第17回:NETWORLD+INTEROP 2002 TOKYOレポート
ようやく見えてきた次世代技術の使い道



 ネットワーク関連の総合展示会「NETWORLD+INTEROP 2002 TOKYO」(N+I)が、7月3日から7月5日まで幕張メッセで開催された。今回は、N+I全体の総括をするとともに、会場で見つけた興味深い製品のレポートをお届けしよう。





無線LAN技術とIPv6の集大成

NETWORLD+INTEROP 2002 TOKYOの会場の様子

 今年のN+Iは主に無線LAN技術とIPv6を中心とした展示会となった。各ブースで、最新の無線LAN機器の展示やIPv6関連のデモが行なわれており、比較的多くの人を集めていた。昨年まではIPv6も最新の無線LAN技術も単なる技術の紹介にすぎなかったが、今年のN+Iでは、ようやくこれらを利用した実際の製品が登場しはじめ、いよいよ実用段階が間近だという雰囲気をひしひしと感じたのが印象的だった。

 たとえば、IPv6に関しては「IPv6 ShowCase」という専用のブースが設けられており、東芝のIPv6対応冷蔵庫など、家庭内におけるIPv6の活用モデルなども展示されていた。詳しくは、会場レポートを参照してほしいが、この冷蔵庫では外部からの遠隔管理が可能となっており、内部の温度や内部の画像が外から閲覧することができるようになっている。実際に、冷蔵庫の中身が見られることがどれほど役に立つのかはわからないが、IPv6という次世代技術を具体的にどのように活用していくかという使い道が示されたのは大きな進歩と言えるだろう。

 また、無線LANに関しては、5GHz帯を採用したIEEE 802.11aの新製品の展示に加え、IEEE 802.11aとIEEE 802.11bのデュアルバンド対応製品も展示されていた。デュアルバンドをワンチップで実現できる製品はアセロスから参考出品されるに過ぎなかったが、アイコムなどではIEEE 802.11aとIEEE 802.11bのMiniPCIカードをそれぞれ搭載することでデュアルバンドを実現する製品も参考出品されていた。製品化はもう少し先だという話だが、実際の機器として展示されはじめたということは、このような製品の登場も間近と言えそうだ。





無線でコントロール可能なIPラジコンを展示

 また、このような技術を複合的に組み合わせた製品も展示されていた。中でも個性的だったのは、ユグドラジル・テクノロジーが開発した「IPコントロールカー」だ。見た目は単なるラジコンカーなのだが、ラジコンカー本体に小型のLinuxマシンと802.11bの無線LANカード(デモ機ではメルコ製のものを利用)が装着されており、無線LANでのコントロールを可能になっているというものだ。

 これには正直、驚いた。無線LANをこういった使い道に活用できるのかと感心してしまった。しかも、本体には小型のCCDカメラも搭載されており、実際にクルマのフロントウィンドウ越しに眺めるような雰囲気で、モニターを見ながらラジコンを操作することが可能となっていた。実際にインターネット経由で離れた場所から操作するデモも行なわれており、会場内に作られたミニサーキットを軽快に走っていた。もちろん、これはラジコンカー自体のデモではなく、無線LANを利用して機器をコントロールできるという例なのだが、ここまで凝った作りになっていると、もはや技術うんぬんよりも単純に欲しくなってしまった。

 残念ながら、今回はIPv4でのデモとなっていたが、IPv6での動作も不可能ではないだろう。実際、インターネット経由でコントロール可能な製品として実用化されれば、IPv6ベースとなることは間違いない。これまでIPv6は、さまざまな家電への採用が検討されているものの、その実用性にいまひとつ説得力がなかった。しかし、このラジコンカーのデモを見ると、こういったホビー製品や家電にIPv6が採用されることのメリットが実に明確に見えてくる。このIPコントロールカーのデモは、それを期待させてくれる見事なものだった。


本体に内蔵されたCCDカメラにより、まるで実車のような感覚でコントロール可能。離れた地点からインターネット経由でラジコンカーをコントロールするデモも行なわれた

デモ用のマシンのため、スピードは非常に遅い。しかしながら、会場に設置されたミニサーキットを軽快に走っていた

ラジコンカー本体には、小型のLinuxマシンを搭載。無線部分はIEEE 802.11bの無線LANカードによって実現されていた




ようやく家電への進出が実現できそうなUPnP

 Universal Plug and Play(UPnP)はもはやルータの機能のひとつとしてしか認識されていない傾向があるが、今回のN+IでようやくUPnP本来の使い道を示した製品が展示された。マイクロソフトのブースで展示されていたUPnP対応ステレオだ。本来、UPnPは家電なども含めた各機器をネットワークで手軽に接続するための規格として登場した経緯があったが、いつまでたっても製品が登場しないために、本来の用途がすっかり忘れ去られていた。しかし、ようやくUPnPに対応したルータ以外の製品が登場に期待できそうだ。

 今回展示されていたのは、Philipsによって製作された試作品だったが、PCとネットワークで接続することで、パソコン側からステレオをコントロールすることが可能になっていた。一通りの機能をデモで見せてもらったが、Windows XPのマイネットワークにアイコンが現れることはもちろん、ステレオ本体に内蔵されたファームウェアにパソコンからブラウザでアクセスすることで本体のコントロールが可能になり、ステレオ側のオーディオファイルを再生することができるようになっていた。

 パソコンと家電との連携は、古くから目指されていた方向性だが、今回のUPnP対応ステレオの登場により、ようやく形になりそうな印象を受けた。個人的には、ステレオも良いが、家庭用のハードディスクビデオレコーダーがUPnPに対応してくれるとうれしいのだが、このような製品が登場するのもそう遠くはないかもしれない。ただし、PC系のメーカー主導で展開されている現状のUPnPに、どこまでの家電メーカーが賛同し、実際に製品を登場させるかは、はっきり言ってわからない。この手の規格は、政治的な対立でうまくいかないことがよくあるが、そうならないように期待したいところだ。


Philips社製のUPnP対応ステレオの試作品。見た目はいわゆるミニコンポと変わらないが、ネットワーク経由でPCと接続可能で、PCからコントロールできる




コンシューマー向けの展示会もそろそろ必要な時期

 このように、今年のN+Iでは、いくつか興味深い製品を見ることができた。しかし、依然としてビジネス色の強い展示会であることには変わりはなく、コンシューマー向けの製品はほとんど見られなかったのが残念だった。N+Iはもともと技術色、ビジネス色の強い展示会なので致し方ないが、コンシューマーを意識した展示がちらほらとあったことを考えると、そろそろコンシューマー向けとなるネットワーク機器の総合展示会が開催されても良さそうなものだ。そういった展示会で、もっと我々の生活に密着した次世代技術を見てみたいものだ。


関連情報

2002/7/9 11:20


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。