえ、PCライクな操作でなじみやすいという特徴がある。

 もちろん、NETGEARのReadyNASで採用されているWebページ型のUIも、構成がシンプルで体系立てて機能が整理されていることから、設定はしやすい。旧来のNASユーザーには、こちらの方が管理しやすいと考える人も多いことだろう。

 最終的には好みの問題となりそうだが、どちらが自分に向いているかも、NAS選びの1つの基準となりそうだ。

UIの違い(左からQNAP、Synology、NETGEAR)

 続いて注目したいのは、ストレージの管理方法だ。とは言え、これはあまり意識しなくていい。と言うのも、名前や操作方法に若干の違いはあるものの、どの機種でも、基本的にできることに大きな違いはないからだ。

 RAIDの構成を自動的に実行したり、後からディスクを追加したり、大容量のディスクに交換した際に、ボリュームの容量を自動的に拡張するといったことは、どのシステムでも問題なくできる。

 このあたりは、かつてPCサーバーと比較した場合のメリットだった点となるため、現状はあまり考慮しなくてもいいだろう。

ストレージの管理画面(左からQNAP、Synology、NETGEAR)

 では、違いとして注目すべき点はどこになるかというと、ディスクのメンテナンス機能だ。このジャンルで強いのは、NETGEARのReadyNASだ。先のOSのアップデートで、デフラグやスクラブ(訂正可能な1ビットの誤りを検出する)をスケジュール実行したり、共有フォルダごとにBit rot保護(ビット腐敗:何らかの理由でデータの一部が読み取れなくなった情報を修復する)を有効にすることができる。

 NASの場合、RAIDによってハードディスクの物理的な故障に対応可能だが、ReadyNASでは、物理的な故障以外で発生するような読み取りエラーなどにも対応できるようになっている。

 ほかのNASでもスクラブを実行できたり、不良セクタを動的にマッピングする機能が搭載されているが、ReadyNASはスケジュール設定できたり、共有フォルダ単位に設定できるなど、細かな制御が可能になっている。重要なデータを安全に保管するというNASの本質を追究した製品と言えるだろう。

スクラブをスケジュール設定したり、Bit rot保護を共有フォルダ単位で設定できる

 一方、データの管理という点で優れているのは、Synologyの製品だ。同製品には、「ストレージアナライザー」と呼ばれる機能が搭載されており、NAS上に保管されているデータを詳細に分析できる。

 ユーザーごと、種類ごとのデータの容量を表示したり、重複ファイルを探し出してリストアップことなどが可能となっているので、運用後のデータの管理が非常に楽になる。ストレージの容量不足などで、データの削除をする場合の手助けになるので、企業などで導入する際は、この点を重視するのも1つの選択だ。

ストレージアナライザーでNAS上のデータを詳細に分析可能

動画のトランスコードもおまかせのQNAP

 続いて、マルチメディア系の機能について見ていこう。と言っても、写真や音楽については、各製品であまり大きな違いはないので、注目は動画機能となる。

表2:マルチメディア機能比較

QNAP Synology NETGEAR
音楽・映像・写真 メディア配信 DLNA
AirPlay ×
モバイルデバイス
ビデオ変換 自動変換 ×
リアルタイム変換 ○(一部機種) ○(一部機種) ×
iTunesサーバー
HDMI出力 × △(一部機種、メンテナンス用)
サイネージ対応 × ×

 この分野で突出しているのはQNAPだ。CeleronやCore iシリーズ、AMD APUなど、GPU性能の高いプロセッサを搭載した機種をリリースしており、動画のハードウェアトランスコードを可能にしている。

 その効果は圧倒的だ。従来のAtomを搭載したNASでも、動画のトランスコードは可能だったが、容量の大きな動画をトランスコードさせれば、たちまちCPUパワーを食い尽くし、数時間、場合によっては十数時間も、その処理に付き合わなければならなかった。これが動画の再生時間以下で実行できるようになるのは、大きなメリットだ。

 操作も簡単で、手動でトランスコードするだけでなく、フォルダを監視して自動的に動画をトランスコードさせることもできる。

 Synologyでも「play」と名の付く製品で、動画エンコード用のハードウェアを搭載した機種があるが、あらかじめ映像をトランスコードするわけではなく、PC上のブラウザやスマートフォン上のアプリ(DS video)から映像を再生する際に、変換しながらストリーム配信するという仕様になっているため、若干、動作が異なる。

