清水理史の「イニシャルB」

無線LANのスピードを「見える化」 お手軽アプリ「cloudcheck」

 cloudcheckは、無線LANの速度を手軽に計測できるiOS/Android向けのアプリだ。自宅内のどの部屋、否、どのポイントが高速で、どこが遅いのかを手軽にチェックできる。年末の大掃除のついでに無線LANの電波環境でも調査してみてはいかがだろうか?

まるで鉱脈調査

 「ピッ、ピッ、ピッピ、ピピピピピピピピピ……」

 離れた3階の寝室から下りて、アクセスポイントが設置してある仕事部屋に近づいていくと、まるで地下に隠された鉱脈でも発見したかのように、ビープ音が連続で鳴り響く。画面上に示されたグラフは跳ね上がり、リアルタイムに変動する数値は400を超えた――。

無線LANの速度をリアルタイムに計測できるcloudcheck

 cloudcheckは、今まで、何となく「遅いなあ」、「速いなあ」と感じていた自宅内のスポットごとの無線LANのスピードを可視化することができる、スマートフォン向けのアプリだ。

 アプリそのものは、2013年から公開されていたようだが、恥ずかしながら、知ったのはつい最近で、しかもASUSのルーター(RT-AC68U)のファームウェアアップデート情報をチェックしていた際、たまたま「Added Cloudcheck router software agent」という項目を見つけ、「何だろう?」と疑問に思って調べたことがきっかけ。いわば偶然である。

 使ってみると、これがなかなか便利。

 3つある機能のうちの1つは、ASUS製ルーターなどagentが存在するルーターでしか利用できないが、そのほかの機能は一般的な無線LANルーターでも利用可能となっており、簡単に無線LANの速度を計測することができる。

 かつて、携帯電話時代に、電波の受信状況の良い場所を求めて画面上のアンテナを眺めながら屋内外を問わず、うろうろと歩き回った記憶があるが、イメージとしてはそれに近い。

 電波は無線LANの2.4GHz/5GHzで、画面上のアンテナアイコンではなく、リアルタイムに表示される速度と、それに連動するビープ音となるが、cloudcheckを動作させながら、自宅内をうろうろとすることで、隠されていた無線LANのスイートスポット(もしくはその逆の電波ホール)を探し当てることができる。

 日常的に使うようなアプリではないので、タブレットやサブのスマートフォンにでも入れておけば十分だが、今の無線LANの状態を把握したり、電波状況を改善するために無線LANルーターを交換したり、アンテナの向きを調整したいときなどに重宝する。

3つの機能を搭載

 現状、cloudcheckの機能は、以下の3つが用意されている。

・SpeedTest     インターネット接続速度とWi-Fi速度を計測
・Wi-Fi SweetSpots  無線LANの速度をリアルタイムに調査
・Smartifi      複数無線LANクライアントの統計情報を表示

 順番に機能を見ていこう。最初の「SpeedTest」は、よくある通信速度のテストだが、既存のアプリと異なるのはWi-Fiのスピードを計測できる点だ。

SpeedTestではインターネット接続速度と無線LAN速度を個別に計測できる
LTEの速度も計測可能

 テストを開始すると、cloudcheckが用意したサーバーとの間でテストが実施され、その際のインターネットの速度と無線LANの速度が表示される。

 残念ながら、cloudcheckのサーバーは日本には存在しないようで、筆者がテストした際はシンガポールのサーバーが利用されたため、インターネット接続に関しては参考程度となるが、WAN側とLAN側(Wi-Fi)が分けて表示されるため、「遅い」という状況の切り分けが1つ可能になる。

残念ながら日本にサーバーがない

 インターネット上の掲示板などでもよく見かけるが、無線LANの速度が遅いというトラブルで、よくよく調べてみると、インターネット上の速度測定サイトを利用しており、WAN側がボトルネックになっていたということがある。

 これに対して、cloudcheckなら、この2つの速度が別々に表示されるので、「遅い」のがどこなのかを判断する手がかりになるわけだ。

 続いての「Wi-Fi SweetSpots」は、冒頭で触れた鉱脈調査を思わせるテスト機能だ。画面を切り替え、「Start」をタップすると、リアルタイムに無線LANのスピードが表示され、グラフに刻々と記録されていく。

無線LANの速度をリアルタイムに計測する「Wi-Fi SweetSpots」

 ビープ音は標準ではオフで、鳴らすにはスピーカーアイコンをタップする必要があるが、「探してる感」を楽しめるので、ぜひ鳴らすことをおすすめする。

 最近の無線LANルーターは、Beam formingによって特定の端末に向けて電波を調整できるため、移動直後は速度が低く、次第に高くなっていく傾向がある。このため、速度が安定するには数秒〜十数秒ほどとどまっている必要があるが、「ピッピ、ピッピ」という音を聞きながら自宅の中をうろうろしていると、「3階のトイレは閉鎖されているがアクセスポイントの真上なので、意外に電波状態が良好」とか、「2階は全体的に良好なもののベランダ付近は近所の電波を拾いやすいからか速度が落ち気味」などというように、意外な発見がある。

 しかし、無線LANルーター側に特別なしかけがあるわけではないのに、どうやって速度を計測しているのだろうか?