 後述するように、NASは、もはやPCだけでなく、スマートフォンなどからも利用する機会が増えている。低速なネットワークで、あまり高い品質の動画を再生できないデバイス向けに、動画をトランスコードしておけるのは大きな魅力だ。

Celeronを搭載したモデルなどでは、ハードウェアトランスコードが可能。フォルダを指定して自動的にトランスコードできる

 また、QNAPのNASは、本体に搭載されたHDMI端子を利用してテレビに接続することもできる。4K動画など、ネットワークの帯域が問題になるような動画を再生する場合にテレビに直結できるのも大きな魅力だ。

 このほか、デジタルサイネージを簡単に配信できるアプリも用意されるなど、マルチメディア系の機能では、ほかにはない特徴を持っている。

HDMI接続して動画再生なども可能
デジタルサイネージとしても利用可能

連携サービスや対応アプリが充実しているSynology

 もはやNASはローカルのストレージだけでなく、クラウド環境で利用するストレージと言える。この点で、完成度が高いのは、どのメーカーの製品なのだろうか?

表3:クラウド・モバイル機能比較

QNAP Synology NETGEAR
クラウド機能 外部からのアクセス myQNAPcloud QuickConnect ReadyCLOUD
ファイル同期 Windows
Mac OS ×(予定)
Android △(写真UPLOAD) △(写真UPLOAD)
iOS △(写真UPLOAD) ○(iOSの写真はDS Photo+) △(写真UPLOAD)
履歴保持
クラウドサービス同期/バックアップ Amazon S3 ×
Amazon Glacier ×
Microsoft Azure ×
OneDrive × ×
Box × ×
hubiC × ×
Google Drive ×
Baidu Cloud × ×
Dropbox
WebDAV ×
モバイルアプリ ファイル参照 Qfile DS file ReadyCLOUD(ReadyNAS Remote)
写真管理 Qphoto DS photo+
映像再生 Qvideo DS video
音楽再生 Qmusic DS audio
同期管理 DS cloud
監視カメラ Vmobile DS cam ReadyNAS Surveillance
システム管理 Qmanager DS finder
ダウンロード管理 Qget DS download
メモアプリ Qnote DS note
リモコン操作 Qremote

 まずは、外出先からのアクセス方法を比較してみよう。QNAPとNETGEARは、クラウド上に用意された専用サイト経由でNASにアクセスする方式となっている。一方、Synologyもクラウド上のサイトは経由するが、実際に操作するUIは、ローカルでNASにアクセスしたときと同じものとなる。

 基本的にデザインが異なるだけで、外出先からファイルを参照するという目的では、どれも同じような使い方と言っていいだろう。

外出先からアクセスした際の画面(左からQNAP、Synology、NETGEAR)

 クラウドストレージサービスで一般的なPCやスマートフォンとのファイルの同期についても、3社とも可能となっているが、個人的に出来が良いと感じたのはSynologyだ。

 SynologyのCloud Stationの場合、Android端末に関しては、ストレージのデータをまるごとNAS上に同期させることができる(ほかは写真のみ)。このため、スマートフォンのバックアップとして利用したり、文書などのPCのデータをスマートフォンと同期させることも可能となっている。

SynologyのCloud Stationではすべてのデータを同期可能

 NAS側の同期機能もSynologyは充実している。いずれのメーカーもクラウドサービスのデータをNAS上の特定のフォルダに同期させることができるが、対応するサービスが多い。

 特に、OneDriveに関しては、現状、同期に対応する唯一のNASだ。NAS上に作成したユーザーごとに、個別に複数のサービスの同期を設定することも可能で、かなり使い勝手がいいと言えるだろう。

SynologyはOneDriveとの同期も可能

 スマートフォン向けのアプリに関しては、ファイルの参照程度であれば、3社とも大差はないが、QNAPとSynologyは多くのアプリを提供しているのが特徴となる。特に、Synologyなどは、Windows Phone向けにもアプリを提供しており、その対応が幅広い。

ファイル参照用のアプリの操作性はほぼ横並び(左からQNAP、Synology、NETGEAR)

 かつてはSynologyのアプリが使いやすさなどの点で頭ひとつ抜けていたが、最近ではQNAPのアプリも完成度が高く、使いやすさは同等と考えていい。特に、Android版のQfileやQvideoは、動画プレーヤー機能を内蔵しており、再生を外部アプリに頼るSynologyよりも、操作が一手間少なくて済む。対応するファイルフォーマットも幅広いので、動画再生という用途では、先のハードウェアトランスコードも含めQNAPに軍配が上がりそうだ。

QNAPはビデオの再生が楽。トランスコードされたデータがあれば、それを指定して再生することもできる
Andoroid環境の場合、SynologyのNASでは、再生用のアプリを別途指定する必要がある。実は対応ファーマットが幅広いQfileやQvideoを指定するのがオススメ

ビジネス向け機能は一長一短

 最後に、ビジネス向けの機能について見ていこう。

表4:ビジネス機能比較

QNAP Synology NETGEAR
セキュリティ ウイルス対策 無償/有償(McAfee) 無償/有償(McAfee) 無償
自己診断機能 × ×
ボリューム暗号化
二段階認証 × ○(Google認証システム) ×
耐障害性 クラスタ構成 × ○(SHA) ×
プラットフォーム 仮想化機能 Virtulization Station(一部機種) Docker(一部機種) ×
管理機能 ディレクトリサービス Active Directoryクライアント
Active Directory ドメインコントローラー ○(一部機種) × ×
LDAPクライアント ×
LDAPサーバー △(アプリ)
集中管理機能 ○(myQNAPCloud) ○(CMS) ○(ReadyCloud)

 セキュリティ関連で優れているのはSynologyだ。このNASには、自己診断機能が搭載されており、設定やアカウントの脆弱性などを自動的に診断して、改善点を提示してくれる。安全に使うために、何をしたらいいのかがよくわからない初心者でも安心して使える。

 また、筆者が知る限り、NASとしては唯一、二段階認証機能を搭載しており、管理者など重要なアカウントでログインする際に、スマートフォンなどに表示されたPINの入力を求めることもできる。

 このほか、同一のNASを2台利用したクラスタ構成で運用し、一台が故障などで使えなくなった場合でも、素早くスタンバイ側に切り替えることなども可能で、実用性が非常に高い。

Synologyはセキュリティ診断機能を搭載
二段階認証にも対応する

 仮想化に関しては、以前に、こちらの記事でも解説した通り、QNAPはクライアントハイパーバイザー型の「Virtualization Station」を、Synologyはコンテナ型の「Docker」を利用可能となっている(いずれも一部機種のみ対応)。

 このあたりは、用途次第だが、仮想化したい対象のOSがWindowsならQNAPのVirtualization Station、Linux系というより開発環境なども含めたLinuxの統合プラットフォームならSynologyのDockerという選択になるだろう。

QNAPのVirtualization Station(左)とSynologyのDocker(右)

 このほか、管理機能では、Active Directoryのドメインに参加できるだけでなく、自らがドメインコントローラーとしても動作可能なQNAPが優位だ。Windows Serverからのリプレイスというのも真剣に視野に入るだろう。

 複数台のNASの集中管理については、どのメーカーもある程度は可能だが、通知やログをまとめて管理できたり、グループポリシーを設定できるSynologyのCMS(集中管理システム)が優れている。大量導入や遠隔地への導入を検討している場合は、Synologyがおすすめだ。

SynologyのCMS。複数のNASの管理に威力を発揮する

自分の用途に合ったメーカーを選ぼう

 以上、QNAP、Synology、NETGEARの各NASを比較しつつ、特徴的な機能をピックアップしてみた。

 冒頭でも触れた通り、QNAはビデオトランスコードや仮想化などの先進的な機能が、Synologyは実用性を重視した機能とかゆいところに手が届く細部の完成度の高さが、NETGEARはNASとしての本質となるストレージの管理に優れているのが、それぞれの特徴と言える。

 データを安全に保管できるだけでいいのであれば、どのメーカーを選んでも大きな失敗はない。しかし、いろいろな機能を使ってみたいという場合は、上記の違いを検討しつつ、自分に合った製品を選ぶといいだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。