 同社のFAQ(https://cloudcheck.zendesk.com/hc/en-us/articles/200733724-How-does-it-work-)によると、実際に測定しているわけではなく、リンク速度、レイテンシー、スタビリティ(おそらく信号強度)から速度を推定しているようだ。

 このため、実際にWebページを表示するとか、動画を再生するといった際の速度とは違うことになる。

 とは言え、cloudcheckの目的は、あくまでも自宅内の各地点の速度を相対的に比べることにある。値そのものを見るというよりは、その違いに注目することが重要だ。

家中の無線LANクライアントの速度を一発で可視化

 このように、3つの機能のうちの2つだけでもなかなか便利なcloudcheckだが、3つめのSmartifiは、ほかの2つをしのぐ圧巻の機能だ。

 冒頭で触れたように、Smartifiを利用するには、無線LANルーター側にエージェントが必要になるため、対応する無線LANルーター(現状はASUS RTシリーズ、AIRTIES Air5650TT、HUAWEI HG630a、ZYXEL VMG3312-B10Bのみ)を利用する必要があるが、かなり高度な機能になっている。

 具体的には、無線LANルーターに接続しているクライアントの速度をすべて、一発で把握できる。

 Smartifiを起動すると、ルーター側のエージェントによって収集された情報が表示され、上部にインターネット接続の速度(最後の計測時と過去7日間の平均)、その下に接続しているクライアントの名前、IPアドレス、2.4GHz/5GHzのどちらで接続しているか、最後に計測された速度、過去7日間の平均速度が、ズラリと表示される。

 さらに、各クライアントをタップすれば、無線LANチップベンダー、MACアドレス、信号強度などを確認できるほか、アプリからの操作でクライアントを再接続したり、接続をブロックしたりすることまでできる。

Smartifiを利用するとすべてのクライアントの速度を一発で把握できる
クライアントを再接続したり、アクセス禁止にできる

 この機能は、2つの意味で便利だ。1つは、スマートフォン以外のデバイスで速度を測定できること。cloudcheckは、現状、Android/iOS向けのアプリとなっているが、Smartifiなら無線LANルーター側のエージェントが計測してくれるので、クライアント側のプラットフォームは問わない。

 無線LANカメラだろうと、PCだろうと、テレビだろうと速度を計測できる。リビングのテレビのDLNAの映像伝送の調子が悪いなんて場合でも、速度をチェックすることができる。

 もう1つのメリットは、歩き回る必要がないことだ。すでに設置済みのクライアントの速度を計測できるので、先のWi-Fi SweetSpotsと異なり、2階だろうと、3階だろうと、そこまで出向かずに速度をチェックできる。

 小規模なオフィスなどでは、これは大変便利だ。フロアに設置した無線LANルーターで、端のデスクまできちんとカバーできるかどうかを速度で確認でき、場合によってはアンテナや無線LANルーターの設置場所の調整をすることができる。これまで、カンと経験を頼りに設置していた無線LANルーターの設置場所やアンテナの向きを合理的に決めることができるだろう。

Chromecastやネットワークカメラ、Windows Phoneなどの速度も確認できる

国内無線LAN機器メーカーもぜひ対応を

 以上、今回は本コラムとしては珍しくアプリを取り上げたが、なかなか使い勝手のいい製品と言える。

 今までよくわからなかった無線LANの電波状況が見えるようになるため、どこが遅いのかを把握し、場合によって対処することができる。

 残念なのは、インターネットの接続速度を計測するための日本のサーバーがないこと、Smartifiが対応するルーターが限られる点だ。もちろん、ASUSのルーターを購入するのもおすすめだが、個人的には、本来、こういった困っているユーザーをフォローする気配り的な機能は、日本の無線LANベンダーに、ぜひ先行してほしかったところとも言える。ぜひ対応をお願いしたいところだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できる Windows 10 活用編」ほか多数の著書がある。